- ぼてぢゅうグループ
- 経営管理本部 業務管理部長
- 藤井 誠
365日「リアルタイムに」互いを評価!84店舗で運用する「積み上げ式」の評価制度とは
〜「目に見えないもの」を可視化し、業績・能力・行動の3軸で評価する。社員同士がリアルタイムに評価し合う、ぼてぢゅうグループの評価制度とは〜
1946年に大阪で創業し、お好み焼の「ぼてぢゅう」をはじめとした飲食ブランドを、国内外で84店舗展開するぼてぢゅうグループ。
同社では、半期ごとの数値ベースの評価制度において、多様なタレントを持つ社員を正当に評価できないという課題を抱えていたという。
そこで、業績以外の「目に見えないもの」を評価に取り入れるため、評価の軸を「業績」「能力」「行動」の3つに再定義。そして、社員同士でリアルタイムに評価し合える「評価ポイント」を導入し、365日の積み上げで評価を実施している。
さらに、評価ポイントで拾いきれない日々の良い行動に対しては、「ありがとうコイン」というシステムを活用。
これらの施策を通じて、社員のモチベーションアップと、社員1人ひとりの強みの可視化を実現しているそうだ。
今回は、同社の経営管理本部で、評価ポイントの導入と推進を担う藤井 誠さんに、リアルタイム評価運用の実態についてお伺いした。
評価対象は「業績」だけではない。ぼてぢゅうグループの評価制度
私は入社以来、経理や財務の仕事に携わってきました。直近1〜2年は、チャットツールの導入を始めとした社内システムの構築を担当しています。
ぼてぢゅうグループは、今年で創業72年になります。2018年7月現在で、国内外に84店舗を展開し、グループ全体で約200人の社員がいます。
この歴史とともに積み上げた強みがある一方で、どうしても不要なものを引きずっている部分がありまして。
そこで、「捨てるべきものは捨てる」「必要なものは新しく取り入れる」という意思決定をし、ここ数年はグループ全体の組織改革に取り組んできました。
さらに近年、国が「働き方改革」を掲げる中で、企業がより成長していくためには、まず働く人の意識を変えないといけないという結論に至ったんですね。
それを踏まえた上で、弊社では「7つの習慣」と「個性學」をカスタマイズし、1年ほど前から自己啓発プログラムとして導入しました。
そのプログラムを通じて、「自己を知り、他者を理解する」ことに取り組んできたのですが、そこで評価の在り方についても変えていく必要性を感じまして。
というのも、従来は売上など「目に見えるもの」を評価の対象にしていたのですが、そうすると接客や調理などに携わる社員を、正当に評価できないという課題がありました。
そこで、「目に見えないもの」を評価に取り入れるため、評価の軸を「業績」「能力」「行動」の3つに定義し、今年の1月から制度を刷新したんです。
それと同時に、日々の行動などを可視化するには、タイムリーに評価したものを積み上げるやり方が適していると考え、「リアルタイム評価」を導入しました。
365日の積み上げが評価を決める、リアルタイム評価の仕組みとは
リアルタイム評価は、シーグリーン社の提供する「評価ポイント」というシステムを使って運用しています。
弊社は飲食業なので、評価をつけたいと思った時に、その都度パソコンを開くということが難しいんですね。ですので、スマホで誰でも手軽に操作できる、という点がツール選定上の大きなポイントでした。
従来の評価制度との違いは、365日リアルタイムに評価でき、上司からだけでなく社員同士でも評価し合うことができるという点です。
その評価項目は、業績・能力・行動の3つの大項目に紐づく形で、細かい項目に枝分かれし設定されています。項目数でいうと全部で70以上あり、それぞれの項目にはポイント数が決まっています。
▼評価ポイントの項目シート(業績の一部)
弊社では、店長や接客、調理のスタッフなど多岐にわたる職種があるため、それぞれに評価対象となる能力がバラバラです。
その定性的な評価を、覆面調査やお客様へのアンケート結果をふまえて、評価ポイントに反映させることで、定量的に可視化できるようにしています。
例えば、「行動」評価のひとつに、「お客様から笑顔が良いというお褒めの言葉をいただいた」という項目がありますが、この評価を受けると100ポイント付与される、といった形ですね。
運用開始してまだ半年ほどですが、MVPの社員は60万以上のポイントをもらうほど、活発に使われています。
浸透には「仕掛け」が重要。ポイントは評価と福利厚生に反映
一方で、やはり最初はなかなか浸透させるのが難しくて。はじめは地道に評価ポイントを送りあい、社内チャットツールに連携させて、全員に見えるようにしました。
すると「あの人が評価されたんだ、じゃあ僕も頑張ろう」みたいな感じで、だんだん評価される人が増えてきまして。
そうして慣れてくると、自分が得意とする評価項目もわかってきて、今では意識的に評価を狙うスタッフも増えてきたように感じています。
また、評価ポイントは、1年を通して貯まったポイント数で査定に反映しています。これは、通常の査定に足し算式でポイントが加わることで、報酬に反映されるという仕組みです。
それだけでなく、評価ポイントは弊社の福利厚生ポイントに移行し、景品交換ができるようにしています。
これは、リアルタイム評価を盛り上げるための「仕掛け」のひとつなんです。というのも、一所懸命がんばって貯めたポイントが、実際に使える方が楽しめると思っていて。
まずは運用を回すことが大切だと考えているので、毎日ログインしたら何ポイント付与するとか、ダブルポイントキャンペーンとか、そういった仕掛けも色々と考えていますね。
LINE@の新規会員数UP!強みの可視化とモチベーションアップに
こうして、リアルタイム評価を導入したことで、まず社員のモチベーションがあがりましたね。
例えば、販促活動で店舗でのLINE@の導入を進めているのですが、実績評価のひとつに「月間1,000人のお客様にLINE@の友だちになってもらう」という項目がありまして。
この月1,000人というのはかなり高い目標数なのですが、明確に評価ポイントと紐づけることで、とある店舗では3ヶ月連続で達成しました。
また、弊社では多様な人材タレントを伸ばすため、調理技能から、簿記、自己啓発、武道に至るまで、様々な資格の取得を推奨しています。
これも評価ポイントに反映させることで、取得率を上げることができました。さらに資格の取得を促進するため、チャットツール上では、自分の名前の脇に保有資格のマークをつけています。
▼名前の横に、保有する資格のマークがついている
これは道場みたいなイメージでして、初段〜師範代という感じでわかりやすいマークにしています。それを見た人が、「自分も次はここを目指そう」といった刺激を受けるような仕組みにしています。
評価ポイントで拾いきれない行動には「ありがとうコイン」を
こうして、数字だけでなく、何かしら突出したものを評価に反映する仕組み作りをしているのですが、なかなか評価がつかない人も残念ながら存在します。
ですが、私は社員全員が、何かしらの優れたものを持っていると思っているんですね。なので、評価ポイントがついていない人は「ダメ」なのではなく、自分が得意なものに気が付けていないのだと思っているんです。
そのため、数字に現れないような能力を可視化し、1人ひとりの強みを見つけてあげることが大切だと思っていて。それがモチベーションに繋がれば、結果的に仕事も楽しくなって幸せになると考えています。
その仕組みのひとつとして、評価ポイントでは拾いきれないような日々の良い行動に対し、従業員同士が感謝の気持ちを込めてコインを送り合う「ありがとうコイン」というシステムを導入しています。
▼実際の「ありがとうコイン」のやり取りの様子
例えば、「手伝ってくれてありがとう」といった日頃の感謝を、従業員同士で気軽に送り合っていますね。
また、感謝だけでなく、「情熱コイン」「スピードコイン」など、良い行動の内容によって様々な種類のコインが送り合われています。
これらのコインも、実は最終的に、評価ポイントにも反映するようにしていて。
一定のコイン数が溜まると評価ポイントに移行される仕組みにすることで、日々の小さな積み重ねも評価に反映できるようにしています。
「人づくり企業」を目指し、1人ひとりの幸せをサポートしたい
今年の1月からリアルタイム評価に取り組んできて、一定の成果は見えてきましたが、私たちもまだ試行錯誤している途中です。
ですが、この仕組みは海外でもかなり有効なんじゃないかなと思っていて。日本以上に、目に見える評価や報酬が従業員のモチベーションに影響するので、弊社のアジアの店舗でも今後取り入れていきたいと考えています。
弊社では、「人づくり企業になる」ということをビジョンに掲げています。従業員の100人100通りの幸せの形を、サポートできるような会社にしたいと考えていて。
その実現のためには、従業員1人ひとりの持つタレントマネジメントが、カギになってくると思っています。
それぞれの持っている能力を可視化し、適材適所の人材配置をするために、今後も評価ポイントだけでなく、新たな仕組みづくりに挑戦していきたいと思います。(了)