- 株式会社集英社
- LEE編集部 編集長
- 崎谷 治
インフルエンサー事業も開始!「雑誌の世界観」をWebへ広げる、集英社のファンづくり
〜スペシャルブロガー「LEE100人隊」・Seventeen公式アプリ「ST channel」など、雑誌からWebへと世界観を広げる、集英社のコミュニティづくりに迫る〜
「LEE」「Seventeen」「non-no」など、数々の人気ファッション誌を世に送り出してきた、株式会社集英社。
同社では以前から、雑誌という「紙」の媒体が持つ世界観をWebにも拡大させ、独自のコミュニティを築くことに成功している。
その代表例としては、LEEの読者を代表するスペシャルブロガー「LEE100人隊」や、Seventeen公式アプリ「ST channel」上のコミュニティといった存在が挙げられる。
「同じ雑誌の読者である」という共通点を持つ人々が集まることで、そこにはまさに「雑誌の世界観」を体現するような、アクティブなコミュニティが形成されているという。
そんな同社は、2017年5月、これまで培ってきた雑誌と読者の関係性を強みとする、インフルエンサーマーケティング事業を開始。
「Webであっても、紙で培った信頼感と雑誌の世界観を大切にする」と語るのは、Seventeen編集長を8年にわたって務め、現在はLEEの編集長である崎谷 治さんだ。
今回は、SeventeenとLEEにおける読者とのコミュニティづくりや、同社のインフルエンサーマーケティング事業について、詳しくお話を伺った。
ゆりかごから墓場まで。読者とともに人生を歩む、集英社の女性誌
僕は、入社から長い間ずっとSeventeenの編集部にいました。そこで、8年にわたり編集長を務めた後、現在はLEEの編集長をしています。
集英社が現在発行している女性誌は、全部で9つあります。
ティーン向けのSeventeenから始まって、それを卒業したらnon-no、働き始めたらMORE、結婚したらLEE…というようなラインナップになっているんです。
▼集英社の、9つの女性誌
「ゆりかごから墓場まで」ではないですが、女性の生涯にわたって、どの世代にも寄り添う雑誌があります。
僕たちは長年、紙媒体だけを展開してきた企業です。雑誌や書籍のような紙って、ずっと残るじゃないですか。だからこそ、非常に信頼性も高いですし、その分責任も大きいと考えています。
紙媒体で何か間違いがあったときに、読者・世間に与える影響は重大です。ですので、その部分をずっと神経質に繰り返し作ってきたということが、僕たちの自信でもあるんですね。
情報伝達の媒体が紙だけでなく、Webやアプリなどのデジタルに拡大してきた中でも、やはり紙で培った信頼感と雑誌の世界観というものを、とても大切にしていますね。
デジタルネイティブ世代に向けた「ST channel」アプリ
最初に担当していたSeventeenは、創刊当時は週刊だったんです。それが途中から月2回になり、僕が編集長になる直前の2008年に、月刊になりました。
つまり、昔は週1回だった読者とのコミュニケーションが、今は月1回になっているんです。
そこに、デジタルメディアが隆盛になってきて。今のSeventeenの読者層は、もう完全にデジタルネイティブと言いますか。
スマートフォンがあることが当たり前ですし、コミュニケーションの手段としても、情報収集の手段としても、欠かせないものになっています。
そうした世代に向けて、昨年「ST channel」というアプリを立ち上げました。
ST channelは、Seventeenがおくる、ティーンのためのトレンド情報発信アプリです。コンテンツの制作から運用までを、すべて編集部内で行っています。
アプリ内に「コミュニティ」という機能があるのですが、そこでは読者が自分でブログを上げたり、Seventeen専属モデルが投稿するブログをフォローしたりすることができます。
人気のある投稿には5,000ほどのコメントがついたりして、かなり活発なコミュニティになっていますね。
アプリリリース時には、いかにユーザーの興味を引いて離脱されないようにするか、コンテンツを吟味し、その後も試行錯誤の連続でした。
雑誌の世界観に基づいてコミュニティが形作られているため、ユーザーのエンゲージメントは非常に高いですね。これは、やはり雑誌特有の強みだと考えています。
雑誌の世界観を、読者ブロガー「LEE100人隊」が体現
読者層の世代は異なりますが、同じ強みを、LEEの編集長になってからも感じています。
LEEには、「LEE100人隊」と呼ばれる、読者ブロガーの草分け的存在のような方々がいらっしゃいます。私なんか本当に全く敵わないぐらい(笑)、LEEのことをよく知っていらして。
その方々は、日々の買い物や暮らしのことをブログにして、Web上にどんどんアップしてくれています。その100人隊にもファンがいて、もう完全に「LEEの世界観」を体現するような場所になっているんです。
▼「LEE100人隊」のサイトページ
やはり、雑誌でもWebであっても、ひとつの「LEEというブランド」の世界観の中で、読者やユーザーとのコミュニティを作っていくことが大切ですね。
インフルエンサーマーケを事業化。集英社の、新たな挑戦
こうして紙からWebへと読者との接点を増やしていく中で、2017年5月に、インフルエンサーマーケティングを事業化しました。
起用できるインフルエンサーは、3パターンに分かれています。
まずは、各ファッション誌で活躍中の専属モデルなどのスペシャルインフルエンサー。次に、読者モデルや読者ブロガーなどの読者インフルエンサー。そして最後に、INFLUENCER ONEという外部プラットフォームからアサインする、編集部チョイスのインフルエンサーです。
▼集英社の、3パターンによるインフルエンサー
集英社がこの事業を展開する意味は、やはり「雑誌の世界観」を持っていることと、世代に合わせたインフルエンサーを選定できることにあります。
実は、これまでもモデルさんに誌面のタイアップやSNSを通じたマーケティングに協力いただいていたこともあるので、インフルエンサーの起用は今に始まったことではないんです。
ですが最近は、「マイクロインフルエンサー」への注目もより高まっていますね。フォロワー数自体は多くなくても、ある特定のコミュニティに対してはすごく影響力のあるインフルエンサーの方々です。
例えばSeventeen世代では、インスタグラムで体育祭のヘアアレンジを上げている高校生が、5,000人くらいのフォロワーを抱えていたりするんです。
このような人たちは非常にリアルな情報を上げているので、草の根的に伝播していく部分がありますね。また、その方が実際にいずれかの女性誌の読者であったりもするので、雑誌の世界観を体現してくれます。
まだまだ試行錯誤の段階ではありますが、起用数は着実に伸びてきています。
Webとリアルの両方で、強固なコミュニティを作っていきたい
来年、LEE本誌は創刊35周年を迎えます。その企画のひとつとして、「読者1,000人に会いに行くツアー」を計画中です。
というのも、Webを通したコミュニケーションが増えてきたからこそ、逆にリアルの場でどれだけコミュニケーションを取れるか、という部分にも非常に価値が出てきていると思っていて。
例えば、地方にいる読者の方々がどういった生活をしているのかって、実際に行ってみないとわからないじゃないですか。
そうしたWebの検索ではなかなか表れない、潜在的なインサイトも編集部が知っている、ということを、LEEの読者の方々に直に伝えることで、雑誌にも価値を見い出してもらえるのではないか、と考えています。
またツアー以外でも、フラワーアーティストや料理家の方など、読者への影響力が大きい「ブレーン」と呼ばれる方々と一緒に、リアルな場でのトークショーやワークショップを開催していく予定です。
LEEのWebサイトとしては、もちろん1,000万PVより2,000万PVの方が良いと思っています。ただ、そこに内容が伴っていないと、意味がないんですよね。
やはり、質の高い読者と質の高いコミュニティがないと、インフルエンサーを起用して何かしらのアクションを起こしたとしても、得られるリアクションが弱くなってしまいます。
Webだけでなくリアルな場も活用していくことで、これからも雑誌の世界観に基づいた、より強固なコミュニティを作っていきたいですね。(了)
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