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CVR20%超えのECサイトを構築!価格競争で戦わない、ECの「ブランディング術」とは

〜10年以上にわたり、数々のECのコンサルティングで実績を残してきた尼口 友厚さんが、「EC過当競争」時代に生き残るための「ブランディング術」について語る〜

2013年の「Yahoo!ショッピング」による「eコマース革命」や、各種の無料サービスの登場により、ECサイトの数は爆発的に増加した。その数は、いまや100万店舗を超えているとも言われている。

このような状況の中で重要になるのが、いかに自社のECサイトを「差別化」するかということだ。

出店コストがゼロのオンラインショッピングモール「Cart(カート)」を運営する、カート株式会社でCEOを務める尼口 友厚さん。尼口さんは、ECサイトの差別化の切り口として「ブランディング」を提唱し、結果的にサイトのコンバージョン率を20%以上にした経験もある

「ECの数が増え、SNSも普及した世の中で、これからはブランディングがより重要になる」と語る尼口さんに、ECサイトを成功に導くためのポイントを、詳しくお伺いした。

ECサイトの「価格」による差別化はもう限界!

国内のECサイトは2013年頃から急増し、100万店を超えたとも言われています。「BASE」や「STORES.jp」など、無料でECサイトを作れるサービスが出てきたことや、「Yahoo!ショッピング」が各種の手数料を無料にしたことの影響も大きいと思います。

それによって、競争環境が非常に激化しました。もともとECサイトって、差別化がすごく難しいんです。リアルな店舗のような「立地」という差別化要素もありませんし、店員もいないために、ホスピタリティーのような要素も打ち出しづらい。

つまりユーザーからしたら、どこで買ってもあまり変わらない。

そのため、ながらくECサイトの差別化要因と言えば「価格」でした。1円単位で他よりも安い価格を実現し、限界ギリギリの戦いをしています。しかし、サイト数の急増によって、もはやこの「価格」で差別化する戦略は、限界に来ていると思います。

ECの差別化は「ブランディング」で行うべき

そんな中、より重要になってきている差別化の要素が「ブランディング」です。

私は2003年からECサイトのコンサルティングをはじめ、通販大手のORBISさん、資生堂さん、ユニクロさん、高島屋さんなど、大手を中心とした支援を行ってきました。そしてその頃から一貫して「ブランディング」による差別化を実践してきました。

なぜ、ブランディングを重視しはじめたかというと、そもそも大手のお客様はEC以外にも販売チャネルが沢山あるので、ECだけで価格を下げるのはご法度なんです。他の販売チャネルが不利になってしまうので…。

そのため、価格以外に差別化できる要素を探りはじめ、ブランディングに行き着きました。

ECサイトは「自動販売機」ではない

ブランディングという言葉には様々なとらえ方があると思いますが、僕なりのECにおけるブランディングの定義は「ECを自動販売機から人へ変化させる」というものです。

具体的に言うと、白抜きの味気ない商品写真、説明書からコピペしてきたような商品説明が並んでいる、「自動販売機」のようなサイトからの脱却、ということです。

ECサイトと言えども、お客様に商品を売る場だという点ではリアルな店舗と何も変わりません。しかしWebになった瞬間に、「自動販売機」でいいと思っている人が多い。これでは差別化が難しいんですね。

ブランディングの第一ステップはサイトの「人格」定義

では、どうすれば自動販売機を脱却できるかというと、まずは「なぜその商品を販売しはじめたか?」を追求することが重要です。

販売している商品には、必ずサイト運営者の思い入れがあるはずです。なぜ、その商品に惚れたのか。その商品のどこに惚れているのか。そしてどのような人に、どういうシーンで使ってもらいたいのか。

こういった思いを「人格」にして、テキストや画像などのクリエイティブやサイト上の企画に落としていきます

具体例で言えば、以前、あるスキンケアブランドのECサイトのブランディングを手がけた時の話があります。

まずブランディングをするために、創業者の女性社長に「なぜこの商品を販売しはじめたのか?」と聞きました。もともと薬の研究開発員をやっていた時に、息子がひどいアトピーで悩んでおり、何を塗っても効かなかったようで。それで、自分でスキンケア商品を作りはじめたそうです。

そして会社を作ってからは、ただスキンケア商品を売るだけではなく、子供の肌トラブルを解決するためにお客様と色々とコミュニケーションを取っていました。

結果、ママさんコミュニティのようなものができており、口コミが広がり業績が伸びていました。こういったヒアリングから、そのサイトに「スキンケアの知識を持っている先輩ママ」といった人格を作りました。

ペルソナに有益な情報を発信し、お客様と仲良くなる

人格を作った後は、「ペルソナ」、つまりターゲット顧客が喜ぶコンテンツを考えます。

このケースですと、スキンケアの知識を持っている先輩ママ(ECの人格)が、子供の肌トラブルで悩むママ(ペルソナ)に、「赤ちゃんの肌に関する知識」や「育児に関するノウハウ」を提供していくことにしました。

これは、その女性社長がもともとユーザーに提供している情報だったので、ペルソナが喜ぶことはわかっていました。

またもともとユーザーから、商品の感想がハガキで沢山送られてきていたんですね。このハガキを使えば、ユーザーが会社や商品に抱いている「信頼感」や「愛情」がよく伝わると思ったので、サイトのコンテンツとしてアップすることにしました。

こういった施策の結果、もともと15%と高かったコンバージョン率が、さらに上昇して20%を超えました

このように、ブランディングのためには、ECサイトを自動販売機と考えないことが重要です。そして、しっかりと人格やペルソナを設定し、ペルソナが喜ぶ情報を常に発信していくことが必須です。

すると、お客様と仲良くなることができ、お客様が何かを欲しくなったときに、来店して買い物をしてくれるようになります。

スマホやSNSの普及によってブランディングがより重要に

近年、スマートフォンやSNSの普及によって、ユーザーが日々ふれるコンテンツが爆発的に増えました。ECサイトにふれるきっかけも、「検索」ではなく「SNSに流れるコンテンツ」になってきています。

サイトを訪問する人の行動をパターン化すると、まずFacebookやInstagramなどのSNSに、ECサイトから発信したコンテンツが流れてきます。コンテンツにふれたユーザーは、アカウントをフォローし、発信される情報に日々ふれるようになります。

そして、購買意欲が高まったタイミングで、コンテンツからECサイトに訪れて買い物をします。

このような変化に対応するために、「ブランディングの考え方」がより重要になってきていると思います。

つまり、人格とペルソナを設定し、ユーザーに喜ばれる情報をSNSアカウントから発信し、ユーザーと仲良くなっていけば、サイトに来てもらうことができます。自動販売機のままでは、ユーザーを獲得することはとても難しいですね。

ちなみに、発信する情報は、扱う商品にこだわりすぎず、とにかくユーザーが喜ぶ情報で良いと思います。先のスキンケアブランドの例で言えば、スキンケア商品を売るサイトですが、子育てノウハウを発信しても良いんです。

このように、スマートフォンやSNSが普及したことで、ECサイトにもブランディングの考え方がより求められていると感じます。

SNSからECに来たユーザーに、より「簡単な」体験を

その上で課題になるのが、SNSからECに訪れたユーザーに「スムーズに買ってもらうこと」です。スマートフォンの場合、買うのに手続きが面倒だと「後でいっか」となる可能性が高いです。「全部で8ステップあります」とか言われると、離脱してしまう。

すでに明確に「欲しい」という気持ちがある検索ユーザーと違って、「お、これいいじゃん」くらいの欲求で来る人も多いので、その人達が離脱しないように、できるだけ簡単な「購入フロー」が必要ですね。

このように、ブランディングをしっかりと行い、かつスムーズな顧客体験を設計することが重要です。弊社で提供している「Cart」も、SNS時代のECサイトを助けるべく、今後もサービスを成長させていきたいと考えています。(了)

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