• 株式会社アカリク
  • 経営管理本部 執行役員
  • 三木 芳夫

キャリアに責任を持つのは自分自身。働き方の個別最適を実現する「パレットワーク」

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〜ベンチャーでも、全員がバリバリ働きたいわけではない。1人ひとりの志向に最適な働き方の実現を目指す人事制度を紹介〜

「成果をあげるべく、昼夜問わずフルコミットすべき」という考え方は、特にベンチャー企業においては珍しくはない。

それはマネジメントの視点から見ると、画一的な働き方を全員に当てはめた方が管理コストが少ないというメリットもある。

そのような考え方がある中で、採用・キャリア支援事業を展開する株式会社アカリクでは、「働く時間」「担いたい役割」「希望する報酬形態」などの観点から、社員の志向性を把握。

その上で、働き方を個別に最適化させた「パレットワーク」を実践している。

今回は同社にて執行役員を務める三木 芳夫さんに、社員の志向性を調査したプロセスから、その後の働き方の変化について、お話を伺った。

1人ひとりの志向性に合わせた働き方「パレットワーク」

弊社は2006年に創業し、「知恵の流通の最適化」を目指して、大学院生を対象とした採用・キャリア支援事業を展開しています。

約50人の組織内で、社員の半数を博士課程の出身者が占めています。職種で言うと、3分の2が営業系、残りがエンジニアと管理系で構成されています。

代表の林自身も元々は大学院生で、「とても優秀だが、バイアスをかけられて、なかなか就職できない」という院生の就活課題を解決したいという想いから、創業に至りました。

私は今年1月に参画したのですが、まず最初に全従業員と会社に対して感じていること、仕事に対する考え方、これから考えている働き方について話を聞きました。

その話をヒントに考案したのが、社員1人ひとりの志向性に合わせた働き方を実現しようとする人事制度「パレットワーク」です。

働き方に対する考え方は、人それぞれですよね。「時間に関係なく成果を追い求めて働きたい」という人もいれば、「一定時間の中で質の良い仕事がしたい」と考える人もいます。

あるいは、キャリアを築く中で、「プレイヤーとしてプロフェッショナルを追求したい」のか、「マネジメント側に回りたい」のかも、人によって異なります。

その一方で、普通の会社ではそのような個人の意向よりも会社の意向が優先されますし、決まったルールの中で働くことを強いられる部分もあります。

ただ、元々、そのような人事管理に疑問を持っていたこともあって。

より個々人の志向性に合わせた働き方のできる組織を作るべく、入社以降、社員の希望する働き方を実現するためのサポートを進めてきました。

自由な風土を活かすべく、「個別最適」な組織作りに挑戦

そもそも、パレットワークを始めようと考えたのは、私自身が「この会社は型にはめこんだ働き方を強いるべき組織ではない」と強く感じたことが背景にあります。

と言うのも、初めて会社に来た時に、ルールや強制されることがない、とても自由度の高い会社だなと思ったんですね。

例えば朝の出勤時間は自由ですし、社員合宿や懇親会を開催するときも、全員が参加する義務はなくて、行きたい人だけが参加すれば良くて。

以前、私が勤めていた会社は強い方針があって、全員が同じ方向をみて進むことを社員に求める風土でした。それはそれでひとつのスタイルだとは思うのですが、真逆だなと感じましたね。

また、弊社は社員のキャリアへの考え方も様々なんです。営業をバリバリやりたいという人もいれば、就業しながら博士論文を書いている人もいて、副業も認めています。

このように皆が自由な風土の中で働く一方で、会社を拡大させていくためには、全くルールがないのは駄目だと思いました。

そこで、社員の個性を活かしながらこの会社を成長させていこうとすると、規律を高めながら、人事施策を1人ひとりに個別最適化していくしかないと考えたんですね。

志向性の調査を実施した結果、意外な傾向が判明

そこで、まずは社員の志向性を把握すべく、独自に作成した「志向性チェックシート」を使ったアンケートを実施しました。

これは会社として、社員の志向性を把握することに加えて、全員に自分のキャリアの棚卸をしてほしいという目的がありました。

アンケートでは「結果とプロセスのどちらで成果を評価されたいのか」「勤務時間は裁量労働とフレックスのどちらがよいのか」「報酬は年俸、月給、フルコミッションだと、どの形で得たいのか」などを記入して提出してもらいました。

▼社員の志向性を把握するためのアンケートを実施

その結果、色々なパターンの回答が得られたのですが、主な傾向としては3つに分類される形となりました。

まず、「フルタイムでバリバリ働いて稼ぎたい。そして、マネージャーを目指したい」というタイプ。

次に、「時間で評価されるのではなく、質の良い仕事をするスペシャリストになって、社会的に意義のあることがしたい」というタイプ。

そして、「誰かのサポートをすることにモチベーションを感じ、チームに貢献したい」というタイプです。

▼志向性パターンのイメージ図

割合としては、ベンチャー企業なので「バリバリ働いてマネージャー職に就きたい」という人が多いと思いますよね。

ただ意外なことに、「短い時間で質の良い仕事をする、スペシャリストを目指したい」という人が最も多かったんです。

営業であれば営業マネージャーを目指すよりも、自分で業界の知識を深めて専門性の高い仕事がしたい、というプロフェッショナル志向の社員が多くて。

また、報酬は年俸制を希望する人が多いこともわかりました。大学院を経ている分、学部生とは異なるライフステージにいる社員も多いので、収入に変動があるよりは、ある程度決まった金額を欲しいという社員が多いんですね。

ただ、自分で志向性の棚卸をしたとしても、人には自分でも理解できていない「深層心理の中の自分」がいます。

また、どうしても日本人は見栄を張ったり、謙遜しすぎる傾向があり、この回答が決して本心でない可能性もあるんですね。

そこで、より客観的な視点を入れようと、適性検査ツール「mitsucari(ミツカリ)」を活用して、キャリア志向や価値観の診断を行いました。

▼アンケートへの回答結果から志向性を可視化する「mitsucari」

そうすることで、自分のことをより俯瞰して見てもらえるようにしました。

心理的安全性を醸成すべく、社員の志向性をオープンに

そして、これらの結果は、社内で全てオープンにしました。

例えば、本当は時間に関係なく働いて成果をあげたいと思っていても、外から見たときには、メラメラとしたものを感じさせず、ひょうひょうとしている社員がいたとします。

そこで、「この子はガツガツやるタイプじゃないし、実際に定時で帰っているので、ほどほどの仕事を任せよう」とマネージャーが考えたとしたら、その社員のパフォーマンスを向上させることが難しくなりますよね。

そのため、このような認識の隔たりを生まないよう、志向性に関する情報はGoogleドキュメント上でオープンにして、他者を理解しやすい環境を作りました。

すると、例えば経営陣が抜てき人事をしたいと思った時に、「この子はマネジメントしたいと言っているね。じゃあ、任せてみようか」という会話ができるようになるんですね。

こうして、志向性に合った適切な仕事を任せることで、組織全体に「この会社は自分のことを理解してくれているんだな」という心理的安全性を醸成しようと考えました。

働き方を多様化させる一方、目標設定と評価には明確な基準を導入

このように、社員の志向性を把握した上で、実際にそれぞれの要望に合わせる形で働き方を最適化させていきました。

例えば、実際に時短やリモート勤務への切り替えを行ったり、給与支給を月給から年俸制にしたスタッフもいます。

また、働き方に多様性が生まれるからこそ、目標設定や評価制度については、ひとつの基準で明確にルール化することが必要だと考えました。

そこで、行動目標と業績目標に分ける形で、OKRによる目標設定を行い、全社・部門・マネージャー・社員の目標を可視化し、皆が何を追っているのかをオープンにしました。

そして、行動目標に対する評価指標として、Job Pointという制度を導入しました。

例えば、「思考の自由度」という項目があり、10点は「自ら仕事を探すことが出来る」、50点は「問題を本質的にとらえ、目的達成のためには手段を変更することができる」という形で、レベル感ごとに点数をつけました。

その上で半期ごとに、各項目における点数を自己申告してもらい、それをマネージャーと経営陣が確認した上で、JobPointの合計点を目安に等級を決め、基本給を決定しています。

また、業績目標に対する評価は相対評価ではなく、絶対評価をするようにしました。個別に設定した目標に対して、周りがどうこうではなく、「あなたがやったか、やっていないか」だけを評価して、賞与に反映させています。

このように、具体的な社員のレベル感と等級を紐付けることで、明確な報酬制度を確立させました。

「自らのキャリア形成に責任を持つ」ことを求める

パレットワークの導入によって「離職率が下がる」といった数値的な変化が生まれるのはこれからだと思います。

ただ、互いの志向性を共有したことで、コミュニケーション量が増え、部門を超えたプロジェクトがスタートするなどの変化が生まれてきています。

また、採用の場面でも、働き方について、会社として受容出来るガイドラインを明確にすることができた点も良かったと感じています。

私たちは、パレットワークを通して、イングリッシュガーデンのような組織を作りたいと考えています。

「近くで見ると、有象無象に植物が生えているようにしか見えない。けれども、引いて見た時に1枚の絵になっている」というふうに、1人ひとりの個性は違うのだけれど、組織としては綺麗に成り立っているというような状態です。

逆に言うと理念だけしっかり守られていれば、そのほかのディテールは気にしないということです。そして、このような組織を実現するために、社員からの要望にはできる限り応えようと思っています。

例えば、エリア限定で勤務したい社員が増えれば、会社としてその場所に支店を作るかもしれません。そのくらい、僕を含めたマネジメント陣は「社員50人からの50通りの要望に応える」ということに腹をくくっています。

また、これからの人生100年時代、一社で勤めあげることは正直、不可能になります。それは弊社も例外ではありません。

そうであれば、この会社で働いている間にちゃんと社会で通用する力、つまり自分で自分のキャリアを切り開く力を身につけてほしいと思っています。

自分の決めた働き方なのであれば、その中でしっかりとやり遂げることを求めるんです。雇用関係ではあるのですが、パートナーシップに近い感覚かもしれませんね。

このような従来型とは違った制度作りにチャレンジして、「アカリクという面白い会社があるらしい」と言ってもらえるような組織を作っていくことができればと思います。(了)

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