- C4株式会社
- デジタルマーケティングチーム マネージャー
- 金城 寛
「集客の97%が広告」という状態から脱却!読者に愛される、オウンドメディア運営とは
〜オーガニックの問い合わせが12倍に!「現場のおっちゃんを笑わせたい」という想いが生み出した、オウンドメディア「施工の神様」のコンテンツ力に迫る〜
今、数あるオウンドメディアの中でも飛ぶ鳥を落とす勢いで成長中の、「施工の神様」をご存知だろうか。
▼「施工の神様」
2017年5月に、C4株式会社が「建設現場のリアルと向き合うメディア」としてリリースした同サイト。
同社が運営する、施工管理技士向けの求人サイト「施工管理求人ナビ」のマーケティング施策のひとつとしてリリースされ、広告頼みだった同サービスの集客を大きく改善することに貢献しているという。
例えば同社が定義する「質の高い求職者」の集客で言うと、2016年3月は広告からの流入が97%だったものの、現在ではオーガニック比率が30%を超える状態だ。
同社でデジタルマーケティングの責任者を務める金城 寛さんは、「メディアはやっぱり『面白い』ことが一番」と語る。
地道なSEO施策やサイト設計を行いながらも、あくまでも「現場の人に楽しんでもらう」メディアを目指し、これまでにないようなコンテンツを提供し続けている。
今回は、そんな施工の神様の運営について、過去の失敗経験も含め、詳しくお話を伺った。
復興支援のプロジェクトから、人材マッチングサービスへ
C4株式会社は、建設技術者の人材紹介、人材派遣を軸としている会社です。「施工管理技士」という職種に特化した日本最大級の転職サイト「施工管理求人ナビ」などを運営しています。
私はC4に入るまで、いわゆるマッチングビジネスや人材系のビジネスに関わったことはありませんでした。
経歴として一番長いのは通販のエンジニアですが、その後は事業会社でのメディア運営やフリーランスの活動を挟み、2016年にデジタルマーケティング事業部の責任者としてC4にジョインしました。
現在は、広告からWebサイト作りまで、全体を見ている形です。
私の入社前のデジタルマーケティング部は、皆で広告の運用やLPの改善を行っていました。現在は広告のノウハウはかなり溜まってきて、ひとりで回せるようになっています。
他のメンバーはひたすらシステム開発やコンテンツを作っている状態なので、仕事内容も大きく変わりましたね。
▼「施工管理求人ナビ」
C4はもともと、東日本大震災のときに立ち上げた、復興支援のためのプロジェクトが元になっています。
施工管理技士というのは、いわゆる現場監督ですが、非常に採用が難しいと言われる職種なんですよ。
その新規求人倍率は、10倍を超えるほどです(※平成29年12月の新規求人倍率)。
有資格者の数は300万人を超えていますが、現場で働いているのは、そのうち50~100万人だと思います。ただ施工管理技士は、工期終了や遠隔地への転勤命令に合わせて転職しやすいのと、派遣が可能なので、流動性が高いマーケットになっていますね。
競合の参入により、広告のパフォーマンスが伸び悩み…
サービスへの集客については、以前は、ほぼ広告に頼っていました。私が入社してからも、色々な施策や改善を試みましたね。
その中でも大きかった施策は、CPA(エントリーした求職者の獲得単価)で見ていた広告の評価を、「質の良い求職者を獲得する単価」に変えたことです。
やり方としては、Salesforce上に蓄積した求職者のデータと広告データを突き合わせて分析を行っていました。
▼実際の媒体別/年代別の獲得コスト分析
人材の場合、ただやみくもに人を集めればいいわけではありません。特に弊社のターゲットは施工管理技士として経験を積んだ方なので、スキルの高さ、経験、転職意欲といった「質」の部分が重要になります。
そこで、質の良い人材を「A人材」というように定義し、そのセグメントの獲得コストを算出した上で、それを元に媒体の予算配分やクリエイティブの改善を行っていました。
こうしてうまく回していたのですが、徐々に競合が増えてきて、これ以上パフォーマンスを上げることがきつくなってきました。
私が入社した2016年の5月くらいですと、「施工管理技士 転職」と検索してもリスティング広告が何件か表示されるくらいでした。
ですが今は、1ページ目のTOPに4件、サイドに4件、2ページ目も4件1件みたいな感じで、広告の数だけでも競合が倍ほどになりましたね。
広告をこれ以上伸ばすことが出来ないのであれば自然流入をもっと増やそう、と考えたことが、メディアを始めたきっかけです。
また「施工管理求人ナビ」の模倣サイト、模倣広告が相当増えてきたのも大きな問題でした。そこで、差別化も必要になってきたわけです。
コミュニティサイトを立ち上げるも、「匿名掲示板」状態に
自然流入を増やすことは、課題としてはずっと持っていました。施策のひとつとして、私の入社前の2015年に「現場の神様」というコミュニティサイトを立ち上げてもいるんです。
建設業界におけるミクシィのような形を目指していて、実際、会員数はものすごく伸びていきました。ですが、「気になって見ていても誰も書き込まない」という状態になってしまって。
▼「現場の神様」
もともとは、建設業界におけるQiitaのような、技術的な内容が集まってくれたらいいなと思っていました。
しかし現場の守秘義務の問題もあって、いつしか2chのような雑談スレになってしまって(笑)。正直、施工技術や転職の相談とは、ほど遠い方向に行ってしまいました。
とは言え、一定数の会員を集めることができたので、運用を軽くするための自動化をいろいろ施して。ユーザーの方が満足できる体験を担保し、今も稼働はさせています。
当社は現場技術者の情報・相談の集積地でありたいと思っているのですが、この経験から掲示板型は向かないことがわかりました。そこで次は、「情報を発信したい人が発信する」メディアをやってみようと。
メディアを作るにあたっては、もともと広告にかなり投資していたこともあって、目標設定はしやすかったです。
例えば、月間の広告費300万分の価値を出すにはどれくらいの流入を獲得すれば良いか、それに必要なシステム投資やコンテンツ制作費にはいくらぐらい掛けられるか、という形で、コストパフォーマンスを算出しました。
またメディアを始める時には、「現場の神様」で得た登録者も大きな資産となりました。要するに、「ライター候補」の方が、登録者の中にたくさんいたわけなんです。
そこで見つけた方に、「何か書いてくれませんか」という感じで、記事づくりを始めていきました。
これまでにない「現場の人が読んで楽しい」メディアを
実は最初、「メディアを作ろう」と色々な編プロに当たったのですが、どこもお手上げだったんです。建築とかインテリアとか、おしゃれ系なモノは書けるけれど、現場のことは何も書けないと。
ただ、世の中にそういった「現場のことを伝える」サイトや紙媒体がなかったので、弊社としては敢えてそこを狙っていこうというのはありました。
じゃあ、もう自分たちでやるしかないなと(笑)。これが功を奏したと思っています。
建設の世界は、コンテンツがつまらないんですよ。役所や大企業のプレスリリースの、「てにをは」だけをちょっと変えて載せたような記事ばっかりで。
それもそのはずで、建設業界に昔からある業界紙や専門誌は、現場の建設技術者に向けた媒体ではないんです。
ですので我々としては、もっと「現場の人が仕事終わりに読んでも楽しい」ような路線で行きたいということがありました。
▼実際の記事の例(ランキング)
建設業界って、ものすごい秘密主義で、上から下まで情報を外に出さない傾向があります。その上、本当に完全なピラミッドなんです。
発注者>本社>支店>現場という形と、元請け>下請け>外注業者という形の、二種類のピラミッドでできています。
でも皆、この上の層に対してそれぞれが鬱憤を抱えているんです。その「リアル」を伝えるのが、我々のメディアである「施工の神様」だと思っています。
現場の代理、じゃないですけど、真実を伝えるということを大切にしていますね。
記事を書いているライターさんは50名以上いるのですが、現場の方もたくさんいます。昼休みにスマホで書いたような、めちゃくちゃな原稿が送られてきたり、絶対に表に出せないような情報が来てビックリすることもありますが…(笑)。
ただ、現場の人がそう思っているのであれば、それがリアルだ、という考えのもとでやっていますね。
SEOやサイト設計も重要だが、やはり大切なのは「面白さ」
メディアのコンセプトや運用に関しては、編集長(清水清さん)が中心になって制作しています。一方でSEO対策のためのサイト設計や、システム開発は主に私が進めています。
今はメディアの流入経路としては、オーガニックが7割ほどあります。残りがFacebook、SmartNews、直接流入といった形ですね。
SEOに関しては、初期からしっかりキーワードや指標を取ってモニタリングしています。モニタリングツールとしては、今はAhrefsを利用しています。
キーワード数で言うと、今は200以上をトラッキングしています。
特に弊社の場合は、「施工の神様」と「施工管理求人ナビ」が同じドメイン下にあるので、「施工の神様」の検索順位が上がることが、転職サービスのSEO対策に繋がります。
こうした施策の結果として、オーガニックの問い合わせ件数は、2016年3月と比べて12倍に増えています。
また、質の高い求職者の獲得についても、以前は97%が広告から来ていたのですが、現在は30%がオーガニック経由になっています。
そして今では、他媒体とのコンテンツ連携も、積極的に行っています。
以前はSmartNewsやLINE NEWSのような大手媒体に弊社コンテンツを提供することを中心に取り組んでいました。
しかし現在は、「施工の神様」もメディアとして育ってきたので、逆に建設系メディアやBlogで面白いコンテンツを作っている方々にお声掛けして、転載させていただくことも積極的に働きかけています。
また、業界内外への発信力も大きくなってきたので、土木学会や日本建築仕上学会といった学会や業界団体のユニークな取り組みを発信する、プラットフォームとしての役割も果たすようになってきています。
最近は、広告を掲載したいという企業からのお問い合わせも増えてきているので、そういった要望に応える準備も進めているところです。
でもやっぱり、メディアはもう「面白い」ということが一番だと思うんですよね。うちの編集長は、いつも「現場のおっちゃんを笑わせてやろう」ってことばっかり考えているんですよ(笑)。
なのでサイト自体も、ちゃんとしているというよりはわざと「手作り感」みたいなものを大事にしてたりしますね。
これからも、現場の皆さまに愛されるメディアを作っていければと思います。(了)