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営業とマーケの「溝」を越える!カギは「共通のゴール」と「情報共有の仕組み」にあり(後編)

今回のソリューション:【マルケト】

どんな企業でも起こりがちな営業とマーケティングの間に「溝」の問題。そこで参考にしたいのが、クラウド会計ソフトfreee(フリー)を提供するfreee株式会社 の仕組みづくりだ。

同社では、互いのコミュニケーションや情報共有の仕組みを「Salesforce(セールスフォース)」と「マルケト」によって整備している。さらに会議などによる地道な意識づけにより、両者が協力して「顧客数を増やす」というひとつのゴールに向かう体制ができている

その体制を作り上げた、法人営業のマネージャーを務める小原 史明さんと、マーケティングチームのリーダーを務める岡田 悠さんに、詳しいお話を伺った。今回の後編では、主にマーケ側のマルケトの使い方や施策、そしてスコリアングについての考え方を中心に聞いた。

※主にセールス側のお話を中心に聞いた、【前編】はこちらです

▼マーケティングオートメーションツール「マルケト」を活用中(内容はイメージです)

多様な相手に様々なアクションを打つ、freeeのマーケ施策

岡田 freeeのマーケティングは、相手が大きく3種類に分かれています。まずは法人のお客様、それから個人事業主の方、さらにパートナーとなる会計士さんや税理士さん。マーケティングチーム自体は今10人ほどで、法人向け、税理士さん向け、個人事業主さん向けに分けて活動を行っていますね。

マーケティング施策の中心は、オウンドメディアである「経営ハッカー」をはじめとするオンラインマーケティングです。広告、SEO含めたメディア施策、SNSなど…。ただfreeeの場合、ユーザーさんも多用なので、マーケティング・コミュニケーションの手法も多岐に渡っています

法人向けにはBtoBマーケティングに近い感じで、オンラインで集客し、メールマガジンなどを送ってセールスにつなぐ。そして課金してもらったあとは、継続的に使っていただくためのコミュニケーションをとる。

一方で個人事業主向けですと、施策はかなりBtoCに近いものもあります。CMを打ったり面白い企画をしたり…といったことですね。僕自身は、法人向けのマーケティングを中心に担当しています。

「スコアリング」自体はマーケティングの本質ではない!

岡田 マーケティングツールであるマルケトを活用すると、経営ハッカーやプロダクト上でのリード(見込み客)の行動をトラックでき、freeeに興味を持っていただいているお客様を判断しやすくなります。一般的に言う「スコアリング」ですね。

ただ、このような「スコアリング」は便利ではあるのですが、それ自体が本質ではないと考えています。マーケティングで重要なのは、「個別にカスタマイズされたコミュニケーションをする」ということです。

スコアが高い人に電話をかける理由は、その人がfreeeのことをもっと知りたいと思っている可能性が高く、1to1 でコミュニケーションすることに価値があるから。それだけなんですね。

結局、種類の違うコミュニケーションをユーザーに対してどう使い分けるか、という発想で考える方がいいと思います。テクニカルに「スコアが高いリード」をまとめて考えてしまうと、セールスと歯車が合わなくなってきてしまいがちです。

そしてスコアリングのルールも自分たちで決めている以上、マーケとセールスでしっかり情報共有し、最適なものにする必要があります

また、リードの需要と供給のバランスも タイミングごとに変わってきます。リードの件数がとても多いときは上位の方だけにアプローチする、一方でセールスのリソースが潤沢なときには、また違いますよね。

そういった情報共有はこまめにする必要があるので、ミーティングは、もうめっちゃしています(笑)。各チームのリーダー6、7名が集まって、最低でも週1は行っていますね。

セールスとマーケの感覚をすり合わせる、情報共有は必須

小原  最初は「ミーティング」と言っても、岡田と僕の2人でずっと話し合って、試行錯誤していました。「こういうお客様はfreeeにぴったりだよね」という感覚って、全員が持っているものですよね。でもセールスとマーケで、その感覚が違っていることも多い。そこをすり合わせることもとても大切だと思います。

そしてセールスは、現場で得た情報の中でマーケティングに使えそうな要素を、マーケ側にしっかり伝えていく必要があります。例えば経験則から「まだfreeeにあまり興味が薄そうだな」と判断していた人でも実際に電話をかけてみると、アポイントが取れたり、良い反応をもらえることもある。

岡田 実際、冬休みにSalesforce上にある営業のレポートをまとめて読んだときにも、いろいろな気付きがありました。freeeのような会計ソフトに興味を持つ人の背景には、多種多様なモチベーションがあるということを再確認できましたね。

例えば請求書を作りたい人、レシートの管理をしたい人、資金繰りを作りたい人…やっぱり見た目の数字だけでは、こうした情報はわからない。こういった情報はセールスが一番持っているので、マーケだけではなくプロダクト開発側にも共有する仕組みを作っています。

セールスから情報が上がる「仕組み」があることが必要

岡田 このように、互いに情報を共有し、話し合いながらマーケティング施策のPDCAを回してきて、その時の優先度をチェックしながらルールづくりをしてきました。

さらにマーケ側の役割としては、セールスがSalesforceに上げる情報を精査する、ということがあります。例えばセールスから「会社設立したばかりの人はfreeeを使ってくれやすい」と上がってきたら、そういった方のデータをマルケトで出してみて、アポが取れる確率や契約率を他と比べてみたり。

▼マルケトの活用で、見込み顧客の分析も簡単に(内容はイメージです)

個人的な感触ですが、freeeのセールスは、マーケティング的な視点を持っている人が多いです。よく聞く「気合いで売る!」みたいなことはないですね(笑)。

他にも、1人のお客さんの要望を重視しすぎてしまうと混乱が起こると思うのですが、そうではなくて、常に「使っていただけるお客様を増やす」という目的に立った本質的なコミュニケーションができていると感じています。

そういった意味で、セールスからのデータが上がる仕組みと、コミュニケーションができる仕組みがあることはやはり大切ですね。

徹底した情報共有や試行錯誤から、徐々にルールが生まれる

小原 これまで情報を共有して、精査し、話し合って試行錯誤する、ということを繰り返してきたことで、色々なことがわかってきました。

例えばfreeeを認知する検索キーワードによって、すぐに1to1のコミュニケーションをスタートすべき人と、会計ソフトとしてのfreeeについて全般的な情報をメール等で提供していくべき人が分かれてくる。

また、経営ハッカーにたまたまたどり着いて資料をダウンロードしてくれた人は、freeeも知らないし、経理に課題もないことが多い。ただその人が経営者で、うちのホームページにも来て、動画を見てくれた場合は1to1のコミュニケーションに切り替えていく、などなど…。このようなルールが、少しずつ出来上がってきたイメージです。

岡田 マーケ側でオンライン上でどのようなコンテンツを出していくか、ということも、セールスからのフィードバックも踏まえて進化してきました。今は経営ハッカー上でも、無料ガイドからセミナー動画まで、いろいろな厚みのあるコンテンツを出しています。

▼「経営ハッカー」ではドキュメントから動画までを、幅広く用意

経営ハッカーやホームページを訪問する人って、本当に色々なモチベーションで入ってくるんですよね。その中でどのコンテンツから入ってきた人にどうアプローチするべきなのか、ということは、セールスが実際にアプローチしたときの情報なども踏まえて考えています。

より多くの情報から、よりカスタマイズしたコミュニケーションを

小原 いまセールスチームはどんどん人を増やしているので、これまで以上に電話も架けられますし、フィードバックももっとたくさんできるようになってくると思います。昨年は会社設立freeeという新しいプロダクトもリリースしましたし、各プロダクトごとのセールスとしての知見をより一層深めていきたいですね。

岡田 マーケも人を増やしたいですし、あとは個人的に、マルケトを使える人を社内にもっと増やしたいです(笑)。使い方にもコツがあるので、基礎編と応用編に分けて教材を用意して、がんばっています。

また、マーケティングコミュニケーションに関してはもっともっと細かいセグメントで切って、カスタマイズしていきたいですね。セールスの1to1のコミュニケーションがその最上位にあると思うのですが、できるだけそっち側に近づきたい。本当に色々なお客様がいるということを実感し続けているので、より多くの方に最適なアプローチができるように、もっと考える余地があると思っています。(了)

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