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営業とマーケの「溝」を越える!カギは「共通のゴール」と「情報共有の仕組み」にあり(前編)

今回のソリューション:【Salesforce(セールスフォース)】

営業とマーケティングの間に「溝」ができてしまう、というのはありがちな話だ。コミュニケーションや相互理解の不足により、本来おなじ目標に動くべき両者が対立関係になってしまうことも多い。

2012年7月の創業後、クラウド会計ソフトfreee(フリー)を中心とした「スモールビジネスの活性化に貢献する」テクノロジーを提供するfreee株式会社。同社はセールスチームを持たなかった状態からわずか2年足らずで、営業とマーケティングが連携した「見込み顧客へのアプローチの仕組み化」に成功した。

その仕組み化には「Salesforce(セールスフォース)」と「マルケト」を活用しているそうだが、ツール以上に重要なのは「同じゴールを目指す」ことへの認識や、情報共有の意識づけにあるという。

今回は同社の法人営業マネージャーを務める小原 史明さんと、マーケティングチームのリーダーを務める岡田 悠さんに、詳しいお話を伺った。

主にマーケ側のお話を中心に聞いた【後編】はこちらです

▼クラウド会計ソフト「freee」のセールス&マーケの体制とは?

セールスとマーケで「共通のゴール」を追えば、溝は生まれない

小原 私は新卒で入ったベンチャー企業で4年、その後Salesforceで2年、営業として働いていました。そこから起業も経験した後、2014年11月にfreeeにセールスとして入社しました。現在は、セールスチームのマネージャーを務めています。

セールスとマーケの溝、という課題はどこの会社でもよくある話だと思うのですが、弊社ではその連携がかなりうまくいっている実感があります。その理由はすごくシンプルで、お互いに「ゴールが一緒」ということをしっかり認識できていることにあると思っています。

ありがちなのは、セールスとマーケでゴールがずれてしまうことです。例えば「リードの獲得数」を追いかけるとして、マーケは「数が多ければいいんでしょ」と言う、一方でセールスは「質の良いリードを寄越せ」と言う…。

freeeの場合は、お互いの共通のゴールとして「使ってくれるユーザーの数を増やす」ことを見ています。議論もすべてそこから落としているので、ぶれないんですね。ツールとしてはSalesforceとマルケトを使っていて、他にも会議などで密に情報共有をしています。

ただ、ほんの2年前まで、組織の中にセールスチームもありませんでした。そこから試行錯誤を重ねて、今では全体で70名ほどのチームになっています。過去と比較してもはるかにお客さんのことを知っていますし、コミュニケーションが最適化できるようになりましたね。それに伴ってもちろん、契約の数という実績も上がってきました。

現在は数十万件の顧客データを「Salesforce」で管理

小原 現在のセールスチーム合計70名は、新規開拓チーム、既存ユーザーチーム、税理士・会計士の先生とパートナーシップを結んでいくチームに分かれています。基本的には新規・既存に関わらず、数十万件以上のすべての顧客情報をSalesforceで管理しているので、セールスは全員そちらにアクセスすることになります。

ただ1年ほど前までの長い期間、セールスはずっと3〜5名の少人数でした。インサイドセールスがどうしたらうまく回るか、ということを検証していて、形が見えてきた2015年春頃から人数を増やしていったんですね。マーケとの連携も、ちょうどそのあたりのタイミングから本格的に始まっていきました。

Salesforceの構築で重要なのは「何をどうしたいのか」決めること

小原 僕が入社した2014年11月は、ちょうど社内のセールスチームが立ち上がったタイミングで、Salesforceを導入して顧客データを取り込み、インサイドセールスの仕組みを構築していこうというところでした。

▼クラウドベースの 顧客管理/営業支援ツールの「Salesforce」(イメージ画像)

振り返って良かったと思うのは、「やろう」と決断してからがすごく早かったことですね。Salesforceを使うと決めてすぐに導入して、社内エンジニアがわずか数週間で構築しました。

Salesforceは最初の構築が難しいと言われていますが、何をゴールに置くかを決めて、さらにそのゴールへのプロセスの中でどこまでをSalesforceで管理するのか、ということを決めておくことが重要だと思います。結構なんでもできるツールなので、「何をどうしたいのか」を設定することが非常に大事なんですね。

弊社の場合は、まずお客様にきちんと納得していただいた上で、「有料プランを導入し活用してもらうこと」をゴールに設定し、それまでをフェーズに分けて管理することにしました。

何を管理するかも細かく決めて、例えばアポイントのための電話がつながったかのかどうか、お客様は興味を持っているのか、といった、具体的に追いかける項目までをしっかりと定めました。

当時の、まだ少人数だったときにオペレーションをがっちり固められたので、人が増えても難なく対応できた部分があると思います。自分自身がSalesforceに在籍していた時も、ルールはしっかり決められていました。自由度の高いツールなので、そこは作っておいたほうがいいのかなと思います。

また、業務プロセスは変わっていくものなので、最初の構築のタイミングで、エンジニアがいなくても細かいカスタマイズを営業側で変更できるように作っておいたことも良かったかなと思います。

まずはインサイドセールスの活動を検証し、マーケとの連携へ

小原 Salesforce上に情報が集約されたところで、それを見ながら順番にコールをしていく、という活動をスタートしました。どういう人に電話をかけて、どういう風に話をして、有料サービスの購入までどのようなプロセスを踏んでいくのがいいんだろう、ということを模索していきました。

そもそも初めての領域だったので、セールス自体をどう活動していくべきか、ということをずっと検証していましたね。リソースも限られていたので、よりfreeeに興味をもっている人から優先的にご連絡した方が良いよね、というところから、マーケとの連携を含めていろいろと議論が始まっていきました。

「未経験者」中心の、freeeのマーケティングチームとは

岡田 僕は今、10名ほどのfreeeのマーケティングチームのリーダーをしています。入社したのは2014年6月で、当時はまだセールスチームも、経営企画もありませんでした。マーケティングに関しては2名ほどが、他の業務を兼任でサポートなども担当しながら働いていた感じです。

入社後もしばらくは人数も増えなかったので、プロダクトごとに担当者がついて、サポートとセールス以外の、雑務もすべてこなすような役割で、各自がやりたいことをどんどんやっていく、という雰囲気でした。

僕は、前職では金融機関でマーケティングとは全く関係ない仕事をしていました。実は僕に限らず、弊社のマーケティングチームはみんな未経験者なんですよ。freeeがビジネスをしている領域はまだまだ新しい世界で、まだ誰も答えを知らない。その中でどんどんチャレンジできる、うちの言い方だと「タケノコ人材」のような人が向いているのかな、と思います。

マーケ側では「マルケト」を活用し、セールス側との連携を実現

岡田 マーケティングツールとしてはマルケトを使っているのですが、導入したのはSalesforceの後になります。

最初は使い方もわからないので、まずは導入したその日にマルケト経由でメールマガジンを送ってみることから始めました。もともとメールマーケティングはしていたので、そのツールを置き換えるイメージで徐々に慣れていきました。

その後は、オウンドメディアである「経営ハッカー」のコンテンツと連携させたり、見込み顧客のスコアリングを始めていきました。

▼freeeのオウンドメディア「経営ハッカー」

そして2015年の春頃から、もっとセールスと連携して使っていこう、という話になったイメージですね。最初はそれこそ小原と2人でずっとミーティングしながら、互いの持っている情報を共有して、どう連携していこうかということを話し合っていました。

今では連携の体制も整ってきて、Salesforceにセールスが上げる顧客情報を、マーケはかなり意識してチェックしています。例えば冬休みには、Salesforceに書かれているセールスのコメントをすべてテキストデータで落として、マーケでそれを読む読書会も企画しました。

重要なのは、セールスとマーケが「議論できる」状態を作ること

小原 Salesforceとマルケトは連携が非常に強いので、セールスがSalesforceに打ち込んだ顧客情報はほぼリアルタイムでマルケトにも反映されます。

▼Salesforceとマルケトが、リアルタイムに連動

大きな流れとしては、基本的にすべての顧客情報はSalesforce側にあって、その中でセールスがどの顧客にどのようなアクションをするか、ということをマルケト上で算出されたスコアに基づいて判断しているイメージです。

ただ結局、「スコアリング」はWeb上の点数に過ぎないので、そこで最終的な「購入」というゴールを見失ってしまうと、ブラックボックスになりがちなんですよね。そこはセールスがしっかり寄与すべき部分で、営業活動で得たことをマーケにフィードバックすることが大切だと感じています。

重要なのはあくまでも、セールスとマーケが同じゴールのためにアイデアを出し合って建設的に議論できる状態を作ることです。Salesforceやマルケトのようなツールは、その仕組みを作るための手段のひとつだと思っていますね。(続く)

具体的な情報共有の仕組みについて聞いた【後編】はこちらです

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