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顧客課題にどうアプローチする?1年で売上3倍を達成した、SmartHRの営業ノウハウとは

〜昨対比の売上3倍を達成!「SmartHR」の急成長を支える営業部隊の、組織化のプロセスと、クロージング力を高める営業手法をご紹介〜

BtoBサービスにおいて、その成長に大きな影響を与えるのが「営業力」だ。

リリース3年でスタートアップから大手企業まで幅広く導入されている、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」。その急成長の影には、約20名から成る営業チームの組織力と、メンバー1人ひとりの高い営業力があった。

同社の営業チームは、リードから商談を創出するSDR(※)チームと、契約を獲得するセールスチームの大きくふたつに分かれており、各役割に注力することで営業の効率化を図っている。

※Sales Development Representative:マーケティングで獲得したリードにアプローチし、商談を獲得する役割を担う

▼SmartHR社の営業構造

また、個々の営業力を高めるため、入社時の研修や勉強会、上長との壁打ちを通じて、ノウハウを属人化させない仕組みを作っている。

今回は、同社のセールスチームでリーダーを務める氏次 祐貴さんに、営業の組織化プロセスと具体的な営業手法について、詳しくお伺いした。

属人化した営業から脱却するため、SDRとクロージングを分離

私は2017年の2月に、4人目の営業として入社しました。それ以前は、不動産や人材紹介の会社でずっと営業の経験を積んできました。

入社した当時、サービスが急成長していく中で、問い合わせ件数がものすごいスピードで増えていたんですね。

営業の4人でそれに対応していたのですが、当時は業務がかなり属人化してしまっていて…。商談のアポ取りから訪問、クロージングまで、1人ひとりが個々に動いていたので、実施すべきアクションも足並みが揃っていませんでした。

そこで営業組織を立て直すため、2017年の夏頃に、営業メンバー全員で業務の棚卸しをすることにしました。すると、いくつか共通の課題が見えてきて。

その中で最も大きな課題として上がったのが、商談創出の部分でした。というのも、営業としては契約を取ってくることが一番のゴールになるため、いただいたお問い合わせへの対応がすぐにできていなかったんです。

ですが、並行して新規の商談を取っていかないと、今後の成長のボトルネックになってしまうと。

そこで、リードから商談の創出に専念するSDRと、成約を決めるセールスのふたつに役割を分け、それぞれのKPIを明確にしました。

その結果、1年半で営業チームは20名ほどの組織まで拡大し、売上は昨対比の3倍を達成しています。

商談の「武器」は、SDRからセールスへの情報連携

SDRチームのKPIには、商談獲得の件数を置いています。商談から先はセールスの責務になるため、成約金額はクロージングを担うセールスのKPIになります。

そして、少人数でより多くのお客様に対応するため、セールスチームはWeb商談をするインサイドセールス(以下、IS)と、訪問して商談をするフィールドセールス(以下、FS)のふたつに分かれています。

役割は同じなのですが、ISとFSでは必要なスキルが異なってくるので、チームを分けることでメンバーの強みを生かした組織体制を作っています。

私は現在、7名ほどから成るFSチームの中で、リーダーのような役割を務めています。この分業体制にしたことで、商談をより効果的に進めることができるようになったと感じていて。

例えば、訪問営業をする前にSDRからの情報連携とFSチーム内での壁打ちを行うことで、商談の精度を高めています。

SDRでは、必ず「なぜSmartHRに興味を持っていただいたのか」「どんなことを実現したいのか」「現状はどういう業務になっているか」の3点をヒアリングしています。

ここで気を付けていることは、「〇〇だと思います」という解釈ではなく、「〇〇と言っていました」という事実情報を連携するということです。この事実情報が、商談の武器になるんですね。

そして、これを元に営業メンバーは自分の上長に必ず壁打ちをします。具体的には、お客様の抱える課題背景と、それに対して解決できる機能や説明の仕方を確認した上で、商談のゴールを擦り合わせます。

そのゴールに対して、どのようなことがハードルになりそうか、商談の分岐点とそのパターン別にどう着地させるか、といった想定をあらゆる角度で行うことが、商談の事前準備として最も重要だと考えています。

お客様にもゴールを明示し、課題をブレさせないことが重要

次に、実際の商談をスムーズに進めるためには、お客様に対してゴールの明示と課題をブレさせないという2点が重要です。

まず商談の冒頭で状況をヒアリングした後に、「今日はここまで判断をお願いします」というゴールを先に明示するんです。

例えば、契約を検討していただくのか、現状の課題を明らかにして運用方法を検討していただくのかによっても、必要となる判断材料が異なります。

お互いのゴール認識を擦り合わせることで、商談の終わりに次のスタートラインに立てるかどうかを、明確にすることができます。

また、もうひとつ大事なポイントとして、お客様の課題をブレさせないということです。

よくSaaSの営業でハードルになるのが、話をするうちに「それだったらこれも解決したい」とお客様の課題が本質から外れてしまうことだと思っていて。

不動産の物件探しと同じで、人って色んなものを見ているうちに「あれもこれも」となりがちなんです。これをそのまま受け入れてしまうと、結局はお客様自身が解決したいゴールに辿り着かなくなってしまうんですよね。

なので、もはや叶わないような要件を作り上げてしまう前に、私たちが早めに「御社の解決したい課題って何でしたっけ?」と軌道修正し、お客様に立ち返ってもらうことが大切だと考えています。

一方で、本当に解決したい課題はひとつではなく、2〜3つほどある方がクロージングの確度が高まると感じています。

そのため、最初のヒアリングで潜在課題を引き出しておき、「その課題を放置しても良いのか?」と課題認識していただくことも、契約と継続利用に繋げる必要なプロセスですね。

ただの「営業」ではなく「ゴールへの伴走者」になる

また、ゴールの設定においては、「いつ・どういう状態か」を明確にし、そこから逆算したスケジュールを最初に引いておくことが重要です。

例えば、来年の春に「課題解決に対して動き始めたい」のか「運用を開始したい」のかによって、検討のスケジュールが大きく異なってきます。

ある調査結果では、BtoBサービスにおいて57%のお客様は商談前に導入の意思決定を済ませており、商談では「本当に運用できるか」「サポート体制はしっかりしているか」といった部分を見極めていると言われています。

その意味では、商談をクロージングまで持っていくのは、プロジェクトと同じなんです。ゴールに対してマイルストーンを置き、お客様と歩調を合わせて進めます。

その認識が合っているかどうかで、「この検討って進んでいますか?」と連絡した時に、「営業」だと思われるのか「ゴールを実現するためのサポート」だと思われるのか、お客様の受け取り方が全然違うと思うんですよね。

また、初回訪問から成約までのリードタイムは目標として追っていません。

ですが、ゴールから逆算したスケジュールの認識が擦り合ってさえいれば、お客様の方から「進んでいなくてすみません」と連絡をいただくこともあります。結果として、お客様の意思決定も早まるのかなと思っています。

一方で、最初にスケジュールを引いていても、予算や他ツールの検討などを理由に、商談の過程で優先順位が下がってしまう場合もあります。

その時は、その理由や再検討の時期などをヒアリングした上で「わかりました、ではそれまでご連絡は控えますね」と言い切ったりもしますね。

というのも、営業されたから導入するのではなく、お客様が自らの意思で導入したいと思わなければ、結局継続して使ってもらえないんです。

SmartHRの継続利用率が99%以上を維持できるか、導入後の運用をサポートするCSやチャットサポートチームに大きな負担がかからないかどうかも、商談にかかっていると言えると思います。

営業チーム全体の質を高めるため、入社時研修と勉強会を実施

分業によって営業全体としての組織力が上がった一方で、自分のチーム以外の業務がわかりづらくなってしまうという課題はありました。

そこで現在は、入社後の約2ヶ月にわたり、営業チームの各ポジションを一通り経験するという研修を行っています。

各ポジションでどのようにお客様と接点を持っているのか、実際にどのような課題を抱えているのかを、実務を通じて学んでもらうんです。すると共通言語が理解でき、研修後もチームを越えたコミュニケーションを取りやすくなっています。

さらに、営業の質を高めるための勉強会も、適時開催していますね。この講師は誰かを固定するのではなく、色んなメンバーがテーマを変えて担当しています。

営業って人それぞれ色々なやり方があって、正解がないからこそ属人化しがちだと思うんですね。

そこで私の場合は、メンバーが「お客様に聞かれて困ったこと」をテーマに話をしました。私の回答を聞いてしっくりくるものがあれば、参考にしてもらう程度でいいと考えています。

また、この場はすべての人にオープンになっているので、開発やマーケティングのメンバーが見に来ることもあり、営業メンバーがどうお客様と接しているのかを知る機会にもなっています。

1人ひとりの営業力を高めることが、組織全体を強くする

SaaSの営業って「この機能ありますか?」と言われて、それがない場合にどう答えたらいいのか、という悩みがあったりしますよね。

その際に、営業がどう答えるかって結構重要だと思っていて。ただ「ないです」と答えるよりも、お客様が何を期待していて、それに対して適切な温度感で答えられるかが大切です。

例えば「SmartHRには給与計算とか勤怠管理の機能ってないんですか」と聞かれた際には、「私たちはアナログな部分の多い人事労務の分野に特化して開発しています。ですが既存の優れた他サービスと連携して使っていただくことで、利便性を高められます」とお答えします。

こうして開発の思想とセットでお伝えすると、お客様も納得していただけることがあります。

このように、営業は体制を整えるだけでは不十分で、結局は1人ひとりの営業力を高めていくことが、組織全体を強くすると考えていて。

そのためには、マネージャーであっても自分のやり方を押し付けずに、それぞれのやり方でしっかり考え、売上を作られるようにしていくことが大切だと思っています。

今後も仲間を増やしながら、メンバー1人ひとりが業界全体で見ても活躍できる人材になれるよう、組織力と個人の営業力を高めていきたいと思います。(了)

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