• Repro株式会社
  • Customer Success Manager
  • 佐々木 翼

「サービス活用率10%」からの逆転劇。Repro流カスタマーサクセスの始め方

〜「誰もやったことがない」という状況からカスタマーサクセスチームを立ち上げ。オンボーディングプランを確立させ、解約率を0.7%にまで改善した事例〜

サービスを顧客に導入してもらったものの、定着せずに解約に至る…という事態を防ぐのが、カスタマーサクセスの役割のひとつだ 。

モバイルアプリの成長支援パートナーとして、ツール提供とコンサルティングを行うRepro株式会社。

同社では、初期設定に一定の時間がかかるというサービスの性質上、導入後に活用が進まず、多くの顧客が解約リスクの高い状況に陥っていた。

そこでまず、全クライアントへ訪問し、活用が進まない理由と、それを解消する方法を検証。

その後、カスタマーサクセスチームを立ち上げ、2ヶ月間で4回のMTGを行うオンボーディングプランを構築したところ、レベニューチャーンレート(※)を0.7%にまで下げることに成功したという。

※レベニューチャーンレート:一定の期間で生まれた収益の総額に対して、その期間内で失った収益の比率のこと

今回は同社にて、カスタマーサクセスマネージャーを務める佐々木 翼さんに、カスタマーサクセスチームの立ち上げについて、お話を伺った。

▼アプリマーケティングツール「Repro」

解約リスクの高い顧客が続出…!→ 半年かけ、全顧客へ訪問

弊社では2015年4月に、アプリ内でのユーザー行動を分析した上で、プッシュ通知などを運用できるモバイルアプリの成長支援ツール「Repro(リプロ)」をリリースしました。

リリース後、スタートアップから大企業まで、様々な企業に導入いただいたのですが、2016年の末の時点で、使われている機能がほぼないということが判明しまして…。

というのも、Reproは導入後、プッシュ通知などの施策を実行する前に、いくつかの初期設定を行う必要があるんですね。

ただ、僕たちからのフォローが一切なく、開発の知識も必要な作業になるので、クライアントの立場からすると何をすれば良いのかわからず、放置されてしまっていたんです。

ほとんどのクライアントが「全く使っていない」という状況で、活用できていると言える顧客は10%ほどでした。

そこでまず、3〜4人で月に150〜200件くらいのアポをとって、全クライアントへ訪問したんです。

この期間はとても泥臭く大変でしたが、地道に顧客の声を集め続け、約半年間かけて「何が課題なのか?」「どのようにすれば活用が進むのか?」を検証していきました。

「ゴールイメージの共有」と「その場で一緒に設定」がポイント

このヒアリングの結果、多くの顧客は導入初期の段階でつまずいており、一度そうなると、全く使わなくなってしまうことがわかりました。

そしてその主な理由は、「様々な業務がある中で、Reproの活用を進める優先順位が低い」「方法がわからないため、初期設定ができていない」というものでした。

そこで、これらの課題を解消するために、4回の面談を通したオンボーディングプランを作りました。

▼実際のオンボーディングプラン

まず、最初の面談では、お客様のアプリが目指す成長のロードマップをヒアリングした上で、その達成にReproが役に立てると感じていただけるようなコミュニケーションを行います。

具体的には「お客様の場合、このKPIが重要ですよね。これを改善するには、このようなボトルネックがありますが、Reproを活用することで、こう達成することができます」という風に説明していきます。

このように、初回の面談を単なるサービスの機能説明で終わらせず、ゴールイメージを共有した上で、ワクワク感を抱いてもらうことが、Repro活用の優先度を下げないためのポイントです。

さらに言うと、クライアントのご担当者が個人目標として追っている、継続率や課金率などの数値の達成に、Reproが貢献できるというイメージを持っていただくことが重要です。

また、初期設定でつまずくことを解消するために、プッシュ通知の下書きをその場で作ってしまい、宿題としてそれを次回の面談までに配信していただくようにしました。

ここでは「宿題をお願いしていたけれど放置されてしまい、オンボーディングのスピード感が出ない」となることを防ぐために「宿題が完了したら、次来ますね」というコミュニケーションをとっています。

パートナーとして、一緒に成果を上げることを目指しているので、クライアントだからといって迎合せずに、ゴールへ向かうスタンスを大切にするようにしました。

このように、Reproを活用することの目的意識をしっかりと持っていただくこと、そして、つまずきやすい初期設定を面談時にやってしまうことで、導入がスムーズに進むように改善していきました。

施策結果の振り返りを続けて、PDCAを回す考え方を定着させる

そして、2回目の面談では「プッシュ通知の配信結果をどうやって見るのか?」「その結果をどのように解釈するのか?」をレクチャーしていきます。

具体的には、一緒に管理画面を見ながら、プッシュ通知の開封率やユーザーのリテンション率がどれ程改善したのかを説明します。

その上で、今度はさらに高度なチャレンジとして、アプリユーザーの属性ごとに最適なプッシュ通知を使い分ける「シナリオ別の施策」の実行準備を行い、次の面談までに実施していただきます。

そして、3回目の面談では、その結果を他社アプリの事例と比較して、「ここは伸ばせる余地があります」という話をします。そこから具体的な改善施策を考えて、次の面談までに実行していただきます。

最後に4回目の面談では、それまでの施策と結果を振り返って、アプリマーケティングのPDCAの回し方をレクチャーしていきます。

こうして4回の面談が終わると、Reproの使い方だけではなく、施策の振り返りと次の施策の企画方法がわかるようになります。するとその後は、クライアントだけで自走できるようになっていくんですね。

このオンボーディングを、クライアントが一定のモチベーションを保てると我々が考えている「導入後2ヶ月間」の期間で実行していきます。

「ぶっちゃけ、成果出るの?」を聞いてもらえる関係作りが重要

また、導入支援が終わった後も、クライアントの活用状況をモニタリングして、解約兆候が見られたら適切にフォローしていくこともカスタマーサクセスの役割です。

Reproの場合は「プッシュ通知を送っていない」「週のセッション時間が20分以下」などが解約兆候となるため、Salesforceに入っているデータを「Re:dash(リダッシュ)」で可視化して、クライアントの動きをモニタリングしています。

ただ、予算がなくなってしまったり、担当者が変わってしまうなど、外部要因による解約パターンもあります。

ここが一番難しくて。Reproの活用度であれば、データをトラッキングしていれば把握できるのですが、外部要因をつかむことはできないんですね。

そのために、クライアントと人間関係が構築できていることがものすごく重要です。

それができてれば、解約に至る前に「ぶっちゃけ、これやって成果出るの?」「予算が減って困ってるんだよね」みたいなご相談をしていただけるようになり、適切なフォローをとれるようになります。

そして、信頼してもらうには、1回目の面談で「この人はわかってるな。大丈夫そうだな。」と思ってもらうことと、オンボーディングのフェーズで結果を出せるかどうかが大切です。

それらがクリアできると「実は来週から広告を打とうと思ってるんだけど」みたいな相談がくるようになり、案件化させることができます。

残念ながら、そのアプリ自体が上手くいかなかった…というケースもありますが、また別のアプリを立ち上げる際に、改めてご相談をもらえるような関係を作ることを大切にしていますね。

CREやもくもく会を導入し、多様な支援方法を模索中

また、弊社では、サービスの成長に対して、なかなかカスタマーサクセスのリソースの増強が追いついていないため、少ないリソースで多くの顧客を支援する工夫もしています。

そのひとつが、お客様に発生した技術的な課題に対して、遠隔でサポートするCRE(※)の導入です。

※Customer Reliability Engineering : 顧客信頼性エンジニアリング

テクニカルな質問についてはそちらで対応することで、カスタマーサクセスのメンバーが調査に追われる時間をなくして、オンボーディングに集中できる体制を作っています。

また、4月から、クライアントにご来社いただいて、その場で作業をしてもらう「もくもく会」を始めました。

ユーザーさんとしては、Reproの設定作業をしようしようと思っていても、なかなかできていない…という課題があるのですが、来ていただくことで、作業する時間を無理やり確保できるんですね。

すると「ながらRepro」をやめて、一気に進められますし、わからないことがあれば、すぐに聞けるという点をご好評いただいています。

また、そこでCREのメンバーと対面で話す機会が生まれるので、その後のサポートがかなりしやすくなるというメリットもあります。

このように、カスタマーサクセスが顧客先に訪問して行う支援に限らず、様々なフォロー方法を増やしていくことができればと考えています。

「ReproでCSやってました」で転職ができるチームへ

このような取組を通して、カスタマーサクセスを立ち上げてから約1年間で、当初、兼務含めて3人だったチームメンバーは専任で5人まで増えました。

また、活用率10%の状況から、レベニューチャーンレートを0.7%程にまで改善することに成功しました。

今後は、クライアントを支援する中で、どこにも負けない世界一のCSを作っていくことができればと考えています。そのためにも、全員が自分のやりたい仕事をやって、結果が出せているというチームを作りたいですね。

というのも、カスタマーサクセスは業務範囲がとても広くて、弊社だとデジタルマーケティングや開発の知識が必要ですし、セールストークもできないといけません。

あるいは、NDAがどうだとか契約の話も理解しておかなければならないですし、顧客の声を拾って、プロダクトへフィードバックすることも求められます。

このように、様々な知識やスキルが必要で、且つ、色々な人と調整をするハブのような役割を担う力が必要です。

その一方で、カスタマーサクセスという概念自体が新しいので「誰もやったことがない」という状況から始まる分、とても難しいんですよね。

ただ、とても幅広いスキルが身につく職種だと思うので、育成体制もより強化していきたいです。

そして、転職する時に「Reproでカスタマーサクセスをやってました」って言ったら、即採用されるような、そんなチームにしていきたいですね。(了)

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