- コラボレーター
- 加留部 有哉
【Google、Netflix他】入社〜退社まで。従業員体験(EX)を高めるフィードバック運用
今、組織をより良くする上で、「フィードバック」が改めて重視されているように感じます。
日本でも、1on1ミーティングを取り入れたり、組織サーベイやピアボーナスを導入したり、評価制度を作り直したり…といった企業が増えています。
その共通点は、「フィードバック」を通じて、会社を従業員にとって「より良い体験」ができる場所に持続的に変えていこうというものです。
そこで今回は、海外のAirbnbなどのユニコーン企業や、GoogleのようなIT巨匠たちの「強いフィードバック文化」について見ていこうと思います。
彼らは、従業員体験(EX)に焦点を当ててフィードバックを活用し、1人ひとりがパフォーマンスを上げられる仕組みを作っています。
【今回紹介する「フィードバック」の仕組み】
- 入社オンボーディングにおけるフィードバック
- 日々の業務に対するフィードバック
- 社内制度に対するフィードバック
- マネジメントに対してのフィードバック
- 退社時のフィードバック
入社オンボーディングにおけるフィードバック
従業員の体験は、入社前から始まっています。その時の体験がより良いほど、すぐに会社のカルチャーに馴染み、パフォーマンスを発揮してくれる可能性が高まります。
実際、Airbnbなどの最先端の企業では、オンボーディングプロセスにかなりの力を入れています。
▼入社した日にメンバーの写真が飾られる
オンボーディングプロセスとは、新しく会社に加わった仲間を、組織の文化やルール、仕事の進め方などに早く馴染ませ、ストレスなくパフォーマンスを出してもらうためのプロセスです。
例えば、以下のようなことを実施します。
- 入社前に人事やマネージャー、チームメンバーを紹介する
- 入社当日を、思い出に残る日にする仕掛けを用意する
- 入社してからの短期的なスケジュールを明確にする
- 気持ちよく働ける環境を用意する
- 業務における「期待」を早期に設定する
- 会社の文化を早く、繰り返し伝える
弊社でも、入社当日はSlackで「入社してくれてありがとう!」というメッセージを送り合ったりしています。
Airbnbでは、オファーを受けると、最近入社したメンバーと一緒にAirbnbの価値やビジネス戦略、カルチャー、仕事の仕方などを共有される機会があります。
このように、新しく入ったメンバーにパフォーマンスを出してもらうために、できることはたくさんあります。
重要なのは、このプロセスについてフィードバックをもらい、改善を重ねていくことです。
例えばオンボーディングに力を入れている企業では、例えば以下のような質問を用いてフィードバックをもらい、プロセスを改善しています。
- 入社オリエンテーションに足りないトピックがあると思いますか?
- 新入社員が受け取るべき、最も重要な情報は何だと思いますか?
- マネージャーからは、定期的にパフォーマンスと進捗についての有効なフィードバックを受けていますか?
- マネージャーは、チームの目標をわかりやすく伝えてくれていますか?
- マネージャーは、あなたの仕事と成果をサポートしてくれていますか?
- あなたは、自分の仕事がどのように評価されるかを理解していますか?
- あなたの仕事量(目標)は適正で、達成可能なものですか?
- あなたには相談できる同僚がいますか?
- チームに歓迎され、その一員であると認識できていますか?
- 自分の役割が、組織の目標にどのように貢献しているのか理解していますか?
※内容はこちらを参考に作成しています。
以上のようなアンケートを行い、5段階で答えてもらうことによって、オンボーディングプロセスのみならずチーム自体の改善までを行うことが可能です。
日々の業務に対するフィードバック
また最近では、半期に一度、年に一度の評価やフィードバックの頻度を見直す企業が多く出てきています。
例えば、Adobeでは年間の評価面談を完全に廃止し、代わりに週に2〜3回、上司からのフィードバックを受ける機会を用意しています。
▼Adobeのリアルタイムフィードバック制度「チェックイン」
マーケティング業界の大御所Hubspotでも同様に、「目標達成の障壁を省き、助け合う」ために頻繁にフィードバックする機会を設けています。
このように、従来型の制度を廃止する大きな理由のひとつが、フィードバックの有効性の問題です。
フィードバックの頻度が半年に一度しかなければ、それらはほとんど忘れ去られた過去の仕事に対してなされるため、次の目標達成への影響が弱くなってしまいます。
また、長い間隔でのフィードバックは納得感が得られず、不満を生み出す可能性もあります。
頻繁に継続的なフィードバックをすることで、チームの改善や個人の成長に繋がり、従業員体験が改善します。
例えば、Teambitというツールを使えば、Slackなどのコミュニケーションツールから「フィードバックがしたいタイミング」でフィードバックを送れ、欲しい時にフィードバックをリクエストすることもできます。
▼フィードバックのリクエストがメンバーから届く
▼フィードバックをいつでも送ることが可能
ツールはあくまでも道具に過ぎないのですが、肝心なのは頻繁なフィードバックをしやすくするための組織文化を作ることです。
HubspotやFacebookではフィードバックを「ギフト(贈り物)」と捉えて、その文化を根付かせています。
また、フィードバックがされやすく、しやすいフォーマットや質問、体制を事前に用意しておくことも大事です。
Hubspotのエンジニア組織では基本的なフィードバックのトピックを「今週達成した目標は何か」「来週の目標は何か」「今直面している課題はなにか」の3つに設定し、これらの話題について深堀りをしてフィードバックをしています。
またNetflixでは、「Stop(やめるべきこと)」「Keep(続けるべきこと)」「Start(始めるべきこと)」の3つをフォーマットとして用意しています。
先ほど紹介したTeambitでも、フィードバックのリクエスト時に質問を選ぶことができます。
▼仕事の質問をするのか、成長に関してなのか
1on1を全社に導入し、こうした機会を強制的に作るのも効果的でしょう。
社内制度に対するフィードバック
社内制度や福利厚生は従業員の体験をより良くするために欠かせないものですが、それらはまた、フィードバックをもらう絶好の機会と言えます。
AppleやUber、Spotifyなどでは、HRチームが定量的なデータだけでなく、定性的なフィードバックも活用しながら福利厚生や社内制度を作り上げています。
▼AppleのHRチームの求人。従業員体験の向上に焦点を当てた活動が求められる(※画像は一部抜粋)
彼らはアジャイルHRと呼ばれる、データと仮説を用いながら、課題を特定し、解決するための施策を少しずつ素早く進める手法を取っています。
※アジャイルHRについての詳しい記事はこちらから
そのために、既存の社内制度や福利厚生についても、定期的なアンケートなどを実施してフィードバックデータを集め、問題を特定できるようにしています。
また、新しく制度を作る際にも、作りながらフィードバックをもらい、修正を繰り返して制度を作り上げています。
こういったフィードバックは、GoogleフォームやTypeformを用いるか、1on1を行うことで簡単に集めることができます。
▼簡単にビジュアライズなアンケートを作れるTypeform
マネジメントに対するフィードバック
Googleが取り入れているのが、マネージャーへのフィードバックです。
普通はマネージャーからメンバーへのフィードバックが一般的ですが、Googleではその逆も積極的に取り入れています。
マネージャーへフィードバックすることで、メンバーが「言いたいことを言える環境」を作り出すことができます。
また、マネージャーが自分自身のマネジメントを改善することで、それがチームのレベルアップにもつながります。
▼Google Formを使ってマネジメントについてのフィードバックを収集
実際に、Googleで用いられているフィードバックのフォーマットを見てみましょう。
ほとんどの質問は5段階で回答するようになっており、答えづらい質問は回答を飛ばしても良いようです。
【Googleのマネージャーへのフィードバック項目】
- マネージャーは私の仕事のパフォーマンスを改善するための具体的なフィードバックをしてくれます。
- マネージャーは、マイクロマネジメント(無関係の部分にも踏み込んでこようとする)しません。
- マネージャーは、「人」と「人」として自分と向き合ってくれます。
- たとえ、マネージャーと価値観が違っても押し付けずに評価してくれます。
- マネージャーは成果やアウトプットをチームの優先すべきことにしています。
- マネージャーは、その上のマネージャーからの情報を定期的に共有しています。
- 最近の半年以内にマネージャーと有意義なあなたのキャリアの話ができています。
- マネージャーはチームの目標についてわかりやすく共有してくれています。
- マネージャーは、自分をマネジメントするために必要な専門知識を持っています。
- あなたはマネージャーを違うチームのメンバーにおすすめすることができます。
- マネージャーとしてのパフォーマンスに満足しています。
- マネージャーに何をしておくことをおすすめしますか?
- マネージャーが変えるべき点はなんですか?
※内容はこちらを参照しています。
退社時のフィードバック
従業員が会社での体験を終える時が、退社してしまう時です。
残念な話ではありますが、従業員の退職は、会社をより良くするためのフィードバックをもらう絶好の機会でもあります。
また、気持ちよく退社してもらうことで、会社の評価が上がったり、それによってまた戻ってきてくれる可能性も高まります。
理由があって退社になったのだから有効なフィードバックをもらえるわけがない、在籍中にもらえなかったのなら意味がない、と思うかもしれませんが、第三者的な公平性を持った人だからこそ、良いフィードバックが得られる可能性もあります。
特に、辞めでも感じる組織の良いところや、逆に退職の根本の理由となった会社の弱点などがわかるようになります。
参考までに、ExitProというツールを使うと、退職時のプロセスをきっちりと管理して従業員を送り出すことができるだけでなく、フィードバックも自動化してくれます。
▼ExitProで退職オフボーディングプロセスを管理
退職時のフィードバックでは、以下のようなことを聞いてみましょう。
- 仕事の成果を残すために必要なリソースとサポートはありましたか?
- 求職者にこの会社をお勧めしますか?理由も併せて教えてください。
- あなたに退職を思いとどまらせるために、何か会社ができたことはありますか?
- あなたのマネージャーとあなたの関係はどうでしたか?
- 会社を改善するために最も必要なことは何ですか?
まとめ
いかがでしたでしょうか?
フィードバックは様々なところで活用することができますが、フィードバックへ持つ印象をポジティブにし、やりやすくなるような仕組みを持たなければなりません。
働き方改革が叫ばれる中、より従業員が働きやすい組織を作るためにも、フィードバック文化を作り、継続的に組織を進化させていきましょう。
最後に、メンバーのパフォーマンスをあげたい方へ
当媒体SELECKでは、これまで500社以上の課題解決の事例を発信してきました。
その取材を通して、目標を達成し続けるチームは「振り返りからの改善が習慣化している」という傾向を発見しました。
そこで「振り返りからの改善」をbotがサポートする「Wistant(ウィスタント)」というツールを開発しました。
「目標達成するチーム」を作りたいとお考えの経営者・マネージャーの方は、ぜひ、チェックしてみてください。