- コラボレーター
- 加留部 有哉
AppleやUberも実践!組織を進化させ続ける「アジャイルHR」を始める4ステップ
自分の会社が「時代遅れ」の組織だと感じたことはありませんか?
急速なテクノロジーの変化や顧客ニーズの多様化によって、企業は、これまで以上に常に進化し続けなければならない時代になりました。
そして、その中でも最も大きな変化を求められているのが、会社の基盤を整えるHRチームです。
彼らは時代にあったサービス・商品を会社が提供できるように、従業員のパフォーマンスを常に最大化させるための社内制度を整える必要があります。
その流れの中で注目されているのが「アジャイルHR」という概念です。
アジャイルHRというキーワードは、2015年からすでに海外で注目を集めています。HR Trend Institute の選ぶ「HR Trend Institute」でも、堂々の1位で選ばれています。
アジャイルという言葉自体は、開発手法のひとつとして親しまれているかと思います。
アジャイルというのは「すばやい」「敏捷」という意味です。そしてアジャイル開発においては、短い開発期間を繰り返すことで、手戻りのリスクなどを最小化しながら開発を進めることが求められます。
Apple社のとあるHRチームの求人では、下記のような要件が記載されています。
- ストーリーを伝え、他者に影響を与えるデータ分析能力
- ビジネス効率、生産性、スケーラビリティ、顧客体験の向上に焦点を当てたプロセスリエンジニアリング
- プロジェクトの軌道修正、テスト、本格展開をスケジュール通りに回した成功体験
▼AppleのHRチームの求人(※画像は、要件の一部を抜粋)
これだけでは、HRチームの求人だとわからないくらいですね。
なぜ、これからのHRチームにアジャイル的発想が必要なのか。そしてそれをどうやって実践していくべきなのか。
今回の記事では、アジャイルHRを取り入れることによって、組織を連続的に変えて行く方法を見ていきたいと思います。
▶︎目次
- 【前提】アジャイル思想をHRに導入すると何が変わる?
- 【STEP1】HRチームが取り組むべき課題の特定をする
- 【STEP2】集めるべきデータの特定とデータ収集
- 【STEP3】データを解釈し、小さく解決策を実行する
- 【STEP4】結果の検証
【前提】アジャイル思想をHRに導入すると何が変わる?
「Agile HR Community」では、アジャイルHRを実践するためのヒントとして、下記の10要素を挙げています。
- 実験と適応学習
- HRチームのためのアジャイルフレームワーク
- エビデンスを軸としたHR
- 透明性
- デジタル・ITの活用
- リーンスタートアップ
- 共創
- 仕事を楽しむ姿勢
- バリューの共有
- 従業員の良い体験
ここから、アジャイルHRのキモは、サービスやソフトウェアを作るように、課題に対する仮説を持ち、データを用いて少しずつ組織を作っていくことだとわかります。
SpotifyのHRチームの求人情報には、求められるスキルとして「急速に変化するニーズに対応するために、優先順位をしっかりとつけ、柔軟に対応できる。また自己主導であり、交渉力と分析力を持っていること」とあります。
▼Spotifyの求人情報。HRチームだが、データの分析力も求められる
アジャイルHRでは、従来のように長い時間をかけてひとつの社内制度や仕組みを作り上げる、ということはしません。
できるだけ小さなチームで細かく実験を繰り返し、データを用いて、提供する従業員体験に間違いがないか確認していきます。
そうすることで、問題解決に対するスピード感が増すだけではなく、失敗のリスクも減らすことができます。
市場もテクノロジーも、働き方も急速に変わる中で、長期間でひとつのモノを作り上げるのはリスクが高くなります。なぜならば、作ったあとには既にニーズに翳りが出ている可能性があるためです。
アジャイルHRを実践すると、状況に応じて優先順位を柔軟に変えながらモノづくりを進めることができるため、こうした事態を防ぐことができます。
【STEP1】HRチームが取り組むべき課題の特定をする
アジャイルHRで組織を改善していくためにまずすべきことは、組織が抱えているビジネス上の課題を特定することです。
どんな目的で、どんな課題を解決するのかをまず明確にしなければ、素晴らしいアイデアであっても組織に必要でないかもしれません。
日産のカルロス・ゴーンCEOをはじめ、多くの外国人役員の元でビジネス改革や社内変革を手がけた柏木 吉基さんは、下記のように言っています。
データ分析の前に、見るべきものとは?エグゼクティブを説き伏せる、データ分析術 | SELECK
データ分析は、結果の裏側に潜む様々な問題の原因を探り、解決策を出すために行うものです。結果のデータを眺めるだけでは、何も答えは出てきません。あるべきプロセスは逆です。
仮説を立てた上で、その仮説の正当性を検証するためにデータを活用します。つまり、「仮説からデータ」という流れが正しいんです。
ビジネス上の課題の仮説を立てるためには、すべてのチームの目標と進捗が公開されていると良いでしょう。
特にOKRで目標管理をすることは非常に効果的です。会社全体の目標、チームの目標、個人の目標が紐づいているので、課題の仮説を発見しやすくなります。
▼OKRを導入すれば、目標の紐付きが一目瞭然
例えば、ある営業部門の売り上げ目標で、AチームとBチームで進捗に大きな差があった場合、その2チームには何か違いがあることに気づくことができます。
その違いは、サービスの知識の差によって生まれることもあれば、チーム間のコミュニケーションが円滑になっていないことから生まれているかもしれません。
▼OKR管理ツールのPerdoo。チームの目標を視認しやすい
このように、目標が公開されていれば、HRチームが組織のビジネス上の課題を特定しやすく、解決した時には、顧客への価値提供や売り上げにも繋がります。
仮説が出来たら、データを見てその課題の仮説が正しいかの確認もしましょう。
【STEP2】集めるべきデータの特定とデータ収集
解決すべきビジネス上の課題を特定できたら、解決策を出すために、どのようなデータを集めるべきかを特定します。
例えば、試用期間中に離職率が高く採用コストが高くなってしまっているという課題が特定されたとします。
その課題を解決するためには、どのような行動や経歴の人が離職率が高いのかのデータを集め分析することが必要になります。
最先端の企業では既に、HRチームにデータを扱う能力が求められています。例えばUberのHRチームの求人には、下記のような要件があります。
- データを深掘りすることで戦略を推進し、行動し、意思決定をすることができる高度で実務的な分析能力を有する。
- データ分析ツールを高度に使いこなすことができる。スプレッドシートは必須で、SQLやPython、Rを使えればなお望ましい。
▼UberのHRチームでは、高いデータ分析能力が求められる(※画像は、要件の一部を抜粋)
こういったデータを集めるためには、タレントマネジメントシステムや組織サーベイツール、1on1、360度フィードバックを利用しましょう。
例えば、組織サーベイツールを使えば、従業員からのフィードバックを簡単に定期的に集めることができます。
海外ではサーベイツールとしてOfficevibeやCulture Ampが有名で、SlackやNIKEなども利用しています。
▼Officevibeを使って週に1回、従業員に簡単なアンケートを実施
▼Culture Ampのデータ集計画面
また、1on1や360度フィードバックといった手法も、組織に関する定性的なデータを集めるには有効です。
例えば1on1のコミュニケーションログをきちんと残しておくことで、課題の解決策を作る時のデータとして活用することができるかもしれません。
▼Lead Honestlyでは1on1の結果を記録可能
【STEP3】データを解釈し、小さく解決策を実行する
次に、データを解釈し、スピーディに、そして小さく解決策を実行していきます。
アジャイルHRでは、解決策を素早く作り、実験を繰り返してその解決策の有効性を確かめていきます。
そうすることで、柔軟に解決策を作ることができ、失敗するリスクも減らすことができます。
また、スピーディに解決策を作るためには、「リーンキャンバス」のテンプレートを取り入れることが有効です。
リーンキャンバスとは、新規事業のビジネスモデルを立案するためのフレームワークです。
▼リーンキャンバスのテンプレート
具体的には、上の画像の9個の要素を考えることで、短時間で簡潔に自らの提供価値を整理していきます。
実際、SELECKで取材した株式会社アラタナでは経理財務チームが業務内容をリーンキャンバスのテンプレートを応用して整理しています。
▼リーンキャンバスのように整理した、経理財務グループの業務
また、エンジニアライクなプロジェクトマネジメントを導入することで、小さく解決策を実行することができます。
アジャイル開発におけるプロジェクトマネジメントでは、エンジニアは、プロダクトの機能を優先順位付けて並び替え、短いスパンで計画を立てます。
また、プロジェクトの状況や進め方に問題がないか、定期的にコミュニケーションをとって確認します。
その他にも、朝礼などを通じて毎日の簡単な進捗共有をすることで、問題の検知と軌道修正を容易にするケースも多いです。
HRチームでもこのようなプロジェクトマネジメントの手法を取り入れることで、短期間で成果を上げやすくなります。
▼「Trello」を使った、HRチームでのカンバン利用例
【STEP4】結果の検証
最後に、最初に立てたビジネス上の課題が解決できたのかを確認します。
データを用いて、どれだけ数値的なインパクトがあったのかわかるようにすることが望ましいです。
これまでのステップで説明したような手法を用いれば、施策ごとの振り返りも素早く効率的に行うことができますね。
時代が変わる中、組織を少しずつ進化させていくためには、アジャイル開発の思想を取り入れることはかなり効果的だと感じました。
組織の目標や従業員に関するデータが揃えて、課題を特定し、小さく実験を繰り返すことがこれからのHRチームの在り方なのかもしれません。
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当媒体SELECKでは、これまで500社以上の課題解決の事例を発信してきました。
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