「チームビルディング」って何するの? アクティビティや国内外の事例【6社】を紹介!
チームビルディングとは、「チームのメンバーが、ひとつのゴールに向かって進んでいくための組織づくり」のことです。
過去にSELECKでインタビューをさせていただいた、株式会社エウレカのCTO室長である梶原 成親さんはこう話します。
人は、集まっただけではチームではありません。
共通認識をしっかりと持ち、課題を自ら解決できるようになってこそ、チームと言えるのだと思います。
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同社では、チームビルディングに取り組んだ結果、チームの「自己組織化」に成功しました。
チームの課題を、チーム自身で考えられるようになり、課題解決のスピードが向上したのです。
…とは言え、そもそも「チームビルディングって結局何なの? 何するの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、チームビルディングについて、その目的や手法を、国内外の企業の事例【6選】を見ながら解説していきます。
<目次>
- コカ・コーラに学ぶ、チームビルディングのためのアクティビティ例
- なぜチームビルディングが必要か?「タックマンモデル」で解説
- 会社をひとつのチームにするための「ビジョン・ミッション」の重要性
- チームの相互理解を促進する、「1on1ミーティング」の事例
- チームの目的を全員が理解するための、マネジメント体制とは
コカ・コーラに学ぶ、チームビルディングのためのアクティビティ
まずは、わかりやすい事例として、コカ・コーラのとあるチームが行っている「Escape Room: Jewel Heist」を紹介します。
これは日本で言う「脱出ゲーム」に近いものです。
まず、20名の従業員が会議室などの部屋に集められます。
そこには様々なヒントやパズルが隠されており、彼らはそれを解くことで、2時間以内に盗まれた宝石を取り戻すという課題に立ち向かいます。
純粋に楽しいゲームのようにも思えますが、実はこの中に、チームビルディングに必要なスキル・経験を身につけるための仕掛けがほどこされています。
例えば、
- 20名という大人数のチームで動かなければならないため、メンバー同士の相互理解や一体感が重要になる。
- 隠されたヒントのうちの1/3は「要らない情報」であり、リソースマネジメントの最適化が求められる。
- 2時間という短い時間を最大限に活かすための、タイムマネジメントスキルが必要になる。
- 素早くパズルを解くために、メンバー同士の適切なコミュニケーションが求められる。
といったことです。
※参考記事はこちら
他にも、チームビルディングのためのアクティビティとして有名なものには以下のようなものがあります。
詳細は省きますが、手軽にできるものを集めましたので、気になった方はぜひ調べてみてください。
【Game of Possibilities】
いわゆる「ジェスチャーゲーム」です。グループ内の1名が与えられたお題をジェスチャーだけで表現し、残りのメンバーがお題を当てます。
【Purpose Mingle】
チームミーティングの前に、全員が、参加者1人ひとりに対して「このミーティングであなたに何を期待しているのか」を伝え合います。
【Coin Logo】
全員が手持ちのコインと身の回りにあるもの(ペンなど)を使って、短い時間で「自分のロゴマーク」を机の上に作り、その背景を互いにシェアします。
【The Perfect Square】
床にロープを円状に置き、その周りにグループで輪になって立ちます。全員が目隠しをして一度その場から数歩離れてから、目隠しをつけたまま、全員でロープを「真四角に」することを目指します。
【Truth and Lies】
グループで輪になって座り、誰かが3つのエピソードを話しますが、1つに嘘を混ぜます。残りのメンバーがその嘘を当てます。
なぜチームビルディングが必要か?「タックマンモデル」で解説
では、このようなアクティビティを行う必要があるのではなぜでしょうか?
それを考える上で参考になるのが、20世紀の心理学者タックマンが提唱した「タックマンモデル」です。
タックマンモデルでは、チームビルディングは「お互いを全く知らない状態」である「形成期」からスタートします。
そこから更に3つのプロセスを経て、チームは期待通りに機能するようになり、最後には「解散」します。
このように、目標達成に向かって一丸となる強いチームを作るためには、チームを意図的に成長させることが必要なことがわかります。
先ほど紹介したようなアクティビティは、タックマンモデルで言うところの「統一期」「機能期」へとチームを導く手助けを行います。具体的には、
- チーム内のコミュニケーションを活性化する
- チームメンバーの相互理解が進む
- チーム内で果たすべき「役割」への意識が高まる
- マネジメントスキルが向上する
といった効果が期待できるのです。
また、アクティビティを用いるのではなく、組織づくりの施策を通じても、チームビルディングを行うことができます。ここから先は、その事例を紹介していきます。
会社をひとつのチームにするための「ビジョン・ミッション」
「よなよなエール」でお馴染みの株式会社ヤッホーブルーイングはかつて、組織として「どん底」の状態にありました。
社内の雰囲気が非常に悪く、売上目標を達成しても多くの社員が「白けて」おり、離職率も高かったそうです。
そこで同社代表の井手 直行さんは、座学やアクティビティを通じてチームで1つのことを成し遂げるプロセスを学ぶ「チームビルディングプログラム」に参加しました。
そこで「無理だと思えることをチームで実現していく」体験に衝撃を受け、同様に7人のメンバーもチームビルディングに関する研修を受けました。
しかし、それだけではうまくいかなかったのだそうです。
なぜならば、チームの重要性を学んでも、会社として拠り所とするものがなければ、チームとしてひとつになることが難しかったからです。
そこで同社では、以下の手順で組織づくりに取り組んでいきました。
- 組織のミッション、ビジョンを、上位概念から1つひとつ作成
- 自分たちにとっての「当たり前」である、組織文化を言語化
- 社内の「価値観」を統一するための行動規範を決定
- 会社が大事していることを明文化した「ヤッホーバリュー」を作成
(これらを定めたことで)納得して残ってくれたメンバーもいる一方で、「やっぱりこんな会社は嫌だ」と去っていく人もたくさんいて、正直辛い時期でしたね。
でも、組織が同じ場所を目指して一枚岩になるには、途中で辞める人がいることも受け入れなければなりません。
一方で、その後新しく入って来た人は、バリューに共感した熱狂的な状態で入ってきました。「僕らで日本のビール文化を変えたい」「ビールだけでなく、楽しいことを提供していきたい」といった話に、どんどん魅力的な人が集まってくるようになったんです。
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最終的に、チームビルディングが落ち着いた2010年以降は、売り上げが急成長しています。
ですが、このようにビジョンやミッションを定めても、その浸透に課題を抱える企業も多いかと思います。
そこで参考になるのが、「カルチャー専任」チームを持つ、株式会社ユーザベースの事例です。
同社では、企業規模が100名を超えたタイミングで、主にリクルーティングとミッション・バリューの正しい浸透を担う「カルチャーチーム」を設けました。
同社の代表取締役である稲垣 裕介さんは、このように話します。
(カルチャーチームは)今あるチームにミッション・バリューを浸透させることが役割なので、そのためのシステム面や研修、合宿などの設計を行います。
ベンチャー企業で早い段階からこういった役割を設けるのは、珍しいかもしれないです。
しかし僕たちとしては、バリュー経営というものを大事にしていくことのシンボルになるものだと考えたので、あのタイミングで作りました。
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「1on1ミーティング」を通じてチームの相互理解を促進
チームビルディングにおいては、メンバーの相互理解も欠かせません。
そのために役立つのが、メンター(多くの場合マネージャー)とメンバーが1対1で対話をする「1on1ミーティング」です。
※1on1については、こちらの解説記事もご覧ください。
1on1の目的は、個人のパフォーマンス向上です。マネージャーが部下に対して、一方的にレビューをする場ではありません。
このような機会を定期的に設けることで、互いに目標を握りあい、信頼関係を醸成することができます。
例えば、5%未満の離職率を誇るデル株式会社のインサイドセールスチームでは、2週間に一度の1on1のタイミングで、以下のようなトピックについて話しています。
- 売上目標に対しての進捗確認
- 新規開拓(新しい挑戦とその進捗)
- 自己アピール
お客様に対してでもチーム内でも、「良いことをやった、こういう風に褒められた」といった「good point」を聞かせて欲しいと伝えているんですね。
と言うのも、やっぱり悪い所に比べて、良い所って目につきにくいんです。また日本人の気質として、自分から「こんな良いことやりました!」とは言いづらいじゃないですか。
ですので1on1の場でしっかりと聞いて、その話を他のメンバーや私の上司にもシェアしています。
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チームの目的を全員が理解するための、マネジメント体制とは
しかし、組織が拡大していくと、経営陣が全員に1on1をする…ということも不可能です。
そこで重要になるのは、会社としての目標やビジョンなどを、組織のすみずみまで正しく伝えるマネジメント体制を作れるか、ということになります。
クックパッド株式会社では、エンジニアが100名を越えたタイミングから、若手を育成し、チームとしての成果を最大化することに課題を抱えていたそうです。
そこで同社では、各部署に「テックリード」という、ミドルマネジメントを担うポジションを新設しました。
テックリードは、チームメンバーの「技術」と「マネジメント」の2つの領域に責任を負います。
(テックリードを置いたことで)、やっぱりチームの成長の仕方が全然違いましたね。
それまでエンジニアとして伸び悩んでいた人が良くなってきたり、ということがあったので、やっぱりかなり効果があるんだと思います。
CTOの立場からすると、テックリード制を導入して一番良かったのは、エンジニア100人の様子が手に取るようにわかるようになったことです。
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また同社では、チームとして同じ方向を向くために、「チームのスローガン」を設定しているケースもあります。
とある部署では「チームの成果を最大化させることは、個人の成果を最大化させることに繋がる」というスローガンを掲げているそう。
実は自分ができないことを他の人は得意だったりするのですが、自分のことばかりだと、それになかなか気が付けないこともあります。
ですので、個人でがむしゃらに動くのではなく、チームの成果を最大化させるように動くと、結果的に自分の成果も最大になるんですね。
ですがその伝え方も、単純に「チームとして働け、チームのために尽くせ」と言うだけじゃ、絶対変わらないじゃないですか。
なので、チームの方針として「チームで働くことは自分のためになる」ということをスローガンにして、きちんと伝えたかったんです。
ビジョンやミッションのような「会社単位」の考え方に加えて、このような「チーム単位」でのスローガンなどが設定されていると、よりひとつのチームとして機能しやすくなりますね。
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当媒体SELECKでは、これまで500社以上の課題解決の事例を発信してきました。
その取材を通して、目標を達成し続けるチームは「振り返りからの改善が習慣化している」という傾向を発見しました。
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