• RELATIONS株式会社
  • 代表取締役
  • 長谷川 博章

組織はなぜ変われないのか? 経営者こそ「360度フィードバック」を受けるべき理由

〜組織の問題を引き起こす一因は、経営者の「適応課題」?! 共通する価値観を持たず、バラバラだった組織が大きく変化した理由とは〜

本当に「良い会社」を作るために、経営者は何をするべきなのだろうか?

当媒体「SELECK」の運営に加えて、マネジメント支援サービス「Wistant」、さらにコスト改善コンサルティングサービス「Less is Plus」等を運営する、RELATIONS株式会社。

同社は2009年の創業後、「とにかく自由な組織であること」を目指して、できる限りルールの少ない会社づくりに取り組み、増収増益を続けてきた。

しかし、メンバー数が急激に増加した2016年から、組織内における「価値観の衝突」が目立つようになり、離職者が増えるなどの課題を抱えるようになったという。

同社の代表取締役である長谷川 博章さんは、そのような時期にメンバーから自身への「360度フィードバック」を実施。

「最悪の状態から、まずは自分自身の課題に向き合ったことで、会社の『法律』であるミッションやバリューを再定義する覚悟ができた」と話す。

最終的には、2017年より導入した組織サーベイツールのスコアも改善し、「ミッション・ビジョンへの共感」のスコアは63ポイントから82ポイントへと変化した。

今回は長谷川さんに、RELATIONSにおける組織づくりの軌跡を、具体的な施策とあわせてお伺いした。

増収増益を続けても「会社をやってる意味ないな」と感じていた

2009年に、リレーションズ(現:RELATIONS)を創業しました。現在は「ええ会社をつくる」というミッションのもとで、クライアントがより良い会社に近づくためのサービスを提供しています。

具体的には、コスト改善コンサルティング、マネジメントを変革させるためのSaaSとコンサルティング、さらにBtoBメディアの運営を行っています。

私はもともと、前職でかなりハードなヒエラルキー型組織を経験していて。営業だったのですが、上司にいきなりレストランで全メニューを注文されて、「全部食べろ」と言われたり(笑)。

今の時代ではあり得ませんが、みんな夜中の12時過ぎまで当たり前に働いて、目標達成できないと徹底的に詰められる。猛烈に仕事ができて成長できる環境ではあったのですが、そんな組織でした。

※当時の経験については、こちらの記事もぜひご覧ください。

当時の反動もあって、RELATIONSでは創業時から「とにかく自由な組織」をつくることを目指してきました

会社自体は運良く成長し、2016年には社員数も50人を超えて、営業利益も数億円出るようになりました。ただ、ちょうどそのあたりから、組織の雲行きが怪しくなってきたんです。

まず、コアメンバーだったり新卒だったり、本来であれば組織にフィットすべき人たちの離職が目立ってきました。互いになんとなく「他人事感」があり、一体感もない。そんな会社に、正直私は全くワクワクしなかったんです

皆が仕事を通じて人生を楽しんでいないような気がして、「こんな状態だったら、会社をやってる意味ないな」とまで思ったこともありました。

共通の価値観がない状態では、互いに「ノー」も言えない

当時を振り返ると、組織の目的であるミッションや、行動指針であるバリューは定めていたものの、抽象度が高く様々な解釈ができるものでした。

▼当時のミッションとバリュー

事業ドメインも定めず「全員が好きなことをやったらええやん」という考え方をしていました。

そもそも私自身、ミッションを具体化したり、事業ドメインを絞るのが嫌だったんですよ。創業からずっと自由にやってきた中で、そこからある意味「管理」をして勝っていくのって面白いん? という感覚でした

従業員が30人くらいまでは、それで組織に大きな問題が起きることもあまりなかったんです。もともと同じ会社にいたメンバー8人で起業しているので、互いに「阿吽の呼吸」で自発的に動ける期間が長かった、ということもあったと思います。

ですが、中途メンバーを大量に採用し始めて、バックグラウンドの異なるメンバーが増えていく中で、徐々にバランスがおかしくなってきて。価値観が衝突することが増えてきました

そんな中でも「とにかく自由な組織にしたい」という思いが強かったので、何か相談があれば「やったらええやん」と自由を促すようなコミュニケーションをしていました。

今思えば、互いに「ノー」が言えなくなっていましたね。結果的に、組織の中で暗黙的に「NG」と考えられているような行動が起こっていてもそのままにしてしまい、最後になって「それは流石にやめてくれ」ということになったり。

組織のミッションやバリューといった「法律」が曖昧な状態で「自由に動いて良いよ」と言っても、皆が四方八方に動くだけで、チームとして強くならないんです。自由には規律が必要だということを、身をもって経験しました。

この状態が継続してしまうと、会社として勝ち切れないし、自分が目指したかった自由な組織もつくれない。会社に共通する価値観を、より具体化させて浸透させ、組織を変えなければならない、と思うようになったんです。

内部のハレーションを恐れ、会社の「法律」を再定義できなかった

そこで2017年の前半から、会社の法律であるミッションやバリューを再定義するプロジェクトをスタートしました。

具体的には、「分科会」という形で自由参加の座談会を開催して、メンバーの意見を集めていきました

▼実際の分科会の議事録(一部)

数ヶ月かけて意見を出し合ったのですが、最終的にはミッションを明確に決めることはできず…。「ええ会社をつくる」というキーワードは出てきたものの、あくまでも「自社の在り方」を表現するものに留まりました。

それまでドメインを定めずに様々な事業を作っていたので、ミッションを明確にしてしまうと、その方向性に合わない事業も出てきます。その中で、メンバーから「自分たちはそれを目的に仕事をしていない」という意見が出ることも怖かったんですね。

つまり、内部のハレーションを恐れ、魂のこもったミッションを再整備することができなかった

その状態で、目標制度や報酬制度の大改革をはじめ、組織変革のための取り組みをスタートしたのですが、結果から言うとこれは全然盛り上がりませんでした

当時は、なぜうまくいかないのかわからなくて。社内もギスギスしていましたし、私自身も「周りのみんなが敵に見える」状態に陥ったこともありましたね

組織が変わるためには「自分自身の」課題に向き合う必要があった

そんな時に、とあるきっかけで「適応課題(※)」という言葉を知りました。そこからロナルド・ハイフェッツ氏の「最難関のリーダーシップ」という本を読んで詳細を学んだんです。

※「適応課題」:解決のために、それまでの価値観、習慣、仕事の進め方を変えなければならない課題。現実を直視し、喪失や恐怖を受け入れ、変化に適応しなければ解決できない。技術や経験で解決できる「技術的課題」の対義語。

その中で、「自分自身(経営者)の適応課題が、組織の問題を引き起こす一因になっているのではないか」と思ったんですね。

そこで、自分自身の適応課題を可視化するために、メンバーに私への360度フィードバックをお願いすることにしました。戦略策定に関わるメンバーは全員、それ以外は任意ということで呼びかけをして。

▼社内に呼びかけた際のメッセージ

もともと弊社では創業初期から360度フィードバックを導入していて、四半期ごとに全員が数名の同僚から「ストライク」と「ボール」をもらうようにしていました。ただ、私自身がフィードバックをもらう機会がなぜか少なかったんですよね。

やっぱり思っている以上に、自分で自分のことって見えていないものなんです。耳が痛い意見もありましたが、ダイレクトにフィードバックをもらったことでとても心に響きましたね

▼実際にもらった360度フィードバックのひとつ

結果として、自分自身の適応課題に気が付くことができました。そして、ミッションを明確にできなかったのは、自分自身の課題に原因があったと捉えることができたんです

▼社内にも公開した、自身の適応課題と改善目標を整理した図

そこで、自分自身が変わる覚悟ができました。そして自分はやはり、ええ会社をつくり、ええ会社を世の中に増やすことにコミットしていきたいんだと、ある意味ふっ切ることができて。

そのためには、組織内でハレーションが起こってもそれを乗り越えていかなければならない、と決めて、会社のミッションを「ええ会社をつくる」に定めたんです

結果として、ミッションと方向性が合わない事業をメンバーに譲渡し、会社から切り離すといった決断もすることになりました。

組織を一枚岩にして前に進んでいくためには、こうした決断は必要だったと思っています。一部のメンバーからは反発の声も出ましたが、実際に独立するメンバーともとことん話し合い、決めることができました。

経営者という存在は、あくまでもミッション実現のための「役割」

しかし、ミッションやバリューが決定しただけでは、組織変革は終わりません。ミッションやバリューに基づいた「マネジメント」を再定義して、組織に浸透させなければなりませんでした

そのため、まずはマネージャーの定義をより明確にしました。それまでは「チームの目標達成を担う人」という認識だったのですが、全社の方針を伝えたりチームのエンゲージメントを上げるなど、組織開発にもコミットしてもらう役割として再定義しました。

そして、4半期に一度の目標設定、2週間に一度の1on1、4半期に一度のフィードバック、というマネジメントサイクルを回すことを徹底し、メンバーが自律的に動ける環境づくりに力を入れ始めました。

私自身は、全員と1on1を行い、全社会議などで全メンバーと徹底的に対話をし、新しいミッションやバリューを浸透させていきました

今では「ちょっとしつこい」と言われるくらい、「『ええ会社をつくる』というミッションがRELATIONSにおける最上位の概念だ」ということを繰り返し伝えていましたね(笑)。

▼全社ミーティングで使用されたスライド(一部)

今、改めて思うのは、「経営者という存在は、あくまでもミッション達成のための役割のひとつ」だということです。

言い換えれば、会社のミッションは経営者のミッションではない。この立ち位置を勘違いしてしまうと、「自分のためにメンバーがいる」みたいな風に考えてしまう気がします。

ミッションは自分より上位にあるもので、ある意味、神棚にあるような存在です。自分はあくまでもメンバーと一緒の立ち位置で、経営者という役割を担っているだけ。ミッション実現のためには、自分の課題に向き合い変化することも必要です。

これを自分の頭で整理できたときに、色々なこだわりがなくなりました。

ミッション実現のために、最速で、最適に動くことが経営者の役割です。なので私は、顧客と従業員に信頼される「ええ会社」をつくるために、世の中で最もレベルの高い経営者にならなければなりません

この目標は相当えげつないのですが(笑)、これからミッション実現に向けて、先頭に立って戦っていきたいと思っています。(了)

「チームのパフォーマンスを最大化したい」と思うあなたへ

当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

そこで開発したのが、1on1の運用と改善で、メンバーの内省を促進し、パフォーマンスを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。

進化したマネジメントを体験したい方は、ぜひ、チェックしてみてください。