360度評価(多面評価)とは? 現場の事例とテンプレート、運用ツールまで【計6選】

企業の評価制度において、「上司が部下を評価する」だけでなく、より多角的な視点から従業員を評価しようとする仕組みが「360度評価(多面評価)」です。

今回は、近年導入する企業が増えている360度評価について、SELECKで過去に取材した企業での導入事例や運用ツールも含めて、ご紹介させていただきます。

目次

  1. 360度評価とは?
  2. 360度評価が導入される背景
  3. 事例① 記名式で、マネージャー向けに360度評価を実施
  4. 事例② 複数人の意見から、評価の甘辛を調整。昇降級の判断材料にも
  5. 事例③ リアルタイムな360度評価を習慣化させる「ピアボーナス」
  6. 360度評価に活用できるツール【3選】

360度評価とは?

360度評価とは、従来の上司によってのみ行われる評価とは異なり、同僚や部下も含めた、多角的な視点から評価を集める評価方法のことです。

その他の表現として「360度フィードバック」「多面評価」と呼ばれることもあります。

「ストライクとボール」といった形で被評価者の良い点と改善点を挙げたり、会社の行動規範(バリュー)をどれだけ体現しているか? について、点数やコメントをつけることで評価をします。

360度評価が導入される背景

360度評価が導入される背景としては、プレイングマネージャーが増える中で、「上司が部下の業務内容をすべて把握した上で、評価をすることが難しくなっている」ということが挙げられます。

その点、360度評価では、被評価者を様々な立ち位置から評価することで、どうしても上司だけでは抜け漏れてしまう視点を補完することができます。

また、人事評価において重要な被評価者の納得感を作る上でも、ひとりではなく複数名から評価を受けることが、効果的だと考えられています。

このような背景で導入されている360度評価ですが、実際に企業でどのように運用されているのかについて、SELECKで取材した事例を使ってご紹介していきます。

事例① 記名式で、マネージャー向けに360度評価を実施

【参考記事】上司・人事の承認ナシで異動OK!3ヶ月で20人超が利用した新人事制度・シェイクハンズ(株式会社ディー・エヌ・エー)

株式会社ディー・エヌ・エーでは、マネージャー向けに360度評価を行っています。

同社で定義されている5つのマネージャー要件の実践度合いについて、コメントも付けて6段階でフィードバックが送られています。

例えば、「プレイングばかりしていて、あまり見てくれない」「忙しいのは分かるが、背景説明が足りない」「個人の力量や思いを理解できているのか」といった声が上がったりします。

▼実際のフィードバックシート(画像を拡大して見る

▶︎ポイント:記名式か無記名式かは、企業による

360度評価を行う際には、評価者を記名式にする場合と、無記名式にする場合があります。同社では「その後のコミュニケーションをとりやすくすること」を目的に、記名式で評価コメントを送っています。

また、思ったことを清々しくダイレクトに伝えるために、全て記名式で行っています。誰からのフィードバックかがわかった方が、その後にコミュニケーションをとって改善をしやすいですよね。

そして、実際に直接話しあう機会を設けることで、その評価の背景をより深く理解し、改善しようとしています。

この結果を踏まえて、マネージャーが部下を集めたディスカッションを行い、課題点や改善策の認識を合わせたりしています。中には、改善のコミットメントを宣言しているマネージャーもいますね。

また、記名式にすることで、無責任なコメントが送られることを防ぐこともできます。

その一方で、なかなか「部下から上司にフィードバックを送る」ということが、企業文化によっては難しいこともあると思います。その場合は、評価者が気兼ねなくコメントしやすいよう、無記名式で実施するケースもあります。

事例② 複数人の意見から、評価の甘辛を調整。昇降級の判断材料にも

【参考記事】評価者を「自分で」選ぶ。通年リアルタイムで昇降級する「権威を作らない」等級制度(株式会社ISAO)

株式会社ISAOでは、12グレードで運用している等級の昇級判断をする際に、360度評価の結果を参考にしています。

▶︎ポイント:昇降級や給与に評価内容を反映させるかは、目的次第

被評価者の「コーチ」がその人に対する360度フィードバックを取り纏め、総合的にみて上位等級に相応する場合には、人事プロジェクトにその人の昇級を推薦します。

このように360度評価の結果を、昇降級や給与判断に反映させている企業がある一方で、談合が生じるリスクをなくすため、あくまで被評価者の成長のみを目的に運用する場合もあります。

▶︎ポイント:複数人のフィードバックを比較することで、評価の甘辛を見極める

また、360度評価では複数人からのフィードバックが集まるため、評価が属人的になることを防げることも特徴です。

360度評価で他の人が厳しいことを言っているのに、コーチからの評価が甘かったりすると、なぜその評価なのか? という説明を十分にしてもらい、必要があれば是正するようにしています。

被評価者にとっても、厳しさや視点が偏らない、多角的な評価をもらうことができるというメリットもあります。

事例③ リアルタイムな360度評価を習慣化させる「ピアボーナス」

【参考記事】同僚から月60回「成果給」を受け取った人も!メルカリの「ピアボーナス」運用の裏側(株式会社メルカリ)

株式会社メルカリでは、従業員同士が互いにフィードバックを送り合える「ピアボーナス(※)」の仕組みを使って、360度評価を実施しています。

(※)従業員の良い行動に対して、賞賛のコメントと共に成果給を送る仕組み

▶︎ポイント:「評価にかかる負担を減らしたい」という目的

360度評価にはメリットもある一方で、評価者が増えることで、どうしても全社的に評価に時間がかかってしまうという側面もあります。

メルカリでも、3ヶ月ごとの評価時期に多くの労力がかかっていたそうです。

評価の時期になると、被評価者が3ヶ月分の頑張ったことをシートに記入して、対する評価者も、3ヶ月分の記憶を辿ってその人の評価を行っていました。ですがこのやり方では、お互いに評価時期に相当な労力がかかる上に、どうしても直近の行動や目立った部分に評価が引きずられてしまって。

▶︎ポイント:ピアボーナスを使って、日常的にフィードバックを贈り会う

そこで同社では、気軽に互いを「賞賛」できる組織文化を作るために、社員同士で成果給を贈り合う「ピアボーナス」を導入しました。

気軽に、リアルタイムで賞賛し合える仕組みを作りたいと思っていたところ、社員同士で成果給を贈り合うことのできる「ピアボーナス」を知りまして。

そして、リアルタイムでの評価を習慣化させたことで、評価時期の負担を大きく下げることに成功しました。

この点、mertipの仕組みでは、リアルタイムな360度からのフィードバックが、個人のタイムライン上に蓄積されていきます。そのため、評価時期にそれを纏めるだけで、個人のバリューに紐付いた行動を可視化することができるんです。

ピアボーナスはあくまで賞賛、つまりポジティブな側面のみを評価する仕組みですが、日常的にフィードバックを送り合う文化を作るには、非常に有効な手段と言えるでしょう。

360度評価に活用できるツール【3選】

最後に360度評価を行う際に、活用できるツールをご紹介します。

Lattice

Latticeには「周囲の人と十分にコミュニケーションをとっていると思いますか?」「もしひとつアドバイスを送るとした、何と言いますか?」のようなテンプレが用意されています。

そのため、360度評価を行っていない組織でも、それらを参考にしてフォードバックの運用を開始することができます。(内容をカスタマイズして使うことも可能です。)

また、「Performance score」「Behavior score」という形で、仕事のパフォーマンスや行動姿勢の評価をスコアとして可視化することもできます。

▼回答の分布と平均値を可視化

海外企業が活用しているツールを紹介するサイト「Siftery」によると、従業員数51〜250人の中小企業が主な顧客層となっています。(※参照ページはこちら

Spidergap

Spidergapは、スターバックス、ロレアル、LinkedInなどの大企業に導入されているサービスです。

ただフィードバック内容を集計するだけでなく、改善のアクションを促すことに重きを置いている点が特徴です。

そのため、集計結果から「強みと改善点のTOP5」「回答者の役職ごとの評価傾向」「3〜5の改善点に絞ったアクションプラン」といった、詳細なレポーティングがなされます。

▼特に改善すべきポイントが示される

※レポートサンプルはこちら

HeyTaco!

【参考記事】「タコスの送り合い」で組織改革!?気軽にピアボーナスが導入できる「HeyTaco!」とは

HeyTaco!は、株式会社メルカリの事例で紹介したピアボーナスを、チャットツール「Slack」にて運用できるサービスです。

誰かに向けて、タコスの絵文字付きで賞賛のコメントを送り合うことで、気軽にピアボーナスを導入することができます。

▼タコスの絵文字を付けて、賞賛のコメントを送る



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