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マネジメントにおける「曖昧さ」をなくす!合意形成を重視する、人事制度の運用法とは

〜組織のフェーズに合わせて、評価制度を刷新!マネージャー向け社内研修を実施し、MBOや「Will・Can・Must」がベースの人事制度を浸透させる仕組みとは〜

評価制度を運用する上で、欠かせないのが現場マネージャーのマネジメントスキルだ。

株式会社ウィルゲートは、2015年より、「Will・Can・Must」のフレームワークから導かれる「短期業績目標」と「中長期成長目標」の2軸を用いた評価制度をスタート。

個人の「やりたいこと・やるべきこと・できること」の重なりを意識して目標を設定した上で、それをMBO(※)方式で運用している。

※Management By Objectives:個別またはグルーブごとに目標を設定し、それに対する達成度合いで評価を決める仕組み

また、その運用を現場マネージャーに浸透させるため、すべてのマネージャーに対して、半期に一度のマネジメント研修を実施。

この研修を通じて、評価や目標設定のためのコミュニケーションにおける「曖昧さ」を排除し、メンバー成長のための目標達成に向けた行動に迷いが生じないようにしているという。

今回は、同社の執行役員で人事全般を担当する山中 諭さんに、評価制度の全容からマネジネント研修の実態に至るまで、詳しく伺った。

組織の拡大に伴い、成果主義から「成長視点を入れた評価制度」へ

私は、2010年8月にウィルゲートに入社しました。元々、新卒で入った会社では5年ほど人事に携わり、評価制度の刷新などを経験しました。

その仕事に対する不満はなかったのですが、ある時「ベンチャー就職ガイト100」という本をたまたま本屋で見つけて、興味本位で立ち読みしたんです。

そこでウィルゲートのページを見た時に、社長が若くて面白そうな会社だと思いまして。当時は20名ほどの組織だったのですが、「人事を立ち上げましょう」と自ら問い合わせをして、入社に至りました。

入社後は勤怠管理のシステム化から始まり、次に、評価と表彰のふたつの制度設計に着手しました。

最初に作った評価制度は、入社前から代表の小島とすり合わせを行ってリリースしたものなのですが、40〜50の評価項目から成る、非常に細かいものだったんですね。

ですが案の定、半年で運用が回らなくなってしまい、「売上」を第一とする成果主義の評価制度に刷新しました。

というのも、2012年当時は「SEO業界でナンバーワンになる」という目標を掲げて、とにかく会社の数字を上げていこうとしていた時期でして。

売上の数字によって給与が変動する制度にして、一定の期間は上手くいっていたのですが、1年のうちに従業員の数が50人、100人と急激に増えたため、色々な価値観を持った人が入ってきたんです。

するとどうしても成果主義の制度が組織に合わなくなってきて…。そこで2015年の4月に、今の評価制度の前身となる「社員の成長」の観点を入れた評価制度に変更しました。

この制度では、会社の理念から「社員にどういった行動を取ってほしいのか」を考え、グレードという基準を設けました。

それ以来、組織の状態に合わせて少しずつチューニングしながら、評価制度を運用しています。

評価制度の運用はMBOで、目標設定はWill・Can・Mustから

弊社の評価制度はMBOで運用しているのですが、4つのステップ(PDCA)から成り立っています。

STEP1:メンバーのWill・Can・Mustを踏まえ、適切な目標を設定(P)
STEP2:メンバーとマネージャーが目標達成のためにコミュニケーションを行い実行(D)
STEP3:マネージャーがMustだけでなく、Will・Canについてもメンバーと齟齬なく評価(C)
STEP4:評価に基づき、具体的な改善案を考える(A)

これらを機能させるためには、メンバーとマネージャーで目標の認識に齟齬がないことが重要です。そのため、STEP1の目標設定については5つのステップに分解し、丁寧に運用しています。

STEP1-1:メンバーのWill・Canをできるだけ正確に把握する。
STEP1-2:それに基づき、メンバーのキャリアステップ(成長シナリオ)を仮説立てする。
STEP1-3:他方で、自部署の役割を中期から逆算して短期目標(Must)に落とし込む。
STEP1-4:Will・Can・Mustをすり合わせ、現状の重なりを具体的な言葉に落とす。
STEP1-5:現状と期末のGAPから、メンバーの目標を設定する。

Will・Can・Mustというフレームワークを使い、本人のやりたいこと・やるべきこと・できることの「重なり」を意識し、目標設定を行っていきます

Willについては、「設定できない」もしくは「曖昧になってしまう」ということを避けるために、弊社では山登り型と川下り型のふたつの考え方をしてもらっています。

例えば山登り型は、Willが明確に決まっているため、その実現に向けてどうやって行動していくかをメンバーと話し合います

一方の川下り型は、明確なWillはまだわからないけれど、仕事の経験を通じてやりたいことを見つけていくタイプなので、本人と一緒にそれを見つけていくようなマネジメントをしています

どちらが良い悪いではなく、人のタイプによるものだと考えているので、マネジメントをする際には相手に合わせたやり方で接するように説明しています。

次にCanを正確に把握するために、視野、認識、資産、性格といった4つの軸と、それに紐づく要素を分解しています。この細かい要素分解によって、個人の能力を正しく可視化しています。

最後にMustですが、これは会社の中期戦略から当期のミッションを立て、部署、チーム、メンバーへと落とし込んでいきます。

ここでマネージャーに求められるのは、自部署の役割を正確にメンバーに伝え、その役割を果たすためにどのメンバーにどんなミッションを任せるか、という設定能力です

このようにWill・Can・Mustの重なる部分をすり合わせ、目標として設定し、プロセスも含めMBOシートに明記するようにしています。

なお、Willの部分から生まれた中長期成長目標(Can)と、Mustから生まれた短期業績目標は、1:1のウェイトで評価される仕組みです。

これは会社として、数字だけではなく、メンバーの成長を支援したいというミッションに則して作られています。

マネージャーの役割は、目標達成とメンバーの成長支援

目標達成を支援する取り組みとして、1on1も実施しています

月1回はマストとし、メンバーの状況に合わせて時間や頻度を変更しています。新卒や中途で新しく入った人の場合は、週1回ペースで行う場合もありますね。

1on1では業務の進捗確認ではなく、メンバーの成長に関することや、抱えている悩み・キャリアについて話すパターンが多いですね。というのも、普段の業務でコミュニケーションを取っていても、こうした話ってなかなか話す機会がないからです。

また、面談が短かったり適当だったりすると、メンバーから私の方に声が上がってくることもあります。そうした場合には、人事からマネージャーに状況を伺いつつフォローするようにしています。

そもそも、マネージャーの役割は大きくふたつあると考えていて。

ひとつは、部署に課せられた目標の達成と中長期的な戦略を立てること。そしてもうひとつがメンバーの成長に向き合うことです

そのため、以前はマネージャーひとりに対して、15〜20人のメンバーがいるような時代もあったのですが、今は4〜5人程度に減らしています。

メンバーの成長に向き合うこともマネージャーの役割を考えると、最大でも5人くらいが限度だと思っています。その分、メンバー1人ひとりの成長を支援してもらいたいと考えていますね。

マネジメント研修を行い、「曖昧な」コミュニケーションを避ける

これらの評価制度をきちんと運用するためには、やはり現場マネージャーのスキルが重要です。そこで、弊社では20名ほどいるマネージャーに対する研修を、半期に1回実施しています。

内容としては、マネジメントとは、評価とは何かといった概念の話から、目標設定の手法まで多岐にわたります。

例えば、MBOについては形骸化するパターンなど具体例を示しながら、説明しています。

研修以外の場でも、マネジメントのスキルを上げるために、マネージャーが担当している評価シートをランダムに抽出して、定期的に目標設定や評価についてフィードバックしています。

マネジメントにおいて特に重要なのが、コミュニケーションでの「曖昧さ」を避けることだと考えていて。というのも、曖昧さを残すと、メンバーの行動に迷いが生じてしまうんですね

そこで、研修やフィードバックを通じて、なるべくマネジメントにおける曖昧さを減らそうとしています。

人事制度はPDCAを早く回し、フェーズに合わせて変えていく

私は人事制度を設計する際に、PDCAを早く回して、変えるべき所は早めに修正していく、といった考え方をしています。

というのも、組織のフェーズや構成する人によって、適した制度って変わりゆくものだと思うんです

それを1、2年かけて変えるのでは遅いと感じます。特にベンチャーでは考え出してから1年経つと、すでにフェーズが変わっていたりするじゃないですか。なので、2~3ヶ月くらいでパパッと試して変えていくようにしていますね

そのためメンバーを頼って、状況を聞いたりしながら情報を仕入れて、いいなと思うものをどんどん取り入れます。自分の考えに固執せず、社員のリアルな声を元にスピード感をもって変えていくことが、大切だと思っています

そして、個人の成長が会社の成長に繋がると思っているので、個の多様性を大事にして、副業など社外でも活躍できるようにしているんです。

経営理念を達成するために事業ビジョンがあり、事業ビジョンを達成するために組織ビジョンがあります。なので、組織ビジョンを軸にした組織作りが重要だと考えています。

これを叶えられる組織ができれば、事業ビジョンも叶えられますし、それによって経営理念も叶えられると。すべては組織から始まっていくので、それを実現できる組織を作っていきたいですね。(了)

「チームのパフォーマンスを最大化したい」と思うあなたへ

当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

そこで開発したのが、1on1の運用と改善で、メンバーの内省を促進し、パフォーマンスを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。

進化したマネジメントを体験したい方は、ぜひ、チェックしてみてください。