• ライフネット生命保険株式会社
  • 人事総務部長
  • 岩田 佑介

入社3ヶ月で「自社にダメ出し」!メンバー全員で組織を作る、ライフネット生命の挑戦

〜「社員自身が組織を変える」という原体験と意識づけが重要。「より大きな挑戦」を生み出すための、ライフネット生命の組織づくりを紹介〜

1人ひとりがオーナーシップを持って組織を変えていく…という状態は理想的だが、それを実現できている企業は非常に限られているのではないだろうか。

インターネットを主な販売チャネルとする生命保険会社として開業した、ライフネット生命保険株式会社。

同社では2016年より、中途採用の全員が、入社3ヶ月後に執行役員会でプレゼン発表をする「ニューカマープレゼンテーション」を実施している。その狙いは、「オピニオン・ダイバーシティの推進」と「イノベーションの種の発見」だ。

プレゼンの内容は、「ライフネット生命への提案」。入社3ヶ月というフレッシュな視点から、自社の「良いところ・ダメなところ」を含めた発表を全員が行い、その提案内容はすべて実現に向けた次アクションまでが決定されるという。

また開業10年の節目である2018年には、創業者が編さんしたマニフェストを、社員全員のディスカッションを経て改定した。

そして「挑戦と成長」という新しい人事ポリシーを策定し、評価制度の主軸を「成長度評価(成長差分)」に。また、部門長の任期を原則3年間とする「役職任期制度」を導入した。

今回は同社で人事総務部長を務める岩田 佑介さんに、同社の組織づくりと、その背景にあるピープルマネジメントの考え方について、詳しくお話を伺った。

より大きな挑戦を生み出すべく、社員全員でマニフェストを改定

私は2016年にライフネット生命保険(以下、ライフネット生命)に入社し、現在は人事総務部長を務めています。加えて、人事コンサルティングの事務所を開業しているのと、立命館大学で客員教授を務めているので、いわば「三足のわらじ」を履いているような状態になっています。

ライフネット生命は「生命保険マニフェスト」というものを掲げており、これに基づいて様々な人事施策を展開しています。保険会社として営業を開始したのが2008年なのですが、今のマニフェストは、2018年に全社員が関わって改定したものです。

創業当時に掲げていたマニフェストの中には、既に達成できた項目もいくつかありました。また創業者の2人が作ったものだったので、このタイミングで改めて、社員全員で新しいものを作ろうという話になりました。

▼ライフネット生命の新しい「マニフェスト」(全文はリンク先でご覧ください)

新しいマニフェストは、「生命保険の未来を作る」「お客さま1人ひとりの生き方を応援する」ということが軸になっています。

そして組織体としては、ベンチャースピリットを持って全員がどう「挑戦と成長」を積み重ねるのか、ということをポリシーとして、様々な人事施策を行っています。

ピープルマネジメントの担い手、部門長の任期を「原則3年間」に

マニフェストを改定したのとほぼ同時期に、人事制度も大きく転換させました。

以前は、どちらかと言うとパフォーマンスやバリューを評価軸とするような、一般的な人事制度でした。しかし現在は、「成長の差分」を見るという成長度評価を主軸にしました。

能力が高い人でも、昨年と同じ状態ならば良い評価にはなりません。逆に今は能力が中程度でも、1年でかなり成長できれば高い評価になります。

1人ひとりへの成長支援としては、部門長との1on1を軸にしています。ですので部門長に対しては、「あなたたちはピープルマネジメントの専門家です」ということをしっかり伝えていますし、メンバーの成長支援ができるかどうかで、マネジメントの適性を見ています。

また、部門長の任期を原則3年間とする「役職任期制度」を導入しました。

任期を終えたあとに、ピープルマネジメントへの適性が高いようであれば別の部署で部門長の役割を担っていただく。

一方で、「その職種が好きだ」「職務の専門性を突き詰めていきたい」といった場合には、エキスパートとして部署の中で次の部門長を支えていただく。こういう仕組みです。

任期満了時には誰かにバトンを渡さなければならないので、それぞれが「自分の後継者をどうしようかな」と自発的に考え、サクセッション・プラン(後継者育成)が自然と始まる仕組みになっています。

私たちは、「管理職=偉い」という思想は持っていません。ポジション・パワーで押さえつけようとするマネジメントは、もうこれからの時代には合わないと考えています。

例えば野球部のマネージャーって、別にチームメンバーより「偉いポジション」というわけではないですよね。でも、選手たちがプレイに専念できるよう、チーム内の環境整備や準備活動に全力投球しています。

これに近いイメージで、メンバーがスタープレイヤーとして輝ける環境を作ることに喜びを感じられる人に、マネジメントを担ってほしい。これが私たちの思いですね。

入社3ヶ月経った社員が、ライフネット生命に「ダメ出し」

このように、2018年のマニフェスト改定から人事施策のリニューアルを行っていますが、もともと会社として「みんなで組織を作っていく」という風土は強くありました。

その特徴的な取り組みのひとつが、「ニューカマープレゼンテーション」(以下、ニューカマープレゼン)です。これは2016年から行っているのですが、中途採用の全員が入社3ヶ月後に、執行役員会でプレゼンテーションをするというものです。

プレゼンの内容は「ライフネット生命への提案」なのですが、必ず自己紹介と、ライフネット生命の良いところ・ダメなところを含めてもらうようにしています。

よくダイバーシティというと、女性の管理職比率や、シニア活用、年齢や性別といった「属性のダイバーシティ」が話題になりがちです。しかし当社はそれらよりも「価値観・意見のダイバーシティ」を大切にしたいと思っています。

これは、多様な価値観がイノベーションの源泉になると思っているからです。たとえ属性のダイバーシティが進んでいても、「意見を持っていても、言いづらい」状態だと、「価値観・意見のダイバーシティ」は促進されませんよね。

ですので、そこに対してまずは自らの組織に対する価値観・意見・気づきを、経営陣に対して発露する場を作ってしまおう、ということが前提としてありました。

提案の中身は、本当に様々です。「オフィスにアロマディフューザーを置いてほしい」といった職場環境改善に関わるものから、経営・組織戦略のコア部分に踏み込むようなものまであります。

最近でいうと、「ティール組織を導入したい」という提案がビジネス部門のメンバーから出てきまして、実現に向けて先進企業への視察などを行っています。

過去には、事務を担当していたメンバーが、プロモーションにもっと面白さがあっても良いのではないのか、という視点から、一般ユーザー参加型の新しいCM動画制作を提案したことがありました。

これは、マーケティング部の取り組みにはなりましたが、実際に提案者本人もプロジェクトに入って実行されましたね。

※詳細はこちら:入社3か月目で役員にプレゼンした動画企画が採用された時の話

こうした過去の提案は、すべて社内にオープンになっていて、誰でも見ることができます。

重要なのは、ニューカマープレゼンは「役員が提案をジャッジする場」ではないということです。社員が外の環境からライフネット生命に来てくれて、感じたことをフレッシュな目で出してほしい。

ですので、提案された問題意識はすべて尊重して、「どうすれば実行できるのか?」という視点で議論されます。当然、大きな投資が必要なものに関しては慎重に検討しますが、「いい提案でしたね」で終わることはありません。誰が何をするのか、必ず次アクションを決めて進めています。

実行されたプロジェクトに関してはそれぞれ振り返りも行っています。ただ、そこにあまり定量的な成果は求めていなくて。イノベーションの種として、そのひとつでも大きくなるものがあればいいかな、という位置付けでやっています。

「組織は変えられないもの」という呪縛を解きたい

ライフネット生命の場合、「自分のやりたいことを組織に提案していく」ことを応援する風土があります。ですので、ニューカマープレゼン以外でも、提案をしたいことがある社員は執行役員会に議題を出して、自主的に提案をしています。

その意味で、ニューカマープレゼンはある意味「最初のとっかかり」みたいな位置付けかなと。

新しく入社した人にとっては、執行役員会がどういう場なのか、空気感もわからないじゃないですか。でも一度そこを経験すると、「割と何でも言ってよさそうだな」ということが見えてくるんですね。

そして「自分で組織を変える」という体験を積むこともできるので、これが組織へのエンゲージメントにもつながっています。

多くの人にとって、組織は「与えられるもの」で、「自分が作用して変わるものじゃない」という呪縛があると思うんですね。人事としては、これを解きたいなと。1人ひとりがオーナーシップを持って、欲しい組織を自分で作る体験をどんどん積んでいけるといいなと思っています。

そのためのネクストチャレンジとしては、「キャリアの自律意識」がすごく大事だと思っています。私は「Willの純度」と言っているのですが、自分自身が個として本当に、やりたいことにあふれている、その純度がすごく高い人がたくさんいないと、1人ひとりがオーナーシップを持ったティールのような組織を作ることは難しい。

そのために、人事としていま色々な仕掛け作りをしていて、パラレルキャリアもそのひとつです。

目標設定においても、パフォーマンス目標は会社や部門の目標に沿っている必要がありますが、一方で、成長度評価の部分については、必ずしもそうである必要はありません。

例えば私の目標設定シートの成長度評価の部分には、パラレルキャリアを通じた成長目標も入れています。上司からはパラレルキャリアの方に対しても、「もっとこういう活動をした方が、あなたのキャリアや成長に繋がるのではないか?」と日々、フィードバックを受けています(笑)。

やはり社内だけに目が向いていると、自分のやりたいことを考えるときにちょっとぼやけてしまうというか。パラレルキャリアに限らず、色々な外の世界を社員に見てもらうことは大切なんですよね。

キャリアというのは自分で作るもの。そして、ライフネット生命だけで完結するものでもないので、1人ひとりが自分で自分のキャリアを考える。ライフネット生命は 、あなたにとってのキャリアのOne of them でもいいので、やりたいことが出来ているWillの純度高い状態を作ってほしいということを、メッセージとして今後より強く打ち出していきたいなと思っています。(了)

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当媒体SELECKでは、これまで700社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、成功している組織には、指示・命令を中心とした「管理型のマネジメント」ではなく、人の意欲と能力を引き出す「ピープルマネジメント」が根付いている傾向を発見しました。

そこで開発したのが、組織にピープルマネジメントを根付かせ、パフォーマンスとエンゲージメントを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。

具体的には「目標設定→1on1を通した成長支援・メンバーの課題解決→成果・行動に対するフィードバック」というマネジメントの一連のサイクルを、高いレベルで実行することをサポートするサービスです。

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