• 株式会社Loco Partners
  • 執行役員 マーケティング統括部長
  • 宮下 俊

売上だけで満足度は測れない。NPSで顧客と「対話する」Reluxのサービス改善

〜サービスの推奨度を11段階で測る「NPS」。定量化しづらい顧客の満足度を可視化することで、ユーザー体験の改善を行っている事例〜

運営者がユーザーの表情を直接見る機会が少ない、Webサービス運営。顧客が本当に満足しているのかどうか、リアルに分かりづらいと感じたことはないだろうか?

そんな課題感から、「サービスを知人にどれくらい勧めたいと思うか?」という推奨度で、ユーザーの満足度を図る「NPS(Net Promoter Score)」を導入する企業が増加している。

※NPSについては、こちらの記事をご覧ください。

「NPSとは」基礎から応用まで。現場での実例集【5選】・計測用ツールを徹底解説

一流ホテル・旅館を厳選した宿泊予約 サービス「Relux(リラックス)」を運営する株式会社Loco Partnersでは、2016年11月にNPSを導入。

同社では、独自設定している宿泊施設のグレード別、あるいはユーザーが利用するデバイスごとにNPSスコアのモニタリングを実施。

ユーザーとの期待値調整や、有効なマーケティングチャネルの見極めにNPSを活用しているという。

今回は、同社で執行役員を務める宮下 俊さんに、NPSを活用したサービス改善についてお話を伺った。

競合の模倣ではなく、独自の世界観を守るためにNPSを導入

私は2015年11月にLoco Partnersに執行役員として参画し、Reluxのマーケティング統括部長を務めています。

弊社では、サービスが成長していく一方で、お客様は本当に満足しているのだろうか? という課題感から、2016年11月にNPSを導入しました。


NPSは「そのサービスを知人にどれくらい勧めたいと思うか?」という質問に対して、オススメの度合いを0〜10点の11段階で回答してもらうことで、ユーザーの満足度を測る手法です。

その回答を、「0〜6点は批判者」「7〜8点は中立者」「9〜10点は推奨者」という形で3つのグループに分類し、全回答者における「推奨者の割合」から「批判者の割合」を引くことで、NPSのスコアが算出されます。

Reluxは、他の宿泊予約サービスと比べると、宿泊施設の掲載数や機能数が少ないんです。

それでもお客様から支持されているのは、「満足度の高い宿を厳選して掲載する」という、私たちの世界観に共感いただけているからだと考えています。

そのため、会員数や流通額といった短期的な目標だけを、安易に追ってしまうのは良くないと思っていて。


というのも、そうすると「機能を増やそう!情報を増やそう!」となって、どんどん競合の模倣になってしまいますよね。

そこで、私たちの強みの源泉となっている世界観を崩さずに、中長期的に成長していくため、NPSを導入して、お客様の満足度を継続的にモニタリングしようと考えました。

カテゴリ別にスコアを見ることで、より詳細に満足度を把握

運用方法としては、以前からメールでお客様に宿泊先のレビューをお願いしていたので、そこにNPSの項目も追加し、ご回答いただいています。

▼実際のNPSの回答フォーム


NPSを計測する専用ツールもありますが、Reluxではアンケートを取るだけなので、自社システムを利用して回答を集計していますね。

そして弊社では、Reluxというサービスの世界観を維持したまま成長させていきたいという背景から、「そのスコアを維持すること」を目標としています。

ここでは、全体のスコアだけでなく、独自の格付けである宿の「グレード」や通信デバイスなどのカテゴリ別にも、スコアを確認しています。

例えばグレード別でのスコアですと、同じグレードの施設の中で、NPSのスコアが低い宿があるとします。すると、ユーザーの期待値と宿のグレードの間に「ズレ」が生じているということが予測できます。


また、「PC」「スマホのブラウザ」「スマホアプリ」といったデバイス別のスコアからも、それぞれのUI/UXに対する満足度を測っています。

その結果、特にスマホアプリの満足度が高いことがわかったので、集客もアプリの方に寄せました。今では、全体の6〜7割がアプリからの予約になっています。

このようにNPSは、サービス全体の満足度を測るだけでなく、課題がある箇所を特定したり、有効なマーケティングチャネルの見極めにも役立てることができます。

BADレビューには全て返信。宿と一緒になってサービスを改善

また、NPSはスコアだけでなく、任意でコメントもつけていただくのですが、悪いレビューに対しては全て返信しています。

中には端的に「最悪でした」みたいなものもあるので、「どんなことがありましたか?」と、何に不満を持たれたのかをヒアリングしています。

例えば、宿泊施設の経営が変わって、従業員やサービス内容までもが全て変わったことで、突然悪いレビューが集まるタイミングもあるんですね。

そういう時には、「どうすればお客様の満足度をもっと高められるか?」ということを宿の方と同じ立場で考えるようにしています。


実際、私が電話を取って応対した案件で、本当に厳しいご意見をいただいたことがありまして…。一緒に宿の女将さんと菓子折りを持って、謝りに行ったことがあるんです。

そこで、しっかりと話をお伺いしてお詫びをしたことで、その方は「また使うよ」と言って下さったので、とても嬉しかったですね。

このように、単に予約を仲介するだけでなく、宿のみなさんと一緒になってお客様にとっての良い宿泊体験を作っていくことが、大切だと考えています。

サービス改善の結果、Appleやベンツに迫るNPSスコアを計測

こうしてNPSを通したサービスの改善を続けた結果、全体のスコアで40〜50の水準を維持できています。そのうち、9点もしくは10点をつけた推奨者は6割くらいで、6点以下の批判者は1割くらいですね。

とある調査によると、Appleやベンツのスコアが60〜70くらいなので、それらに近い結果が出ています。


また、一般的にはレビュー投稿率は5〜10%ほどだと言われているのですが、弊社の場合は18%くらいの方が回答されるんですね。

やっぱり、お客様が良い体験をされているパターンが多いので、それを発信したくなるんだと思います。

また、オンライン旅行サービスのNPSは平均でマイナス30ほどという調査結果もある中で、Reluxのスコアはマイナス13を記録しています。

これは、アプリの使いやすさや、ブランドイメージを評価いただけている結果だと思うので、これからも維持し続けることができればと思いますね。

NPSは、可視化しづらい満足度を定量化して追うための武器

私自身は、「満足度」ってやはりすごく定性的で追いづらい指標だと思っています。

それを、ちゃんと定量的に可視化して、期待値とのズレが生まれた時にコミュニケーションをとれるようになったのは、私たちにとっては大きな分岐点でした。いい武器を手に入れられたなと感じていますね。

今後は、プロモーションの方法が、NPSにどう影響するのかを見ていきたいと思っています。

というのも、今年の3月にテレビ「がっちりマンデー!!」に特集してもらった影響で、新しいユーザーが一気にふえました。


そこで面白かったのは、流入したユーザーの流入経路がやっぱり今までと違っていて、「Bing」「dメニューポータル」などが多かったんです。

おそらく、年齢層の高い方々が、デフォルトで設定されている検索エンジンを使っていらっしゃるのだと思います。

つまり、今までとは異なるユーザーが入ってきているということです。なので、実際にReluxをご利用していただいた時に、満足度がどう変わるかは、きちんとモニタリングしようと思っています。

今後さらにサービスを成長させていく中でも、私たちが大切にしている世界観を守り続けられるように、NPSをうまく活用していきたいですね。(了)

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