• GROOVE X株式会社
  • 代表取締役
  • 林 要

非エンジニアも「スクラム」を実践!「部分最適を作らない」スクラム組織の運営法

〜エンジニアからコーポレートまで、全社で「スクラム」を実践!フラットな組織で「世にない」ロボットを開発する、GROOVE X流・組織運営とは 〜

アジャイル開発のひとつとして、ソフトウエア開発で広く取り入れられている「スクラム」

チームで円滑に仕事を進めるフレームワークである同手法は、ソフトウエア以外のすべての職種に適用できることをご存知だろうか。

2015年に創業し、人を癒すロボット「LOVOT」を秘密裏に開発する、GROOVE X株式会社。

同社では、エンジニアからコーポレートまで70名を超える社員全員が「スクラム」を導入することで、フラットな組織運営を実現している。

具体的には、スクラムマスターが組織運営を担い、プロダクトオーナーとその補佐役からなるチームが、開発の優先順位やスケジュールを決定。

さらに、木曜始まりの1週間をスプリントとし、最終日となる水曜には各チームからの進捗発表会「バザール」を開催。お互いの成果を可視化することで、開発を円滑にするとともに、組織を活性化している。

同社代表でありプロダクトオーナーの林 要さんは、スクラムで組織を運営することの強みは「活気が出る」「変化に強い」ことにあると話す。

今回は林さんに、創業当初の「30人の壁」の乗り越え方から、スクラム組織運営の全貌について、詳しくお伺いした。

全社「スクラム」組織で、人が思い入れできる「LOVOT」を開発

私は元々、自動車メーカーで製品企画を担当した後、その経験を元に、ソフトバンクでロボットの開発に携わっていました。

当時、ソフトバンクアカデミアという次世代リーダー育成プログラムに参加する機会があって、孫さんから学んで少しでも近づきたいと思い、参加していました。

ただ、孫さんの成長速度が速すぎて逆にどんどん離されていくのを感じたんですね。

なぜ離されるのだろう、と考えた結果、自分で真のリスクを取らない限り成長を加速できないという思いに至り、2015年11月に独立しました。

私たちは現在、人を癒し、生活に潤いを与えるロボット「LOVOT(LOVE × ROBOT=LOVOT)を開発しています。2018年末の製品発表、来年秋冬の発売予定です。

これは従来の「人の代わりに仕事をする」ロボットとは大きく異なります。

独立後、どんな事業をするかを最初に考えた時に、前職で関わっていた「会話を通して人とコミュ二ケーションをするロボット」ではなく、「人が思い入れできるロボット」を作りたいなと思いまして。

というのも、私たちが最終的に実現したいのは、「人の潜在能力を引き出し、パフォーマンスをあげる」ことなんですね。

今の時代、多くの人が「自分が愛される方法」には敏感なのに、「自分が存分に愛せる対象の不足」については、対策を後回しにしがちだと思っていて。

ですが本来、その対象の存在によって、人々のモチベーションが上がり、明日への活力が湧いてくるようなこともあると思うんです。

この重要性に気づいた方はペットを飼うなどの選択をするわけですが、そうではない人にも、ロボットを通じて潜在能力が落ちないようなサポートを行いたい、という意図をもって「LOVOT」を開発しています。

製品は非公開ながら、エンジニアを中心に多くの優秀なメンバーが参画してくれており、社員数は2018年7月現在で70名を超えています。

そして創業当初から、アジャイル開発の手法のひとつである「スクラム」を全社に取り入れ、階層や役職のないフラットな組織運営をしています。

リーダーの責任感が「部分最適」を生む。30人の壁の乗り越え方

今ではスクラムの基本に沿ったフラット型の組織を運営していますが、実は以前、領域ごとにリーダー役を立てた時期がありまして。

というのも、社員が20〜30人に増えた頃、創業者である私と現場のメンバーとのコミュニケーション量が減ったり、役割が分散することで状況の把握が難しくなってしまって…。

結果的にお互いの不信が生まれる、いわゆる「30人の壁」みたいなものを経験したんですね。

その時に、領域ごとに責任をしっかり持つようなリーダー役を決めることで、課題が解消しないかと一時考えたんです。

ですが、結局それは上手くいかなくて。実際には、リーダー役を任された人がその責任感に基づき、チームの目標達成にとって最も効率的な「部分最適化」を図るということが起こりました。

これは「各人がどこまでを自分の責任領域とみなすのか」という問題だと思っていて。例えば、道路へのごみ捨ての問題も同じで、自分のエリアが車中までだと考える人は、窓の外にはごみを捨てるわけですよね。

しかしその領域というのは多くの場合、自分と密接に関わっている「理解できる範囲」や「仲の良い範囲」に留めてしまいがちです。

そのため、組織でもリーダーのような「役職」に責任を押し付けると、自分の関わる領域の最適化を行ってしまい、その責任領域を超えた範囲については摩擦が生じやすくなることを学びました。

特に、我々のような全く新しい領域を開拓する組織の場合には、早いサイクルで方針が変わりやすいため、その度に業務間の摩擦が大きくなる可能性がありまして。

そこで、リーダー役に責任を押し付けることをやめ、在るべき姿の模索をもう一度始めました。

この時に、創業当初からなんとなく使っていた「スクラム」を再度見直して、徹底することにしようと、スクラムマスター専任者を雇用し、積極的に教育を行ったんです。

すると「組織フェーズに応じて自分の役割が変わり得る」「全員で作り上げる」というスクラム開発の思想が浸透し、それに追従できる体制が徐々に出来てきました。

こうして、30人の壁を乗り越え、現在の70名までは比較的スムーズに拡大することができました。

スクラムはすべての職種に適用できる。組織運営の2つ強みとは

組織運営にスクラムを取り入れることの強みは、「活気が出る」「変化に強くなる」の2つだと考えています。

個人ではなくチームで仕事を持つため、一部のハイパフォーマーに依存せずに互いが学び合うことで、飽きない環境を作ることができて活気が生まれるんですね。

また、一度引いた線表があっても、スクラムでは最新の状況に応じて計画を見直すことが可能となります。

この両者の意味合いにおいて、スクラムはエンジニアだけでなく、すべての職種に適用できる可能性があります。

実際に、弊社ではエンジニアからコーポレートまで、全社でスクラムによる組織運営に挑戦しています。

チームは大きく4つに分かれていて、「ソフトウェアの開発」「ハードウェアの開発」「表現の実装に関連する開発(通称:KAWAII)」「ビジネス」という機能別になっています。

そして、各チームを支えるために、「スクラムマスター」「コーポレート」「SK(助さん格さんの略で、プロダクトオーナーの補佐役)」が存在します。

▼同社のスクラム組織の図

それぞれの役割としては、スクラムマスターが各チームのスクラム運営をサポートする専任部隊となっており、一般的なコーポレート部門とは別の機能を担っています。

そして、開発スケジュールや優先順位などについては、POとそれを補佐するSKが決定するという形です。

こうすることで、最新の状況に応じて柔軟に変化できる組織体制をつくっています。

また、互いに学び合う体制を強化するため、各チームの中では「ペアワーク」を推奨しています。

複数人でひとつの作業をすることで、担当者が行き詰まることで開発がスタックしたり、ノウハウが属人化することを防ぐことができます。

さらに、スクラムの組織では、チームが自律性を持つ範囲を明確にするため、上司や階層をなるべく減らす事が推奨されます。

その時々のリーダーは自然発生的に生まれますが、これは各場面で最適な人が最適な役割を担うという考え方で運営しています。

スプリントの最終日には「バザール」を開催し、互いの進捗を共有

弊社の1週間は、木曜から始まり、水曜で終わります。1週間ごとにスプリントを区切り、各チームの進捗や成果は、毎週水曜に開催される「バザール」という場で共有しています。

▼実際の、バザールの様子

ここで大事なことは、他のチームの状況を知ることで「自分のチームでやっていることに関係していそう」といった、気付きを得られることなんですね。

というのも、ロボットというプロダクトはかなり複雑で、素材から機械学習まで含めると、思わぬところで互いに影響することがありまして。

それを最初から網羅的につぶして動こうとすると、プランニングに時間がかかりすぎてしまいます。

そのため、1週間ごとに各チームが成果を報告し合うことで、たとえ一部の開発が間違った方向に行っていたとしても、リカバリーできるような進め方をしています。

またバザールを通じて、他チームからのフィードバックや励ましの言葉をもらうことで、各自のモチベーションアップにも繋がっています。

一方で、バザールに出せるような目立つ成果以外にも、地道に皆のサポートをするような仕事もたくさんあります。

この見えづらい成果を拾い上げる仕組みとして、弊社ではピアボーナス(※)の「Unipos(ユニポス)」を活用しています。

※ピアボーナス:従業員同士で、感謝の言葉とともに成果給を贈り合える仕組み

フラットな組織運営を行うためには、ピアボーナスはマストアイテムかなと思っていて。

結局、フロントに立つ人のパフォーマンスは、「縁の下の力持ち」がどれだけしっかりしているかによって大きく変わってくると思うんです。

そうした「縁の下の力持ち」行動をUniposで拾い上げて賞賛することで、その成功体験を積める仕組みになると考えています。

情報を取りに行く文化は、オンラインとオフラインの両軸で浸透

また、スクラム組織を運営する上で、情報がオープンであることは重要です。

弊社では、チャットツールのSlack社内wikiであるConfluence、そして日報などを公開するためのドキュメントツールesaの3つを、情報共有のために使い分けています。

日報やConfluenceは職種によらず全員が見られますし、Slackはなるべくオープンチャネルを推奨しています。

このように情報は常にオープンにされているので、「必要な情報は、自分で取りに行く」という考え方を大切にしていますね。

ただ一方で、オンライン上でオープンにしているだけでは、必要な情報に対して「鼻が利かない」こともあると思っていて。

やはり、文字情報にすると色々と欠落してしまう部分があると思うんです。そこで、わからないことを直接聞けるような場や空気作りをするため、オフラインでのコミュニケーションも重視しています。

例えば、70名になった今も毎日全員で朝会を行い、お互いの意外な一面を知るような仕組みを運用しています。

具体的には、当番の人が「自分の話しやすいテーマ」を決めて話し、その場で次の人を当てて同じテーマで話してもらうのですが、ちょっとした人となりがわかって面白いんですよね。

また、社員が20人くらいの頃から始めたのが「おにぎり文化」です(笑)。弊社では、毎日19時におにぎりを握り、小腹がすいた人などがキッチンに集まり一緒に食べています。

▼毎日19時に、キッチンスペースで出来立てのおにぎりが用意される

「同じ釜の飯を食べる」みたいなオフラインの場所を介して色んなところで人が繋がると、情報が行き来しやすくなるんですね。

ここで情報がクローズだと「どこまで話していいんだっけ」みたいなことになりがちですが、弊社の場合ほぼすべての情報をオープンにしているので、活発なコミュニケーションが行われています。

オンラインの情報をオープンにするだけでなく、オフライン施策も合わせて運用することで、「情報を自分で取りに行く」文化が浸透してきていると感じます。

次のフェーズに対応し、評価制度とコーチングを強化していきたい

今後、もう少し強化していきたい領域としては、人事評価やコーチングの部分ですね。

現在は、市場の給与をベースに現職の給与を決めているので、特に人事評価というものを実施していません。

ですが、今後さらに組織の人数が増えていく中では、360度評価を実施して、等級と給与に関連をもたせるような仕組みを考えています。その過程で、等級の開示にもチャレンジしたいと思っています。

また、コーチングやメンタリングについては、今はスクラムマスターとSK、人事が主に担っていますが、まだ十分とは言えないので、そうした役割の人も立てていきたいと考えています。

最近では、成長のための気づきを促すために「フィードバック」の取り組みを一部の領域で始めていて、社員にも好評なので、まずはその拡大から始めようとしているところです。

今後も、フェーズに応じて柔軟に対応しながら、全社スクラムで乗り越えていきたいと思います。(了)

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