• 株式会社メルペイ
  • 取締役
  • 横田 淳

メルカリをコピーするだけではダメ。設立9ヶ月で200名を超えた、メルペイの組織づくり

〜独自の組織スコアリングを実施し、経営陣が「組織課題へのアクション」までを約束。2017年11月のスタート後、急拡大を続けるメルペイを支える社内制度を紹介〜

メルカリグループの金融領域における新たなチャレンジとして、その動向が注目されている株式会社メルペイ

同社は2017年11月に数名でスタートしたが、その後わずか9ヶ月で、社員数は200名を突破

組織が急拡大する中で、その組織づくりにおいては「1番のお手本であるメルカリの良いところを取り入れる。ただ、そのコピーだけでは成功できない」という考え方を持っているのだと言う。

例えば同社では、社員への10項目のアンケートを通じて組織の状態を可視化する「組織スコアリング」の仕組みを独自で開発・運用

そのスコアを毎月公開し、経営陣が組織課題とそれに対するアクションまでを全体の前で約束することで、社内制度に対する理解度・納得度を高めているのだと言う。

また他にも、「横のつながり」を強化するためのメンター同士の交流や、「同期」意識を強めるための施策など、組織の現状を踏まえたオリジナルの施策を行っている。

今回は同社取締役で、コーポレート部門の責任者を務める横田 淳さんに、メルペイの組織づくりについて、詳しくお話を聞いた。

スタートからわずか9カ月で、200名超の組織に成長したメルペイ

私は現在、メルペイのコーポレート部門の責任者を務めています。人事・総務系の業務から組織・カルチャーづくり、ガバナンスや予算管理系の所までを見ているという形です。

メルペイは、2017年11月にメルカリから数名ほどが出向という形で異動してきたことでスタートしました。現状は200名を超える組織になっています

事業としては、すでに公表させていただいているデジタルウォレットの領域への進出に加えて、金融領域における色々なチャレンジをプロジェクトベースで仕込んでいます。

メルペイはメルカリグループの中でも、特に大きなプラットフォームを見据えている重要な事業体です。

また、金融という領域には特殊性があるため、組織づくりに関してもインターネットと金融の良いところを両方取っていきたいという考え方があります。

とは言え最初は、メルカリという一番良い組織設計の考え方のお手本が目の前にあるので、まずはそれをインストールするような形でスタートしました

ただ「メルカリをコピーするだけでは成功できない」という危機意識もずっと持っていて

メルカリの良いところは、やはりカルチャーの浸透や、性善説でオープンな組織づくりにあると思います。ただ金融業はガバナンス等の観点から、それだけでは組織を運営できない部分もあるんですね。

だからと言って性悪説で進めるのか、と言うとそれはやりたくないので、メルカリの良いカルチャーを取り入れながら、人材も組織もハイブリッドな感じにしていきたいなと。私自身の感覚だと「なめらかな」経営管理を作っていきたいと考えています。

メルペイはまだ200名なので、新しいことも試しやすいんですね。そこでまずは新しい施策をこちらで実験的に行って、うまくいったら逆にメルカリに導入する、といったことも一部スタートしています。

独自の「組織スコアリング」を用いて、毎月、組織の状態を可視化

その代表例として、メルペイでは独自の「組織スコアリング」を行っています。これは、組織の状態を社員へのアンケートによってスコアリングし、可視化するものです。

もともとメルカリでも、半年に一度のコンディショニングサーベイを実施していて、そのスコアをトラッキングしていました。

ですがメルペイの場合、人数の増え方を考えても半年に一度では追いつかなくて。また、事業の立ち上げフェーズでサービスのローンチまでに時間がかかるので、その中で色々な組織課題が出てくるだろうと最初から考えていました。

それであれば「毎月」みんなにアンケートを取ろう、ということで、2018年の4月から独自に開発した組織スコアリングを開始しました。直近で言うと回答率は94%なので、かなり浸透しています。

具体的には、10個の質問があり、それぞれに10点満点で回答するようになっています。最初は5段階の評価にしようかとも言っていたのですが、なるべく細かく変化を検知するために、10段階としています。

質問内容に関しては、過去に自分たちが受けてきた組織サーベイの質問を参考にしつつ、組織として今、何を意識して会社を運営していきたいかということをディスカッションして決定しました。

例えばわかりやすいのは、「組織の戦略を理解していますか」という質問です。

これはもともと、課題に感じていたポイントでもあって。ベンチャー立上げ時は戦略もどんどん変わっていくので、全員がそれにしっかりキャッチアップしているのか、という不安があったんです。

実際に、最初は戦略の理解度に対するスコアもあまり良いとは言えず、「ロードマップ議論」もけっこうありましたね。メンバーが「ロードマップをくれ」ってよく言っていたんですよ。

でもそれって本当は、経営陣に求めるものではなくて、みんなで作るものなんですよね。ですが新しい人がどんどん入ってくる中で、なかなかそれも難しいということがわかってきたので、今ではオンボーディングのプロセスに「戦略インプットの会」を組み込んでいます

これは今のプロダクト進捗や状態について、各担当VPから新メンバー向けに話してもらう会です。入社後すぐのタイミングでこうした機会を設けたことで、実際に戦略への理解度のスコアも上がってきました。

スコアから課題をあぶりだし、「アクション」までを経営陣が約束

この組織スコアリングに関しては、毎月集計した数字を全社公開しています。

その際には代表の青柳であったり、経営陣であったりがみんなの前に立って、課題意識がどこにあるのか、その改善のために誰が何をするのか、というアクションまでを約束しています。

するとメンバー側も、「この施策はコーポレートが勝手にやっているのではなくて、組織のこの課題を解決しようとしているんだな」という形で理解ができますね。

毎月このプロセスを回しているので、施策を行った結果どういう変化があったか、ということも報告されます。これによって、「経営が組織づくりに本気でコミットしている」という気持ちが現場にまで伝わっていると思います。

逆に「この部分に関しては、スコアは悪いけど変えません、なぜなら…」という話になることもありますね。

ただスコアを取って満足するだけではなくて、経営メンバーがその結果を見て、きちんと白黒つけてアクションプランまで提示する。これが大切だと思います

チームごとのスコアに関しては、マネージャーだけに公開しています。各マネージャーはそのスコアを見て、1on1などを通じたメンバーのケアを行っていますね。

メンター制や「同期」を活かして、横のつながりを強化中

また、オンボーディングのプロセスにも、メルペイ独自の工夫を取り入れています。特に「横のつながり」を強化するということは意識していますね

例えば、入社後1ヶ月〜1ヶ月半ほどを目安にメンターが全員につきます。基本的には同じプロジェクト・チームのマネージャー以外の人、つまり評価者ではない人がメンターになります。

ただメルペイに関しては、メンター・メンティーと言っても実質的には入社が3ヶ月しか変わらなかったりするんですよ。

そういった状況なので、逆にこのメンター制をうまく使って横のつながりを強化しています。例えばプロジェクトを越えてメンター同士が交流する「メンターランチ」を行っていたりしますね。

他にも、同じ入社タイミングの方に「同期会」を開いてもらっていたりします。「月に2回、同期でごはんに行ってください。ランチで2,000円まで補助します」といった形で、コミュニケーション施策のひとつとして実施していますね。

また、社内コミュニケーションツールのSlack上に「同期のチャンネル」も都度作成しています。

そこでは同日入社のメンバーは全員参加して、既存のメンバーにもなんでも質問できるようになっています。

このように、中途で社歴の浅いメンバーがほとんどだからこそ、互いを知る機会を会社側から用意するようにしていますね

「性善説でルールが少ない」組織のベースにある、バリューとOKR

メルカリのとてもいい文化だと思うことのひとつに「ルールの少なさ」があるのですが、これが成り立っている理由として、バリューがしっかり浸透していることは大きいと思っています

バリューに反する行動に対してみんながどんどん指摘し合う文化があるので、性善説をベースにして社内制度を作ることができるんですね。

ですので、バリューへの理解は非常に重要です。オンボーディングの最初のプロセスはメルカリグループ全体で行われるのですが、その中でも、ミッションとバリューの説明は担当者から直接行っていますね。

例えば、「All for One」は「皆で助け合って頑張ろうね」ではなくて「ミッション達成のため・成功のために全員があらゆることをやっていく」という考え方ですよ、といった話をするイメージです。

これは、誤ったバリューの解釈で動かないように、オンボーディングの中でも全社的に特に大切にしている部分ですね。

また、目標管理も重要だと考えています。メルカリもメルペイも、目標管理はOKRで行っているのですが、「必死に頑張ってやっと70点取れるくらい」の高い目標を掲げるようにしています

また、意識しているのは施策・タスクレベルで目標を設定しないということです。

と言うのも、常に先を見据えた高い視点を持って、そこから落とし込むことが重要だからです。

例えばコーポレートチームでは、「組織スコアリングの数字を上げる」ことをOKRにも入れているのですが、具体的な施策に関しては四半期で目標設定をしていません。

なぜなら「私の仕事はこれをすればOK」という考え方ではなくて、「その施策が組織にとって本当に効果があったのか」をしっかり追ってほしいからです。

またOKRはクオーターごとに設定しているのですが、メルペイは今のフェーズ的に、1ヶ月ごとに組織が変わると言っても過言ではない状態にあります。

その中では、基礎としてOKRを持ちつつ、「判断して施策に落とし込む」ということはもっと早いサイクルで回す必要があります。

施策をやるだけではなくて、継続してPDCAを回して改善することを意識するために、OKRはこのような運用をしています。

組織づくりも、ネットサービスと同様に「とにかく1回やってみて判断する」といったスクラップ&ビルドを繰り返しつつ、やったこと1つひとつをしっかり評価することが大事だと考えていますね。(了)

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当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

そこで開発したのが、1on1の運用と改善で、メンバーの内省を促進し、パフォーマンスを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。

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