• 株式会社エーピーコミュニケーションズ
  • 取締役副社長
  • 永江 耕治

「教育」が、組織を成熟させる。人材育成を加速する、100コース超の社内大学の仕組み

〜人の成長には「目標管理」「キャリア開発」の両輪が必須。人を育てて組織力を高める、人材育成プロセスの全貌〜

労働人口の減少や売り手市場を背景に、人材育成の重要性は増すばかりだ。

システムインテグレータ事業を展開する株式会社エーピーコミュニケーションズでは、「目標管理」と「キャリア開発」を人材育成の両輪として位置付け。現在およそ400名弱の従業員を、組織的にサポートしている。

例えば、目標へのフィードバックの頻度を上げるためには、上司と部下の「1on1」を導入。更にその質を高めるために、マネージャー同士の共有会「1on1 GUNSHI」を行っている。

※「1on1」に関しては、こちらの記事をご覧ください。

また、キャリア開発を後押しする「APアカデミー」という社内大学を2009年に設立。社員がコンテンツの作成と講師を担う同アカデミーでは、現在100以上のコースが展開されているそうだ。

今回は、当社で約9年間、人事領域の責任者を務めてきた取締役副社長の永江 耕治さんに、人材育成の仕組みづくりのプロセスや概要を伺った。

目標管理とキャリア開発、どちらが欠けても人は成長しない

私は大学卒業後、3DCGの仕事、デザイン、サーバーサイドのプログラミングをやっていました。そこから、インフラを本格的にやりたいなと思い、2002年に創業7年目のエーピーコミュニケーションズに入社しました。

ネットワークエンジニアとして、お客様先に常駐するところから始まり、2009年からは人事領域と情シスの責任者を担うようになりました。

現在は副社長として、事業領域の責任者をしております。

弊社の人材育成は「目標管理制度」と「キャリア開発制度」の両輪から成り立っています。

目標管理は、短期の目標達成のために行い、専用のシートに落とし込まれます。これは会社のメンバーとしてしなければならないこと、つまり「Must」の部分ですね。

▼「目標達成シート」の一部

キャリア開発は、中長期の目標達成のために行い、キャリアシートに落とし込まれます。これは中長期で社員がどうなりたいかという「Will」の部分となります。

「キャリアシート」の一部

また、APアカデミーという社内大学を作り、社員に対してのキャリア支援体制を整えました。現在は、100を超えるコースがありますね。

短期の目標管理と中長期のキャリア開発が両輪として回ることは、人材育成を考えた時に非常に重要なんです

目の前の目標ばかり追っていても、あるべき姿にうまく向かっていない可能性があるので、先を見据えないといけない。かといって「僕は将来、社会貢献をしたい」とだけ言って足元のことをやらない、というのも成長につながらない。

短期と中長期の両輪がうまく回ると、人は成長し、更には短期の業績目標と長期の会社のビジョンが実現しやすくなると考えています。

納得感のあるフィードバックのために「1on1」を導入

目標設定はMBO方式で行っており、進捗を追うために1on1とフィードバック面談が設定されています。1on1は理想としては1ヶ月に1回、最低でも3ヶ月に1回は行うようにしています。

フィードバックの定義は「部下に対し、耳の痛いことも含めて、仕事の様子・状況をしっかりと伝え、成長を立て直すこと」です。

そして、良いフィードバックをするためには、SBI情報を集める必要があると思っています。

SはSituationで「どのような状況で、どんな時に問題があったか」ということ、そしてBはBehaviorで、「どんな行動に問題があったか」ということです。

最後にIはImpactで、「問題行動がどんな影響をもたらしたか」です。このSBI情報が年に1〜2回のフィードバック面談だけでは集まらないため、1on1を行っています

この形にたどり着いた背景としては、以前、「評価の結果に納得いかないんです」という声があがってくるケースが何件かあって。

その際、評価の結果はあまり関係なく、共通していたのは「上司と部下で評価に至るまでにコミュニケーションが取れてない」という点でした

何かあった時にこまめにフィードバックをしていると、結果「評価が悪かったです」となっても、納得感は醸成しやすいです。

一方、フィードバック面談でいきなり「あなたはこうだよね」みたいに伝えると、結果が良くても悪くても納得感が醸成できないケースがあるんですね。

こういった背景から、1on1でフィードバックの頻度を上げるようにしています。

1on1の改善のため、メンターを集めたディスカッションを実施

部下に1on1で話してほしいことは、「自分の仕事の報告」「職場で起こっていること」「自分の中長期のキャリア」の3つです。

あくまでも部下の話したいことを話してもらい、部下の話をしっかりと聞き取ることを、メンターである上司にお願いしています。

1on1についてはまだまだ改善していかなければならない余地があると思っています。現在は約80人ほどがメンターをやってくれているのですが、フィードバックの一環ということもあり、中には「詰め詰め1on1」となってしまうケースもあって。

そうなると1on1を受ける側は、詰められないための準備をすることになるんですが「それでいいんだっけ?」と感じることはあります。

ここら辺の課題については「1on1 GUNSHI」という会を開催し改善していっています。メンターから希望者を集め、ディスカッションをしながら1on1を良くしていく取り組みで、年に4~5回ほど開催しています。

過去の1on1 GUNSHIでは、例えば話の引き出し方や気付きを促すタイミング、メンバーの本音の聞き出し方、考えに固執している方へのアプローチ方法といった、具体的な課題について話し合われました。

参加者数も徐々に増加しており、それ自体が「メンター側の意識の向上」だという声もありましたね。

キャリア開発は「社内大学」APアカデミーでサポート

一方で中長期のキャリア開発については、APアカデミーという社内大学を作り支援をしています。

2009年に私が人事領域を見るようになり最初に手がけたのが、この社内大学作りです。

▼「APアカデミー」の実施風景

当時、人材開発の担当者がひとりで研修も担当していたのですが、その人が「教えられる範囲」が会社の教育のすべてになってしまっていたんです。つまり、人の可能性にキャップがかかっていた状態ですね

とはいえ、そんなに投資ができる状態でもなかったので、社内の人が講師を担う社内大学の仕組みを考えました。

人が200人いて社長や役員もいるのであれば「なにか教えられるだろう」と思い、2009年に6コースからスタートしました。

2012年に30コース、2015年に70コースになり、現在は100以上のコースがあります。

経営・マネジメント系のコース、プロジェクトサービスマネジメント系のコース、入社時のオンボーディング用のコース、技術研修・技術勉強会のコースなど様々ですね。

基本的には、社員がコンテンツを考え講師をします。技術系のコースだと、「技術戦略チーム」というチームがコンテンツ作りと講師を担っています。

例えば、今年の4月から始まった「TUF(Technical Use for the Future)研修」というカリキュラムがあります。

こちらの目的は、技術分野における「職務経歴書に記載できる実績づくり」です。技術分野は事業計画や世の中のトレンドなどを鑑みて決められ、2018年度は「AWS」「kubernetes」「自動化」をターゲットとしています。

実際の研修の進め方としては、「これをこうすればこうなります」というチュートリアル的な内容ではなく、「こんな感じのものをつくってください」と要件だけを提示し、受講者自身がとことん自分で考えて手を動かすようなカリキュラムになっています。

外部に研修を委託するのではなく、社員がコンテンツ作りと講師を担うことで、定期的に振り返りをし、内容をより良くしていくことができます

なお、APアカデミーを受講する動機づけとしては、ある役職につくために受けなければならないコースを設定するといった工夫をしています。

そういったコースは事業部長の推薦がないと受けられないようになっており、昇進するためには必ずAPアカデミーでのインプットが必要な仕組みになっています。

教育で、組織の成熟度は上がっていく

APアカデミーで教育を続けてきたことで、組織力がとても上がったと実感しています

例えば、幹部に施策を落とし込むスピードが上がりましたね。今では当たり前ですが、36協定が叫ばれ始めた頃、「45時間以上の残業は駄目だよ」といったことを社内に浸透させる必要があったんです。

その際、いきなり「36協定を遵守して長時間労働をやめましょう」と言っても「お客さんがいるし、忙しいから難しい」みたいな声が出る可能性が高いですよね。

そこで、まず全6回の労務系の研修を実施しました。「今こんな勤務状況です。この人達がこういう状況になっています。あなただったらどうしますか?どのようなリスクがありますか?」といった形で、一般論ではなくケーススタディを中心に研修を行いました。

そして、その後「36協定の遵守及び長時間労働削減について」という通知を出し、施策として落とし込んだところ、とてもスムーズに幹部メンバーが動いてくれました。

多くの人は、「意味がないな」と思ったら動かないんですよね。逆に意味があると思えば動いてくれます。こういった施策の実行スピードは、やはり教育によって全く変わることを実感しました

今後は組織領域の「内的」部分を強化し、文化を作っていきたい

組織変革を進める際に、ケン・ウィルバーという人のフレームを使っていまして、個人・組織という軸、外的・内的という軸で課題を考えています。

この軸で考えると、組織領域の外的な部分は、目標管理やAPアカデミーを始めとして、人事制度として大分揃ってきたかなと思っています。

一方で、組織領域の内的な部分、つまり文化のような目に見えないところがそれらの仕組みに追いついているかといったら、良くなってきてはいるもののまだまだ改善の余地があるかなと

そのため、実はこの2年ほどは、組織の内的な部分を意識しています。

例えば、1on1についても仕組みは作ったものの、魂が入っているか・文化として根付いているか、と言えばまだまだだと思います。

なぜ1on1を実施するのか? 相手の気持ちを汲み取って、話したいことを引き出せているのか? といった細かい部分の質を上げるのは非常に時間がかかるんですね。

今後は、用意した仕組みに文化が追いつくようになり、それが言語化されるような強い組織を作っていきたいと思います。(了)

「チームのパフォーマンスを最大化したい」と思うあなたへ

当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

そこで開発したのが、1on1の運用と改善で、メンバーの内省を促進し、パフォーマンスを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。

進化したマネジメントを体験したい方は、ぜひ、チェックしてみてください。