• Supership株式会社
  • 人財開発本部 本部長
  • 吉田 毅

組織を変える第一歩は「人への興味」? 自走型の人材を増やす、Supershipの1on1活用

〜人事制度は、自社に集ってくれた人たちにどう在ってほしいかという「願い」。多様な人材1人ひとりが自立・自走するための組織づくりとは〜

2015年11月に、nanapi、ScaleOutをはじめとする3つのベンチャー企業が統合する形でスタートし、現在(※2018年11月)は6社の子会社及び1社の関連会社によって構成されている、Supershipホールディングス株式会社。

もともとは個々に独立していた企業が集まった同社では、多様な人材が互いを認め合い、コラボレートしながら事業を成長させていく必要がある。

そのためには、いかに1人ひとりが自立・自走できている組織を作るかということが、人事的に大きなテーマであるのだという。

そこで同社では、その中核組織において、2016年7月よりマネージャーと部下の対話の場所として「1on1」を導入。

両者間のコミュニケーション不足を解消するとともに、自己成長のための内省と抽象化のサイクルを回すための場所として位置付けている。

また2017年の11月からは、組織サーベイツールとして「wevox」を導入。毎月、各部門のマネージャーに向けてチームの状態をフィードバックすることで、組織の改善につなげている。

今回は同社の人財開発本部で本部長を務める吉田 毅さんと、採用・人財支援部の部長を務める大月 英照さんに、1on1導入時のハードルの乗り越え方や、組織サーベイの活用法についてお話を伺った。

人事制度とは、この会社に集ってくれた人に対する「願い」だ

吉田 私はSupershipホールディングス入社の前は、12年半ほどヤフー株式会社におりまして。最後の3年は人事として、1on1の導入を始めとする組織改善に取り組んでいました。

Supershipホールディングスは、Supership株式会社を中心に、6社の子会社及び1社の関連会社より構成されています(2018年11月時点)。最先端のテクノロジーとデータを活用し、新たな価値の創出を目指してサービス・ソリューションを提供しています。

2015年11月に3つのベンチャーを統合する形でスタートしたのですが、私がジョインしたのは2015年の6月です。統合準備の段階から、入らせていただいていた形ですね。

▼【左】吉田さん 【右】大月さん

大月 私は、2017年の4月にSupershipに入りました。

最初の頃は採用に加えて、ビジネスパートナーと呼ばれるような立場で、事業部人事として働き方の改革や組織編成などを推進しており、1on1の浸透も担当していました。現在は、採用とPMI(※)がメインの業務になっていますね。

※Post Merger Integration。M&A成立後の統合プロセスのこと。

吉田 弊社は文化の違うベンチャー企業を次々にM&Aしてきたので、本当に多様な人材が集まっていますし、それぞれが共有する価値観も働き方も異なっています。したがって人事としては、今なお、難しい部分はありますね。

「キングダム」という秦の始皇帝を描いた漫画が個人的に好きなのですが、主人公が中華を統一していく中で、法治国家を目指すんですよ。優れた一人のリーダーが国を治めるのではなくて、法律によって国を治めていこうとするんですね。

その時、ある有識者に「法律とは何か」ということを聞きに行くんです。すると、逆に問い返されて、「刑罰によって人を律し治めるもの」といったことを答えるのですが、それは違うと。

そして有識者は「法とは願いで、国家が国民にのぞむ人間の在り方の理想を形にしたものだ」と答えたんです。

「これはまさに人事だな」と、感動しまして。

全ての人事施策は、「この会社に集ってくれた仲間たちにどう在ってほしいか」という願いに基づき、それを具現化するためにあるべきだと気が付いたんです。評価制度も、1on1も、組織サーベイも、全てその願いの実現のためにあるんだな、と。

特にSupershipの場合は、多様な人材が集まっているからこそ、互いを認め合いながら、事業的なインパクトを生み出していく必要があります。そんな組織を作るために人事施策を実行する、という気持ちでやっていますね。

1on1を導入した目的のひとつは、自立・自走人材を増やすこと

吉田 弊社にはグループ全体で社員が500名ほどいるのですが、私たち人財開発本部を含めたバックオフィス機能は、Supershipホールディングスに所属しています。

そして各事業会社に対して、シェアードサービスという形で必要な機能を提供しています。しかし、元々はそれぞれが独立した企業体ですので、そこに土足でずかずかと入っていって「これをやれ」というようなことはしていません。

なるべく既存の仕組みを活かしながら、伸ばしていくというスタンスを守っています。

1on1に関しては、Supershipを立ち上げた段階から「やりたいよね」という話をしていました。そして立ち上がって半年ほど経ったタイミングで、全社に導入しました。

当時の組織課題として、コミュニケーション、特に上司と部下とのコミュニケーションが不足しているというものがありました。

また同時に、人材やその背景が多様であるがゆえに、1人ひとりがいかに「自立し自走できるか」ということが、組織づくりにおいて非常に重要でした。

よく話されるテーマですが、「経験学習理論」によると、成人は「経験」から学習すると言われています。

単純に経験を積むだけでなく、経験した内容を定期的に振り返って内省し、そこにある種の抽象化をかけて、エッセンスを抽出し、次の行動計画に落とし込むことが重要です。

この「内省と抽象化のサイクル」を回していくことで人は成長していくわけですが、それを「やればいい」と言っても、誰もやらないんですよね

たった一人で内省することは、簡単に見えても、それを習慣化するのが難しい。そのために、1on1を定期的に開催してもらっています。

1on1を使えば内省ができますし、抽象化に対する効果的な助言ももらうことができるからです

「これって意味あるの?」という意見は、最初は必ず出る

吉田 ただ、「経験から学ぶために1on1をしてください」なんて人事が言うと、「暑苦しい」とか「やりたくない」みたいな声が一定数上がってきます。

ですので、厳しくガチガチに「このやり方でやってください」みたいなことは言っていません。「隔週1回、30分は部下と1on1でコミュニケーションを取る機会を作ってください」という程度のガイドライン提示に留めています。

前職でも経験したのですが、「これやって意味あるの?」みたいな意見は必ず出ます

そういう人に対しては、「まずは半期ごとに回している評価の進捗確認を、2ヶ月に1回の頻度で確認してみましょう」といったように、目的と効果が明確なテーマから取り組んでもらっています

このように現場に寄り添った実施を促してみると、それなりに良さを感じとってくれる人も多くいて、「続けていこうか」という雰囲気が、徐々に広がっていきましたね。

大月 弊社は色々な会社の集合体なので、最初は文化もなかったですし、そもそも1on1を知らないという人もいました。そこで最初はマネージャー向けにコーチングの研修などを行って、理解を深めていきました。

また初期は、人事側で1on1の実施率をずっと追いかけていました。隔週で実施していなかったら、人力でちょっとアラートをかけたり。

今は浸透してきているので、新しく入社した社員への1on1だけを人事主導で行っています。

人事からの確認は、新卒であれば、3ヶ月間の研修中は月1回で実施しています。中途社員の場合は入社して1ヶ月と、試用期間の終わる3ヶ月後のタイミングですね。

「組織の状態」を可視化したことで見えた、1on1の効果

大月 また2017年の11月からは、組織サーベイツールとして「wevox」を導入しました。

wevoxは、従業員への定期的なアンケート調査を実施することで、組織の状態を項目別のスコアとして可視化するツールです。例えば「自己成長」「健康」「人間関係」「組織風土」などの項目があります。

今はグループ500人中、300人ほどを対象に月1回のアンケートを実施しています。そして、各部門の管理職に対しては、結果のスコアを公開しています。

なんとなく「自分のチームは大丈夫」「うちは雰囲気良いよ」と言うマネージャーっていると思うのですが、それはおそらく「自分の周囲の3人」から得ている印象なんですよね

ですので、それがスコアとして可視化されると「実はダメだった」といったこともわかって、課題が浮き彫りになります。

スコアの振り返りについては、月に1回「フィードバック会」を開催しています。ある程度のセクションの管理職を集めて、部門ごとのスコアをフィードバックするものです。

例えば、「前回と比較するとこのスコアが下がっているので、こういうことがあったんじゃないですか」といった投げかけを人事からしたり、逆に心当たりがないかヒアリングしたりしています。

また、これは全体に言える傾向なのですが、1on1をしっかり実施しているチームは、「上司との人間関係」や「承認・関心」といったスコアが高くなりやすいですね。

それだけではなく、「理念 / 戦略 / 事業」といった1on1だけでは上がりきらないようなスコアも高くなる傾向があるんです。

やはりマネージャーとのコミュニケーションが上手くいっているということは、組織づくりにおいては非常に大事な要素かなと思います。

人事が「組織課題だ」と言えば言うほど、組織は疲弊していく…?

吉田 1on1にしても組織サーベイにしてもそうなのですが、私はマネージャーに、もっと組織と人に興味をもってもらいたいと思っています。

興味が持てれば、人はその対象を熱心に観察すると思うんです。観察すれば、何かを発見したり感じたりして、それが言動に現れてくる、部下との繋がりも徐々に改善されていく、そんな風に考えています。

「ダイエットの極意は毎日体重計に乗ること」だと武 豊さんが言っていたのですが、全く同じことだなと思います

組織サーベイに関しても、1つひとつの数字に一喜一憂してもらいたいわけではなく、出てきた結果をもとに「今組織で何が起こっているのか、起ころうとしているのか」を常に意識する

組織長がそういった習慣を持つことが、組織開発には重要であると思っています。

実際にwevoxのスコアを見ていても、マネージャーがより組織のスコアを見ているチームの方が、より良い状態に向かっていくなと実感しています

ただ、最近ひとつ悩んでいることがあって。

サーベイを通じて組織の課題を抽出し、それを解決していくことは素晴らしい取り組みです。しかし一方で、「課題発見しよう、課題解決しよう」とマネージャーや人事が声高に言えば言うほど、組織が疲弊していくジレンマを感じていて

見出された課題は解決されるのですが、組織はなぜか疲弊していく。もっと、組織に内在している明るい可能性を伸ばすようなポジティブなアプローチがあるんじゃないか、ということはすごく思っています。

大月 ベンチャーでは、人事のトップが社風を作っていく部分があると思うのですが、吉田のこういった考え方はもっと社内に波及させていきたいですね。

個人的には、例えばフィードバック会の際にも、あまり悪い言い方はしないようにしています。「良く出来ている、良くなっている、こうするともっと良くなるよ」という話し方を中心にしていますね。

やっぱり「出来ていない」話をするより、「出来ているよ」と言われたほうが、無理しなくても自己暗示的にダメなところにも気が付くと思うので。良いところに目を向けるということは、大切だと思いますね。

今後の更なる組織拡大に向けて、引き続きがんばっていきたいです。(了)

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当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

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