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「AI + IoT」で百貨店のトイレから「行列」が消える? 大丸東京店のテクノロジー活用

〜センサーとITを組み合わせ、トイレや飲食店の「空席状況」をリアルタイムに可視化。お客様を「待たせない」大丸東京店の取り組みとは〜

誰でも一度は、「行列」に並んだ経験があるのではないだろうか。特に急いでいる時など、その待ち時間がもったいないと感じることも多いだろう。

東京駅と直結するその立地の利便性から、平日1日あたり約11万人が来店する大丸東京店。同店では、以前からアクセスの良い地下1階と2階のトイレや、各階の喫茶にできる行列の解消に頭を悩ませていた。

そこで2018年8月より、株式会社バカンが提供する空席状況の表示サービスを導入。センサーやカメラから得た情報をインターネット上で解析し、リアルタイムの「空き状況」をお客様にわかりやすいビジュアルでお届けするサービスだ。

大丸東京店では、館内に設置したデジタルサイネージと、自社のWebサイト上に情報を配信。顧客が事前に「空席あり」か「満席」かの情報を確認することができるようになった。

結果的に、課題だった行列が緩和されただけではなく、館内の滞在時間や来店者数にも間接的な効果があったという。

今回は株式会社大丸松坂屋百貨店の営業推進部で顧客へのサービス提供を担当する中村 康隆さんに、本サービスの詳しい導入経緯と効果をお伺いした。

「東京駅直結」の百貨店として、ユーザー目線の店舗づくりを行う

大丸東京店はいわゆる百貨店になるのですが、実は「百貨店らしくない」お店でもあります。

例えば、百貨店の1階というと、ブランドショップや化粧品売り場を設けている店舗が多いんですね。ですが大丸東京店に関しては、1階でいきなりお土産として食品が買えるようになっています。

これは、店舗が東京駅と直結しているという立地に関係しています。

東京駅は、1日におよそ300万人が利用し、その内の120万人ほどが駅を出ると言われているんですね。そういったお客様にとっては、いわゆる「東京のギフト」をお土産に購入されたいというニーズが圧倒的に高いんです。

本来は百貨店って、お土産や食品のような目的購買性の高いものをエントランス階以外のフロアに設置し、お客様に館内を回ってもらおうとします。

ですが大丸東京店に関しては、実際に来るお客様の「クイックにお買い物をしたい」というニーズをいかに満たせるかという視点から、店舗づくりをしているんです。

こういった点からもわかるように、あくまでもユーザー目線を第一とすることを非常に大切にしています。私が所属している営業推進はまさにその部分を担当していて、お客様目線で「今の売り場をどう変えていくのか」「どのようなサービスを提供していくのか」を考えていく部署です。

フロアによって「トイレ」の混雑にばらつきが。慢性的な行列も…

こうした店舗づくりを進めて行く中で、力を入れてきたことのひとつに「トイレ」がありました。

一般的に、百貨店に対しては「綺麗」「清潔」といったイメージを持たれることが多いと思うんですね。また、駅を利用される方で、その最寄りの百貨店でトイレを使う、という方も多いんです。

ですので、我々も2007年にオープンしてから、トイレの空間を非常に大事にしていて。プロジェクトチームを組んで、各階にそれぞれ特性を持たせ、内装や構造を工夫してきました。

ですが課題として、アクセスの良い地下1階や2階のトイレに慢性的に人が並んでいる状態になってしまっていて。また、トイレのご案内も、「人間」に頼るしかない状態でした。

お客様はどの階にどんなトイレがあるのかわからないので、「どこが空いているのか」と聞かれるのですが、それに対してはスタッフが各自の知識でご案内するしかなかったんですよ。

各自ポケットマニュアルを持って一生懸命ご案内していたのですが、それ以外に有効なツールはありませんでした。

そうなるとなかなか行列も解消しませんし、実際にスタッフからも「この問題を解消したい」という声が上がっていたんです。

そんな中、もともと弊社の大阪のメンバーがバカンさんのサービスを知って問い合わせをしていて。東京の方で抱えている問題の解消に良いのではということで、本部のネットワークを通じて紹介をいただいたんです。

「空席情報」を可視化し、行列を解消するテクノロジーを導入

バカンさんが提供しているのは、センサーやカメラを使って、その場所に「空席があるか、どのくらい混んでいるか」を計測し、そのデータをデジタルサイネージやWebページ上に届けるサービスです。

▼トイレの空席情報を画面上で確認できる(※画像はイメージです)

最初に知った時は、それはもうただ驚きましたね。特に、トイレの空室を管理することで「トイレ難民を救う」ということを掲げてソリューションを展開していて。

「行列を解消するスキーム」を展開している企業さんは、何社もあるかと思います。ただ、その中でも特にユーザー目線を感じて、非常に感心しまして。すぐにやろうということになりました。

意思決定はかなり早かったのですが、そもそも弊社にとって、「お客様が困っていることを解決して時間価値を創造する」というサービスは必要不可欠です。ですので元々、手段があればすぐに取り入れるという風土は持っていたんですね。

実際に導入検討がスタートしたのは、2018年5月のゴールデンウィーク明けです。そこから、どうにかお盆のタイミングまでに間に合わせようということで動いていました。

というのも、通常は平日1日あたりの来店数は11万人ほどなのですが、お盆のような帰省シーズンには14〜15万人に跳ね上がります。そして地方のお客様であったり、大丸東京店に初めて来られる方であったりも増えるんです。

そういった状況の中で、効率的にトイレをご案内できるツールが欲しかった、という背景があります。

また導入の際には、トイレだけではなく各階の喫茶にも同じシステムを導入することにしました。

喫茶って、百貨店の中では客数が一番多いカテゴリーのひとつなんです。そして特にお昼時には、お客様が多く並ばれるという状態になっていて

また各階の喫茶の場合、「こっちは空いてる、あっちは混んでる」というようにフロア内で見比べることができません。そういった意味合いで、トイレと同様の悩みをもたれるお客様が多かったので、そのニーズを満たすために一緒に導入しよう、ということになりました。

トイレの行列が解消された!館内の「滞在時間」にも効果が…?

導入後は、地下1階、1階、2階に設置している大きなデジタルサイネージに加えて、ホームページ上でも空席情報を公開しています。また、大丸東京店のアプリ上にもリンクを掲載しています。

▼実際に大丸東京店に設置されているデジタルサイネージの様子

さらに館内でも、従業員が自分の持っている端末上でその情報を見られるようにしています。2階の案内所ではiPadに情報を映して、ご案内の際にも使っていますね。

従業員から「便利になった」という声が出ているのはもちろんですが、お客様からもメール等でお褒めの言葉をいただいています。また実際に、2階の行列に関してはかなり解消されました。

この成果が収益にどうつながったか、ということは、正直なかなか換算しづらいんですね。ただ言えるのは、実際にトイレからスタートして館内を回られる方も多いんですよ。そこでもし行列ができていたら、すぐにお店を出てしまわれます。

その中で、サービス導入後に店内のお客様の滞留時間が4分伸びているので、その数字に対して間接的な効果はあったのではないかと思っています。もちろん他の施策の効果もありますが、実は入店客数も、導入後の半年で平均3%ほど増加しているんですよ。

一方で、お客様の声に関してはまだ集めきれていない部分があると思っています。今後はそれらを反映して、コンテンツを広げる方向性を考えていきたいですね。

と言うのも、「ただ空いているからそっちへ行く」ということを期待するのもなかなか難しいと思っていて。そこで例えば、サイネージ上やWeb上にクーポンを配信して、館内で誘導をするような「次の一手」に挑戦していきたいと思っています。

テクノロジーの活かしながら、お客様との関係性を強めていく

我々は、いわゆる「テクノロジー」と呼べるもの関して、正直まだまだ導入しきれていない部分があります。

ただその中で、今回の空席情報システムもそうですし、2018年の11月からは大丸東京店のオリジナルアプリをスタートさせました。

館内やプロモーションのご案内に加えて、お客様がアプリ内でポイントを貯められるようになっています。また、今後はスマートペイメントが決済手段として実装されることになっており、これは百貨店の中ではなかなか早いスタートを切っていますね。

今後はアプリを通じて、もっと多くのお客様に情報提供をしていきたいですし、空席情報も含めて、アプリユーザーに提供できるサービスをどんどん増やしていきたいと思っています。

アプリをフックにして、お客様との関係性をより深めていくということです。今はお手紙やダイレクトメールといった紙ベースの情報を得たいというお客様はどんどん減ってきていますし、「必要な時に必要な情報をくれれば良い」という考え方をされる方が増えていますよね。

ですので、お客様との関係性を深めていくためにも、「来店前」の情報提供をツールを使って強め、来店されたらこれまで通りしっかりとおもてなしをする。そういったことが、これからの百貨店には求められていると考えています。(了)

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