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めざすはレベニューの最大化!SaaSの分業体制に横串を通す「CRO」の役割とは

〜チーム間の分業と連携、うまくいってますか? レベニューの最大化をミッションに、事業戦略から組織づくりまでを担うCRO(Chief Revenue Officer)の役割〜

近年、盛り上がりをみせているSaaS市場。その組織体制として、マーケティングからセールス、そしてカスタマーサクセスまでの一連のプロセスを細分化し、分担する企業は多い。

株式会社ユーザベースの新規事業として生まれた、ABM(※)を支援するBtoBマーケティングプラットフォーム「FORCAS(フォーカス)」を提供する、株式会社FORCAS。

※Account Based Marketing:ターゲットアカウントに集中し、データ分析をもとに戦略を実行するマーケティング手法

同社でも分業体制の組織を構築していた一方で、部門間の橋渡しがうまくいかず、セールスの受注が伸び悩むという課題を抱えていた。

そこで導入したのが、MRR(月間収益)の最大化をミッションとする「CRO(Chief Revenue Officer)」という役職だ。

部分最適化しやすいSaaSの分業体制に対して、CROはレベニューの視点から最適な事業戦略と組織編成を考え、組織に横串を通す役割を果たしているという。

その結果、状況に応じた迅速な意思決定が可能となり、受注率は大幅に上昇。創業からわずか2年でMRRは5,000万を超え、急速な成長を遂げている。

今回は、同社でCROを務める田口 槙吾さんと、マーケティング&ブランディングチームのマネージャーを務める酒居 潤平さんに、CROの役割と組織の変化について、詳しくお伺いした。

COOの役職に違和感を覚え、レベニュー最大化を担う「CRO」に就任

田口 僕は、2016年にユーザベースに入社し、企業情報プラットフォーム「SPEEDA」のセールスに携わっていました。そのお客様のニーズから生まれたのが、BtoBマーケティングプラットフォーム「FORCAS」です。

FORCASは2017年5月に正式リリースされ、同年10月に分社化されました。そして僕は、2018年1月に同社のCOO(Chief Operating Officer)に就任し、新規顧客の開拓をミッションとしてきました。

▼【左】酒居さん【右】田口さん

ただ、自分ではCOOという役職にずっと違和感を覚えていたんですよね。

当時、ユーザベースグループには3人のCOOがいたのですが、僕以外の2人は、労務や経営管理などのオペレーション周りを担当していました。一方で、僕はがっつりセールスを見ていたんです。

そんな中、2019年4月に入社したメンバーが、入社1〜2週間で事業の3ヶ年計画やPLの収益モデルを出し、さらに人事労務まわりをゴリゴリ整え始めたのをみて、「これは絶対自分にはできない」と思いまして(笑)。

それがターニングポイントとなり、僕自身はレベニューサイドの責任者として事業を推進する役割を担っていることを明確にすみ分けできました。その形を表そうと、2019年4月にCRO(Chief Revenue Officer)に就任しました。

CROって何する人? 部分最適化をふせぎ、全体のバランスを取る

田口 CROのミッションは、MRR(月間収益)の最大化です。そのための事業戦略を考え、それを実行するのに最適な組織の形を編成します。

CROを導入する前から、FORCASではいわゆる「THE MODEL」で知られるような分業体制をとっています。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの大きく4つにチームが分かれており、全体で25人の社員が所属する形です。

この仕組みって、いわば究極の分業体制なんですね。マーケティングがリード数を、インサイドセールスが商談アポ数を、フィールドセールスが受注数を追うことによって、各領域が明確に分担され、効率的に動くことが可能です。

一方で、これは部分最適に陥るリスクもあります。特にプロフェッショナリズムが高いチームほど自責思考になり、チームを飛び越えようとする視座が欠けてしまいがちだと思っていて。

その全体最適のバランスを取るのが、CROの役割です。SaaSの場合、新規受注だけでなくユーザーに契約更新していただけるかがMRRに直結します。

なので全体最適の視点から、ボトルネックはどこで、今どこにリソースをかけるべきかの意思決定を行い、調整をしていくんです。

たとえば、CROの就任直後に、当時のセールスメンバーを半分に減らすという大きな意思決定をしました。前年比3倍の売上という厳しい目標を追っている状況下で、4人いたセールスのうち1人をマーケティングに、1人を採用に配置転換するというジャッジをしました。

これがもし営業部長という立場だったら、絶対にできなかった決断だなと思っていて。ただでさえ少ない人員で高いハードルを目指している中では、営業単独で見るとあえて人を減らすことは考えづらいですよね。

しかし、新規受注だけでなく、レベニュー全体の視点をもつことで、リスクをとった意思決定がしやすくなりました。実際、リードを供給するマーケティングを安定させ、今後のリソースを確保するための採用を強化したことで、結果的に売上目標を達成することができましたね。

一方で、僕は事業計画を策定したり、プロダクトを見ることはしていません。CROはあくまでレベニューに完全特化して組織のバランスを見ています。これはレベニュー組織のトップという形ではなく、あくまで目的に沿った組織がつくれているかを横串で見るような役割です。

「同じ顧客像」が見える体制の構築で、チーム連携がスムーズに

酒居 僕は現在、マーケティング&ブランディングチームのマネージャーを務めています。田口とは前職からの知り合いで、FORCASが分社化した頃に入社しました。

CROの役割が重要である背景として、我々の組織における「ABMの実践」があります。

ABM体制を導入する前、いわゆる「マーケとセールスの連携」に課題がありました。当時、リード数や商談数は順調に推移していた一方で、受注率が伸び悩んでいたんです。

そこで現場のフィールドセールスに話を聞いたところ、人員も少ない中、毎日4件ほど新規商談に駆け回ってくれているのに、案件化する確率がなかなか伸びていないと。これは、営業の気合いだけでどうにかなる問題ではありませんよね。

その原因を探ってみると、根本の課題は「顧客像が不明確であること」にあったんです。というのも、立ち上げフェーズではシンプルな目標を置いてスピードを重視したこともあり、FORCASの価値を実感いただける顧客像の議論が不明瞭なままに各部門が動いていました。

そこで2018年の夏から、全社的にABM体制に本格的に取り組んでいくことを決意しました。まずは、サービスとの相性が良いと思われる顧客をバイネームでターゲティングし、企業リストを作り始めました。

さらに、過去の受注企業等のデータ分析から650社をターゲットリストとして抽出し、それに合わせたマーケティングやセールスの戦略を立てて実行していきました。その結果、課題であった受注率が改善し、成長スピードが大幅に伸びていったんです。

ABMの実践では、継続的に組織をひとつの目標やターゲットに集中させて、活動にコミットする環境をつくることが必要です。

ただ、これって結構大変で。最初にターゲット企業を特定し、みんなで同じ方向を見て進んでいたとしても、各部門が個別に動いていると徐々にばらばらな動きになってしまいます。

そこで大切なのが、組織を横断的に見てバランスを整えてくれるCROの存在だと思っています。

田口 組織全体において自分たちの狙うべき企業を特定したことで、部門間で同じ目的に合わせた情報の集約・分析が可能となり、その目的や状況に合わせながら組織の再編成も行っていきました。

こうして顧客像に沿った組織体制をつくることで、組織間の連携が円滑になりました。よりスピーディーかつ明確に、新規のリード獲得から受注獲得、オンボーディングのPDCAを回してプロセスを改善することができています。

数字に強いだけでは務まらない。CROに求められる「人間力」

田口 ABM体制を構築し、現在はターゲット企業の見直しを四半期ごとに行っていますが、状況に合わせて組織の体制もフレキシブルに変更しています。

直近では、2019年7月からマーケティング以外の全チームを、従業員500人以上の「エンタープライズ」とそれ以下の「SMB」という2つのユニットに分けました。特定したターゲット企業の中でも顧客像が異なってきたため、それに合わせて組織を編成し直したんです。

ただ、組織の形を変えればうまくいくかというと、そうではなくて。僕はCROとして、部門間のメッセージや日々の数字を紡ぐことを意識しています。

たとえば、受注があった時には必ずインサイドセールスにメンションして、バトンがどう繋がっているかをきちんと可視化する。また、契約更新になったお客様がいれば、新規受注と同じテンションで共有して、担当したCSのメンバーからコメントをもらったりするんです。

こうすることで、各メンバーの日々のアクションがMRRに直結しているんだというメッセージが伝わりますし、他部門とのつながりを理解することができます。

酒居 部門間の連携に問題が生じやすい理由として、KPIが違う、情報共有がうまくいっていない、といった理由が色々あると思いますが、これを解決するためには「横串でつないでくれる存在」が必要だと思っていて。それがCROなんですよね。

CROと聞くと、数字をひたすらみて異常値があれば指摘するみたいなイメージがあるかもしれませんが、実は数字だけではなくて、すごく人間力が求められる役割だと思っています。

実際に田口を見ていると、MRRを最大化するための組織編成を考えるだけでなく、メンバーの適性や育成も考えていて、マクロとミクロの両方の視点を持つことが大切なんだなと思うんです。

田口 僕はもともと組織づくりが結構好きなんですよね。どこをどういう風に変えるとうまくいくのかを考えるのが、めちゃくちゃワクワクするんです。

ただ、理想だけではだめで、オペレーションをふまえて現実解を導きだすのが僕の仕事だと思っています。そのためには、メンバーそれぞれがどういう強みを持っているかを把握して、状況に応じて適切なアサインをしていくことが大切ですね。

酒居 また、CROができたことで、レベニューに関連する各部門の情報を田口に集約するようになったので組織全体の状況がより明確になりました。

週に一度は、マネージャー陣を集めて状況を共有し合うレベニューランチという場を設けているので、細かな調整や体制変更などの情報連携もスムーズになっています。

アクションの価値を可視化し、より良いユーザー体験を提供したい

田口 僕は今、営業:CS:育成=4:5:1といった形で、事業の状況に応じて自分のリソース配分を調整しています。来期からは現場に出ながらも、メンバーが常にMRRを意識して仕事ができる環境を作っていきたいと思っています。

そうすればもっと個々の役割を越えて動けると思うんです。「オールカスタマーサクセス」を体現できる体制をつくることで、ユーザーにより良い体験を提供したいと思っています。

酒居 僕は今まで、ABMの運用やCROの擁立など、自分たちで試してアウトプットしたことを、サービスのユースケースにするということがすごく面白いなと感じていて。今後もそれを作っていきたいですし、さらにスピーディーに実験できるような組織にしていきたいと思っています。

田口 今後も自分たちで様々な実験を行いつつ、ユーザーやパートナーとともに、未来のマーケティングの形を一緒に創り上げていきたいですね。(了)

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