• GMOペパボ株式会社
  • 代表取締役社長
  • 佐藤 健太郎

「組織の総体=カルチャー」ではない。活躍する人の共通点から作る、組織文化の高め方

〜社員数が3倍になっても「当たり前の文化」を維持する秘訣とは? カルチャーを体現する2大イベントを10年以上続け、その浸透を深めるGMOペパボの取り組み〜

2003年の創業以来、数々のWebサービスを生み出してきたGMOペパボ株式会社。

同社では、創業6年目となる2008年に「もっとおもしろくできる」という企業理念を策定。2011年には、新卒採用の開始をきっかけに「どういう人が組織に合うのか」を言語化するため、カルチャーの明文化に着手した。

そのために実施したヒアリング調査では「社内で活躍し、かつ仕事を楽しんでいる人」の共通点を探ることで、「大切にしてほしい3つのこと」として同社のカルチャーを定義。

さらに、社員(以下、パートナー)へのカルチャー浸透を促進していくため、数々のイベントを企画・実行している。なかでも、10年以上続き、同社のカルチャー維持に貢献している2大イベントが「P-1グランプリ」と「お産合宿」だ。

「アウトプットすること」を目的として年1回開催される両イベントは、エンジニアやデザイナーだけでなく、CSや管理部なども参加する全社イベントになっている。

その運営においては、「もっとおもしろくできる」というビジョンを軸として企画を練り、「飽きさせない工夫」と「新しい人も参加しやすい仕組み」を大切にしているそうだ。

今回は、代表取締役社長の佐藤 健太郎さんと、社内イベントの企画・運営を担当する総務グループマネージャーの和島 史典さんに、組織カルチャーの作り方からその浸透に至るまで、詳しくお伺いした。

▼左:和島さん、右:佐藤さん

会話から生まれた「もっとおもしろくできる」を企業理念に策定

佐藤 私は、創業者の家入氏がpaperboy&co.の事業を立ち上げてから、カスタマーサポート、広報、マーケ、バックオフィスに至るまで、事業づくり以外のほぼすべてを経験してきました。

2004年にGMOインターネットグループの連結子会社となり、2008年のジャスダック上場を副社長として経験した後、2009年に家入氏と交代して社長に就任しました。

その前後からパートナー数が100名を超えてきた中で、会社のカルチャーを明文化しようという話があり、創立6年目にして企業理念を定めることにしました。

ですが、これがなかなか決まらなくて(笑)。コンサルの方にもファシリテーションに入ってもらって議論したのですが、結局落としどころが見つからなかったんです。

それから少し経った頃、ある日パートナーとご飯を食べていたときに、他社がリリースしたサービスをみながら「これをこうしたら、もっとおもしろくなりそう」みたいな会話をしていたんですね。

その時に「あ、これだ」と思って。サービスを作るときも社内イベントを企画するときも、僕らは「もっとおもしろくできる」という思想を根底に持っていることに気がついて、それを企業理念としました。

一方で、ミッションについては事業内容が多角化してきたなかで、ズレが生じてきたところがあって。創立以来、実は1回ミッションを変更しています。

最初に掲げたワードは「We host your creativity.」でした。これは、レンタルサーバー事業「ロリポップ!」を通じて、クリエイティビティを発揮する人々をサポートするというものでした。

その後、ブログやECサイト制作サービスなども提供し始めたことから、対象の範囲を広げる形で「より多くの人に情報発信するよろこびを提供する」というミッションを改めて制定しました。

さらに、ハンドメイドマーケット「minne」などのCtoCサービスが立ち上がったことで、「インターネットと表現の可能性を追求し、誰でも活躍できる機会の提供をしたい」という想いが強くなってきて。

この事業変遷に合わせて、創立11年目にあたる2013年に、現在のミッションである「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」を定めました。

「社内で活躍している人」の共通点を、カルチャーとして明文化

佐藤 それと並行して、2011年から開始した新卒採用をきっかけに「どういう人が組織に合うか」を改めて言語化する必要がありました。

いわゆる組織文化にあたるものですが、僕は「カルチャー=組織の総体」ではなく、活躍している人の共通点から導き出されるものが、その企業のカルチャーだと思っています。

そこで「社内で活躍していて、かつ仕事を楽しんでいるのはどういう人か」を実際にヒアリングしてみたところ、いくつかの共通点が見えてきて。それを「大切にしてほしい3つのこと」という言葉でまとめました。

ひとつは「アウトプットすること」です。インターネットで表現する人たちをサポートするだけでなく、仕事を楽しんでいる人は、自らもWebサイト制作などを通じてアウトプットをしていました。

次に「ファンを増やすこと」。尖ったことはしても、誰かを傷つけることは絶対にしない。Web上のファンだけでなく、就活生だったりオフィス清掃の方々だったり、オフラインも含めたファンを増やすことを意味します。

そして3つめが「みんなと仲良くすること」。活躍している人は学校に来るような感覚で出社して、サービスを作り、放課後にはサークル活動のようなものに参加して楽しんでいたんですね。

実は昔、数値管理できつく言ってしまうことがあったり、現場とのコミュニケーションがうまくいかなかったりして、社内の雰囲気がギスギスしていた頃があって…。でも、ある年に開催した夏祭りをきっかけに、仕事以外のところでコミュニケーションを取ることの重要性を感じました。

会社って「人」にまつわる様々な問題があるじゃないですか。たとえば、誰かと誰かの相性が悪いからチームがうまくいかない、といった状況では、経営が解決できるものとそうでないものがあると思っていて。そうした人の問題を、できる限りカルチャーで排除することが重要だと思っています。

なので、採用においても、いくら優秀でもカルチャーフィットしなかったら採用しない、ということは明確にしていますね。

理念やカルチャーはWebサイトでも公開している情報なので、そもそも知っていて理解しているか、その上で自分が活躍できるイメージを持てるかどうか、をひとつの判別ポイントにしています。

カルチャーは「体現」により浸透する。10年以上続く2大イベント

和島 私は2010年2月に、デザイナーとして中途で入社しました。2016年からは、経営管理部で総務グループのマネージャーを務めています。

カルチャーフィットした人を採用することと同じく、今いるパートナーにカルチャーをより浸透させていくことも大切です。それをミッションとして担っているのが、総務になります。

そこで「アウトプットすること」のカルチャーを体現する場として提供しているのが、「P-1グランプリ」と「お産合宿」という2大イベントです。

これらは10年以上続いているイベントなのですが、今年から総務が主体となって運営しています。

まず「P-1グランプリ」は、社内のプレゼンテーション大会です。もともと事業アイデアを生み出すことをメインに企画していましたが、今回、改めてその目的を問い直しました。

過去には「30days Album™」など、「P-1グランプリ」から事業化したアイデアも複数ありましたが、やはりCSや管理部の人からすると少し参加しづらい空気もあったりして。実際、参加者の多くがディレクターやエンジニアだったんですね。

そこで、今年は事業アイデアの発表ではなく「個人が自らを表現するための場」に変えました。具体的には「ペパボ × 私らしいもの」をテーマに募集したところ、全部で37件、全職種の人からエントリーがありました。

▼「P-1グランプリ」での最終選考プレゼンの様子

そして、最終選考のプレゼンを行った9人の中から今年のグランプリに選ばれたのは、今まで全く「P-1グランプリ」に縁のなかったCSのパートナーでした。

こうして目的を見直したことで、「アウトプットすること」をより多くのパートナーにも体現してもらえましたし、発表を見た人がファンになったり、オフラインで会うことで仲良くなったりして、3つのカルチャーすべてに通ずるイベントになりましたね。

イベント運営は「飽き」を回避し、ゼロベースの説明を意識する

和島 もうひとつの全社イベント「お産合宿」は、成果物のアウトプットを目的としたイベントです。部署や業種を横断したチームを編成し、1泊2日の合宿で開発を行っています。

今年で第13回を迎えたのですが、「ナマケモノのキャラクターが応援してくれるiOSのランニングアプリ」から「作業用草刈機による接触事故を未然に防ぐシステム」まで、様々なものがアウトプットされました。

▼今年の「お産合宿」の様子

佐藤 こうして継続運営しているなかで、一番こわいのは「飽き」なんですよね。そういう意味では頻度も大事で、「P-1グランプリ」も「お産合宿」も、年に1度だけにしています。

また今年の「お産合宿」では、僕が別室でアウトプットする様子を、24時間ゲリラ中継するという企画を行いました。わんこ蕎麦を食べて、サーフィンしに行って、夜中にリングピローをつくる、という様子を生配信するというもので…(笑)。

というのも「オフサイトで開発合宿をする」という決まった形式を続けていると、マンネリ化を起こす可能性もあると思っていて。それを防ぐには、アウトプットするものを工夫する必要があるので、社長自らたまに改革を起こしにいくことも必要かなと思っています。

和島 総務としても、イベントは継続が大事だと思っていて。ただ脈々と受け継がれてきたものをそのまま続けるだけではおもしろくないので、何かしらの変化をつけるようにしています。

その企画で悩んだときに立ち戻る場所が「もっとおもしろくできる」という理念だったり、3つのカルチャーになっています。

バックオフィスも自らアウトプットして社内にファンを作りたいとか、「もっとおもしろくできる」という気持ちが、イベント運営の原動力になっていますね。

また、飽きさせないことと同じく大事なのが、新しく入社した人が参加しやすくする仕組みです。というのも、ずっと前からいる人にとっては当たり前のイベントでも、新しく入社した人からすると、よくわからなかったりするじゃないですか。

毎年やっていると、どうしても説明が雑になってきてしまいがちなので、イベント告知の際には「ゼロベース」をすごく意識していて。今年は、事前説明会も開きました。

企業の「信念」にできるカルチャーを据えて、成長を続けていく

和島 現在はパートナー数が400名近くになり、参加しない人の要望を取り入れるのと、心から参加したい人が楽しめる内容にするバランスって結構難しいなと思っていて。

ただこれも結局、なんのために行うのかを、ビジョンやカルチャーという「背骨」を意識して組み立てるしかないのかなと。社内イベントがカルチャーに沿ったものになっているか、その意図が伝わるように案内できているか、を意識することが大切だと感じています。

そして、社内イベントに関して「今年もやるの?」という思考はもうやめようと思っていて。必要であるからこそ継続してきたものなので、今年はどういう形にするかという意識を持つ。

運営側も楽しまないと温度感として伝わってしまうので、もっとおもしろくするために常に変化をし続けて、自分たちが楽しんで企画することを大切にしていきたいと思っています。

佐藤 僕が「大切にしてほしい3つのこと」として定めたものを、去年、パートナーの方から「わたしたちが大切にしている3つのこと」に変更したいという提案があって。カルチャーとして浸透しているんだなと実感しました。

結局、カルチャーやバリューを突き詰めると、企業としてそれを「信念」にするかどうかだと思うんですよね。これだと決めたものは信じてやり続ける。そこの胆力があれば先に決めても良いのですが、ないうちにそれを決めてしまうと、結果揺らいでしまうかなと思っていて。

弊社の場合は、最初から定めずに、ある程度見えてきたときに決めたのはよかったと思っています。今後もペパボのカルチャーを維持しながら、組織と事業の成長を実現していきたいですね。(了)

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