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  • 執行役員 CXO
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「小さな積み重ね」が文化を作る。マネジメントが体現する、delyのカルチャー浸透とは

〜カルチャー浸透に「キラー施策」は存在しない。「評価を通じて視野を広げる」「エンジニア採用の実行責任を現場が持つ」など、delyの開発カルチャーを支える仕組みとは〜

スタートアップやベンチャー企業において、ビジネスモデルや事業計画といったハード面はもちろん、組織を支える「カルチャー」が事業やサービスの成長に与える影響は大きい。

組織が急拡大する中でもカルチャーを維持し、いわゆる「100人の壁」を乗り越えて、よりよい方向に組織を導くにはどうすればいいのだろうか。

2020年5月にアプリダウンロード数2,300万を突破した、国内No.1のレシピ動画サービス「クラシル」。

同サービスを運営しているdely株式会社は、2020年2月に開発チームのカルチャーを言語化したオンボーディング資料をnoteで公開した。

「当事者意識を持って視座を高め、視野を広げて相互理解量を増やそう」「経験値は1人だけではなく、パーティー全員が得られるように」などの13項目から構成されており、380スキを超える多くの反響を得ている。

また、同社でCXOを務める坪田 朋さんは、「組織におけるカルチャー浸透で特に大事なのは、マネジメントレイヤーが率先してカルチャーを体現すること」だと語る。

今回は坪田さんと、開発本部GM兼VPoEの井上 崇嗣さんに、開発チームのカルチャー作りについて詳しくお伺いした。

ワンプロダクトで事業を多角化。「食」にまつわる課題を解決する

坪田 僕は2019年7月にdelyに入社し、開発本部の管掌役員とCXOを兼任しています。

レシピ動画サービスの「クラシル」は、2020年5月にアプリダウンロード数2,300万を突破し、今もユーザー数をどんどんスケールさせています。

僕たちは「食」の領域における課題、例えば「買い物が大変」「献立を考えるのが面倒」「買ってきたものをどう調理したらいいかわからない」といったものすべてを、クラシルで解決していきたいと思っていて。そこで食やくらしを一気通貫で考えてみると、個々のサービスでは抜け落ちるポイントがまだまだ多いです。

delyではこれらの課題を解決するために、昨年頃から既存のレシピ動画事業だけでなく、食品のEコマース事業やリテール事業者向けのチラシ事業といった、事業の多角化を進めてきました。

そのPLの責任を負っているのは各事業部ですが、ユーザーの方に使っていただくプロダクトはこれまでどおり、クラシルだけ。ひとつのプロダクトとしてのUXを保ちながら、すべての事業を成功させるのは、すごく難しいんですね。

僕はCXOとして、それを実現させるためのサービス設計を考えたり、事業と開発との橋渡し役などを担っています。

▼左:井上さん、右:坪田さん

井上 僕は、2018年5月にdelyに入社しました。入社当時はSREとして働いていましたが、その後、開発部のマネージャーになり、2019年9月からはGMとVPoEを兼務しています。

開発チームには、デザイナーエンジニア合わせて20名以上が所属していて、機能開発ごとの縦軸のチームと職種ごとの横軸のチームが交差する、マトリクス型の組織になっています。

職種別の各チームにはピープルマネージャーを担当する人がいて、1on1や評価などを通じてメンバーの成長を支援している形です。

会社は「箱」にすぎない。形よりも大切な「カルチャー」の言語化

坪田 delyは今、サービスとしても組織としても、大きく拡大しているフェーズにあります。

僕は、会社というものは所詮「箱」にすぎないと考えていて。箱の形は、状況に応じて変えていけばいい。むしろ、箱を動かすことで「組織の課題」を解決しているつもりにならないことの方が大事だと思っています。

では、箱の形ではなく、何で解決するのか。僕はそこで重要になるのが、メンバー同士のコミュニケーションやスタンス、つまり「カルチャー」だと思うんです。

そしてカルチャーは「新しく作る」のではなく、長年築いてきたものを「言語化し、実行していく」方が意味があるし、より重要だと思っています。

delyは、一言で表現するならば「仁義のある会社」なんですよ(笑)。曲がったことは嫌いだし、愚痴もコソコソと文句を言うのも好きじゃない。

企業が大きくなり、中途社員が増えると、普通の会社ってカルチャーが薄まる傾向にありますよね。でもdelyは創業以来、今100人規模の組織になってもカルチャーを維持しています。

カルチャー浸透って「このキラー施策をやればうまくいく」みたいなものはなくて、小さな泥臭いコミュニケーションの積み上げの結果だと思っていて。

例えば最近、開発部で言語化した行動指針のひとつに「当事者意識を持って視座を高め、視野を広げて相互理解量を増やそう」がありますが、そのベースには、普段のSlackでのコミュニケーションがあります。

▼今年2月に開発部で作成したオンボーディング資料(一部)

delyでは基本的に、全部署のやり取りがオープンになっていて、経営指標も全て自動でSlackに投稿される仕組みになっています。そのため、他部門のいいところも悪いところもすべて可視化されます。

社員1人ひとりが経営視点で物事を判断し、行動できる組織って、全員が同じ方向を向いているしコミュニケーションコストもかからないので、とにかく仕事がしやすいんですよね。

よくある「情報がないから判断できない」状態を作らないことが、強いチームを作るためにかかせない仕組みだと思っています。

メンバーへのカルチャー浸透は、最終的に「評価」に帰結する

坪田 また僕の経験上、カルチャーの浸透において特に大事だと思うのは、マネジメントする側がカルチャーを体現し、組織の手本となること。これは間違いないですね。

井上 その通りで、まずは経営陣や初期メンバーがいかにカルチャーを体現しているか。そして、それをどうメンバーに浸透させるかという部分では、僕は最終的に「評価」の設計もセットで考えないといけないと思っています。

delyでは3ヶ月ごとに評価を行っていますが、まず本人が自己評価をした上で、ピープルマネージャーと面談する流れになっています。そこで自分の役割を満たしている状態(=100)よりも高い点数をつける場合には、その根拠を書く必要があるんですね。

その評価面談や、普段の1on1などを通じて「何が評価されるのか」の目線が擦り合えば、チームとして大切にしているカルチャーがわかります。

また、日頃から「何を考え、どのような工夫をして、どんなアウトプットしたのか」という記録を残しておかないと、評価の時期に思い出すのが難しいですよね。

つまり、評価されるためにはアウトプットすることが必要だし、視野を広げて、他の人のアウトプットも読み取っていかないと評価が上がらないことを理解してもらう。

すると、全員がインプットしてアウトプットするという良い循環が、カルチャーとして自然に浸透するんですね。すべての施策がカルチャーから外れていない、ということが大切なんだと思います。

※同社の目標管理・1on1については、こちらの記事もぜひご覧ください。

採用人数を「人事」の目標にせず、エンジニア自ら意思決定する

坪田 カルチャーを維持する仕組みにおいて、特に「採用」は重要ですね。エンジニア採用においても、技術面はもちろんですが、働くスタイルなどのカルチャーマッチを重視するようにしています。

昨年の5月からは、エンジニア採用の目標を、人事ではなく開発本部のもとに置くことにしました。

というのも、採用を「人事」の目標にしてしまうと、リファラルが機能しづらくなると思っていて。自分たちが一緒に働きたい人を、自分たちで集める。それを評価に紐付けることが大切です。

井上 OKRに似た形で目標設定をしているのですが、例えば「エンジニアを20人採用する」という本部目標に対して、「スカウトメールをXX本打つ」「リファラルでXX名紹介する」といった個人目標をそれぞれが立てています。

また、今年の2月からは、僕がエンジニア採用の実行責任を持つ体制に変えました。この変更によって、採用施策の立案・実行における、意思決定のスピードが上がりましたね。

以前は、現場から課題を吸い上げた後のプロセスが、メンバーからは見えづらかったんですね。人事側では「どこから着手するか」「予算をどう捻出するか」といった議論があっても、現場からすると何に時間がかかっているのかがわからなくて。

それが今では、僕が人事と同じ立場で動けるようになったことで、現場の声と人事側のプロセスの双方を考慮しながら提案できるようになりました。

坪田 結局、これも「当事者意識」につながってくると思っていて。人事の方では数字の責任は負っているけれど、現場のリソース感はわからないですし、達成しなくて困るのは現場ですよね。

僕らとしては、作らないといけないものがあって、そのために必要なリソースがある。その確保を、人事ではなくエンジニアが担うことで、当事者意識ができて推進力が上がると思います。

さらに、今年の2月に開発チームのカルチャーに関するオンボーディング資料をnoteで公開したのですが、これもカルチャーマッチを高める手段のひとつですね。

これは社内向けに作成したものをそのまま公開しているので、実際にそれに共感してくれる方は、やはりカルチャーが合う人が多いと感じています。

黄色信号がつく前の小さなアラートを発見し、ひとつずつ潰せるか

坪田 おそらく組織がずれていく瞬間って、きっと細かいことの積み重ねなんですよ。その黄色信号がつく前の小さなアラートを発見して、1つひとつ潰していく。それが大切だと思っています。

ただ仕組みですべてを解決するのは難しいので、僕はコミュニケーションの機会を意図的に多く作っています。特に大事にしているのは、雑談ですね。

新型コロナの影響がでる前は、週3〜4回ほどオフィス近くのカフェに行き、開発チームで朝会をしていました。

そこで拾った小さなアラートを、代表の堀江やCTOの大竹などに伝えたり、そこで話したことを逆に井上やメンバーに伝えたりして、常にチューニングし続けています。

井上 僕は、チームメンバーと週1回・30分ほど1on1を行い、細かいアラートがないかをキャッチするようにしています。

繰り返しにはなりますが、チームづくりの難易度って、結局はどういう人が集まっているかに密接に絡んでくると思っていて。それがいつ決まるのかというと、入り口である「採用」のタイミングなんですよね。

今までは少数精鋭で、基準以上のスキルがあり、かつカルチャーフィットする人を採用し続けてきたので、チームづくりを意図的にしなくても、結果的によいチームでよいプロダクトが作れました。

ただ、坪田がさっき申したとおり、dely開発部の採用ではスキルよりもカルチャーを重視する分、今後の事業多角化を見据えると、入社後の人材育成の視点が新たに必要になってくるなと最近は考えています。

拡大する組織に課題は尽きませんが、事業成長に向け、よりよい組織づくりを目指していきたいですね。(了)

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