• LAPRAS株式会社
  • 事業開発マネージャー / PR
  • 伊藤 哲弥

遊休資産と化したオフィスを解約!LAPRASが「合理的な決断」をいち早く下せた理由

〜フルリモートでオフィスが「遊休資産化」。社員アンケートを元に社内外への広報リスクを最小化した、LAPRASのオフィス解約プロセスとは〜

突如広まった新型コロナウイルスの影響により、リモートワークへの移行、さらには「オフィスの解約」を決断する企業も増えつつある。

2016年5月に創業し、エンジニアのオープンデータを元にスカウトを送付できるAIヘッドハンティングサービス「LAPRAS SCOUT」を展開する、LAPRAS株式会社。

同社も、このコロナ禍でいち早く「オフィスを手放す」ことを意思決定。その事実は一部メディアにも取り上げられ、話題となった。

しかし、迅速な経営判断である反面、オフィスを解約するというニュースは、社内や取引先にとって必ずしもポジティブな決断と捉えられるとは限らない。

そのリスクを最小化するため、全社員を対象としたアンケートを実施し、リモートワークによる社内の潜在課題を確認。「リモートワーク開始後もパフォーマンスが低下していない」というファクトを得た上で、対外的な広報を実行。

客観的に見ても「その判断は合理的だ」と納得してもらうことを大切にしたという。

今回は、同社でオフィス解約のプロジェクトに関わった伊藤 哲弥さんに、その意思決定プロセスから社内外への広報活動、フルリモート環境下での工夫まで、詳しくお伺いした。

コロナの影響でフルリモートへ移行し、オフィスが「遊休資産化」

僕は2017年8月に、4人目の社員としてLAPRASに入社しました。入社当初はビジネスサイドのあらゆる業務をしていましたが、現在はPRを専門に担当しています。

僕たちは2019年5月に、現在の渋谷オフィスに移転しました。30名ほどの社員に対して124坪という十分すぎるほどの広さがあり、立地にも恵まれていましたね。

そのイベントスペース「LIVING by LAPRAS」は、社外向けにも無料で貸し出していたのですが、ひと月で300人以上が利用することもありました。

▼LAPRAS社のオフィス風景

ですが今年の2月からは、新型コロナウイルスの影響を受けて出社の頻度を減らし、3月下旬からは完全フルリモート体制に移行しました。

以前から、営業、経理、法務などのあらゆる業務をオンラインで対応していたので、出社禁止による物理的な支障は特にありませんでしたね。

一方で、財務状況を見てみるとオフィスが「遊休資産化」していることが明白で。月に数百万円のコストが掛かっていたので、無駄にしているなと感じていました。

組織内の親密さを重視する組織が、オフィスの「退去」を決断

弊社では元々「Face to Face」のコミュニケーションを大切にしていたので、週1程度のリモートワークはあっても、全面的には推奨していませんでした。

というのも、代表の島田が「正しくないことを正しくないと言える組織にしたい」という想いを持っているのですが、その上で大切なのが、組織内の親密度や心理的安全性だと考えているからです。

一般的に「コミュニケーションの量と質」が高い方が、親密度が上がるとされています。それを考えた時に、やはり対面の方が社員同士の親密度が高くなりますし、日々のコミュニケーションによって組織内の対立や不安を取り除くことで「長期 × 組織」のパフォーマンスが高まると考えていました。

ですが今回の事態を受けて、そうも言っていられないと。遊休資産化しているオフィスをどうすべきか? を早急に判断する必要がありました。

弊社では、2018年3月からホラクラシー(※)による組織運営を行っており、様々な意思決定の権限が、個人ではなく「ロール」と称される役割に委ねられています。

※ホラクラシーの詳細については、同社(旧社名:scouty)に取材したこちらの記事をご覧ください。

今回の意思決定については、「オフィス移転ロール」を担うCFOにその権限がありました。そこで、4月中旬には一旦オフィス勤務をなくす方向で検討を始め、結論としては現在のオフィスを退去し、その後小さなオフィスを借りる方針を決定しました。

意思決定のリスクがないかを確認するため、社内アンケートを実施

僕自身は、オフィス退去のプロジェクトメンバーだったのですが、その意思決定における潜在リスクがないかを確認するため、社内周知する前に全社員へのアンケート調査を実施しました。

これは、フルリモートの移行によるパフォーマンスやコンディションの変化を聞くアンケートで、全6項目からなります。

その結果、個人の作業効率の変化を問う設問では、「リモートワークの方が作業効率が上がった」という人が37%、「体感できるほど変化がない」という人が約41%でした。つまり、約80%の社員は、リモートによるマイナスの影響がないという結果だったんです。

▼実際のアンケート回答結果

一方で、効率が下がったと回答する社員もいたのですが、コメントを見ると「育児が大変」という回答が多くて。在宅による業務の難しさを感じている人は、ひとりだけであることがわかりました。

もちろん自己申告なので、「自分のパフォーマンスが下がりました」とは言い出しにくいかなと思いますし、正直なところ「本当に作業効率が上がっているか」は分かりません。

ですが、このアンケート結果によってオフィス解約の懸念点が解消され、意思決定の後押しになりました。そして5月初旬に、全社に対してオフィス退去の決定について報告しました。

ここでもし、社員の声を聞く機会を持たずにいきなり結論から伝えていたとしたら、後から問題が生じたりコミュニケーションの不和が生まれたかもしれないと思っていて。意思決定の権限はロールにありますが、そのための「根拠」を持つことが大切ですね。

対外的な発信は、「ファクト」を伝えて納得感を醸成する

社内にはSlackで伝えたのですが、聞いた直後は悲しいな、ショックだなといった反応もありました。でもわりとすぐに切り替えるメンバーが多くて、結構ドライな感じでした(笑)。

僕自身は、会社でみんなと顔を合わせられなくなることや、週2回以上も実施していたオフラインイベントが開催できなくなる寂しさ、なんとなくの不安もあってちょっとショックでしたね。

でも、その判断はすごく合理的だなと思っていたので、それに対して反対する気持ちはなかったです。逆に「今まで使っていたから」という愛着だけで、現状維持の判断をしてしまうのは危ないかなと思います。

このように社内周知は特にハードルがなかったのですが、社外への広報については慎重に検討しました。というのも、企業としてオフィスを解約することは、見方によってはネガティブに映ることもあります。

なので、対外的に発信する際には「リモート環境でもパフォーマンスは低下していない」という社内アンケートのファクトを併せて出すことで、オフィス解約がネガティブな意思決定ではないことが伝わるように意識しました。

より客観的なデータが取得できれば、さらに説得力が増したとは思いますが、「その判断って合理的だよね」と見た人に納得してもらえるかどうかが大事だと思っています。

また、オフィス解約のテーマでメディアに取り上げられることは、コーポレートのPRにはなっても、プロダクトの売上が上がるわけではないじゃないですか。

僕たちは今、事業PRを強化したいフェーズなので、コーポレートPR自体にはあまりメリットを感じていなくて。それよりも、メディアに取り上げていただいたタイミングに合わせて自社からも発信することで、オフィスの居抜き先探しに役立てるようにしましたね。

リモートで機会損失も。オンラインに合わせた数々の対策を実施

こうして全社フルリモート環境になりましたが、個々人の作業については問題ない一方で、コミュニケーションの課題は感じています。

実際、社内アンケートでは「対面でのコミュニケーションが減少したことによる影響」に対して、「ややネガティブな影響が出ている」と回答した人が約半数に上っていました。

例えば、対面で補足できていた言葉のニュアンスや温度感がテキストだと伝わらず、当たりがきつくなったと感じたり、本当に伝えたいことが伝わらなかったり。特に新入社員のオンボーディングではその影響が大きくて、失敗することもありましたね。

また、高頻度でイベントを開催しているので、今までは隣のメンバーに「こういう企画を考えているんだけど、どう思う?」と聞いたり、たまたま聞こえてきた話から、偶発的にアイデアが生まれることもありました。それがひとりだと難しくなる面もありますね。

そういう環境をすべてオンライン上で構築するのは難しい。そういう意味では、「目に見えていないけど機会損失になっていること」はあるかなと思います。

これに対しては、全体でも雑談の機会や、固まっていないアイデアを壁打ちする時間を意図的に設けたり、オンラインのランチや飲み会、ラジオ体操も実施しています。

また、組織開発の手法であるダイアログを行ったり、1on1やフィードバックを意識的に増やしたりすることで、コミュニケーションが改善した部分もありますね。

僕は、今はがむしゃらにでもコミュニケーション量を増やす施策をやり続けた上で、どれがマッチしているかを見極めて、改善を繰り返すことが大事かなと思っていて。

他社を見ていても、うまくいっている企業は何かしらの対策をしていますよね。なので、単純に「フルリモートワークでも問題ないよ」と言うのではなく、それに合わせた対策が必要だと感じています。

「コミュニケーションに特化した」オフラインの場を設けたい

僕たちはこれまで、オフィスを「働く場所」と捉えていたのですが、フルリモートワークをしてみて、そうじゃないんだなと気付きました。オフィスは「コミュニケーションを取るために必要な場」であって、あるに越したことはないと思っています。

この状況なので一旦退去するものの、いずれ小さい規模で、コミュニケーションに特化したオフィスを持つのが良いかなと思ってます。

今はまだまだ試行錯誤中ですが、今後も定期的なアンケート調査などで定量・定性のファクトを集めながら、LAPRASらしい合理的な判断をしていくことで、自分たちのポテンシャルを最大限に発揮できている会社にしたいと思います。

また、リモートワークもコミュニケーションも、最終的には会社の中長期計画を達成し、成長していくためのものです。「コミュニケーション量を増やすことが全てではない」ということは見失わずに、組織運営をしていきたいと思っています。(了)

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