• 株式会社FORCAS
  • 執行役員 CCO(Chief Customer Officer)
  • 田口 槙吾

「オフラインの10倍」リードを獲得するウェビナーの秘訣。企画〜商談化のすべてを公開

〜「オフラインからオンラインへ」マーケティングを完全シフト。変えること・変えないことを見定め、マーケティングとISの連携で圧倒的な成果を創出した事例〜

オフラインイベントの開催が難しい環境下で、オンラインセミナー(以下、ウェビナー)を開催する企業が増えている。情報が供給過多になる中で、成果を出すにはどうすれば良いのだろうか。

株式会社ユーザベースから2017年10月に分社化された、ABM(※)を支援するBtoBマーケティングプラットフォーム「FORCAS(フォーカス)」を提供する、株式会社FORCAS。

※ABM(Account Based Marketing)…データ分析に基づいて成約確度の高いアカウント(企業)を予測し、マーケティングと営業のリソースをそのターゲットアカウントに集中する手法

同社は、新型コロナウイルスの状況を鑑みて、それまで強みとしていたオフラインマーケティングの施策をいち早くオンラインに移行。2020年3月からは「H2H(Home to Home)セミナー」と題したウェビナーを継続的に開催してきた。

その企画においては、今までのオフラインコンテンツから「変えること」「変えないこと」を明確に定義。オンラインの特徴に合わせた演出を提供することで、以前の10倍もの見込み顧客(以下、リード)を集めているという。

さらに、マーケティングとインサイドセールスの連携を強化することで、増加したリードに対して商談化率を落とすことなく、成果を創出しているそうだ。

今回は、同社のCCO(Chief Customer Officer)を務める田口 槙吾さんと、ユーザベースグループのB2B SaaS事業マーケティング担当役員を務める酒居 潤平さんに、ウェビナーを起点にしたリード獲得から商談創出の方法について、詳しくお伺いした。

新型コロナの影響を受けてウェビナーに移行。リード数が約10倍に

田口 僕は、2019年4月にFORCASのCRO(Chief Revenue Officer)に就任し、マーケティングを除くレベニューサイドの責任者を務めてきました。

ユーザベースグループとしてカスタマー中心の組織体制を強化するため、2020年7月にCROを退任し、現在はFORCASのCCO(Chief Customer Officer)を務めています。

酒居 僕は2017年10月にFORCASに入社し、以来マーケティング・ブランディングを担当してきました。現在はユーザベースに転籍して、B2B SaaS事業のマーケティング担当役員を務めています。

FORCASが実践をサポートするABMでは、最初にターゲット顧客を特定してから、逆算的にマーケティングやセールス活動を行っていきます。

弊社でも、その施策として特に有効なイベントやセミナーなどのオフラインマーケティングにこれまで注力してきました。

特定のターゲットに訴求するコンテンツとしては、ホワイトペーパーなどもありますが、これはあくまで最初の入り口にすぎなくて。そこからすぐに商談化することってあまりないんですよ。

実際に案件として動かしていくことを考えると、セミナーに来ていただいて、そこから商談につなげるというナーチャリングステップが、圧倒的に成果につながりやすい。

ところが、新型コロナウイルスの影響を受けて、僕たちの最大の強みであったオフライン施策がすべて止まってしまって。そこで2020年2月から、オンラインへの移行を進めてきました。

3月からは、ユーザベースグループ全体で「H2H(Home to Home)セミナー」と題し、出演者がそれぞれの自宅から参加する形式でウェビナーを運営しています。

田口 週1のペースでウェビナーを継続してきた結果、4月以降の新規リード数が桁違いに伸びていて。4〜6月に獲得した新規リードは、施策を打つ以前と比べると約10倍になっています。

酒居 さらに、ウェビナーに対する満足度は常に9割以上をキープし、そこからの商談化率についても、オフライン時と同じか、それ以上という結果が出ていて。今、ウェビナーはマーケティング施策の柱になっていますね。

「いつ聞いても価値がある」から「今、聞く価値がある」への転換

酒居 元々、オフラインの時には、イベントとセミナーの目的を分けて運営していたのですが、オンラインではあまり境目を作らないように変えました。

以前で言うと、イベントはリード獲得、セミナーはリードナーチャリングとして役割分担をしていましたが、今のウェビナーはセミナー寄りのコンテンツにしています。

最初は「この内容で集客できるかな」という不安もありましたが、蓋を開けてみると思っていた以上に好評をいただきましたね。実際、ウェビナー1回あたり1,000名ほどの申し込みがあり、多いときには3,000名を超えます。

この鍵は、コンテンツです。それを考える上で、オンラインに移行するにあたり「変えること」と「変えないこと」を明確に定義しました。

まず変えないことは「for you」、つまり「相手の視点でコンテンツを考える」という部分です。

これは当たり前のようで、案外「for me(自社視点)」になっている場合も多いと思っていて。例えばセミナーの内容が、自社サービスを紹介していく流れになっていたりしますよね。

そうではなくて、まずは相手が今、何を求めているかを徹底的に考える。その人が本当に知りたいことをコンテンツにしてきちんと伝えることで、おのずとFORCASの世界観にもつながっていく。

この流れが一番ナチュラルですし、参加者の方にも「これだけ良い情報をくれたFORCASさんって、そもそもどういう会社なんだっけ」と興味を持っていただくことができます。

▼実際のウェビナーコンテンツ(一部)

一方で、変えたのは「時間軸の概念」ですね。今までは「いつ聞いても価値がある」ようなストック情報を軸にコンテンツを企画していました。例えば、マーケティングオートメーションの実践法といったものですね。

それを「今、聞く価値がある」ようなフロー情報に変えたんです。というのも、多くのウェビナーが開催されている中では、「いつでも聞ける=今、聞かなくてもいい」となって優先順位が劣後してしまいます。

そこで選んでもらうためには「why now」を軸にして、相手が「今、知りたいこと」を伝えるコンテンツが大切だと考えています。

視覚と聴覚に適した演出の工夫で「インタラクティブ性」を生む

酒居 また、オフラインのコンテンツとは全く別物として演出することも重要です。特に大切なことは「インタラクティブ性」を生むことだと考えています。

結構陥りがちなのが、今までの講義形式を変えずに、手段だけオンライン配信に変えることで。でも、僕はこれだと満足度の高いコンテンツにするにはなかなか難しいと思っています。

なぜなら、参加する人の集中力が全然違うんですよ。オフラインでは、五感をすべて使って聴くことができますが、オンラインでは視覚と聴覚という「二感」しかありません。かつ、視覚も画面という二次元に限られるので、情報量は圧倒的に下がります。

田口 そこで必要なのが、演出の工夫だと思っています。講師1人がずっと話し続けるような形ではなく、色んな人の声が交じりながら話が積み重なるようにすることで、集中力が途切れないようにしています。

具体的には、全体のモデレーターとアシスタント、ゲスト2名の計4名で話すという形を、基本の型にしていますね。

酒居 この形式にすると、視聴者とのインタラクティブ性が断然上がります。1対Nだと「ただ聞くだけ」になってしまいがちですが、画面上で複数人が会話していると、視聴者の方々が気軽にチャットで質問しやすくなるんです。

その質問をモデレーターが会話の中に差し込んでいくことで、視聴者さんが「あ、応えてくれた」「参加していいんだ」と思ってくださり、どんどん場が一体化して盛り上がっていきますね。

田口 実際、セミナー1時間くらいで、多い時だとチャットに数百から千件ものコメントや質問をいただきます。出演者が、手が空いた隙にチャットで質問に答えたりもしますね。

ターゲットの特定とストーリーの引き継ぎで、ISの成果を高める

田口 このインタラクティブ性が、その後の商談にもかなり影響してくると感じています。それを最大限活かすためには、マーケティングとインサイドセールス(以下、IS)の連携が非常に重要です。

そこでポイントになるのが、「ターゲットの特定」と「ストーリーの引き継ぎ」ですね。

酒居 まずターゲットについては、相手のニーズに応じてTier1〜3の3段階に分けています。一番FORCASの価値を感じてくれるであろう企業を、企業の課題(ニーズ)を切り口にしてセグメント化し分類しています。

それをMAのMarketoと連携して、リードが入ってきた時点でターゲット顧客かどうかを判定しています。

田口 実際、オンラインセミナーでは一度に大量のリードが流入してくるため、ターゲットとなる見込み顧客とは異なる方も参加されます。

そこでISは、Tier1のリードから優先的にアプローチをしていきます。Tierに該当しない場合は、御礼メールに添付したURLから、商談を希望する人がいれば面談を予約できる形にしています。

酒居 ただTierに該当しなくても、もちろんサービスに関心を持ってくださる方もいらっしゃいます。そうした方を見落とさないようにするのが、事後アンケートですね。「FORCASに関心がある」と答えた方には、Tierの次に優先してご連絡するようにしています。

田口 もうひとつ大切なのが、「ストーリーの引き継ぎ」です。具体的には、マーケティングチームがウェビナーの企画意図や内容をもとに、視聴いただいた方が関心を持つようなトークの仮説を作って、ISに連携します。

例えば「今、求められるマーケティング戦略&施策 #2」というウェビナーの時は「ターゲティング」を主題とする内容だったので、「御社って今、どのようなターゲット戦略を考えているんですか?」といったトークをしてもらいました。

この引き継ぎがないと「先日のセミナーはいかがでしたか?」といったトークになってしまうんですよね。すると、面談率が下がってしまいます。

今回、オンラインへ移行するタイミングで、マーケティングとISとでの定例ミーティングを始めたのですが、これが結構うまくいっていて。マーケティングからISヘのストーリーの引き継ぎと、実際の反応をISからマーケティングにフィードバックする、というサイクルを回してきたことで、大きな成果が出てきていますね。

偶発的に生まれた「オンラインコミュニティ」がつながりを作る

田口 一方で、すぐに商談に進まなかったケースも多くあります。この商談につながらなかった、もしくは商談をして契約に至らなかった方へのナーチャリングとしても、ウェビナーは有効な施策だと思っています。

FORCASでは、新規受注のうち約半数が掘り起こし案件からなんです。ターゲット顧客に対して、継続的にアプローチし続けることが大切なのですが、その手段としてウェビナーは効果的ですね。

酒居 実際、一度のウェビナー参加で商談に至らなくても、2回目、3回目と視聴いただいて、じわじわと理解していだたくようなケースが結構多いんですよね。先日も、H2Hセミナーを何回か見てくださったことで「うちも改革しないといけないな」という経営の意識変容が起こり、動き始めたという案件がありました。

ウェビナーは単発で考えるというよりも、継続的に開催することが後々の成果につながってくると思います。

さらに、偶発的に生まれたナーチャリングの場として、今かなり盛り上がっているのが「オンラインコミュニティ」ですね。

4月頃にSPEEDAでウェビナーを開催した際、視聴者さん同士がご自身の意見や質問をチャット上で会話し始めたんですよ。僕らの話と並行して、チャットはチャットですごく盛り上がっているみたいな(笑)。

その場でFacebookコミュニティを作ってチャットに投稿したら、その場で数百人もの方が参加してくれました。それから毎回案内するようになり、今では2,000人を超える方が参加いただいています。

田口 FORCASでも同じように案内したら、その場で約600人の方がFacebookコミュニティに参加くれましたね。

酒居 オンラインコミュニティは特にメンバーが中心になって運営してくれており、ユーザーさんや視聴者の方とのコミュニケーションの場として、僕たち自身も楽しんでいます(笑)。

また、過去のウェビナー出演者の方々が中心となって、動かしてくれているのも大きいですね。登壇したテーマに関して「みなさんどう思いますか?」といったディスカッションをしてくれたり、過去出演者の方同士がFacebookコミュニティでつながって、振り返り会を主催してくれたりしています。

田口 我々はやはり、今まで「ユーザーとの共創」を大切にしてきて、ユーザーさんとの距離が結構近いと思うんですよ。そのマインドが今、様々な活動や場面で活きているような感覚がありますね。

SaaSの根本である「プロダクト」を、カスタマー起点で磨いていく

田口 僕は、2020年7月に FORCASのCROからCCOになり、レベニューからカスタマー(顧客)起点の組織編成に変わったことが、すごく大きなストーリーの変化だと思っています。

オペレーションをどう構築するか、KPIをどう設計するか、といったことも大事なことですが、SaaSの根本はやはりプロダクトだと思うんです。

ユーザベースグループは、今も昔もプロダクトドリブンの会社ですが、今回の変化はそのドライバーがカスタマーサクセスになる、ということだと思っていて。

内向きの視点が強かったレベニューから、外向きのカスタマー起点に変えていくことを社内外に表明したので、今後はカスタマーを基軸として、プロダクトをさらに磨いていきたいと思っています。

酒居 2020年1月にユーザベースのB2B SaaS事業全般にわたるマーケティング体制に移行してから、僕は「ユーザードリブンマーケティング」という言葉を掲げてきました。

この半年ほど、ユーザーを起点にしたコンテンツや考え方を全員で徹底してきた結果、今回のオンラインシフトもうまくいっているのかなと思います。

僕は特に、マーケティングストーリーとカスタマーストーリーを一貫することが大切だと思っていて。新規リードから既存ユーザーまで、一貫して価値のあるコンテンツを届けるからこそ、結果的にナーチャリングにも効いてくるのだと思います。

まだまだチャレンジの道半ばですが、今後ますます「ユーザーとの共創」を深めて、統合型マーケティングのユースケースを創っていきたいですね。(了)

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