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リモートワークによって「閉じた」関係をひらく。4象限のコミュニケーション施策とは

〜フルリモートで見えなくなった関係性を、いかにひらくか。本質的な課題に向き合い、事業の推進力を高めるコミュニケーション施策の全貌〜

リモート主体の働き方が長期化する中で、組織のパフォーマンスを維持・向上させるためには、どうすれば良いのだろうか。

2013年5月に創業し、オフィス移転の支援や空間プランニングなどの事業を展開する、株式会社ヒトカラメディア。

新型コロナウイルスの影響により、今年の4月からフルリモート体制に移行した同社では、テレワークが長期化するにつれてプロジェクトの遅延や、孤独感を抱くメンバーが増えてくるといった問題が生じていたという。

そこで同年6月より、オフィス出社と在宅ワークを組み合わせるハイブリッド型の働き方に移行。目的に応じて「オンライン・オフライン」「フォーマル・インフォーマル」のコミュニケーション施策を使い分けることで、ナレッジ共有の促進と孤独感の解消を実現している。

同社の組織づくりを担う斎 絢矢さんは、コミュニケーション施策を考える上で「フルリモートで閉じてしまった関係性をいかにひらき、ほぐしていくかが大事」だと話す。

今回は斎さんに、事業と組織の課題を解決するコミュニケーション施策の全貌と、その工夫について詳しくお伺いした。

フルリモートで「閉じてしまった関係性」をいかにひらくか

私は2017年にヒトカラメディアに入社し、オフィスプランナーを経て、現在は組織周りを担当しています。

弊社には人事部がない代わりに、人事施策まわりを推進する2つのチームがあります。

ひとつは「みんなのコーポレート」という部署で、全社に関わる人事施策を企画・運営しています。もうひとつは「チームサクセス」という事業部付きの人事のような役割をもつチームで、事業部の課題に対するアプローチを行っています。

私はこの2つの役割を兼務する形で、全社視点と事業部視点の双方から組織づくりに携わっています。

弊社では従来、原則出社をルールにしていましたが、今年の4月に緊急事態宣言が出されてから在宅ワークに移行しました。

日々の業務は比較的問題なく移行できたのですが、リモートワークが当たり前になっていくうちに、プロジェクトのスケジュールのずれが増えたことや、チーム内で認識齟齬が生まれ、「なんだかうまくいってない」事象がいくつか現れてきたんです。

そこで周囲のメンバーにヒアリングしてみると、「業務過多で疲弊している」とか「プロジェクトメンバー同士のコミュニケーションがうまくいっていない」といった問題がわかってきて。

オフィスであれば「最近なんだか元気ないな」と気が付けたことも、オンラインになると全く見えなくなるじゃないですか。調子が良くなさそうな人ほど、ミーティングにも理由をつけて現れなくなるんですよね。

リモートでも1on1は継続していましたが、メンター・メンティ間での会話はできても、周囲からは個々の状況が見えなくなってしまいます。

この「閉じてしまった関係性」を、いかにひらき、ほぐしていくか。そこを軸に、試行錯誤しながらコミュニケーション施策を実行していきました。

個対個からコミュニティへと「ひらく」ことで、孤独感を解消する

関係性をひらくことの目的は、「孤独にしないこと」と「ナレッジ共有」の2つだと考えています。

まず、孤独感を解消するための施策として、以前はオフィスで毎朝実施していた「アサカラ」という雑談タイムをZoomで始めました。でも、全然人が集まらなくて(笑)。ほぼ毎日、私と誰かの1on1みたいな状況になってしまって、これではあまり効果が出ないなと感じていました。

そんな中、ある日たまたま、私が好きなアーティストについて共有するSlackチャンネルを立ち上げてみたら、かなり盛り上がったんです。ランチや飲み会には参加しない人も、そのアーティストについて語るランチには来てくれたんですよね。

他にも、読書部やママ会などが立ち上がり、オンラインでは「オープンな雑談」よりも特定のテーマを決めた方が濃いコミュニティが作れるんだなという学びになりました。

こうしたコミュニティは業務と関係ないようにも見えますが、チームの中で根深い問題であった「誰にも気づかれない苦しさ」を緩和したり、「自分のことをわかっている人がチームの外にもいる」という心の拠り所になることができるんですね。

実際に、「プロジェクトで行き詰まっていたけれど、同じ関心を持った人と話せるだけで気持ちが楽になった」と話してくれるメンバーもいて。閉じてしまった関係性を、個対個からコミュニティへとひらいていくことで、誰かが気が付ける状態をつくっていきました。

また最近では、1on1のメンター側の悩みを解消する場として、メンター会を開いています。

メンティの成長を支援する上で、どのようなコミュニケーションを取るべきかなど、自分だけでは解決しづらい問題もありますよね。そうした同じ悩みを持っているメンター同士をつなぎ、知識をインプットし、悩みを解消するきっかけをつくっています。

メンバーだけでなく、マネジメント側も悩んでいることが多いので、どちらの関係性もひらくことが大切ですね。

月1回、全社員で集まる「ミートアップ」でナレッジを共有

次に、ナレッジ共有を目的として、今年の7月からは、オフィスに全社員が集まる「ミートアップ」を月1で開催しています。

弊社の事業は主に「クライアントのオフィスづくり」に関することなので、メンバー各人がお客様に合わせた個別のプロジェクトを担っています。そのため、自分の中だけで完結させず、経験やノウハウを共有することが、より高い価値を提供していく上ですごく重要になってくるんです。

ただ、フルリモートになったことで、オフィスで自然発生的に生まれていた「いま何やっているの?」という会話がなくなり、お互いの知見やプロジェクト進捗の同期ができなくなったんですよね。

そこでミートアップでは、この1ヶ月間でどんなことをしたのかを各自がスライドにまとめ、小グループに分かれた共有と、全体発表を行っています。

▼実際のミートアップの様子

お互いの業務を共有し合う場を意図的に設けることで、いまどのようなプロジェクトが動いていて、さらにメンバーはそれに対してどのような思いや考えを持って取り組んでいるのかが、わかるようになりました。また、1ヶ月の成果を称賛し合う場としても機能しています。

さらに、ミートアップをきっかけとして、チームの垣根を越えた新しい動きも生まれています。たとえば、ある参加型プロジェクトを進めているメンバーがいたのですが、その発表に対して「私も参加してみたいです!」と手を挙げた人が何人もいたんです。

こうした反応は、やはりオフラインだからこそ生まれるのかなとも思っていて。チャットツールで呼びかけたとしても、行動を促したり、議論に発展しづらかったりするのですが、オフラインでは、文字だけでは伝わりづらい「熱量」を伝えられることで、新しい動きが生まれるんですよね。

課題を分解し目的を整理した上で、コミュニケーション施策を行う

私が大切にしているのは、「いま解決すべき問題はなにか」という目的に応じて、適切なコミュニケーション手段を考えるということです。

弊社で実施した一連の施策を、「オンライン・オフライン」「フォーマル・インフォーマル」の2軸で4象限に整理してみると、下図のようになります。

▼コミュニケーション施策マップ

ひとつは、オンラインとオフラインの使い分けです。たとえばナレッジ共有は、ただ共有するだけならばオンラインでも十分できますが、そこからメンバーの主体的な参加を促し、議論を深めるまで行うのであればオフラインの方が適していると思います。

また、オンラインはコミュニケーションが業務上に閉じてしまいがちですが、オフィスで久しぶりに会うと、「最近どう?リモートワーク疲れない?」といった雑談のような会話から、普段は話されないような本質的な課題の話に自然と発展するというような効果も感じています。

もうひとつは、フォーマル・インフォーマルの使い分けです。事業活動の足腰を強くすることが目的であれば、できるだけ参加をマストにしたフォーマルな場を設定し、その内容も事業活動に直結するものを企画します。

一方で、チームを柔らかくするためには、インフォーマルな場も大切です。雑談や共通の話題をきっかけに、部署やチームを超えた交わりを生み出したり、少し力を抜けるような機会を作ったりしています。

また、どの施策を行うにしても「なぜやるのか」を明確に伝え、理解してもらうことが重要です。これを怠ると活動が形骸化してしまうので、新しい施策を始める際にはもちろん、継続する場合も、最上位の目的を添えてメンバーに伝えるようにしていますね。

オフィスは、記憶や体験が「埋め込まれていく」場所

いま、日々のコミュニケーションについてはうまく回ってきたかなと思う一方で、会社全体を見渡してみると、改めて「なぜヒトカラメディアにいるのか」という帰属意識が薄れてきているかなと感じていて。

その背景のひとつに、オフィスという存在があるのかなと思うんですね。オフィスは、単に仕事をする場ではなく、記憶や体験が蓄積されていく場だったんだなと感じています。

みんなでオフィスを創り上げながら、「ここで、こういう会話をしたよね」という共通の記憶が、場に埋め込まれていく。これがオフィスの意義として大きかったなと思います。

なので、たとえ小さくても「記憶を積み重ねる場」として、これからも何らかの拠点はあった方が良いなと考えていますね。

今後は、ミッション・ビジョンの実現に向けて、メンバー1人ひとりがどんな役割を担い、社内外に何を約束していくのかを、いま一度考える機会をつくっていきたいと思っています。

また、オンラインとオフラインを組み合わせた働き方が続いていく中では、その時々の課題感や、コミュニケーションの習熟度などを踏まえながら、一番パフォーマンスが出る出社の割合や働き方を対話を通じて見極めていくことが大切かなと思います。

今後も刻々と状況が変わっていくので、施策をブラッシュアップし続けながら、関係性を「ひらく」ための仕掛けをしていきたいですね。(了)

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