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  • VP of HR(人事責任者)
  • 唐澤 一紀

役割と成果に「フェアに報いる」。OLTAのリアルタイムフィードバック運用の全貌

〜リアルタイムフィードバックの積み重ねが、実態と評価のギャップを埋める。「フェアに報いる仕組み」を志向する、OLTAの人事評価制度の全貌〜

変化の激しいスタートアップで、適切な人事評価を行うには、どのような仕組みが有効なのだろうか。

2017年4月に創業し、クラウドファクタリング(※)事業を展開する、OLTA株式会社。創業3年で累計32億円を調達するなど、いま注目のスタートアップの1社だ。

※ファクタリング…請求書を現金化し、早期に運転資金を調達する「借りない資金調達」のこと

同社では、メンバーに対してフェアに報いる仕組みをつくるため、2019年末から人事評価制度の整備を開始。そこで導入したのが、リアルタイムフィードバックの思想をベースとした評価制度だ。

通常の半期評価とは別に、週次のリアルタイムフィードバックと等級基準に基づいた月次評価を行うことで、実態と評価のギャップをできる限りなくすような制度運用を実現しているという。

今回は代表取締役社長兼CEOの澤岻 優紀さんと、人事責任者の唐澤 一紀さんに 、人事評価制度の全貌から運用の工夫まで、詳しくお伺いした。

組織の拡大を見据え、「フェアに報いる評価」の仕組みを導入

澤岻 2017年4月に、OLTAを創業しました。もともとは、証券会社で大企業向けの資金調達を支援していたのですが、自分で事業をやってみたいという気持ちが強かったんです。そこでとりあえず会社を辞めることにして、起業準備を始めました。

そして改めて世の中を見渡してみたときに、中小企業の資金調達におけるペインが大きいと感じたんですね。

というのも、大企業であれば株式や社債、資産売却など資金調達の手段が多様な一方で、中小企業の場合は基本的に「融資」という選択肢しかありません。実際、融資を受けられずに経営が立ち行かなくなる企業も多くあります。

そうした状況から、資金調達の選択肢を増やせば、中小企業のポテンシャルをもっと広げることができるのではと考え、オンライン完結型のファクタリング事業に取り組むことにしました。

創業後は少しずつメンバーが増えてきて、社員が20人ほどになった頃に、共通の価値基準であるバリューを策定しました。

▼同社のバリュー

これらのバリューは、「あらゆる行動の判断基準になること」「創業者や初期メンバーの『こうありたい』という願いを込めること」「語感がよく使いやすいこと」という3つの基準をもとに決定しました。

さらに、人事制度を整備するなかで、人事フィロソフィーとして掲げたのが「OLTAオーケストラ」です。

バリューの「Orchestration」にもつながりますが、OLTAではオーケストラのように、個々人がプロフェッショナルでありながら、集団としてのハーモニーを奏でることを大切にしています。

これを組織運営のベースとして、組織構成から等級、評価、報酬まで、すべての人事制度はプロフェッショナルとハーモニーという2軸の要素から成り立っています。

▼同社の人事制度

特に評価・報酬に関しては、会社の未来に賭けていわゆるメガバンクや大手企業などから待遇を下げてジョインしてくださる方もいるなかで、「いかにフェアに報いていくか」というのが僕自身のテーマのひとつとしてありました。

また今後の組織拡大を見据えると、いまのうちに全員が向かう方向を揃えたり、メンバーの成長を促すような仕組みをつくっておきたいと考え、2019年末から人事評価制度を整備してきました。

策定プロセスにマネジメント陣を巻き込み、等級制度を整える

唐澤 僕は、大企業からスタートアップまで様々な規模の会社で人事を経験した後、2019年12月にOLTAに入りました。前職では、数十人から数百人規模までの拡大期に、人事機能の立ち上げから採用、労務、制度作りまで幅広く経験しました。

OLTAに入社した時は、まさにバリューが決まって、組織としてこれからというフェーズでしたね。

最初に着手したのは、等級制度です。何によって等級を定めるのか、何がどう変化すると等級が変わるのかが決まっていないと評価の方針が考えられないため、まずは等級を議論していきました。

これをつくる過程で意識したのは、マネジメント陣を最初から巻き込むということです。というのも、制度って完成されたものをポンって渡されても、絶対に頭に入らないじゃないですか(笑)。

なので、週に1〜2回ほどマネジメントに関わるメンバーを招集して、等級の考え方や具体案をもとにした話し合いを、意見の回収とトレーニングを兼ねて行っていました。

澤岻 こうした議論を経てできたのが、バリュー、プロフェッショナル、ハーモニーの3軸で、社内の様々な役割を7段階で整理した等級制度です。

▼同社の等級表(一部)

個のプロフェッショナルを前提としているので、何等級以上はマネジメントといった区分けはなく、一番上の7等級までプレイヤーとしての定義があります。そして等級ごとに、プロフェッショナルとしての要求レベル、影響範囲、扱う課題などを明文化しています。

一方のハーモニーでは、自身での成果ではなく、どのように組織での成果に貢献するかが定義されています。たとえば4等級であれば「ノウハウやナレッジを可視化して他のメンバーも使える状態にする」といった形です。

さらにバリューにおいては、自身のバリュー理解、実践、体現の度合いや、周囲への指導や浸透など、等級ごとに求められる水準がわかるようにしています。

この等級表をベースとして、より使いやすくなるように「マネジメントの役割」として読み替えた別表を人事で作成したり、職種別に読み替えた等級を各組織のマネジメント が作成したりしていますね。

週次の1on1をベースに、リアルタイムフィードバックを導入

唐澤 等級制度の次に、評価制度をつくっていきました。

「役割と成果にフェアに報いる仕組み」を考えると、そもそもスタートアップでは目標設定が難しいという問題があると思っています。たとえば今日決めた目標が、来週には変わってしまうこともよくありますよね。

また、マネジメント経験もバラバラなケースが多く、そのなかで半期評価をすると、直近の1、2ヶ月の印象に偏った評価をつけてしまう、といった問題が起こりがちです。

こうした事情を考慮して、評価はなるべくリアルタイムで行うべきだという考えが前提にありました。

そこで2020年の7月から、もともと習慣化されていた1on1を活かす形で、週次のリアルタイムフィードバックと月次評価を組み合わせた評価制度のトライアル運用を始めました。

▼同社の評価サイクル

最終的な人事評価は半期ごとに行っていますが、週次のリアルタイムフィードバックを行い、等級基準に基づく月次評価の累積を半期評価のベースに取り入れることで、実態と評価のギャップを小さくするようにしています。

具体的には、週次の1on1では、上司が1週間のメンバーの仕事ぶりに対して良かった点や気になった点をあらかじめ整理しておき、それを1on1の冒頭5〜10分程度使ってフィードバックしています。

そして月次評価の際には、バリュー、プロフェッショナル、ハーモニーに対してスコアとコメントをつけ、本人にフィードバックします。その月次の累積スコアの平均値が、中間評価や半期評価のベースになる仕組みです。

▼半期評価のベーススコア算出(簡易イメージ)

例)プロフェッショナルのスコア
(3 + 3 + 2 + 2 + 3 + 3)÷ 6ヶ月 = 2.66

ただ職種によっては、5ヶ月は仕込みの期間で、最後の1ヶ月でドンっと成果がでるような場合もあると思います。

そこで、機械的に算出したスコアをそのまま適用するのではなく、それを参考にして各組織のマネジメントが評価案を作成し、キャリブレーションをした上で決定する形にしています。

制度の肝は「1on1の運用」にあり。トレーニングと効果計測を行う

唐澤 この制度の肝は、やはり1on1にあると考えています。週次のリアルタイムフィードバック、月次評価ともに、上司とメンバー間でいかにコミュニケーションを取れているかが大切です。

そこでまず、1on1に関する書籍や外部研修などを参考にしながら、「1on1の質」「OLTAのあるべき組織の実現」「1on1の環境整備」の3つの強化をテーマに、1on1の基本形を整理しました。

そして、現状を把握するためのアンケートを行った上で、上司とメンバーそれぞれに向けた1on1のトレーニングを実施しました。

たとえばマネジメント側には、アンケートの結果を踏まえた1on1の改善ポイントを共有しながら、事前準備、実際の進め方、1on1に向き合うスタンスを中心にレクチャーしました。

その3ヶ月後に同じアンケートを実施した結果、まだまだ定着のレベルではないと思いますが、スコアは全体的に良くなり、1on1トレーニングの効果が少しずつ現れてきたかなと思います。個人的には、「評価を受けた」や「1on1の準備」のスコアが伸びたのは嬉しいですね。

▼実際のアンケート結果(10段階で10が最良)

澤岻 実際にメンバーの動きを見ていると、以前よりも改善のサイクルが早くなったなと感じますね。

やはり、週次や月次といった短いスパンでフィードバックを行うことで、「この調子で引き続き頑張ればいい」とか、あるいは「もっと伸ばさないといけないな」といったことを早い段階で自覚できるのが、良い変化を生んでいるのかなと思います。

その分、コミュニケーションコストはかかる仕組みではありますが、目標に対する方向性の一致や、メンバーの成長、評価に対するフェアネスや納得感というリターンがあるので、組織として払うべきコストだという風に捉えています。

人事制度は「ナマモノ」。制度とカルチャーの両輪で改善を回す

唐澤 僕は、最初から100点満点の人事制度は作れないと思っているんですね。たとえ現時点で100点のものが作れたとしても、人事制度はナマモノなので、変化の早いスタートアップでは1年後の組織にとっては100点ではなくなってしまう。

実際、本制度を導入したあとも、中間でのキャリブレーションを取り入れたり、本人にも振り返りを作成してもらうフローを追加したりなど、すでに多くの改善を重ねています。

今後も運用を回していきながら、事業や社員の成長にプラスになる部分は、Stay Goldの精神で積極的に変えていきたいなと思っています。

澤岻 僕は、人事制度をうまく回していくことと、カルチャーをよく染み込ませていくことって似ているようで実はちょっと違っていて、その両輪が必要だと思っています。

その意味だと、人事制度にすでにバリューを反映している部分もありますが、よりカルチャーにフォーカスした仕掛けをもっとできたらいいなと考えていますね。

たとえば新卒メンバーなど新しい人材を迎えることで、より濃いカルチャーが形成されるかなと思っています。

バリューをベースに行動できるようになってきたからこそ、もっと「OLTAらしさ」を作っていくところにコミットしていきたいと考えています。(了)

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SELECKでは、これまで700社を超える先端企業の「ベストプラクティス」を取り上げてきました。

そこで得た知見を集め、今回、フィードバックの実践に役立つ情報をまとめた「フィードバック・パーフェクトガイドブック」を作成しました。

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