• ナイル株式会社
  • 人事本部 グループマネージャー
  • 渡邉 慎平

採用CVRを高めながらミスマッチは防ぐ。ナイルのデータドリブンな採用プロセスの全貌

ナイル株式会社様

組織づくりにおいて最も大切なプロセス、 それは「組織への入り口」となる採用にあると言えるのではないだろうか。

デジタルマーケティングを主軸に、車のサブスクリプションサービス「おトクにマイカー定額カルモくん」をはじめとする新しい事業への挑戦を続けるナイル株式会社

現在200名を超える組織となった同社では、2018年に「デジタルマーケティングで社会を良くする事業家集団」という新しいビジョンを策定。翌年からは、そのビジョンを軸とした一枚岩な組織を作るために、採用〜オンボーディングのプロセスのさらなる改善に取り組んだ。

選考プロセスにおいては、自社と候補者の双方が「遠慮なく」互いを見極めできるフローを設計。

また「なんとなくオファー」を防止するためのジョブ・ディスクリプションの綿密化や、入社「前」時点からの定量的な目標の握り合い、試用期間中における人事からのきめ細やかなサポート等、採用ミスマッチを徹底的に防ぐための施策を実行しているのだ。

さらにその一方では、オウンドメディア「ナイルのかだん」を中心に「自力採用力」を高めるための採用マーケティングにも注力。Web上のトラフィックデータに基づいた、採用ファネルの改善に取り組んでいる。

今回は同社の人事本部でグループマネージャーを務める渡邉 慎平さんに、ナイル社のデータドリブンな採用改善について、詳しくお話を伺った。

ミスマッチを防ぐ綿密な選考フロー+採用マーケによる間口の拡大

私はいま、ナイルで人事本部の採用マネージャーをしています。もともとは新卒で入社して、丸6年ほど現場でWebのコンサルタントをしていて、2018年に人事に異動しました。

現在は、自分を含めて6人の採用チームのマネジメントを担う傍ら、いわゆる採用マーケティングの取り組みとして、オウンドメディア上のCVR改善などに取り組み始めています。

現在のナイルにおける採用フローを大きくまとめると、このようになっています。

選考のフローには、基本的には面接3回に加えて、Web適性検査、ワークサンプルテスト、人事アンケート、リファレンスチェックがあります。加えて選考後フローとして、社内の役員陣で構成される「採用委員会」を経てオファーがあり、入社後にも全員に試用期間を設けています。

※同社のワークサンプルや採用委員会の具体的な運用については、こちらの記事をご覧ください。

ここまでステップを多く設けている理由は、採用におけるミスマッチをなくすためです。特にカルチャーマッチを非常に大事にしているので、どんなに優秀な人でも、スキルや技術ありきの採用はしません。

組織づくりにおいては、本当に「組織への入り」が大切だと思っていて。候補者の方も我々も、変な遠慮をせずに、しっかりとお互いを見極めできるようにステップを構築しています。

また、このように綿密な採用フローを設ける一方で、より多くの方にナイルを知ってもらい、応募をいただくための施策として、「ナイルのかだん」というオウンドメディアの運営や、Webマーケティングの要素を取り入れた応募率の改善に取り組んでいます。

▼実際に行っている採用ファネルの可視化

こうした施策を重ねてきたことで、採用数の増加ももちろんですが、離職率も3分の1ほどに改善している…というのが現状です(※ナイル社の場合は、「1年前にいた人が1年後もいるかどうか」で計測)。

「事業家集団」をキーワードに、カルチャーマッチを見極める

ナイルは、2018年からビジョンとして「デジタルマーケティングで社会を良くする事業家集団」という言葉を掲げています。これによって伝えたい要素はふたつです。

まずひとつめは「事業家」という言葉。これは「BizDevができる」「起業経験がある」という意味ではなく、どんな職種やポジションであっても、みんなで事業を作り、壁に向かってチャレンジしていく…というベンチャーマインドを持つというニュアンスです。

そしてもうひとつが「集団」という言葉。これは先ほど言ったようなマインドを持ちながら、世の中を変革するようなプロダクト作りをチームで実現していく、という思いが込められています。

ナイル様

2019年から、この新しいビジョンを本格的に組織開発や採用にも取り入れていきました。それに伴って採用においては、事業家集団という文脈でのカルチャーマッチがあるのか、ということをお互いにしっかり見ることができるようなステップを構築しました。

さらに入社後にも、メンバーで4ヶ月、マネージャー以上で6ヶ月という試用期間を設けています。

これは、弊社側が一方的に「妥協しない」「ふるいにかける」という意味合いではなくて。候補者の方にもこれだけ時間を使っていただくことで、単純な面接での印象だけではない弊社の実態を掴むことができると思うんですね。

こうしたステップを通じて、ナイルでできることが本当に自分のやりたいこととマッチしているのか、しっかり見極めていただけると考えています。

「面接の印象やレジュメの肩書で、なんとなくオファー」を防止する

このような採用フローを運用する中では、曖昧な情報ではなく、ファクトをベースに判断できる材料をできるだけ揃えるようにしています。

例えば、求人票上のジョブ・ディスクリプションは箇条書きで端的に書かれているものが多いと思うのですが、弊社ではこれをかなり細かく記述するようになりました。

▼実際のジョブ・ディスクリプションの一例(※詳しくはこちら

このような形に変えたことで、要件とマッチしない方の応募がぐっと少なくなりました。また、社内での見極め基準も明確になったんです。

例えば面接を進める中で、「通過、見送り、迷う」の判断がバラバラになることがありますよね。これは、ジョブ・ディスクリプションをベースにせず、それぞれの立場・観点で見てしまっているから起こることもあると思っていて。

そこで面接評価シート(アンケート形式)を、ジョブ・ディスクリプションをベースにした設問に変えました。例えば、「ジョブ・ディスクリプションで定義されたこのポジションの必須要件、人物要件を満たしているか」といった設問にしています。

▼実際の面接評価アンケートの一部

加えて、採用委員会を設置することで、「面接の印象やレジュメの肩書で、なんとなくオファーを出してしまう」というケースがなくなりました。いまでは、このポジションでこういう期待値でオファーを出すので、この年収ですよね、というところまで、社内でしっかり議論をできるようになっています。

入社前から「計測可能な目標」を握り合った上で試用期間に臨む

こうした変化に伴って、候補者の方にも、より具体的な期待値を伝えることができるようになりました。いまではオファー面談のときに、具体的な目標を提示して、「これをクリアできる前提でこの報酬です」ということをしっかりと握り合っています。

目標は、例えばセールスのメンバーであれば、「最初の2ヶ月はオンボーディング、その後の契約率は◯◯%で、アップセル率は◯◯%」、コンサルタントであれば、「3ヶ月から半年のうちに運用額◯◯◯万円分の案件を担当する」といったイメージです。

目標はなるべく、定量的に計測可能なものにしています。ベンチャーやスタートアップの場合、「何も決まっていないからワクワクする」ことも正直あるとは思うのですが、それを言い訳にして、期待を明確にしないのは良くないと思っていて。

計測可能な目標を期間を区切って決めることで、「あなたにはこの段階でこの裁量を渡していきたい」ということも明確になりますし、試用期間中も、この目標を軸にしてコミュニケーションをとることができます。

ナイル様

また弊社の場合、採用チームが試用期間のクリアまでを責任として持っています。なので人事としては、試用期間中は「見極め」よりは「サポート」に力点をおいていて。

入社後2週間、1ヶ月、2ヶ月というタイミングで人事面談を行うのですが、その際に、「オファー時に聞いていた業務内容とマッチしているか」ということをしっかりヒアリングした上で、現場にフィードバックしています。

採用でミスマッチが起きると、どうしても「入ってきた人が◯◯だったね」「ワークしなかったね」という話になりがちですよね。でも、蓋を明けてみると上司やマネージャーがそもそもオファー時の条件と全く違う仕事をお願いしてしまっていた…ということも全然あると思っていて。

個人的な感覚値ですが、ミスマッチで短期離職になるケースの3割ほどは、上司やマネジャー等、受け入れ側の問題ではないかなと感じています。つまり、入社後にうまくいっていないケースの理由は様々なんですよね。

ですので人事としては、「誰々が良い悪い」というより、あくまでもニュートラルに「入社前に握り合っていたことと何が違うのか?」を確認し、現場に問題があればしっかりと伝えていきます。

ここまでコミュニケーションがとれていると、仮に試用期間中に難しいという判断になっても、お互いスッと合意して次のチャレンジに向かうことができますね。

「自力採用力」を高めるための、採用マーケティング施策も拡大中

こうした採用〜オンボーディングの綿密な見極めステップを設ける一方で、今年からは、オウンドメディアリクルーティングとリファラル採用による「自力採用力」を高めるための取り組みにも力を入れています。

採用マーケティングについてお話すると、Googleアナリティクスで採用ブログ、採用サイト、コーポレートサイトの、各サイト間の遷移から、応募までをトラッキングし、どこにボトルネックがあるのか仮説を立てながら改善していっています。

その中で実施した取り組みのひとつが、職種別のランディングページ(LP)の作成です。

もともとは求人一覧ページにすべてのポジションを並べていたのですが、「多すぎてわからん」という感じで(笑)。実際、採用サイトから求人一覧にいって、応募せずに離脱してしまうケースが多かったんです。

一方で、転職したい人たちは「自分はエンジニアである」「デザイナーである」といった認識はあって、その上で仕事を探しているはずです。であれば職種ごとに訴求を変え、対象となる求人だけを確認できるようにしたいなと。いまでは、8種類のLPがありますね。

▼採用サイト上に、職種別の求人情報ページへのリンクを掲載職種別LP

結果的には、この職種別LPを噛むことでページ遷移がひとつ増えたにも関わらず、求人ページまでの遷移率は向上し、応募数も増えたんです。

このように、データをとっておくことで改善の手も打ちやすいですし、目標を決めやすいということがあります。

データ自体は2019年から取り始めていたので、ポジションごとの歩留まり率や採用率が出せるようになったんですね。そこから逆算して、求人ページはこのくらい見てもらわないといけない、そのためには採用サイトにはこのくらい集客しなければならない…と目標をしっかり立てられるようになったことが良かったです。

またデータがあったことで、「オウンドメディアに力を入れていく」という意思決定の後押しにもなりましたね。というのも、採用予算が限られている中で、すぐに成果につながりづらいオウンドメディアにリソースを割く判断をするのはなかなか難しいと思っていて。

例えば経営陣からは、「1人あたりの採用に◯◯◯万円かかっているのを半分にしてほしい」といったオーダーがくることが多いですよね。そんな中で「オウンドメディアに投資したい」と思っても、「それ意味あるの?」と言われてしまって苦しむ…みたいなことってあるあるだと思っていて。

それが、以前からデータを分解しておいたことで、1〜2年かけてオウンドメディアでパワーを貯めていくと将来的にこう変わっていく、ということを数字で見せられるようになった。これは大きかったと思います。

ナイル様

いまはKPIとして、「自力採用力」という形で自社サイトとリファラルの数値を追いつつ、有効応募率や選考実施数を見ています。まだまだ自力採用の割合が少ないので、今後増やしていきたいですね。

そのために、ナイルのかだんをはじめとする各サイトのコンテンツをアップデートしていって、よりCVRを高めていく…ということを今後のチャレンジとしては考えています。(了)

【読者特典・無料ダウンロード】UPSIDER/10X/ゆめみが語る
「エンジニア・デザイナー・PMの連携を強める方法」

Webメディア「SELECK」が実施するオンラインイベント「SELECK LIVE!」より、【エンジニア・デザイナー・PMの連携を強めるには?】をテーマにしたイベントレポートをお届けします。

異職種メンバーの連携を強めるために、UPSIDER、10X、ゆめみの3社がどのような取り組みをしているのか、リアルな経験談をお聞きしています。

▼登壇企業一覧
株式会社UPSIDER / 株式会社10X / 株式会社ゆめみ

無料ダウンロードはこちら!

;