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【連載:成長組織のリアル】非連続な価値を生むには、多様性は必須。10Xが挑むインクルーシブな組織づくり

10X様_ゆめみ様_seleck

【Sponsored by 株式会社ゆめみ】本シリーズ「リアリスティック・ジョブ・プレビュー(以下、RJP)」は、「企業が『リアルな現状』を語ることが素晴らしい」という世界を作ることで、採用のミスマッチを減らしていきたいという思いから生まれた特別連載企画です。

急成長スタートアップ組織の実態について、良い面だけではなく課題も含めた「ありのままの姿」を、インタビューを通じて深堀りしていきます。

インタビュアーを務めるのは、スタートアップの内製化支援を行うと共に、RJPを以前から推進している株式会社ゆめみ 代表取締役 片岡 俊行さんです。

第5弾となる今回は、株式会社10X(テンエックス)の代表取締役 CEOである矢本 真丈さんにお話を聞きます。

10Xは、スーパーマーケット、ドラッグストアなどの小売事業者が、初期投資をかけずにネットスーパーのようなEC事業を展開できるプラットフォーム「Stailer」を展開しています。

2017年の創業以来、「10x ≒ 非連続な価値の社会実装を目指す」をミッションに掲げ、食・買い物領域におけるイノベーション創出に挑んできた同社。現在はStailerの事業成長に伴い、組織づくりの面においても新たなフェーズへと踏み出しています。

例えば、2021年4月には「10X Diversity & Inclusion Policy」を公開し、多様性のあるインクルーシブ(※)な組織づくりを行っていくことを宣言。

※「すべてを包んだ」「包括的な」の意。社会政策においては、「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないように援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という意味を持つ

「セレクティブで、入社ハードルも高い組織」のように見られがちだという10X。矢本さんは、「スタートアップは、事業としての掘りどころをひとつ見つけたら、多様な人が活躍できるようにメンタルモードをがらっと変える必要がある」と話します。

10Xがいま向き合う組織づくりについて、詳しくお話を聞きました。

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「非連続な価値の社会実装」を目指し、2017年に10Xを創業

片岡 矢本さん、今日はよろしくお願いします。最初に自己紹介をお願いできますか?

矢本 僕は大学卒業後は丸紅に入り、資源の投資関連の事業を担当していました。当時は東日本大震災の直後で、世界中で原発が止まって、それに伴う訴訟がたくさん起こっていたんです。

結果、「事業のハードシングスを全部詰め込みました」みたいなプロジェクトを1年目で担当することになり、辛くはなかったのですが、正直あまり手触りがなくて。もっと誰かのためになることをしたいと考えて、NPO法人に移って震災の復興支援を行うようになりました。

そこでは、Googleマップのようなプロダクトを使って、震災関連で人が入れなくなってしまったエリアを映して発信する…というプロジェクトなどをやっていました。その反響の凄さから、これは自分でプロダクトを作れるようにならないとダメだな、と気付かされて。

そこからキャリアチェンジをして、スマービー(現・ストライプインターナショナル)というスタートアップ企業でのEC責任者を経て、メルカリのグループ会社のソウゾウでプロダクトマネージャーを務めた後、2017年に10Xを創業しました。

▼株式会社10X 代表取締役 CEO 矢本 真丈さん

10X_矢本様

片岡 10Xさんは、ミッションとして「10x ≒ 非連続な価値の社会実装を目指す」ということを掲げられていますね。

矢本 はい。10Xでは、自分や身の回りの人が持っている課題に対して優先順位をつけた時に、一番上にくるようなイシューを解きたいと考えています。

その中で、メルカリ時代に育休を取得したことをきっかけに「食と買い物」の領域の課題を見つけて。毎日毎日、買うものを考えて食事を作らなきゃいけない、という課題に対するソリューションが、50年くらい変わっていないなと。

そこから着想してプロダクト作りに入り、試行錯誤を経て、現在は小売事業者向けのECプラットフォーム「Stailer」を運営しています。

こうした課題解決の先に非連続なものを作って社会に実装することが目的の会社なので、社名は10Xで、かつ、それがそのままミッションにもなっています。

会社と個人が長期で関係性を築けなければ、非連続な価値は生めない

片岡 事業面でもとても難しい課題に立ち向かわれていると思うのですが、組織面でも、矢本さんは「長期的に非連続な価値を生み出し続けるチームを作る」ということを随所でおっしゃっていますよね。

矢本 そうですね。そこから逆算したときに生まれたのが、「10X Values」という三つの価値観と、「10X Diversity & Inclusion Policy」だと思っています。

▼組織の行動指針としてのValuesと、推奨される行動

10X_values

矢本 そもそも「長期」というのはサブセットでしかなくて、一番重要なのは「非連続な成長を実現する」ことです。それを考えたときに、「短い期間で物事が変わる」ことってほとんどないんですよね。

例えば「火星に行くことを当たり前にする」という非連続なミッションを持っている会社があるとして、それを実現しようとしたらものすごい積み上げの世界じゃないですか。

なので、どこにピンを刺してやり抜くことができるか。そして、やり抜くことをやめる理由を排除できるか。それが大事だと思っています。

片岡 「やめる理由」を排除することのひとつに、組織づくりがあるわけですね。

▼株式会社ゆめみ 代表取締役 片岡 俊行さん

ゆめみ_片岡様

矢本 僕はよく「アラインする」という言葉を使うのですが、会社には会社のゴールがある一方で、そこで働く個人は「プライベートと仕事」という二つの背景を必ず持っていますよね。

そして、個人のありたい状態と会社のありたい状態の整合性がうまく取れていなければ、長期で一緒にやっていくことは難しい。なので、やめる理由をどうやって環境から排除していくかということを、すごくよく考えます。

片岡 矢本さんのブログでも企業と個人の関係性について発信されていましたよね。

それでいうと、採用プロセスにもすごく磨きをかけられてきたのかなと。かなり時間をかけて、お互いを理解できるようなプロセスを構築されています。実際に一緒に働く「トライアル」を必ず実施する選考プロセスになっていますね。

※参考記事:10Xのカルチャードリブン開発を支える選考プロセス『トライアル』の紹介

矢本 自分がこれまで受けたことのある選考では、基本的に企業側が「選ぶ」立場だったのですが、採用ってそうじゃないと思っていて。

我々が評価をする側面ももちろんありますが、候補者の方にも我々を評価してもらって、自分の時間を賭するに足る場所なのかを判断してもらわなければいけないですよね。

実際、1人目を採用するときも、1ヵ月同じプロジェクトで一緒に仕事をしながらお互いの理解を進めて、結果的に進む道が同じだから一緒にやろうと。同じことを2人目、3人目とやってきて、いま44人目、45人目…と続いている。基本的な発想としては、最初から何も変わっていません。

片岡 まさに本連載のテーマであるリアリスティック・ジョブ・プレビューですね。採用のミスマッチをなくすために一番良いのは、やはり一緒に働いてみることですよね。

初期のスタートアップだと実践されている企業も多いですが、人数が増えるとだんだんできなくなっていくので、10Xさんはずっと続けられているのがすごいなと思います。

矢本 実際にトライアルを始めてみてから「やっぱり辞退します」という方もいらっしゃいますし、それはそれでプロセスとしては正解だなと思っていて。

「合わない」ということを判断できたのであれば、それはお互いにとってハッピーなことですよね。

平均年収900万超は「高い」? 他社水準と比較しない報酬制度

片岡 つい先日、10Xさんはグレード・報酬制度のアップデートと、現状の分布を公開されていらっしゃいましたね(※2021年9月)。

▼実際に公開されたスライド資料の一部

10X_給与レンジ公開

矢本 10Xの評価制度は、「Valuesの発揮度が大きくなればなるほど、10Xは10Xをすることに近づけるはず」という思想のもと、その発揮度をもっと大きくできるようにフィードバックをかけたい、というものです。

なので、評価自体はValuesに沿って試行錯誤してきましたが、別の問題として、その対価をどのようにお支払いするか、ということがあります。

もともとベースとして、入社した方の生活を壊さなくて済むラインは絶対にお支払いしたいということは、会社としてお金がなかったときからずっと思っていました。

それがいまは、事業の確実性が高まり、何をしたら我々が成長できるのかが少し見えてきています。そうなれば、その分に見合うような給与が支払えるはずです。

加えて、給与面が入社にあたってのハードルにならないようにしたい。そして最後はやはり、いまのメンバーが発揮してくれている価値に対して、より適切な対価をお支払いしたい。こういったことをひっくるめて給与の仕組みを見直した結果、上限値が上がったということになります。

片岡 企業と個人が長期的な関係性を築くというお話ともつながっていますね。実際、報酬としてもかなり競争力のある水準を出されているなと思いました。

10X様_ゆめみ様_対談

矢本 先日、査定が終わったあとに平均年収を算出したら、900万円を超えていました(※2021年10月時点)。

片岡 それは、水準として高いと思います!

矢本 他社の水準はあまり見ていなくて、10Xとしていまいくらまで拠出できて、このぐらいの評価ができるはず、という上限を見定めて給与レンジを決めているので、他社と比較しているわけではないんです。

それに僕たちはキャリア採用のみなので、例えば新卒が100人いる会社と、給与を比べることにあまり意味がないじゃないですか。いまのメンバーのパフォーマンスに対して我々が出すべき給与っていくらなんだっけ、ということだけを議論している感じです。

片岡 福利厚生制度の「10X Benefits」でも、入社後すぐに育休の取得ができるなど、社員の方にかなり手厚いサポートをされています。

矢本 これもベースとしては、社員が働きたいのに働けない、という状況になるリスクをカットしたいという考え方からきています。

もともと僕も、第二子の育休中に創業しているんです。しかも創業したはいいものの、子どもの病気がわかり、パートナーと二人三脚で家庭のこともやりながら仕事をするという制約がずっとあったので。

多様な人が多様な働き方をしてもパフォーマンスは出ることはわかっているから、それを許容できるようになりたい。それが10X Benefitsの考えのベースです。現在は乳幼児がいる世代が多いので育児サポートが多くなっていますが、今後は介護なども大きなペインになってくるだろうと思っています。

片岡 ゆめみも、従業員の抱える不安を解消するために会社としてサポートすることを徹底していますが、介護の問題が一番難しいですね。いまは無制限の有給休暇を付与しているので、それで1年でも2年でも休んでもらうようにしていますが。

ただ、制度があるだけじゃダメで、それを当たり前のように使える環境と風土が10Xさんにはあるので、それもすばらしいですよね。

矢本 制度と風土はセット、とよく言われますが、「誰が育休取るの?」みたいな雰囲気の中では絶対に使えませんよね。雰囲気というか、カルチャー作りはすごく大事だなと思います。

事業成長に伴い「セレクティブ」から「インクルーシブ」な組織へ

片岡 先ほど「多様性」のお話が少し出ましたが、今日は「10X Diversity & Inclusion Policy」の公開に至った背景もぜひお聞きしたいと思っていました。

矢本 背景でいうと、事業が成長してこれから拡大していくぞ、という状況の中、それに必要な組織を作りきれるか…という不安が実はものすごく大きかったんです。

自分自身が、100人、1,000人規模で多様な人たちがイキイキと仕事をしている組織を作っているイメージが湧かないということもありましたし。あとは外からの見え方としても、セレクティブでちょっと怖い組織に見られている部分があるかなと。

こうした背景から、10Xが抱えている組織の多様性についての課題が見えてきたんですね。

片岡 いまの10Xさんはダイバーシティに溢れる組織というわけではないし、外からもそうは見られていない…ということでしょうか。

矢本 そうですね。ただ、事業について試行錯誤しているフェーズにおいては、ある意味正解だったかなと思っていて。僕の経営メソッド的にも、ドキュメンテーションを使って情報を開示して、全体の合意を取っていくので、スクラップアンドビルドがしやすい組織の状態を保つことの合理性がめちゃくちゃ高かったんです。

でも、Stailerという事業に行き着いたことで、これまでは坂を必死に上っていたのが、逆に下り坂になって上から転がってくる石に追いかけられるような状況に変わって。それによって、自分や組織が持っているメンタルセットを変える必要が出てきた。

10X_矢本様

矢本 言い換えれば、より速く下に向かって走り抜けられるように、色々な役割の人を受け入れて組織を拡大して、この事業をしっかり伸ばしきる…というフェーズにがらっと変わった。それが、ちょうど1年くらい前です。

スタートアップってそういうもんなんだろうな、と思います。事業としての掘りどころをひとつ見つけたら、会社が持ってるメンタルモードをがらっと変えなければならない。

なぜならば、事業のために必要な人が多様になるからです。多様な人のパフォーマンスを1じゃなく10にするためにはどうしたらいいのか、ということが、とても大事な議論になると思います。

片岡 実際に、同質性が高いことで具体的な問題が出てきたことはあったんですか?

矢本 どちらかと言うと、未来に課題が現れるだろうなという感覚です。例えばわかりやすいのが、現状、社員の中の女性比率が約20%なんですね。

でも、我々の事業のエンドユーザーさんは6割が女性なので、すごくギャップがある。しかも、お客様は日本中にいるのに、そのサービスを作っている我々は東京にしかいない。お客様の多様性に対して、自分たちの多様性が追いついてないじゃん、という。

こうした状況を変えるための第一歩として、ポリシーの発表に至りました。

片岡 実際にポリシーを発表したことで、社内の変化はありましたか?

矢本 例えば事業開発の採用ターゲットの中に、「こちらからお声がけする候補者の比率は、3割以上を女性にしましょう」という形で、女性比率を明確に盛り込んでいます。そうしない限り、現状の壁を突破できないから、まず3割ということですね。

片岡 ゆめみも、来年入社する25名ほどのエンジニアの中にもひとりも女性がいなくて…。これは本当に問題だなとは思いながらも、なかなか応募の時点で女性がいないので、難しいですね。

新卒2年目の女性社員がD&I担当取締役に任命されたので、これからはその人を中心に動いていきます。

矢本 いいですね。ソフトウェアエンジニアって、もともと女性が非常に少ない世界ですよね。その中で「比率を2割に上げましょう」といった実現可能性の低いことを最初から掲げても形骸化しがちだと思っていて。

その前の、アクション可能な指標からまずはしっかりアプローチしきることが大事だと思っています。

起業家=社会不適合者? 二度の「CEO 360°レビュー」を経て

片岡 ほかにも、10Xさんがいま解決したいと考えている組織の課題はありますか?

矢本 まだ、最適な状態になっていないことがたくさんあります。例えばエンプロイーサクセスの領域は、従業員と初めて出会ってから辞めるところまでのすべてが管掌範囲ですが、まだできていないことの方が多いので…。いまはとにかく、フローを整えている段階です。

また、今後10Xにとって大きいのが、採用の拡大に伴って「新しく入社する」という体験がとても増えること。今後、会社の中身もどんどん変わっていく中で、常に最適なオンボーディングの状態をどう模索していくかということは、とても大きい課題だと思います。

片岡 それこそインクルージョンの観点からも、入ってくる方の多様性も高まっていきますよね。

矢本 そうですね。以前は採用もリファラルやダイレクトが中心だったので、ある意味、同質性が高かったんです。ですがいまはほかの採用チャネルも模索し始めているので、そうなると、チャネルによって求められるオンボーディングの強度が全然違いますよね

少し前までは、入社される方は僕のPodcastを聞いていて、Culture Deckやその他のドキュメントも全部読んだことのあるような方がほとんどだったのですが、最近は受けるまでそんなの見たことも聞いたこともなかった、という方も入社するようになっています。

そうなると、会社のカルチャーや価値観のベースにどうやってアクセスしてもらうのか、ということに、個人的には課題感を持っています。

片岡 入社された方に「このPoscastを聞いてください」といった感じで案内されたりはするんですか?

矢本 それこそ、いまは入社1ヶ月後に全員Podcastの収録に呼んで一緒に話しています。それを、僕自身の考えをインストールしてもらう機会にしていますね。

片岡 社員の方とのPodcast、聞かせていただいてますが良いですよね。でも、新しい人がめっちゃたくさん入ってきたらどうするんだろう、と思ってました(笑)。

矢本 いや、僕も「あれいつまでやれるんだろう」と思っています(笑)。収録も追いつかないし、いまは編集も自分でポチポチやってるので…。

片岡 社員の方の声というと、以前にCEO 360°レビューも2回実施されていましたよね。中身も拝見しましたが、レビューを受けて矢本さん自身のコミュニケーションも変わられた…といったことが書かれていました。

※参考記事:CEO 360°レビューを受けました #1 (2020/09) / CEO/組織 360°レビューを受けました #2 (2021/03)

▼二度目の360°レビューの一部

10X様_CEO360°レビュー

矢本 たしかに、「話しかけやすくなった」というのは言われるかもしれないです。

ただ、社内の人とのコミュニケーションで言うと、組織が拡大することで僕に話しかける機会自体が少なくなっていくと思うんですよ。それは何かもったいなと思っていて、最近はオープンドアという企画を始めました。

金曜日の夕方に、誰でもアジェンダなしで、何を話してもいいという時間を設けています。SlackのハドルやGoogle Meetなどのオンラインでやっているんですが、ちょこちょこ色々な人が入ってきてくれますね。

とは言え、僕の役割って、一番が創業者で、二番がCEOだと思っていて。まず創業者としての役割を全うするのが自分のミッションなので、360°レビューをそのまま受け入れて自分を変えるのがベストだとは思っていないんですよ。

なのでレビューについては、自分のことを言われているけれど、あくまで「役割」へのフィードバックとして受け取っている感覚もあるかもしれません。

ただ他方では、やはりフィードバックを聞くという機会を開くことはすごく重要だと思っています。そもそもある種、社会不適合者だから会社をやっている…みたいなところもあるので

片岡 起業家ってそういうもんですよね。

矢本 そういうもんです。

一同 (笑)

10X様_ゆめみ様_対談

矢本 それこそ、コミュニケーションは全然下手だといまでも思います。最近でも、人にメールを送るときに名前を間違えてしまったこともあるし。。

片岡 そこですか(笑)

矢本 創業前に4社で働きましたが、1回も「ここは自分の居場所だ」と思えたことがないんです。だから合わないな、と思ったらすぐに辞めちゃう(笑)。会社を作って初めて、自分の場所を作っているという気持ちになれましたね

それが、セレクティブな会社に見られる要因でもあるかもしれないので、そうではないカルチャーを作っていくことは自分自身のイシューでもあります。

片岡 入社をされてきた方が、「矢本さんって意外とこういう方なんですね」といったことをおっしゃられることはありますか?

矢本 うーん…「(意外と)素朴」と言われることはあります。

片岡 素朴ってどういうことなんだろう。あんまり「ウェーイ」みたいなスタートアップ感がないとか?

矢本 ないない(笑)。たしかに、落ち着いてるとは思いますね。

非連続な価値を生むために、インクルーシブな組織づくりは必須

片岡 10Xさんは、スタートアップでありながらD&Iについて宣言されるなど、界隈でも先駆け的な存在だと思います。こうした活動から、スタートアップ自体へのイメージも変わっていくかもしれませんね。

矢本 事業も同じなんですが、市場側に貢献しないものは基本的にあまり成長しないと思っていて。

その点、10Xは事業としてはネットスーパー市場が成長して、その結果、我々が伸びていくということにいま賭けています。組織面も同じで、アーリーステージのスタートアップや、IT企業に対しての認知が変わっていくことに我々が貢献することで、結果、我々自身の見え方も変わる…ということが必須かなと。

自社だけではなくて、プールを変えていかなければいけないですね。

片岡 そういった意志を持っていらっしゃるスタートアップも増えてきていますね。

矢本 とは言え、ようやく第一歩を踏み出したところです。D&Iについては、ポリシーを発信したことで一定は認知していただいたと思いますが、本当にこのメッセージを届けたい方に届いているかというと、まだまだ課題を感じています

例えばスタートアップ界隈の外にいる、お子さんをお持ちのママのような方は、待っているだけでは絶対に選考に乗って来ないのが現状です。

採用に応募する側の方から見たときに、いまはまず、「アーリーステージのスタートアップ」に対する壁があって、その上でさらに「セレクティブな組織である(に見える)10X」という壁があって、かなりハードルが高く感じられているのかなと。

片岡 でも実際には、10Xさんには入社してすぐに育休を取られるような方もいて、仕事と育児を両立できる環境だというイメージができつつある印象はあります。

矢本 徐々に…ですね。最終的には、やはり最初に言った「非連続な価値を生み続ける組織」を作らなければいけない。そしてそのためには、多様性が必須ということは間違いないと思っていて。

なので、インクルーシブな組織を作っていくということを、経営戦略としてしっかり目指していくことは間違いないと思います。

スタートアップの市場で見ると、会社に必要なヒト・モノ・カネというリソースの中で、いまは圧倒的にヒトの需要が高まっています。そうなると、結局自社に合う方にどれだけジョインいただけるかということが、経営的にもすごく大事になってきます。

なので、10Xがインクルーシブな組織を作っていくということをしっかり発信して、外の人に知っていただき、新しい人にもっと出会うことが重要です。いまは本当に最初の一歩を踏み出したところなので、これから頑張っていきたいですね。

片岡 矢本さん、ありがとうございました!(了)

株式会社ゆめみ 代表取締役 片岡 俊行さんより対談後記

片岡さん編集後記用_10X.001

10Xと聞くと「ストイック」「閉鎖的」というイメージを持たれることがあると言う。

10倍の成長に向かってひたすら努力する「ストイックさ」ではなく、10倍になった姿から逆算した未来のイシューも含めて解決する方法を探索する「想像性」が本来の10Xの実態だ。

ツヨツヨなマッチョな人だけで10倍成長するという事ではなく、マラソンのように長い距離を走るビジネスなので、マッチョな人でも弱るときや苦しいときがある事を理解した上で、育児やインクルーシブな取り組みなども自然に行っている。

矢本さんに対する「素朴な人」という社員評。その言葉に、最初は違和感があったが、本質が理解できた。
矢本さんは、ひとりの生活者として、あったらいいサービスを素朴に実現しようと思える人。あったらいい組織を素朴に実現しようとできる人。

そこに、悲壮感や、極端な使命感、自己顕示や無理がない。あるのは、素朴さだけである。
たまたま、素朴に行う取り組みが周りからすれば「ストイック」に見えるだけなのだ。

10Xに多様な仲間が集まり、それぞれの「素朴さ」をありのままに発揮できるインクルーシブな組織になった時、10倍を超える非連続的な成長が実現されるのかもしれない。

 

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