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  • 吉井 萌里

今、Web3.0で活躍中の’90〜’00世代に聞く!「あなたにとってのWeb3.0とは?」【Vol.01】

2022年は、Web3.0やNFT、DAO、メタバースなど、ブロックチェーン技術に関するニュースが多くの人々の関心を引き寄せ、IT業界を賑わせましたね。

Web3.0は、基本的に「匿名」の世界。SNSのプロフィール画像にアバターやNFTアートの画像を設定している人も増え、性別や年齢もわからないままコミュニケーションをとる機会も多く、Web3.0特有のカルチャーが存在していると感じます。

そうした中で、「Web3.0の世界ではどんな人が活躍しているの?」と疑問を感じられている方も多いのではないでしょうか。

実際には、元々クリプトやブロックチェーン技術に興味があった方はもちろん、2021年頃にNFTが注目されたことをきっかけに、ここ数年でより多くの人が参入しています。10代や、20代の若い方の存在が目立つことも特徴的です。

そこでSELECKでは、今Web3.0で活躍中の1990年以降に生まれた方々を5名ピックアップし、それぞれ以下3つの質問に回答していただきました。

Q1:ご自身の言葉で、「Web3.0とは?」について教えてください。
Q2:現在関わっている、Web3.0のプロジェクトについて教えてください。
Q3:Web3.0の世界に飛び込んだ理由、また感じている可能性について教えてください。

Q1の質問に関しては、正解を問うものではなく、各プロジェクト携わる中で自身が感じられている「Web3.0とは?」を言葉で表現していただきました。それぞれの「らしさ」があふれる回答、ぜひご覧ください!

<目次>

  1. oinarisanさん / 株式会社あるやうむ CCO(Chief Communication Officer)
  2. chiakiさん / モノバンドル株式会社 事業開発室所属
  3. matonさん / 「Party Sheep Club」創業者
  4. ikkunさん / 「数学を愛する会」・「くりぷと勉強会」運営
  5. 猪鹿倉 文乃さん / 「Sparkle &」開発

1. oinarisanさん / 株式会社あるやうむ CCO(Chief Communication Officer)


Q1:ご自身の言葉で、「Web3.0とは?」について教えてください。

Web3.0は、ブロックチェーン技術やVR技術の発展に伴い拓けた、新しい世界線です。

NFTやメタバースの普及により、これまでに比べてより一層、想いの強い個人が活躍したり、生きづらさを感じていた方でも自己表現を自由にできる可能性を秘めています。特にNFTに関しては、「共感」によるエネルギーが発揮しやすい分野で、「次世代型のクラウドファンディング」とも捉えられると考えています。

Q2:現在関わっている、Web3.0のプロジェクトについて教えてください。

「NFT×地域創生」の実現に取り組む、株式会社あるやうむという企業に勤めています。「ふるさと納税×NFT」「観光×NFT」の2つの軸で、さまざまなソリューションを主に自治体向けに展開することで観光DXを推進しています。

例えば、お米やフルーツといった地域の観光地や地場産品がモチーフになったNFTを、ふるさと納税の返礼品として提供する仕組み作りをサポートしています。そのNFTを現地に持ち込むと、NFTの絵柄が変化したり、特別な体験が得られる仕組みを施すことで、観光誘致やシティープロモーションに活かすことができます。

また、ふるさと納税のスキームを使わない「観光×NFT」の領域でも事業を展開しており、現地に行くことで手に入れられるNFTや、現地に訪れることで変化するNFTなどを開発しています。

▼同社がNFTクリエイターのPoki氏と一緒に作成した、北海道余市町のふるさと納税の返礼品

※出典:北海道余市町・株式会社あるやうむ・NFTクリエイターPoki氏が提供する、ふるさと納税返礼品NFTの全54種類に対して寄付が集まりました。 – PR TIMES

Q3:Web3.0の世界に飛び込んだ理由、また感じている可能性について教えてください。

一番印象的に残っているのは、Facebook社がMeta社に社名変更をしたタイミングです。また、その時期から海外のインフルエンサーや投資家が「Web3.0」というワードを頻繁に使うようになり、Web3.0の時代が来ると直感的に感じました。「今、Web3.0に飛び込めば、次の時代の作り手になれるかもしれない」、そう考えるとワクワクが止まらなくなり、気づいたらこの世界に飛び込んでいました。

NFTの領域では、投機的な側面が強いため敬遠されたり、市場が冷え込んでいると噂されることがよくあります。その一方で、弊社のように「NFTをどう使うか」に焦点を当てて堅実に事業成長させている会社や、知名度を上げているNFTプロジェクトが存在します。NFTは、向こう2、3年でさらに一般普及し、大きなトレンドになると考えています。

2. chiakiさん / モノバンドル株式会社 事業開発室所属

Q1:ご自身の言葉で、「Web3.0とは?」について教えてください。

ブロックチェーン技術を用いた分散型Webの総称」だと理解しています。

具体的には、ブロックチェーン、チェーン上に構築される分散型アプリケーション(DApps)、暗号資産、トークン(FT)、NFT、スマートコントラクトを活用したDAOなどの総称です。また、メタバースは、ブロックチェーンを利用した技術、例えばNFTやトークンといったものとの相性が良いためWeb3.0の一要素として語られることが多いと感じています。

このWeb3.0の世界観では、「Don’t trust, verify」という思想が根底にあると考えています。つまり、中央集権的な組織や人物を信頼せずとも、ブロックチェーンやスマートコントラクトの仕組みによって、自ら正しさを確かめることができる世界観が理想とされています。ビットコインがすごい点はこの思想を実現したことであり、私もこの世界観が好きです。

一方で、分散的であることのデメリットもあると考えています。多数のノードが合意を形成するために必要な処理によって、既存のデータベースと比べて処理速度が遅くなることや、改竄できない代わりに一度ブロックに刻まれたものを書き換えられない点や削除できない点などが挙げられます。

プライバシー面の例でも、情報が中央集権的な機関に依存しないことや匿名といった性質上、各個人がエンドユーザーとして「個人情報を他者に渡す/渡さないの選択」に対して意識的になるという話がありますが、それをエンドユーザーに対してわざわざ求めるのかという点にも疑問があります。

とはいえ、ZK Rollup(※1)をはじめとしたL2ソリューションによる処理速度の高速化や、既存産業に組み込まれていく中でのeKYC(※2)の仕組みなどの技術の発展に伴ってバランスがとれていくと思いますし、仕組みが意思を形成していく側面もあると思うので、「Don’t trust, verify」の思想を共通認識に、今後どのような世界が作られていくのか楽しみです。

※1:「L2(レイヤー2)」とはビットコインやイーサリアムのスケーラビリティ問題(膨大なデータ量を一度で処理できないという課題)を解決する技術やプロトコルのことを指し、ZK Rollupはその一つ。

※2:「eKYC(electronic Know Your Customer)」とは、スマートフォンやPCを使用して、オンライン上で本人確認の手続きを完結させる仕組みのこと。銀行や証券会社の口座開設、クレジットカード発行時などに利用されている。

Q2:現在関わっている、Web3.0のプロジェクトについて教えてください。

以前は、NFTプロジェクトの企画運営や、DeFi領域のリサーチ業務などを複数社で兼務していました。現在はモノバンドル株式会社の事業開発室に所属し、さまざまな業務に取り組んでいます。

具体的には、ブロックチェーン領域の起業家、開発者を対象にしたインキュベーションプログラムの企画運営や、決済関連サービスやWeb3.0特化のM&A仲介サービスの事業開発、営業・オペレーション構築を行っています。

モノバンドル株式会社のWebサイト


Q3:Web3.0の世界に飛び込んだ理由、また感じている可能性について教えてください。

Web3.0の世界観はもちろん、モノバンドル社の働き方や代表の原沢をはじめとした一緒に働く人々の魅力に惹かれたからです。

とはいえ、この魅力は自社に限った話ではなく、業界全体の雰囲気として共通しているものがあると思っています。具体的には、Web3.0の世界ではリモートワークやフルフレックス、兼業が前提になっていることが多く、自由な働き方が認められているように思います。さらに、業界で活躍されている方々は、新しい技術や未来の可能性に飛び込んでいくエネルギーや知的好奇心、強い意志を持った人が多いと感じており、日々多くの刺激を受けられる点も魅力的です。

改めて、ブロックチェーン技術と分散型アプリケーションには、未だ多くの課題はあれど大きな可能性を感じています。

なかには、「分散型が前提となり、Web3.0がWeb2.0に取って代わるものになる」という物語を描いている人もいますが、私はそのようには考えていません。分散的であることの良さと、集権的であることの良さが同時に存在していますし、その上でブロックチェーンが適した領域があることも明白です。

例えば、ブロックチェーンの持つ分散性やトレーサビリティ、デジタルデータそのものに権利を付与するNFTなどを活かし、不動産や金融業界、コンテンツ、物流など領域において各業界の発展や価値の流動性を大きく高められると考えています。今後も、ブロックチェーン技術の活用が適する領域において、その未来を作っていく一端を担いたいです。

3. matonさん / 「Party Sheep Club」創業者

Q1:ご自身の言葉で、「Web3.0とは?」について教えてください。

Web3.0は非常に広い概念だと思います。私は、完全なる分散化には興味がなく、その状態を追求したいとは考えていません。実際、Web3.0に到達するには長い時間がかかると思いますし、私たちの世代で担えるのは「Web2.3」くらいまででしょうか。

現在は、仮想空間の中で、「便利だから」という理由で使われるクリプトや、コミュニティ形成のために必要なNFTに関心があります。

Q2:現在関わっている、Web3.0のプロジェクトについて教えてください。

Web3.0の世界は、常に進化していることが魅力的だと思います。現在は、「Party Sheep Club」というヒツジをモチーフにしたNFTのキャラクターを制作しており、過去には2Dだったキャラクターが現在は3Dへと進化を遂げています。

2DのSheep(左)と、3DのSheep(右)

今後は、より解像度の高いアバターのプロジェクトを企画しています。チームにクリエイターとエンジニアを新たに迎え、本格的にメタバースに参入する準備が整いました。これまでのNFTの常識を覆すようなプロジェクトになると確信しています

Q3:Web3.0の世界に飛び込んだ理由、また感じている可能性について教えてください。

昔から、AIやブロックチェーンといった最先端のテクノロジーが好きで独学で勉強していました。学ぶ中でたまたまNFTの技術が登場し、NFTはほぼ原資ゼロでプロジェクトをスタートできる特性もあることから、NFTの活用を決め、Web3.0の世界に参入しました。

今後は、私が一番魅力を感じているメタバースの分野に進出します。元々、小学生の頃からオンラインゲームが大好きだったこともあり、私にとってメタバースの世界観は日常に馴染みのあるものでした。NFTプロジェクトを進めるにつれて、メタバースの存在がより身近で手に届くものになってきたと感じています。制作したNFTキャラクターたちが仮想空間上に実装される未来がとても楽しみです。

4. ikkunさん / 「数学を愛する会」・「くりぷと勉強会」運営


Q1:ご自身の言葉で、「Web3.0とは?」について教えてください。

初心者向けと、玄人向けに分けて説明しようと思います。まずは初心者向けです。Web3.0という言葉は、「分散型の新しいインターネット」として提唱されましたが、その意味は多岐にわたり、漠然としたものです。あえてWeb3.0の最も重要な性質を一言で表すなら「トラストレス」という言葉だと思います。

トラストレスというのは、「信用(トラスト)が必要ない」という意味です。Web3.0ではブロックチェーンを用いて、サービスの運営元やその他の人を信用する必要を排除しました。中央銀行のない電子通貨を発行して、インターネット上に経済圏を構築したり、電子データに唯一無二の価値を付加することができます。

また、様々なサービスの上に新たなサービスを構築できる点も大きな特徴のひとつです。これはすべてのサービスのプログラムコードが公開されているため、個人が各サービスをレゴブロックのように組み合わせ、新しいサービスを開発していくことができます。この特性があるため、Web3.0はすさまじい速さで成長しています。

次に、玄人向けの説明です。Web3.0という言葉は、当初提唱された概念と違う意味で用いられる場合が多く、その意味は多岐にわたり、漠然としたものですが、Web3.0を敢えてまとめるなら次の三つの性質を満たしているインターネットサービスだといえます。

1. 信用不要(トラストレス):Web3.0のサービスを利用する際に、運営や第三者を信用する必要がありません。よって、突然サービスが終了するといったことは起こり得ず、取引は全て透明性の高いプログラムコードに明記されます。

2. 許諾不要(パーミッションレス):Web3.0プロジェクトは常にオープンに開かれており、利用や参加のために第三者の許可を得る必要がありません。そのため、従来の上下関係が存在しない組織構造をとります。

3. 組み立て可能(コンポーザビリティ):Web3.0プロジェクトはすべてオープンソースであるため、エンジニアは既存のプロジェクトを利用して、新しいサービスを構築できます。

Q2:現在関わっている、Web3.0のプロジェクトについて教えてください。

現在は、「TicketMe(チケミー)」というプロジェクトに参加しています。TicketMeは、誰でも簡単にNFTの引換券やチケットを発行できるサービスです。NFTチケットの発行を通じたコミュニティの形成をサポートし、未だ焦点が当てられていない新たな価値を発掘していくことを目標にしています。

▼TicketMeのWebサイト

チケットをNFT化することのメリットは、二次流通を加速できたり、転売を防止できるなど、自由度高く設計ができる点です。また、今後展開を予定している「TicketMe Goods」では、商品の引換券としてNFTを利用できるようにし、よりシームレスな購入体験を構築しようと考えています。最近では、「超丸餅」というNFTプロジェクトにてフィジカルアイテムとの引換券として利用していただきました。

今後も、多角的な事業の展開を計画しているため、少しでも興味を持ってくださった方はご連絡いただけると嬉しいです。

Q3:Web3.0の世界に飛び込んだ理由、また感じている可能性について教えてください。

僕がWeb3.0に興味を持った一番の理由は、やはりビットコインの存在です。「たった一人のエンジニアが通貨を発行し、世界を変えた」という事実に魅了され、この業界に飛び込みました。

Web3.0は、ある種インターネット上で行われている社会経済の大規模実験だと考えており、新しい概念や価値観が次々に生まれていく環境が本当に楽しいです。失敗もありながら、この実験は確実に前進していると思います。

また、実験を通じて今まで誰も予想できなかった価値観が形成され、人類にとって新たな価値をもたらすのではないかと期待しています。例えば、「DAO(分散型自律組織)」の登場は、かつて東インド会社が株式会社という仕組みを構築したほどの革命です。数年後には、株式会社への就職に留まらず、DAOに参加するという選択肢が当たり前になるのではないかと思います。

 5. 猪鹿倉 文乃さん / 「Sparkle &」開発


Q1:ご自身の言葉で、「Web3.0とは?」について教えてください。

Web3.0の世界は、「誰もがなりたい自分、ありのままの自分でいられる可能性を秘めた世界」だと考えています。私は現在、メタバース事業を展開しているので、メタバースの側面から「Web3.0とは?」について回答します。

メタバースワールドは、女性、男性、LGBTQなどの全てのジェンダーの方々にとって過ごしやすい空間で、ジェンダーギャップが起こりにくい場所だと個人的に考えています。現実世界では、例えば男性が女性のような格好で街を歩くと人目を引くことがよくありますが、メタバースワールドではそれは「普通のこと」で、違和感を感じる人はほとんどいません。

また、人間に関わらず、動物になりきってる方もたくさんいます。年齢差も存在しません。他人の目を気にせずに過ごせる最高な世界です。

Q2:現在関わっている、Web3.0のプロジェクトについて教えてください。

現在は、メタバースワールドやアバターの制作、メタバースワールド内で撮影された写真のNFT化などを行う「Sparkle &」というプロジェクトを運営しています。

「Unity(ユニティ)」と呼ばれるゲーム開発プラットフォームには「Particle」と呼ばれる、ランダムに要素を発生させる機能があります。ワールド内に滞在する時間の経過に伴ってParticleの量が変化するため、私が最も綺麗だと思った瞬間を撮影し、NFT化して販売しています。この写真は普通の写真とは異なり、動きがあるという点が特徴です。

▼実際に販売されている写真「Clouds World」(左)、「Sparkle world」(右)

Q3:Web3.0の世界に飛び込んだ理由、また感じている可能性について教えてください。

私がWeb3.0の世界に飛び込んだきっかけは、VRChatです。母がOculus Questを購入して、VRChatを通じて様々な人と交流している姿を見て興味を持ちました。

「VRChat」「Cluster」「The Sandbox」など多種多様なメタバースプラットフォームが存在しますが、共通して存在する最も大きな価値は、クリエイターとして活躍できる方が増えることだと考えています。

多種多様なバックグラウンドを持つ人々がそれぞれの価値観でワールドやアバターを制作し、多くの人と自分の価値観を共有する。そうした世界が広がることで、社会全体の視野を広げるきっかけにもなりますし、これまで生きづらさを感じていた人にとっても心地よい社会に近づいていく。私は、この可能性に強く惹きつけられています。

おわりに

今回は第一弾として5名をピックアップいたしましたが、いかがでしたでしょうか。それぞれ、個性と熱量が伝わってくる素敵なメッセージをいただき、筆者自身も大変刺激を受けました。回答いただいたみなさま、ありがとうございました!2023年1月には、第二弾を公開予定です!お楽しみに。(了)

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