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Avalanche × Legitimate × Relation「To find the NEXT」【Web3イベントレポート】

2023年に注目されたイベント「WebX」の開催直前で、Web3の界隈が盛り上がりをみせる中、同年7月に東京都渋谷区にて開催されたCRYPTO SUMMER BBQ – BUILDER‘S MEATUP –

このイベントは、Web3/NFTリサーチャーとして活躍するNORIさん(@NORIWTS)を主導に、ブロックチェーン業界最速のスマートコントラクトプラットフォーム「Avalanche」と、ニューヨークを拠点とするフィジタル企業「Legitimate, Inc」、そして革新的な分散型ソーシャルグラフプロトコル「Relation Labs」による共催イベントとして開催されました。

日本やアジアを中心に活動するWeb3プロジェクトとのディスカッションや交流を目的とした同イベントでは、Web3とソーシャルの融合をテーマにしたパネルディスカッションが実施され、海外企業編、国内企業編の2回に分けて熱いトークが繰り広げられました。

▼日本語セッションのイベントレポートはこちらからご覧ください
VESS×UNYTE×SARAH「Social & Contributing for Community」【Web3イベントレポート】

▼イベント当日の様子

海外企業のセッションでは、「Web3 Social」や「フィジタル(※)」を共通のテーマに事業を展開する4つの企業が登壇。今回は、NORIさんをモデレーターとして実施された4社のパネルディスカッションの様子をダイジェスト版でお届けします。ぜひご覧ください。

※フィジタルとは、「Physical(フィジカル)」と「Digital(デジタル)」をかけ合わせた造語で、物質的な世界とデジタルな世界を融合させる概念のことを指す

<登壇者名>

  • ROI HIRATA(@RoiSarak)氏 / Ava Labs Head of japan
  • CALVIN CHAN(@lgt_calvin)氏 / Legitimate.Inc CEO
  • Kurt Upshaw 氏 / Relations Labs Head of Community
  • Andy An(@0xandyeth_)氏 / taipei Blockchain Week&Bu Zhi DAO Co-Founder

▼Web3 Socialについて、以前NORIさんにお話しいただいた際の記事もぜひ一緒にご覧ください
インターネット空間上の「信頼」を構築する、Web3 Socialとは? 海外事情や事例も紹介 – SELECK

各社の自己紹介

ROI:はじめまして。ブロックチェーンプラットフォームAvalancheを開発している、ロイです。僕はクリプトに参入する以前は、クラウドファンディングやeスポーツに関連したスタートアップ企業に所属していました。そうした中、ブロックチェーン技術に出会い、分散型のシステムによって実現できる未来に可能性を感じて参入を決めました。

現在携わっているAvalancheは、DAppsの開発に特化したブロックチェーンプラットフォームです。有名なイーサリアム・ブロックチェーンなどと比較して、高度かつ低コストなトランザクションを強みとしています。またDAppsだけでなく、独自のネットワークやブロックチェーンを作成できるのも特徴です。

NORI:僕がロイを知ったのは、僕の前職の会社に彼が関わっていたことがきっかけです。当時のマーケティングマネージャーが彼と一緒に仕事をして知るようになりました。現在もみんなで一緒にAvalancheのエコシステムをサポートしていることを嬉しく思っています。

では次に、カルヴィンから自己紹介をお願いしても良いですか。

CALVINLegitimate Inc.でCEOを務める、カルヴィンです。日本に来るのは今回が4回目で、日本のWeb3エコシステムと交流する機会をつくってくれたNORIさんにはとても感謝しています。

Legitimateは、NFTと物理世界のアイテムを結びつけることでフィジタルエコシステムを形成し、新たな価値の創造を目指す企業です。この物理世界のアイテムとは、スニーカーやバッグ、自動車やワインなど何でも可能で、関連性の高いブランドと協力してユニークなデジタル体験を構築しています。

プロダクトとしては、各アイテムに対応するNFTと結びつけられる「LGT Tag」を開発していて、今回のイベントで販売している「OP Sumo Club」とのコラボレーションTシャツでも活用しています。

▼「OP Sumo Club」とのコラボレーションTシャツ

今回の制作にあたっては、Tシャツに紐づけられたLGT Tagを通じて、イベント参加者同士の出会いを記録する「Proof of Meet(交流証明NFT)」を受け取れる仕組みを作りました。日本円での購入も可能で、ブロックチェーン技術を知らなくても気軽に楽しんでいただける体験を目指しました。

▼Legitimate社が提供する「LGT Tag」の仕組み

NORI:僕はカルヴィンが起業した時の話がとても好きなんです。彼はエンジニアを辞めて来日して、BEAMSやセレクトショップを見ていく中で「自分が好きな服にブロックチェーンやNFTを紐づけたい」という動機が生まれたと語っていて。そんな彼の行動力と、日本に愛着をもって事業を展開しようとしている試みがすごく嬉しいなと感じています。

ここまでがフィジタルに関連する企業で、次はWeb3 Socialの領域で活躍している企業を紹介します。まずは、分散型ソーシャルグラフプロトコル「Relation」を展開する、カートです。

KurtRelation Labsにてコミュニティ責任者を務める、カートと申します。Relationは複数のブロックチェーンシステムにソーシャルグラフデータを統合・提供することをミッションとして掲げています。この実現によって、人々や組織、行動を新しいパラダイムで結びつけ、次世代のソーシャルネットワーキングインフラの構築を目指しています。

また、データの統合を進めることで、ユーザー側はプライバシーと相互運用性が担保された環境下でデータをコントロールでき、一方で、デベロッパー側はデータを活用して様々なコミュニティを形成できるような環境をつくろうとしています。

NORI:RelationはWeb3版のFacebookのようなものです。分散型のプラットフォームやプロトコル上で様々な人とコミュニケーションを取れるのが特徴です。

そして最近では、関係性の可視化だけに留まらず、SBT(SoulBound Token:譲渡不可能なNFT)をはじめとしたクレデンシャルデータや、プライバシーといった観点にも目をつけ始めていますよね。僕も今、Relationのアンバサダーとして関わらせてもらっていますが、今後の動きが楽しみなプロジェクトの一つです。

Kurt:そうですね。SBTのような技術を活用したクレデンシャルの発行も同時に進めることで、ソーシャルグラフ全体のアーキテクチャを構築し、より多くの開発者が安全にデータを活用できる環境を提供したいと考えています。

NORI:ありがとうございます。それでは、最後にご紹介するのがアンディです。

AndyBu Zhi DAOの共同創業者、およびクリエイティブディレクターを務めるアンディです。Bu Zhi DAOはボランティアメンバーを中心としたコミュニティによって設立された非営利団体です。Web3の技術と台湾を愛する人々を繋ぎ、台湾のWeb3エコシステムを拡大させることをミッションとしています。

具体的には、ブランドやIPがWeb3に関する事業を立ち上げる際のサポートを行ったり、ネットワーキングイベント「Taipei Blockchain Week」を主催しています。昨年開催した際には、世界各地からたくさんの参加者が台湾に集い、個々の連携を深める機会となりました。今年は12月の開催を予定しています。

リアルとデジタルを融合する。「フィジタル」の可能性とは?

NORI:次に、各社が実際に何を開発しているのか、フィジタルの文脈で詳しく聞いてみたいと思います。まずはカルヴィンから、いかがでしょうか。

CALVIN:この1年は僕たちにとって非常にクレイジーな年でした。というのも、世界的スポーツブランドの「PUMA」と、ヒップホップアーティストJay-Zが代表を務めるエージェンシー「Roc Nation」とのコラボで、フィジタル・スニーカーをリリースさせていただきました。NFTを活用したフィジタルの文脈では、世界最大のプロジェクトだったのではないかと思います。

僕自身、クリプト業界で仕事を始めたのは6、7年ほど前ですが、当時から「Web2やWeb3と切り分けるような言葉を誰も口にしなくなるほど、Web3の技術が当たり前に普及した世界」が実現されるとずっと信じ続けてきました。よって、Ligitimateを立ち上げた当初から、メインストリームに向けてデザインや製品を作るように意識してきたんですね。

PUMAとのプロジェクトの詳細をお伝えすると、スニーカーにNFCチップを搭載した「LGTタグ」が取り付けられていて、このタグを携帯電話でスキャンすると様々なデジタルコンテンツを楽しめる仕組みです。重要なのは、カストディ・ウォレットが自動的に生成されることでユーザーが気づかないうちにNFTを取得し、トークンゲートのロックが解除されているという体験です。

このロックが解除されることで、例えば、毎週リリースされるミックステープ、未発表の音楽を含んだプレイリスト、アーティストの舞台裏を知ることができるコンテンツなど、様々なコンテンツを享受できます。さらにNFCチップは、Avalancheブロックチェーン上で発行されたNFTにもリンクしているので、スニーカー製品自体の認証を行うことも可能です。

実際に、PUMAの公式サイトやFoot Locker、Champs Sportsの北米店舗にて2023年7月から販売がスタートしていて、今後はスニーカーの保有者である約2万人の人々に、「クリプトの技術を使っている」と意識することなく楽しめるコンテンツを提供していく予定です。

NORI:僕個人としても、このプロジェクトはUI/UXの作り込みが本当に素晴らしいと感じています。1週間前に3色が販売されて、そのうち1色はすぐに売り切れていましたよね。カルヴィンのチームとパートナーのみなさんを本当に誇りに思います。

次に、このプロダクトの体験を支えているAvalancheについて、ロイにお話を伺いたいと思います。最近、Avalancheでも色々な動きがあったと思いますが、ハイライトを教えていただけますか。

ROI:現在僕たちが注力しているのは、いかにシームレスでカスタマイズしやすく、高速かつ安全なブロックチェーンプラットフォームを実現できるかということです。これを実現し、多くの方々に利用していただきたいと思っている中で、すでにいくつかの大手企業や新たなエコシステムと共に数々のプロジェクトを立ち上げられたことを嬉しく思っています。

なかでも、日本国内のプロジェクトで注目しているのは、Web3の要素を取り入れたフードレビューアプリ「SARAHです。彼らはAvalanche上でエコシステムを形成していて、ユーザーへのトークンインセンティブを活用した共通データベースの構築を進めています。

SARAHはAvalancheの高速性やカスタマイズ性を評価してくれていますが、今後はコンプライアンス面でのサポートも行う予定です。日本はブロックチェーンに関する規制が世界でみても先進的であるため、この分散型インフラを拡大していくことで社会に大きなインパクトをもたらせると思っています。

NORI:僕はAvalancheの存在自体は以前から知っていましたが、OP Sumo ClubのコラボTシャツの制作を機に利用し始めました。やはりトランザクション処理が高速なのが魅力的で、ブロックチェーンを活用したビジネスの展開においては非常に素晴らしい体験だと思いましたし、すでに多くの企業をWeb3に取り込んでいることからも今後の動向から目が離せないと思っています。

Web3やブロックチェーン技術がより広まるために必要なことは?

NORI:次に、Web3やブロックチェーン技術がより広まるために必要なアプローチ、あるいはすでに取り組んでいることについて伺いたいと思います。

Andy:今回のNORIさん主催のイベント運営に携わらせてもらうにあたり、普段僕たちが開催しているイベントとは一味違うアプローチを感じました。具体的には、Web3やブロックチェーンに明るくない人も気軽に参加できるカジュアルな雰囲気があったことです。

そのため、プロダクトのビジュアルやデザインを見た瞬間に、「これは本当にクリプトと関係があるのだろうか?」と感じてもらえたら成功だと思っていて。Legitimateが推進したPUMAとのコラボシューズは良い事例で、多くの企業やブランドがフィジタルの可能性に注目し始めています。

フィジタルはリアルイベントにも応用可能で、セールス、カスタマーサービス、そしてマーケティングまでの一貫した企業活動を効率化することができると考えています。例えば、グッズにNFTを活用することで、その商品を誰が最初に購入したのかといったデータを収集でき、このデータを基に新たなアクションを設計することができます。今後、このような取り組みが増えることで、ブロックチェーン技術がより持続可能なものとして確立されると思っています。

NORI:今、Web3業界は1年以上の弱気相場を経験しており、この状態がしばらく続く可能性もあると思います。そうした状況を踏まえ、皆さんはどのようなことを感じ、今後、何を念頭において活動していくべきだと考えていますか?

Andy:今後の1年間は、次の強気相場に備えて自分たちのポジションを確立するのに絶好の機会だと捉えています。そのため、積極的に情報発信を行い、RelationやAvalancheなど、親和性の高いプロジェクトやコミュニティとの連携を深めていきたいと考えています。

CALVIN:僕としては、この業界に関与している以上、クリプトやブロックチェーン技術に対する一般の認識を変えていく責任があると感じています。

未だに、NFTの話をすると否定的な意見を持つ人も少なくないのが現状だと思っています。その理由として、過去に何度かあった強気相場の際に、毎回新規の方々が参入して市場の勢いに乗じて大儲けし、その後去っていくという動きが繰り返されてきたイメージが強いのが原因ではないかと。

しかし、今回のイベントで販売しているスニーカーは一般の方にも受け入れられているし、裏ではブロックチェーン技術が使われている。つまり、ブロックチェーンはメインストリームにおいても有用な技術であることは明確ですよね。

この事実は企業やブランド側も気づいていて、彼らが投資しているのは「テクノロジー」そのものであって、僕たちが使う「専門用語」に投資しているわけではない。そのことを改めて理解する必要があると感じています。

NORI:つまり、「スマート・コントラクト」など僕たちが会話で使っている言葉を、一般の方々にもわかりやすい表現に翻訳する必要があるということですよね。そのためにも、常に学び続け、情報を更新し、人々を巻き込んでいく姿勢が求められると思います。

CALVIN:改めて、Web3やブロックチェーン技術の最も魅力的な点は、すべてのデータがコンポーザブルであることだと思っていて。この特徴のおかげで、僕たちはブロックチェーンのインフラ構築に時間を割くことなく、自分たちのブランドの確立や、ユーザーとのコミュニケーションに専念することができています。

そうした中で、消費者は物理的な世界を重視しつつも、ますますデジタルな生活を深めていくはずで、今後の時代においてフィジタルというコンセプトは、その重要性を増していくと考えています。この時代の変化を表した、広く理解を得られる用語や表現を模索していきたいですね。

ROI:たしかに、NFTのような専門用語は出来るだけ使わない方が良いと僕も感じています。Avalancheとしても、プロトコルがバックエンドに存在するように、自ら表立っていくことは避けたいと思っていて。

ですが、Avalancheのプラットフォームを利用するすべてのユーザーが満足しているのかは知りたいと思っています。そのため、彼らとはエコシステム・パートナーとして連携しながら、利便性の高いブロックチェーンプラットフォームの開発を続けていきたいと思っています。

Andy:現在のクリプト業界は強気市場ではないため、むしろ適切な関係を築きやすく、コミュニケーションが取りやすくなっていると感じています。だからこそ今は人間関係を深め、ネットワークを広げ、エコシステム内での自らの立ち位置を確立する絶好のタイミングではないでしょうか。

現在の状況を脱するのは1年後か、それ以上先かもしれません。けれども、僕たちは確実にプロジェクトを進めていますし、今日のような機会を通じて同じ志をもつ仲間に出会えたことに感謝しています。

Kurt:まさに、この時期は自身をアップデートし、高品質なプロダクトを開発するには最適だと思います。こうした動きをコミュニティ主導で行えるのは、僕たちのようなWeb3プロジェクトにとって良い戦略ですし、多くのベネフィットを得ることもできる。今後も、他のプロジェクトと共に成長していきたいですね。

NORI:みなさん、本日はありがとうございました。このセッションを通じて、僕たちが心に留めておかなければならないことを、各自が分かち合ってくれたら幸いです。ご清聴ありがとうございました。(了)

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