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累計49.5億調達のIVRyが「採用でも強すぎる」理由を徹底分析【SELECK miniLIVEレポート】
「SELECK miniLIVE」は、注目企業からゲストスピーカーをお招きし、X(旧Twitter)スペース上で30分間の音声配信を行う連載企画です。
2024年6月19日に開催した、SELECK miniLIVE シリーズ「スタートアップの採用術」の第2回には、株式会社IVRy (アイブリー)のVP of HRを務める 西尾 知一さん(@nishio_tomokazu)にお越しいただきました。
シリーズ「スタートアップの採用術」
ますます激戦を極める、スタートアップ界隈における「人材採用」。
本シリーズでは、各社の採用施策における工夫や知見をカジュアルに公開していくことで、相互に学び合い、採用する側・される側、相互の体験向上に寄与することを狙いとしています。
同社が展開する「電話」を起点とした対話型音声AI SaaS「IVRy」は、2024年5月末時点で47都道府県・80業界以上に、累計14,000以上のアカウントを発行。2024年5月には、シリーズCラウンドで総額30億円の資金調達を実施し話題となりました(累計調達額は49.5億円)。
このように事業が急成長中の同社では、組織成長もまた著しいものがあり、さまざまなスタートアップ、メガベンチャーで活躍してきた人材が続々と入社しています。
今回は西尾さんに、そんなIVRyの採用の「強さ」の秘密と、その一方で見えてきた課題感について、詳しくお話を聞きました。(聞き手:株式会社ゆめみ / Webメディア「SELECK」編集長 舟迫 鈴)
本記事は、2024年6月19日に開催したSELECK miniLIVEの生配信を書き起こしした上で、読みやすさ・わかりやすさを優先し編集したものです。当日の音声アーカイブはこちらからお聞きいただけます。
NHKの記者、二度のスタートアップ上場経験を経てIVRyへ
舟迫 IVRyさん、直近では、ラーメン専門店の一蘭さんに導入されたというニュースがSNS上で話題になりました。社内外から、相当なリアクションがあったのではないでしょうか?
西尾 かなり反響がありました。特に社内が一番盛り上がっていたかもしれません(笑)。出社していた皆さんは、早速近くの一蘭さんに行ってましたね。ありがたいことに、こうした形でさまざまな企業さんに導入いただき、どんどん広がってきているところです。
▼株式会社IVRy VP of HR 西尾 知一さん
舟迫 先月はシリーズCラウンドで30億円という大きな資金調達も発表され、さらに採用でも優秀な方が続々と入社されるなど、今非常に勢いがありますよね!
西尾 僕の入社が今年の4月で、まだ2ヶ月しか経っていないので、僕がどうこうというよりもこれまでの先人たちの尽力であり、積み重ねですよね。本当にありがたいです。
僕は現在、IVRyでHRとコーポレート系の一部を管掌させていただいていますが、キャリアの最初はNHKで、北海道で6年ほど記者をしていました。その後、自分が関西出身ということもあり、大阪発のスタートアップとしてCRMを提供するシナジーマーケティング社の経営企画室に入りました。
当時は、まだSaaSがASPと呼ばれていたような時代です。入社後は、ちょうど上場するタイミングで上場業務に携わらせていただき、その後は主にバックオフィス、管理系を幅広く見る形で10年ほど働きました。
そして次は、上場業務の再現性を出してみたいという気持ちもあって、上場2年前のタイミングだったChatwork社(※社名は当時)に入社しました。
ChatworkではHRの専任がおらず、やってもらえませんか? と軽い感じで言われて…。気は進みませんでしたが、NHK時代に「ノーと言うな」と叩き込まれたので(笑)、ノーと言えずに引き受けることになって。
舟迫 素晴らしい姿勢ですね(笑)。
西尾 上場後はコーポレートとHRを担当し、一瞬だけビジネスサイドにもいましたが、最終的にはCHROを3年ほど務めました。そして今年に入って、次のチャレンジを考えていたところ、IVRyと出会ったという流れです。
舟迫 二度の上場を経験され、記者から経営管理、HRまで本当に多様な経験をされているということで、西尾さんのキャリアのお話を聞くだけで3時間くらい経ってしまいそうです…!
現場の熱量あふれるリファラル採用により、1年で組織規模が4倍に
舟迫 先ほど「先人たちの尽力」というお話もありましたが、IVRyさんは今ものすごい勢いで人数が増えているかと思います。昨年の4月(約1年前)は25名ほどだったのが今はもう…100名近いですか?
西尾 そうですね。ちょうどもうすぐ100名です。僕が入社した今年の4月は、これまでで一番入社が多かった月で、16名ほど入りました。
舟迫 それだけ採用がうまくいっているということですが、これまで色々な会社を見てこられた西尾さん的に、客観的に見てIVRyの採用が強い理由はどこにあると思われますか?
西尾 創業メンバーをはじめ、マネージャー陣が採用に愚直にコミットしているのはありますね。
IVRyは採用のリファラル率が高く、社員紹介で入社した方が全体の7割を占めています。僕もリファラルで入ったクチですが、マネージャー陣が会社の勢いや事業の将来性を信じているからこそ、一緒に働きたい仲間をどんどん呼んでくれているんだと思います。
舟迫 しかも、これは事前にお伺いしましたが、リファラル採用に関しては紹介者に報酬を出していないんですよね。
西尾 そうです、フィーはないですね。あとは、ちょっと雑な言い方をすると、クロージングするまで結構しつこい(笑)。
リファラル採用で多いのが、紹介はしたものの、なんだかふわっとして選考が進まないまま終わってしまうことです。でもIVRyの場合は、ちょこちょこしっかり声掛けができています。
ひとつの「仕掛け」として、月に1回オフィスに誰でも来られる「オープンデー」というイベントを実施しています。社員の知り合いを招いて飲み会をしているような感じですが、リファラルで声をかけている方も招いて、みんなで一緒にクロージングしています。
▼「オープンデー」の様子
舟迫 そういった社員の皆さまの熱量って、どこから湧いてくるのだと思われますか? やはり背景にあるカルチャーでしょうか。
西尾 そもそも、オープンデーのような「箱」だけ作っても、その箱の中身が良くなかったらダメだと思うので…コンテンツにはかなりこだわっていますね。
※編集部より:オープンデーの運営について後日お聞きしたところ、職種に関わらずたくさんの人と話をしてもらえるよう、参加者が回遊しやすい仕組み(立食形式、社員によるアテンドや紹介を行う、レイアウトを工夫する)を取り入れているそうです。
あとは、今日もちょうどこの後に開催されるのですが、月次で開催している全社会議でよくリファラル採用について話をするなどして、コミットメントを高めています。
カルチャーでいうと、皆さん、この事業が社会に貢献できるものだと信じていて、一緒に良いものにしていきたいという思いが強いです。その点で特徴的かなと思うのは、「数字」でしっかり語ることですね。
事業の状況や将来像、改善の見通しなどのメトリクスを定期的に数字で語り、少しでもKPIに変化があれば原因をすぐに探りに行く。そうした細かい積み重ねが、事業の改善性や将来への確信につながっているのだと思います。
舟迫 採用でもクロージングまでしつこく頑張るという話がありましたが、それも細かい積み重ねですよね。共通するカルチャーを感じます。
西尾 そうですね。ただ、今後の課題はその再現性です。
今は経験と勘で、なんとなく「ここは注意しないと」「ここを外すとダメだ」と判断しているところがあるのですが、それを誰でも理解できるようにしていく必要があります。事業だけでなく、HR領域でも仕組み化が必要だと感じていて、そこに課題意識を持って取り組んでいるところです。
リファラル一辺倒からのチャネル多様化で、採用単価は上がるが…
舟迫 HRの仕組み化という点では、西尾さんが入社されてからどのような取り組みを行っていますか?
西尾 正直なところ、やるべきことがいっぱいあって、今はそればかりという感じですが…まず採用に関しては、チャネルの多様化です。
リファラル採用は、入社される方のコミットメントも高くてとても良いのですが、他のチャネルからの採用を増やしていかないと、どうしても人材の多様性という意味で偏りが出てきてしまいます。
このままリファラル一辺倒というわけにはいかないので、今年からはリクルーターの方に入ってもらって他のチャネルを開拓し、PDCAを回して再現性を出していこうとしています。
舟迫 主にどういったチャネルを強めていこうと考えていらっしゃるんですか?
西尾 やはりスカウトやダイレクトソーシングです。まだ全然開拓できていないので、少しずつ進めています。
ただ、リファラルは0円で採用できるので、ROIで見ると苦しいところがあって、今はまだチャレンジのフェーズですね。
とはいえ、長い目で見た時には、他のチャンネルを強くしていかないと本当の大量採用はできないので、しっかりと作り込んでいきたいです。社内でも話していますが、いわゆる「採用単価」はあくまでも長期的な目線で見て落ち着かせていく必要があります。
今はまだコストをかけた分のリターンが見えていませんが、どうやったら成果が出るのかを検証しているフェーズだということです。
舟迫 そういった時期は、採用担当者としては辛いですよね。「これまでは0円で採用できていたのに…」と言われてしまうというか。
西尾 そうですね。この時期は苦しいですが、スモールウィンを積み重ねてクレジットを貯めていくことが大事です。実際、エージェントさん経由での採用が少しずつ決まり始めていますが、その方々は自分たちのリファラルだけでは知り合えないような良い人材だったりします。
また、これはIVRyだけの話かもしれませんが、メガベンチャーで現場のマネージャーとして採用責任を持っていた経験のある方が社内に多いんですね。そういった方は、そのあたりの採用の感覚をわかっているので、理解があるのかなと思います。
僕も過去にいた会社では、採用目標だけボーンと言われて「なんで取れないんだ」と現場から文句を言われることもありましたが、そんなに簡単じゃないですよね。皆さん現場で責任持って採用してきたからこそ、その大変さを理解しているんだと思います。
HRとしては、こんなにありがたいことはないです。逆に言うと、こちらが手を抜いているとすぐバレてしまうということはありますけど(笑)。
採用も組織づくりも、根底にある「バリュー」が必要不可欠
舟迫 この観点でもうひとつ質問ですが、リファラル中心だった企業が採用チャネルを多様化していくと、選考基準の設計が難しいのかなと。リファラルの場合、その方のことをよく知る人が社内にいることでマッチングがしやすく、お互いに見極めやすいというのがありますよね。
西尾 その点、IVRyではまだまだこれからではあるのですが、一番大事なのは組織の「バリュー」(※組織に共通する価値観を言語化したもの)だと思っています。
これからどんどん会社がスケールする中で、ベースとなる自分たちの共通言語として、2024年5月にバリューをアップデートしました。今は、その解釈をどんどん擦り合わせているフェーズです。
▼IVRyの新しいバリュー
西尾 社内制度も採用基準も、バリューがベースであり根本的なものだと思っています。それがないと、色々な施策をするにしても採用するにしても、基準がなくバラバラになってしまうので。
立ち返るもの、大元になるものがないと、マネジメントコストの面でも大変なんですよね。バリューの良いところは、「1を言えば10をわかってもらえる」ツールになるところ。それがないと、1を言っても1しか伝わらないということが起きがちです。
ですので、バリューは「自分たちの共通語はこれだよ」というのを社内にしっかり理解してもらうという意味で必要不可欠だと思います。スピーディーに物事を進めるためにも重要ですね。
舟迫 採用のシーンでは、どのようにバリューについてのすり合わせを行っていますか?
西尾 基本的には、面接官がバリューを理解して、それに即した採用判断できるかどうかが大きいですが、いきなりは難しいので…。正直、僕自身もまだ判断がつかない、自信がないことが結構あります。
ですので現状は、僕から見て「この方はどうだろうなあ…」と思ったら、次の面接官にも見てもらって、その感覚をバリューに照らして言語化してすり合わせていくようにしています。面接官へのフィードバックや目線合わせを行い、ズレをなくしていくことはこれまでの会社でもやってきたことですね。
一気にドーンと変わるような処方箋はなかなかないですから、本当にそこを丁寧にやっていくことだと思います。
舟迫 今ちょうどバリューの浸透フェーズというお話をされていましたが、具体的にどういった施策をスタートされていますか?
西尾 例えば、それぞれのバリューに対して「これはOK」「これはNG」という事例を出して社内にどんどん公開しています。同時に、バリューへの接触頻度を高めるために、Slackのスタンプを制作したり、各マネージャーからバリューに即している行動を挙げてもらう機会を作ったりしていますね。
まずはマネージャー陣にしっかり浸透させて、そこから強度を上げていくのが今のフェーズかなと思っています。
舟迫 ありがとうございます。残念ながらそろそろお時間が迫ってまいりました。最後に、お聞きいただいている方へのメッセージがありましたら頂戴できますでしょうか?
西尾 ありがとうございます。
IVRyの特徴は、電話対応を自動化することで、働き方の生産性を上げていくツールであるということ、そしてAIがすでに実装されたサービスであるということです。
その点、まだまだ可能性が大きく、僕たちが成すべきこと、来年再来年までにここまで行きたいというビジョンに対して、全然ケイパビリティが足りていないのが本音です。
やりたいことはあるし、やれるだけのポテンシャルがある事業だけれども、特に人のケイパビリティが足りていない。さらに、今お話ししたようにまだまだ会社全体がカオスなフェーズなので、なかなか経験できない面白いタイミングです。
そういう意味でも、今IVRyに参画すると貴重な経験ができますし、会社の成長だけでなく個人の成長にもつながると思います。職種問わず全方位で募集をしていますので、一緒に成長していきたいという方はぜひジョインしていただきたいです。
舟迫 西尾さん、本日は本当にありがとうございました。(了)