• 株式会社ポップインサイト
  • 代表取締役社長
  • 池田 朋弘

アクセス解析では見えない本質的な課題を抽出!「ユーザーテスト」の意義と進化とは

今回のソリューション:【ユーザーテスト】

WEBサイトを改善する際にアクセス解析データを活用することは一般的だが、その数値データを分析するだけで、果たして本当にユーザーの声をしっかり理解していると言えるのだろうか?

このような声の高まりとともに、ユーザーが実際にWEBサービスを使っている姿を観察し、課題を抽出する「ユーザーテスト」に注目が集まっている。ユーザーテストを実施することで、例えば「コンバージョンが低い」という数的事実の背景にある「理由」までを実際のユーザーに聞くことが可能だ。

そうしたユーザーの声を仮説に生かすことで、結果的に素早くサイト改善の実績を出すことができる。

今回は、手軽にユーザーテストを実施できるリモートユーザーテストを提供する株式会社ポップインサイトの代表取締役社長の池田 朋弘さんに、このユーザーテストについて解説して頂いた。

WEBサイトの課題を明確に抽出する「ユーザーテスト」

新卒としてWEBサイトのユーザーテストに強みを持つ株式会社ビービットに入社しました。その後、ユーザーテストをより多くの人に届けたいという想いからポップインサイトを創業し、今に至ります。

WEBサイトを改善する手法は数多くありますが、その中でもユーザーテストの特徴は、データではなく人の現実の反応を解釈して改善に繋げていくことです。実際に人がWEBサービスを使っている様子を隣で見て、サイト内の課題点を見つけ、それを改善するためのアイデアを考えてはまたテストをする、ということを繰り返していきます。

一般的にサイト改善と言えば、アクセス解析を行ってそこから抽出される数値データをベースに行うことも多いかと思います。ただ、データだけを見ても「次に何をすべきか」という明確な答えは分からないことが多いんです。

「このページから離脱している」ということは分かっても、離脱している理由や、それをどうしたら防げるのか、ということまでは判断できません。一方でユーザーテストをすれば、離脱した原因を直接ユーザーに聞いて仮説を立てることができますし、ユーザーの声から具体的な改善案のヒントも得ることができます。

##WEBサイトの制作側は「当然あるべき情報」を見落としがち

実は世の中のWEBサイトの多くには、「当然あるべき情報」が欠けているんです。例えばあるレーシックのサイトで、それまで載っていなかった執刀医の情報を載せただけでコンバージョンが数倍上がった事例があります。

レーシックって目を切られるわけなので、怖いじゃないですか。だから「誰が切るか」ということはもちろん気になると思うのですが、元のサイトには「権威が指導します」としか書いていなかったんです。

自分がレーシックを検討する立場になって冷静に考えれば、執刀医の情報が欲しいということは当たり前です。でも、WEBサイトを作る立場になるとそういった情報が抜けてしまうことがあるんですね。

これはあくまでもひとつの事例ですが、数値しか見ていない多くのWEBサイトで同じことが起こっています。ここに、ユーザーテストを行う大きな意義があるんです。

当たり前のこと、普通のことに気が付くために、まずはユーザーテストを行って課題を明確にすることで、結果的に早く数値を改善することも可能になります。

##何の利害関係もない「ユーザーの声」だからこそ意義がある

正直ユーザーテストを自分のサイトで実施するのは辛いものがあります。例えば見学ルームでユーザーが実際にテストしている様子を見ていると、結構ボロクソに言われたりするんです。

こちらはものすごく考えて作っているのに、「全然分かりにくい」ってズバッと弾劾されてしまったり。ショックですよね。

でも、だからこそ意義があるんです。何の利害関係もない人が、フラットにダメと言っているものは、ダメなんですよ。この「ダメだ」ということが分かるのが重要だと思っていて。

例えば上司から同じことを指摘されても「どこが?」と思ってしまうかもしれません。でもユーザーから指摘されたら、直すより他ないですよね。それで結果的に成果も上げることができるので、非常に本質的な手法なんです。

ユーザーの「単なる要望」は無視するべき!?

ただ一方で、ユーザーテストではユーザー1人ひとりの意見を聞くことになるので、進めていくと細かい要望がたくさん出てきます。例えば「色を変えたらいいのに」とか「ログインをなくしたらいいのに」とか。

中には相反する要望も多くあり、最終的に何を反映したら良いのか迷ってしまうと思います。この問題への対処法は、無視することです。ユーザーは専門家ではないので、実は出てくる要望それ自体は参考にならないことが多いんです。

ただ重要なのは、そこから更に踏み込んで「なぜそう思ったのか」ということを徹底的に聞くことです。要望の根底にある理由には個人の趣味嗜好が反映されにくいので、一般性のあるニーズが隠れている可能性が高いんですね。

自分が納得できる答えが見つかるまで根掘り葉掘り聞くことで、そこで得た情報を具体的な改善策に生かすことができます。

従来型のユーザーテストの課題は、実施するのにかかる手間

個人的にはどんなWEBサイトであってもユーザーテストを実施するべきだと思うのですが、とは言え手間とコストがかかります。

ユーザーを集め、テストを実施する場所を用意し、仮説を立てて改善策を作り、またユーザーを集める。このプロセスを回すにはコンサルティング会社に頼むのが一般的ですが、1回あたり期間で1〜2ヶ月、費用で数百万円かかることも当たり前です。

このような状況では、いくらユーザーテストが素晴らしくてもなかなか広まっていきません。その状況をどうにか自分で変えられないかと思い、ビービット在籍中にCyta.jpさんやSansanさんを巻きこんで自分達でユーザーテストを実施する勉強会を始めました。

3人1組でユーザー役、観察する役、モデレートする役に分かれてテストを行うもので、6回ほど開催しましたが、人も集まりますし、反応も良かったんです。

「勉強会の資料を使って社内でテストを実施しました」という話も聞くようになりました。ただ結局「1回やってみると結構大変ですね…」という話に最終的にはなってしまうんです。

ここに従来型のユーザーテストが抱える課題があって。やり方はわかっても、手間がかかるので結局続けることができない。当日も大変ですしテスト後の分析も手間がかかる。

そして費用も時間もかかるので、導入のための社内稟議を通すのも面倒くさい。すべてが大変なので、結果的に実施しないという選択肢になってしまうと。

そこでポップインサイトを創業し、気軽にユーザーテストを実施できるリモートユーザーテストの提供を始めたという経緯になります。

リモートユーザーテストで、手軽にユーザー視点を獲得する!

従来のユーザーテストは、専用の部屋でアイトラッキングシステムなどを使いユーザーの様子を録画しますが、リモートユーザーテストではユーザーに自宅で自分の様子を録画してもらいます。

この方法だと、通常のユーザーテストでは1〜2ヶ月、数百万円かかるところを、1〜2週間、数十万円で実施できます。

▼リモートユーザーテストの様子

但しリモートの場合はこちらからその場で質問をすることができないので、あくまでも先ほどのクリニックの事例のようなわかりやすいサービスに向いているかと思いますね。

例えばスタートアップ企業が新しいサービスをリリースするようなケースであれば、自分たちでユーザーと対面してテストを行った方が課題をしっかりと抽出できると思います。

リモートユーザーテストの提供の背景にある想いとしては、やっぱりユーザーの声が一番なので、より多くの人にそれを聞いてほしいということです。データを解析していろいろ考えるよりも、使っている人を実際に見るほうが分かることがあるんです。

生の意見をもらえるので非常に刺激を受けますし、それを元に改善案を作って実行していくのも本質的なので楽しいですよ。今度もできるだけ多くの人にユーザーテストを実施してもらえるような仕組みを作っていきたいと思っています。

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