• コラボレーター
  • 加藤 章太朗

【第2回】日本は5年遅れてる!? Adobeの99Uに学ぶコンテンツマーケティング事例

〜BtoB企業のコンテンツマーケティングをアメリカから学ぶ〜

PR要素を含まない「役に立つコンテンツ」を発信することで、潜在的な顧客との関係性を築くコンテンツマーケティング。前回の投稿では、日本の5年先をいくアメリカの取り組みを整理しました。

【第1回】日本は5年遅れてる!? アメリカに学ぶ、BtoB企業の「コンテンツマーケティング」

今回はその中でも注目すべきAdobeの「99U」というコンテンツマーケティングの事例を深掘りして取り上げます。

Adobeのコンテンツマーケティング「99U」とは何か

2012年にAdobeがポートフォリオサービスBehanceを買収をしたことで、Behanceが運営していた99UもAdobeの傘下になりました。

99Uは生み出したアイデアをどう実行するかにフォーカスをしたコンテンツを、オウンドメディア、カンファレンス、本、等からクリエイター向けに発信しています。

99u.comというオウンドメディアは、1996年から続くすぐれたWebサイトを表彰するThe Webby Awardsの「Best Cultural Blog」に2011年、2012年と2年連続で選ばれています。


99U.com

99UカンファレンスにはTwitterの創業者ジャック・ドーシーやSlackの創業者スチュワート・バターフィールドなども登壇し、クリエイターのコミュニティーとして発展しています。


99Uカンファレンス

コンテンツマーケティング=オウンドメディアと捉えられることも多いですが、オンライン、オフラインを組み合わせて愛されるコミュニティーを作っているのが素晴らしい点だと思います。

オウンドメディア「99u.com」に投稿される記事は?

クリエイター向けに、リーダーシップ、キャリア開発、セルフマネジメント、などアイデアの実行に必要な情報が投稿されます。例えばリーダーシップの分野だと、マイクロマネジメントをする上司とどう仕事を進めるかといった記事が投稿されています。

キャリア開発については「Appleなどのビッグクライアントの仕事をどう獲得するか」といった記事が投稿されます。また、フリーランスが使うと便利なアプリなどのまとめ記事も提供している。とにかくクリエイターがアイデアを実現するために必要な情報のみを扱っており、クリエイターに役に立つ情報が投稿されています。


99u.com

ジャック・ドーシーも登壇する「99Uカンファレンス」

アイデアを実行する方法にフォーカスをした2日間のカンファレンスで、素晴らしいアイデアの”実行”に関するいくつかのコンテンツが用意されています。

1. Listen to Action-Oriented Talks

世界を先導するクリエイターのトークセッションがメインステージで行われます。アイデアをどう実行に移すかを伝える場です。過去にはTwitter、Squareの創業者ジャック・ドーシーやSlack創業者のスチュワート・バターフィールドなども登壇しています。

2. Master Classes from Creative Experts

トップクリエイターがベストプラクティスをシェアする75分のクラスです。スタートアップのブランディングから驚くべきクリエイティブキャリアの築き方まで幅広い話が聞けます。

3. Visit Leading Creative Workspaces

ニューヨークの先進的なクリエイティブカンパニーのワークスペースを見ることができ、その企業のクリエイターとコミュニケーションを取ることができます。過去の参加企業は、Spotify、Quirky,、MoMA、 IDEOなど。

4. Learn, Network, and Party

開始から終了まで参加しているクリエイター同士のネットワーキングの場になっています。

99Uカンファレンス

99UはAdobeにどのような価値があるか?

Adobeが現在力を入れているプロダクトにAdobe Creative Cloudが挙げられます。Adobe Creative Cloudは、PhotoshopやIllustratorなどのグラフィックデザイン及び動画編集、ウェブデザインのアプリケーションソフトウェアをサブスクリプション方式で月3,980円から利用できるサービス。

以前のAdobe製品といえば、1本数万円はするものだったので、より多くのクリエイターに使いやすくなったと言えます。このプロダクトを広めていくためには、以前より多くのクリエイターにリーチして、関係性を構築していく必要がありそうです。

そのためにも、99Uの運営元であるポートフォリオサービスBehanceを買収し、クリエイターが作品を公表する場所を抑えにいったと予想されます。作品を公表する場所には多くのクリエイターが集まり、そこがCreative Cloudの入り口につながるのではないでしょうか。

そして、99Uによって、クリエイターが日々見にくる場所(99u.com)、定期的に集まるリアルな場所(99Uカンファレンス)をおさえ、長期的に関係性を構築しているのだと思います。

直接的なPRの場ではなく、あくまでもクリエイターを惹きつける場としてCreative Cloudの販売に間接的に貢献できるのではないでしょうか。

コミュニティまで発展するコンテンツマーケティング

このように、リアルなコミュニティまで発展しているコンテンツマーケティングが世界にはあります。見込み顧客に対して、オンライン・オフライン問わず長期的に関係性を築いていくマーケティング手法については参考になる部分が大いにあると思います。

【第1回】日本は5年遅れてる!? アメリカに学ぶ、BtoB企業の「コンテンツマーケティング」

【第3回】SAPに学ぶ BtoB企業のコンテンツマーケティングのポイント

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