• 株式会社Speee
  • 経営管理部 マネージャー
  • 泉谷 翔

カフェ、ライブラリ、リフレッシュルーム…社員の自然な交流を実現するオフィスづくり

今回のソリューション:【テントテン】

〜異なる事業領域で働く社員同士が自然に交流する場所を作るため、オフィスデザイン会社「テントテン」と作った新しいオフィスフロアを紹介〜

株式会社Speeeは2015年12月に、採用計画に応じる形でオフィスをワンフロア増床した。新フロアの施工に関して決まっていたのは、コンセプトと予算のみ。それ以外はすべて、プロジェクトメンバーが意思決定をして進めていったという。

もともと異なる事業領域で複数のビジネスを展開する同社では、今回の増床で社員同士が交流できる場所を作るという目的があった。そこでフリースペース「SpeeeLounge」を設け、カフェコーナーやライブラリ、リラックススペースなど、社員が自然に集まることができる仕掛けをいくつも用意したという。

このプロジェクトを担当した経営管理部の泉谷 翔さんに、オフィスデザインを依頼したデザイン会社「テントテン」とのオフィスづくりについて、詳しいお話を伺った。

####▼SpeeeLounge

SpeeeLoungeの目的は、「誰が何を知っているか」の把握

ITベンチャー企業の人事・総務を経験して、2015年1月にSpeeeに入社しました。現在は総務としてタレント・マネジメントシステムを導入するなどバックオフィスを効率化させつつ、今回のオフィスの増床のディレクションも担当しました。

もともと弊社は、同じビルの3階と5階を使っていました。ただ採用計画から考えるとオフィスが手狭になることが見えてきたので、4階を増床することにしたんです。

新フロアのコンセプトは「Transactive Memory」です。これは組織学習において提唱される概念で、組織全体が「同じ知識を記憶すること」ではなく、「組織内で『誰が何を知っているか』を把握すること」が重要である、という考え方です。1人ひとりが異なる領域の知識を持ちながらも、「誰が何を知っているか」ということを把握できる状態をオフィスを通じて目指しました。

####▼「誰が何を知っているか」を把握するためのSpeeeLounge

弊社はBtoB事業とBtoC事業の両方を展開しているので、事業ごとに職種の比率も異なれば、会話のテイスト、持っている知識も違います。もともとのオフィスも、事業領域によってフロアを分けていました。

ただ、オフィスが分断されていたとしても、それぞれのメンバーが集って交流できる場所があれば、コミュニケーションが誘発され、誰が何を知っているかを把握できるようになるはずです。その目的のために、新フロアである4階を設計しました。

代表から渡されたのはコンセプトと、予算だけ

新フロアのオフィスデザインを進めるにあたり、代表の大塚から渡されたのは、この「Transactive Memory」というコンセプトと、予算だけでした。他の部分はすべて、プロジェクトメンバーで自由に進めさせてもらった形です。

事前に経営陣に、「どのようなオフィスにしたいか」ということを一応ヒアリングしたのですが、そこでは多種多様な意見がありました。そこで、大きなコンセプトだけはぶらさずにプロジェクトメンバーでまずはいくつかの案を固め、デザインに落とした上でビジュアルで見せることにしました。

デザイン会社を選定し、コンセプトと課題を伝えた上でコンペ

2015年の6月からこのプロジェクトは動き出したのですが、7月上旬から4社のデザイン会社にコンペの声がけをし、準備をしてもらいました。まずは各社さんに、現状のオフィスを見てもらいました。その上で「他のフロアから自由に人が集まって、自然にコミュニケーションが取れる機能を持ったフリースペースを作ってほしい」といった感じで「Transactive Memory」というコンセプトを伝えていきました。

オフィスデザインをディレクションする上での注意点は、建物の特性をしっかりとデザイン会社に伝えることだと思います。弊社が入っているビルは古い建物なので、天井が低くて柱が多く、かつ空調設備があまり良くない。こういった現状を考慮していただく必要があったんですね。

具体的な提案を8月の上旬にもらい、出てきたデザインを経営陣に見せて、方向性だけ合意を取りました。「予算さえ守ってくれればあとは決めていいよ」と言われたので、最終的には9月中旬にプロジェクトメンバーで「テントテン」さんにデザインをお願いすることに決めました。

####▼株式会社テントテン

コミュニケーションコストが低く、柔軟で交渉力が高いテントテンに決定

テントテンさんに決めた理由のひとつは、コミュニケーションコストの部分です。1を言えば10を理解してくれる感じで、こちらの言いたいことをすぐに掴んでくれたんですね。プロジェクトメンバーはオフィス増床以外にも業務がありますし、コミュニケーションが取りやすいことは重要でした。

また、ビル側との交渉も代行してくださったのが良かったですね。工事の施工種別に応じてA、B、Cという工事区分があって、例えばC工事だとこちらで指定した業者に施工させることができます。逆にB工事になってしまうとビル側の指定業者となるため、コンセプトやテイストをあわせるためのコミュニケーションコストが発生してしまいます。

その点で、テントテンさんは「これはBではなくC工事でいけるはず」といった細かい交渉もしてくれました。

コンセプト実現のため、各所にこだわったフリースペース

増床した4階には「SpeeeLounge」というフリースペースと執務スペースがあるのですが、執務スペースは他フロアと同じ仕様なのでそこまで力をいれませんでした。こだわったのは、違う事業に関わるメンバー同士が交流するためのフリースペースです。

まず、「SpeeeCafe」を作りました。高品質の豆を使ったドリップコーヒーやエスプレッソなどを、無料で飲むことができます。専任のカフェスタッフもいるんですよ。

####▼SpeeeCafe

また、社員が月に1万円まで書籍を自由に購入できる「SpeeeLibrary」という制度がもともとあるのですが、その蔵書を全て置けるLibraryスペースをつくりました。社内システムで管理しているのですが、システム上で自由に借りることもできますし、社員が書いたレビューも蓄積されていきます。

####▼SpeeeLibrary

「RefleshRoom」を作っていつでも仮眠できるようにしたり、マッサージ師の施術を受けることができる「MassageSpace」もあります。

####▼RefleshRoom

このように、メンバーの間で自然と交流が生まれるような仕掛けを作りました。

自分達で積極的にアイデアを出すことも重要

オフィスデザインのディレクションをする上で、デザイン会社に投げっぱなしにするのはあまり良くないと思っています。自分たちでもアイデアをどんどん出していくことが重要です。例えば、フリースペースに設置しているモニターは、プロジェクトメンバーからのアイデアで設置されたものです。

####▼あらゆる場所に設置されているモニター

弊社では毎月全社員が集まってMTGをしています。SpeeeLoungeのオープン後はその場で実施したかったため、その場で資料を映し出す必要がありました。デザイン会社からは大きめのスクリーンを吊り下げるという提案をもらいましたが、収納されているとはいえ、常に天井にスクリーンが存在しているのってすごくださいんです。

また、天井が低く柱が多いので、それぞれのスペースにモニターがあるのがベストだと考えました。また、スポーツバーをイメージして、天井から大きめのモニターが下がっていればスタイリッシュに見えるとも思い、このような形になりました。

オフィスの工事には、アクシデントもつきもの…

オフィスデザインって実際に着手してみるとアクシデントが起きることもよくあります。例えば、今回の新フロアの仕様は、既存のフロアと同じだと想定していました。ところが、いざ床を剥がしてみたら床下のOAフロアがスカスカで、ウッドの床材を敷くのに耐えられない厚みだと言われました。

また壁も、もともとはシックなブリックタイルにしようかと思っていたのですが、施工の3週間前に「どうせならSpeeeらしさを出したい」という声が上がり、やばいぞと(笑)。社内のデザイナーに知恵をもらいながら短期間で「世界に進出していく」ということを表すデザインを作りました。

####▼進出予定の各都市の時間が刻まれている壁

社員の潜在的な不満も吸い上げ、最高のオフィスをつくっていく

このようにして完成した新フロアですが、社内には上々の評価をもらっています。また、すでに様々なリクエストが挙がってきていますね。例えば「お客さんのためにソファをリザーブしておきたい」とか、「外部の人を呼んだイベントを実施したい」といった内容です。

あまりルールでがちがちにはしたくないので、このような要望をまとめて、最低限のルールを作って運用していきたいと思っています。

最高のオフィスを作るためには、社員から出た意見を検討するのは当たり前のことだと思っています。さらにそれだけでは不十分で、「見えていない不満」や「言うほどでない不満」を主体的に解決していくことも重要です。そのような潜在化した不満を解決しながら、みんなが働きやすい場を作っていければいいなと思っています。(了)

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