- Slack Technologies, Inc.
- Manager, Asia Pacific
- Mike Clapson
Work Hard and Go Home!Slack社が実現する「ルールなし」の生産的な働き方とは
〜シリコンバレーでも稀な「急成長」を遂げたSlack社。たった3年強で500万人のデイリーユーザーを獲得した同社の、驚くほど自由なワーキングカルチャーを紹介〜
近年、最も成功を収めたスタートアップのひとつである、米Slack社。同社が展開するビジネス向けチャットツール「Slack(スラック)」は急成長を続け、そのデイリーアクティブユーザー数は500万人を超える。
※「そもそもSlackって何?」という方は、こちらの記事をお読みください。
現在、Slack社では800人を超える従業員が、世界7拠点で働いている。「21世紀のチームコミュニケーション」を掲げ、働き方をより良くすることを目指す同社のワーキングカルチャーとは、どのようなものなのだろうか。
今回は、2014年に当時まだ70名だった同社にジョインし、現在はアジア・パシフィックのセールスマネージャーを務めるMike Clapsonにインタビュー。
Slack社の目指す「Work hard and go home」という働き方の実現法について、詳しくお話を伺った。
大切なのはバランス。Slack社のワーキングカルチャーとは
Slackの働き方は、「Work hard and go home」という言葉に集約されています。良い仕事をして、終わったらきちんと家に帰る。仕事と家庭の、バランスを大切にする考え方です。
例えばサンフランシスコにある本社のオフィスには、他のスタートアップのオフィスにあるような卓球台や、ビデオゲームはありません。仕事が終わったら家に帰り、それぞれが自由に過ごそう、というカルチャーです。
このようにメリハリを大切にしているため、原則、リモートワークは推奨していません。会社に来る、ということがひとつの規準ですね。その方が、アイデアをシェアしたり、ディスカッションがしやすいためです。
ただ、家庭の事情であったり、家にいる必要があるなど、理由があるときは在宅OKです。働き方そのものは、かなりフレキシブルだと思います。
働く時間も、メンバーによって様々です。コワーキングタイムのような、共通ルールも設けていません。毎日9時 ー 17時で全員が働く、という感じではなく、それぞれが求められている役割とライフスタイルのバランスを考えた上で、好きな時間に仕事をしています。
個人的には、Slackのカルチャーを一言で表現するなら、「楽しくて、カジュアル」という言葉がふさわしいと感じています。
社員数は2年強で10倍に!世界7箇所で、800人以上が働く
私は、2014年の終わりにSlackにジョインしました。その時点では、サンフランシスコとバンクーバーのオフィスで、あわせて70人ほどが働いていました。いまでは拠点も世界7箇所になり、合計で800人以上が働く組織に成長しました。
私がいま働いているメルボルンのオフィスは、2015年の3月に、4人でオープンしました。現在は40人以上が働いています。同様に各拠点で、どんどん人が増えている状態です。
▼同社のメルボルン・オフィスの様子
現在の私の役割は、アジア・パシフィックのセールスマネージャーです。海外のブランチ(支社)とミーティングすることも多いため、働く時間も少し特殊です。
基本的には、毎日8時くらいに出社して、17時半には帰宅します。ただ本社やダブリンのオフィスと会議があるときは、1日のスタートが早くなります。朝7時半からオンラインミーティングをしていることもありますね。
そういった場合には、帰宅時間を通常より早めることで、バランスをとっています。大きなプロジェクトの直前などはさすがに忙しいですが、忙しい時期のあとは勤務時間を減らすので、ならすと1日8時間ほどの勤務時間かと思います。
ちなみにオフィスには自転車で通っていて、歩いても、30分もかからない距離です。
デジタルでもフィジカルでも「オープンな」働き方を実現
このようなフレキシブルな働き方を実現させるためにも、生産的に働くための工夫をしています。
まず特徴的なのが、オフィスです。Slackのオフィスはどこも、非常にオープンな形で設計されています。各メンバーが固定の席を持っていますが、CEOや経営陣を含めて、誰も壁に囲まれたオフィスは持っていません。
電話をかけるためのブースなどはありますが、エンジニアも、オープンスペースで働いていますね。大抵彼らは、常にヘッドフォンをしていますが(笑)。
▼同社のサンフランシスコ・オフィスの様子
ミーティングするためのスペースも、基本的にはオープンです。どのオフィスにも広いシェアスペースを設置していて、そこにスナックやコーヒーを用意し、いつでもカジュアルなミーティングができるようにしています。
▼同社のバンクーバー・オフィスの様子
これは、私たちが提供するツールである、Slackの考え方と同じなんですね。Slackでは、それぞれのチャットルームが基本的にオープンになっていて、誰でも参加が可能です。
私たちももちろんSlackを使って仕事をしているため、デジタルでもオープン、フィジカル(物理的)にもオープンに働いていることになります。こういった環境が、生産性の向上を後押ししていると思いますね。
ちなみに私たちのSlack上には、2,000以上のオープンチャンネルがあります。マーケティングや営業、PRといったチーム別であったり、プロジェクト別にチャンネルを分けています。社員であれば、どのチャンネルにもアクセスできるので、常に知りたい情報にアクセスできる状態です。
Slackを中心としたワークスタイルでも、帰宅後は「Slackオフ」
また、時間を無駄にしないために、「報告だけ」のアップデート・ミーティングは行いません。報告はチームごとに、Slack上で行うようにしています。ミーティングの時間は、よりアクティブなディスカッションに使っていますね。
さらに、生産性を高めるために、Slackのbotやインテグレーションも活用しています。チームごとに自由に使って良いことにしているので、全体で言うと数百は超えるかもしれません。
全社に共通するもので言うと、顧客管理ツールのSalesforceや、Google Appsを使っています。
SalesforceとSlackを連携させることで、例えば新規の商談がクローズすると、Slack上で通知が飛びます。皆が簡単に新しい情報にキャッチアップできる状態が作れる、これもSlackの良いところだと思いますね。
ただ、Slackのようなツールをベースに仕事をしていると、オンとオフの切り替えが難しいのでは? と思われるかもしれません。
しかしSlack社では、一度家に帰ったら、Slackをチェックしたり、返信をする義務は全くありません。Slack上では「do not disturb」というステータスを設定できるので、チームレベル、個人レベルでそれを好きな時間に設定しています。
例えば、私が金曜の夜にふっと思いついたことを、「do not disturb」中のメンバーにSlackで送っておくことはあります。でも、返信は月曜に来るだろうな、と想定していますし、すぐに返信をもらうことも期待していません。
ダイバーシティを理解した上で、互いに責任を果たすことが大切
このように、オフィシャルなワーキングルールがほとんどないため、「では現実的にどう仕事を回すのか」という疑問を持たれるかもしれませんね。
Slack社では、そこは性善説に近い考え方です。基本的に、チームメイト同士の信頼感・期待感の上に全てが成り立っています。
様々な人々が、異なるモチベーションで働いていることを互いに理解しているんです。たくさん働きたい人もいれば、そうではない人もいる。それもダイバーシティのひとつだと捉えています。
しかし、ルールに縛られず、それでも成果を出す働き方を実現するためには、「スマートな」人と一緒に働くことは前提になってきます。その点、Slackが求める人物像ははっきりしていますね。
具体的に言うと、情熱があって、「働くことを良くしたい」と思っていることです。Slackが目指す、「働くことをよりシンプルに、生産的に」ということを、クラフトマンシップを持って、体現しようとしている人ですね。
多くの人は、週に50時間、60時間、ときには70時間も働いています。その時間を少しずつでも良くすることで、それが大きな進歩につながり、人生をも変える。それを本気で実現しようとする人を採用しています。
こうした人材が集まっているため、皆、自分に求められている役割をしっかり理解し、責任感を持って仕事をしています。ですので、ルールで縛らなくても、皆10時〜4時は大体オンラインになっていますし、成果もしっかりと残しています。
Slack社では、今後もダイバーシティを大切に、新しい人材をどんどん採用していきます。色々な人が働いていることで、それがより良いプロダクトに反映されると考えているからです。今後もより多くの人に、Slackが実現したいワーキングカルチャーを届けていきたいですね。(了)