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「人工知能がサイト分析」する未来は訪れるのか? Web解析のプロ、小川卓氏に聞く!

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今回のソリューション:【AIアナリスト】

〜Web解析のプロ、小川 卓さんに聞く、AIとWeb解析の未来とは?「WACUL AIアナリスト」の利点、限界、そして今後への期待から、解析の基本的な考え方まで〜

Google アナリティクスと連携させることで、「人工知能」が自動でサイトを分析、改善提案までしてくれるという、株式会社WACULの「AIアナリスト」。リリース約1年で、すでに約1,800社が導入しているという。

流行りの「人工知能」を謳っていることもあって、各所で話題の本サービス。だが、その実力のほどは、どの程度のものなのだろうか?

日本におけるWeb解析の第一人者で、多数の著書・講演・コンサルティング実績を持つ、小川 卓さん。小川さんは実際のコンサルティング業務で「AIアナリスト」を利用しているという。

今回は、そんな小川 卓さんに、「AIアナリストって、実際、使えるの?」という疑問を率直にぶつけ、その利点、限界、そして今後への期待を、Web解析の基本を踏まえて、詳しく語っていただいた。

「AI」の進化で、Web解析はどう変化していくのか?

「AIが進歩すると人間の仕事が奪われる」みたいな話って、よくありますよね。私はそうなったら楽でいいと思うのですが(笑)、いまのWeb解析におけるAIは、まだそこには到達していないですね

Faber Company 小川 卓さん

というのも、Web解析って数字ばかり見るのではなくて、まずは実際のサイトを見るんです。それで使いづらいなって思ったところが最初の仮説になったりする

もっといえば、限界はWeb解析の「入口と出口」にあります。AIではWeb解析の入り口にある目的設定、つまりどこを目指しているのかとか、何をKPIとするかをそもそも設定することはできませんよね。

出口も同様です。分析の結果に基づいて改善していくにあたって、どれほどのリソースが投入できるのか、実際にどう人を動かすのかという問題が出てくるのですが、そこでもAIは無力です。

そういう意味では、人間がするWeb解析の仕事がなくなる、ということはないと考えています。

とはいえ、今後の進化で、私たちの仕事を脅かすぐらいになってくれれば面白い、と期待する気持ちもあります。いま「AIアナリスト」を使わせてもらっていますが、その進化を見守っていきたいですね。

Web解析にハマり、各社でのサイト分析を経て、フリーに

私は新卒では、Microsoftに入社しました。その後、転職したウェブマネーでWeb解析に出会ってハマってしまって。それ以来、ずっとWebサイト分析の仕事をしています。

最初は、「もっと大きいサイトを分析したい」と思ってリクルートに転職し、2年ほどかけ、全社のアクセス解析ツールを入れ替えるプロジェクトを行いました。

150サイトほどの解析ツールを入れ替え、600人を教育して、サイト分析の体制を整えました。私自身はその後、住宅系サイトのSUUMOの担当となり、KPI設計、分析、レポーティング、改善など、Web解析の一連のプロセスをなんでもやっていましたね。

その次は「時代はスマホだ」と思い、スマートフォンサービスに注力しているサイバーエージェントに行きました。アメーバピグからソーシャルゲームのガチャまで色々と分析して、それに基づいて改善して売上を伸ばす取り組みをしました。

その後は「ECまだやってないぞ」と思って。ECといえばAmazonだということで、Amazonに入社しました。そこでは主に、マーケットプレイスの分析を担当していました。

この頃から、個人的に運営しているアクセス解析のブログをきっかけとして、セミナーや出版のお声がけをいただくようになり、フリーの仕事が増えてきました。その時々でやるべき仕事を選べる、自由な立場が今のところは気に入っているので、現在は基本的にフリーで仕事をしています。

セミナー、勉強会、出版、そしてコンサルティングという方法で、様々なサイトの分析をしています。最近はデジタルハリウッド大学の客員教授として、解析の考え方と具体的なやり方について学生にも教えるようになりました。

「世の中にひとつでもよいサイトを増やす」ことがWeb解析の目的

これまで様々なサイトの分析に携わってきましたが、私がWeb解析をするのは、単純に「世の中にひとつでもよいWebサイト増やしたい」からなんですね

Faber Company 小川 卓さん

ただ、気をつけなければいけないのは、単なる分析だけではサイトは良くならないし、売上も生じないということです。分析するだけではなく、それに基づいて改善してはじめて、サイトが良くなり、その結果として売上が上がるんですよ。

改善して売上が上がることが面白いのであって、分析自体はそんなに面白くないんです。私も特に分析自体が好きなわけではないので(笑)、そういった分析を肩代わりしてくれるツールがあればいいな、とずっと思っていました。

分析作業を肩代わりしてくれるツールを探していた

そこで、1年ほど前のリリース直後から注目していたのが、人工知能がサイトを分析するという「AIアナリスト」です。一度、私のブログでも取り上げ、個人的に取材にも行きました(笑)。その時も使ってみたのですが、まだできることが限られていて、「今後に期待かな?」というのが正直なところでした。

今回、リリースから1年ほど経ち、「だいぶ進化しているぞ」という話を聞いたり、人工知能がブームとなる中で、私のお客様でも興味を持っている方が増えてきて。改めて、「どうなっているか使ってみよう」と思ったんです。

AIアナリストとGAを連携すると、自動で改善提案を出せる!

いまはお客様のサイトの分析・改善に「AIアナリスト」を使っています。私が利用している機能は主に2つですね。

1つ目は、Google アナリティクス(GA)と連携させ、サイトの主要な課題と改善案を自動で出してくれる機能です。

この機能は基本的にはコンバージョンを見るもので、例えば「このページを見たユーザーはコンバージョン率が6倍なので、このページへの導線を強めるように遷移を変えましょう。そうすればコンバージョン数が1.5倍になります」といった提案をしてくれます。

▼CVRが特に高いページを抽出して教えてくれる。

WACUL AIアナリスト

実際に変更した場合、施策に効果があったのか、簡単にチェックすることができます。

もちろん、私の場合、これらを自分で出せないわけではないのですが、実はサイトの課題を抽出するためのデータ出し作業は地味に大変なんですよね

GAのある画面に行って、データをCSVで出力して、そういうデータをいくつか掛けあわせて、Excelでこういうレポートを作って、みたいな。心を無にしながらやる作業も結構多いです(笑)。

こういった作業を自動化してくれるので、工数が削減され、実際の改善につながるデータの解釈や気づきに「時間」も「考え」も集中できます

AIアナリストは「予想外の数値」にアラートを出してくれる

2つ目が「日々のチェック」と「レポート」機能です。様々な数値の予測値と実際の数値がズレた時に、それを自動で通知してくれます。推測される原因まで教えてくれるんですよ

▼数値が予測とは違った動きをしたときに通知してくれる。

WACUL AIアナリスト

これも、自分で確認できないわけではないのですが、自動的に出してくれるのは楽ですよね。皆さん忙しい中で、この利点は見逃せないと思います

さらに3つ目の機能として、より具体的なアドバイスの機能があります。例えば「ここのページが見られていませんので、こういう風に直したほうがいいですよ」みたいなことを教えてくれます。

最初に見たとき、「これどうやっているんだ?」と驚いたんですが、この部分はまだAIではなく人間が分析結果を元にアドバイスを書かれているそうです。掲示板形式になっているのでやりとりをすることも可能です。

AIアナリストは初心者・中級者・上級者の誰にとっても有用

AIアナリストは、ユーザーがどれほどWeb解析に慣れ親しんでいるのかによって、様々な使い方があると思います。

例えば、GAは入れたけど、見ているだけで何もできていないというような初心者の場合は、まずはAIが出してくれた改善提案やアドバイザーのアドバイスを信じてやってみるのがオススメです

怠りがちな施策の効果検証も、日々のチェックで変化が確認できるので、やりっぱなしになる心配もありません。

中級者の場合には、自分がこれまでに持っていた視点とは「別の視点」から、改善点やアドバイスが得られると思います。

Faber Company 小川 卓さん

最後に、上級者の場合でも、先に述べたように、AIアナリストは手作業を肩代わりしてくれるので、工数削減になります。「心を無にする」作業の必要がなくなって、「心が豊か」になりますよ(笑)

「AIアナリスト」はまだまだ発展途上、今後に期待することは?

ただ、今後への期待も込めて少し厳しいことをいえば、やはり「人工知能」と聞いて私たちが想像するものにAIアナリストが達しているかというと、そうではないと思います。

例えば、分析自体は、人工知能というより、「ビッグデータ的な大量の組み合わせの集計を実現している状態+予測モデル」というのが現状なのではないでしょうか。

人工知能としての側面を強めるのであれば、人ではなく「機械」が、どこまで的確にアドバイスを出せるようになるか、というのは大きなポイントかもしれません。

コンテンツの形態素解析を元に「こういう文章修正はどうですか?」と提案したり、サイトのコンテンツを自動で書き換えて、A/Bテストを繰り返し、勝手にコンテンツを最適化したりできれば、誰でも「これは本当に『知能』だ」と納得すると思うんです。

Faber Company 小川 卓さん

分析の観点を「コンバージョンを増やす」だけではなく、「新規を増やす」「リピートを増やす」などにも広げる、あるいはGoogleアナリティクス以外のツールとも連携した上での、より精度が高い分析なども、できるようになるといいですね。

これからも、「AIアナリスト」という、画期的なツールの更なるチャレンジに期待しています。改善を実現することが目的のウェブアナリストにとって、欠かせないツールになることを願っております。(了)

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