• 株式会社クラシコム
  • 代表取締役 CEO
  • 青木 耕平

「北欧、暮らしの道具店」が生まれるまで。世界観の作り方、SNS運用の秘訣

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〜「EC」✕「メディア」で独自の世界観を創りだす、「北欧、暮らしの道具店」。その世界観の作り方から、SNSの活用までを公開〜

月間PVは1,300万、Instagramのフォロワー数は46万人を誇る、「北欧、暮らしの道具店」。ECとメディアを融合させ、圧倒的な支持を集めているが、当初は一般的なECサイトだった。

「コンテンツマーケティング」という言葉が一般的ではなかった時代から、「まだ買う気のない人」をターゲットとしたメディアを構築。時代がソーシャルに移り変わる中、その変化に合わせて始めたInstagramは、膨大なフォロワーを抱えている。

▼「北欧、暮らしの道具店」のWebサイト

今回は、同メディアを運営する株式会社クラシコムの代表である青木 耕平さんに、独自の世界観の作り方や差別化の方法、そして「1冊の雑誌を作る」ように取り組んでいるInstagramの運用法まで、お話を伺った。

事業の失敗から生まれた、「北欧、暮らしの道具店」

実は弊社は、「北欧、暮らしの道具店」以前は、別のWebサービスを展開していました。

ですが、そのサービスは失敗してしまい...。実の妹と創業したのですが、何もできずに終わるのは申し訳なく、妹が以前から好きだった北欧に、最後の社員旅行に行くことにしたんです。

株式会社クラシコムの青木 耕平さん

当時は、事業の失敗で元気もなく、頭も回らない状態でした。ただ、旅行の準備をしていると、少しずつ回復してきて。逆に、ただ残っているお金を使って旅行にいくというのが、商売人として嫌になってきました(笑)。

それなら、クレジットカードも有り金も全部使って、北欧で売っているものを仕入れて、日本で売ろうと。そんな壮大なビジネスを考えていたわけではなく、交通費や宿泊費を取り戻せたらいいなくらいの感覚でした。

そのときに輸入したのは、60年代から70年代に作られた、ビンテージの食器です。今はもう作られておらず、日本ではなかなか手に入らないものでした。

それらを日本に持って帰ってきて、ECで展開するとすぐに売れたんです。これは別にやり方が良かったという訳ではなくて、商品が良かったんだと思います。

そこから、元々ECに興味があったこともあり、ビンテージのECとして正式に「北欧、暮らしの道具店」を立ち上げました。

広告費をゼロに!「EC」✕「メディア」への変遷

立ち上げ当初は、通常のECでした。今のような、「EC」✕「メディア」の形になったのは、2011年ごろからです。

当時は、集客の手段として広告を使っていました。ですが、費用をかけすぎると、利益がほぼゼロの状態になり...。そのままでは、トントンの状態を続けるだけの、夢のないビジネスになってしまいます。

株式会社クラシコムの青木 耕平さん

そこからどうすれば一番ハッピーな状態になれるか考えたんです。当時の利益は3%程度だったので、これを最低でも10%にはしたいと。

そのためには、粗利を高められたら良いのですが、高く売れる商品を作るか、バイイングパワーを使って安く仕入れるかのどちらかの手法しかなく。そのどちらも、資金力勝負になるので、諦めました。

そこで注目したのが、マーケティング費です。当時、売り上げの15%ほどを使っていたマーケティング費を、そっくりそのまま無くして売り上げを維持すれば、利益率は上がるんじゃないかと考えました。

非常に難しい話かもしれませんが、これが1番ハッピーだと気付いたんです。

「まだ買い物をする気がない人」をターゲットにする理由

広告費をゼロにするためには、別の方法で集客をしなければいけません。当時はまだコンテンツマーケティングという言葉も一般的ではなかったので、自分で考えて結論を出す必要がありました。

そこで、ある仮説を立てました。「買い物に来る人」ではなく、「まだ買い物をする気がない人」にサイトに来てもらえれば、広告費はゼロにできる、という仮説です。

なぜAmazonや楽天などのECが、広告で集客をしているのかと言うと、それは買い物をする気がある人だけにサービスを提供していたからです。逆に、Yahoo! JAPAN のようなポータルサイトは、訪れたすべての人に、何らかのサービスを平等に提供している。

買い物をする人だけにサービスを提供するか、そうでないかによって、広告を出す側と出される側が分かれていたんですね。

株式会社クラシコムの青木 耕平さん

この仮説が正しければ、軸足を「まだ買い物をする気がない人」に移すことで、集客は困らなくなります。

ただ、全く興味のない人が来ても無駄なので、僕らの世界観やカルチャーに親近感を持ってくれる方を対象としました。

親近感は持つけど、製品を買うことにはまだ興味のない方々が、ちょっと暇なときに開いてくれるメディアになれば、広告がなくても集客ができると思ったんです。

まずは読者の世界観を定義。好きな雑誌はBRUTUS?

世界観やコンセプトを作るにあたって、まずは「誰に買ってもらいたいのか」を明確にしました。その人たちがどういう世界観が好きで、どういう文化圏に属しているのか。普段どういう雑誌を読んでいて、どんな音楽を聴いているのかまで、分析していきました。

例えば、「北欧、暮らしの道具店」のお客さんの定義は、「過去になんらかのマガジンハウスの雑誌に影響を受けている人」です。男性であればBRUTUSのような雑誌をかっこいいと思っていた人。女性であれば、Oliveや&Premiumですね。

載せるコンテンツの差別化も考えていました。当時のビンテージのお店は、男性が経営していることが多かったので、どうしても歴史だとか、うんちく話が多くなりがちで。

そうではなく、食器などのビンテージ品が「実際に使われている」様子がわかるコンテンツを作ることにしました。そのためにも、撮影する写真にも人工光を一切使っていないんです。実際に使われている様子を、自然光で撮っています。

▼自然光で撮影された「湯たんぽ」の写真

自然光で撮影された「湯たんぽ」の写真

フォロワー46万人のInstagramは「遊び」から始まった

メディアを開始してから、幸いにも集客に困ったことは一度もありません。当時はSEOについても競合がいなかったので、「北欧」というワードがあるだけで、検索流入にも困らなかったんです。

ただ、事情が変わってきたのが、スマホとソーシャル時代の到来です。

スマホの普及率が伸びていくのを見て、「これは検索しない時代が来る」と感じました。今までGoogleにインデックスされないと存在しないようなものだったWEBサイトでしたが、今度はSNSのタイムラインに流れないと認知されなくなる。

たまたま僕たちはメディアを持っていて、コンテンツのストックも、それを作る体制もあったので、SNSの運用も始めました。

現在、弊社の公式Instagramには46万人のフォロワーがいます。フォロワー数では、国内でも有数の企業アカウントだと思いますが、最初は「遊び」から始めました。

▼46万人以上にフォローされている、「北欧、暮らしの道具店」のInstagramアカウント

担当者にも一切KPIを与えず、「とにかく1年間これで遊んでみてくれ」と、ほったらかしで任せていました。

ある日、しっかり分析してみると、すでに売り上げの10%を占めていたんです(笑)。これはと思い、すぐに全員に集合してもらって、「これからはInstagramに集中します!」と宣言しました。

Instagramは「1冊の雑誌」を目指して運用

SNS運用では、まず自社の勝ちパターンを、遊び感覚で探すと良いと思います。

遊べと言われて、しっかりと遊べる人に任せる。そして本腰を入れるタイミングで、編成を考えていきます。365日運用するためには、これは欠かせません。

「何曜日の何時は何枠」というのを数週間、数ヶ月先の分まで決めておいて、それに従って「Autogrammer」というツールで予約投稿をしています。

▼Instagramの予約投稿サービス「Autogrammer」のサンプル画面

Instagramの予約投稿サービス「Autogrammer」のサンプル画面

曜日や時間によって最適化するようにしていて、一時期は毎朝花の写真を投稿していました。花束の写真や、その材料の花の写真、花のアップ、というように、切り口を変えて投稿しています。

各SNSでコンテンツの出し方に違いがあるのですが、Instagramでは「1冊の雑誌を作るように」コンテンツを作り込んでいます。一個一個のコンテンツとして考えるのではなく、コメントなども含めて、全体で一つの雑誌になるように発信しているんです。

▼「一冊の雑誌を作るように」投稿されたInstagramの写真

「一冊の雑誌を作るように」投稿されたInstagramの写真

数字よりも、深いコンテキストの共有を大事に

「北欧、暮らしの道具店」では、数字にもあまり注目していません。コンテンツを作る人にも、「自分が読者として読みたいコンテンツを作ってくれ」と言っています。実際に読むコンテンツと、作りたいというコンテンツは違うので、「作りたい」コンテンツを作ってはいけないんです。

コンテンツを作っている人の、ほぼ100%が元読者なんです。だから、読者だった時の気持ちで、読みたいコンテンツを作ってもらっています。コンテンツの企画はPDCAを回さず、肌感覚で書いています。「こういうのはウケたね」と、わいわいしながら作っていますね。

数字だけを追ってしまうと、読者との深い関係性の構築はできないと思います。

例えば、Instagramに社内の風景も投稿するのですが、これには全然いいねが付かないんです。一方で、花の写真は数字が伸びます。これは、花の写真はコンテキストを共有していなくても、誰もが楽しめるコンテンツだからです。

最近の動画メディアは、レシピ動画に偏っていますよね。僕たちもレシピの動画を投稿したら、それは数値が伸びる。でもそれだけをやっても仕方ないんです。社内風景のような、深くコンテキストを共有していないと良いと思えないコンテンツも、重要なんです。

株式会社クラシコムの青木 耕平さん

Instagramの次は、LINE@にも注目しています。バイラル性は低いですが、勝ちパターンさえ見つかれば、かなりの戦力になってくれると思います。ただ、やはりなぜやるのかというところ、お客さんとのつながりを最重要にして、運用していきたいと思います。(了)

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