• 株式会社太田胃散
  • 代表取締役副社長
  • 太田 淳之

若年層へリーチせよ!創業138年、太田胃散の一手は「ゆるキャラ」でリブランディング!

〜創業138年、若年層への認知を課題とする太田胃散が取り組んだのは、「ゆるキャラ」!Web、アプリ、リアルに広がるその取り組みを公開〜

「ありがとう いいくすりです」のフレーズで親しまれ続けている、株式会社太田胃散。

時代背景やニーズに合わせて変化し続けてきた一方で、若年層にとっては遠い存在になりつつあった同社。創業から138年も続くブランドを未来につなげていくため、再び変化が求められていた。

そこで2015年には、ゆるキャラ「太田胃にゃん」を生み出し、Webやイベント、スマホゲームなどに展開することで、若年層への訴求を開始した。

今回は、リブランディングプロジェクトに取り組む、代表取締役副社長の太田 淳之さんと、AD顧客部長の佐藤 桂一さんに、詳しくお話を伺った。

現場を知るため、父親の反対を押し切り工場勤務に

太田:私は大学を卒業して、新卒で太田胃散に入社しました。

父親である社長からは、「1度他社を経験したほうがいいんじゃないか」と言われていました。ですが、他社を経験するより、これから会社を共に成長させていく社員との関係を、少しでも早くから築くことが重要だと感じたんです。

左:佐藤さん、右:太田さん


また、当時の自分に一番必要なものは、「現場を知ること」だとも感じていました。そこで、メーカーの中でも一番の現場である、工場の勤務を志望しました。最初の1、2年は製造工程、3年目は製造管理職をしていましたね。

その後、研究開発部、海外事業部、AD顧客部などを経て、現在は副社長をしております。

若者からは「太田胃散ってなんですか?」という声も…

太田:弊社の胃腸薬はありがたいことに、全国ほぼすべての薬局に置かれています。そして、弊社のコアターゲットである40代後半から60代のうち9割ほどが、「胃腸薬と聞くと太田胃散を想起する」、という調査会社のデータも出ています。

しかし一方で、20代、30代の方からは、「太田胃散ってなんですか?」という声も増えてきました。太田胃散の商品名は知っていたとしても、「作っている会社はどこですか」と言われることもあります。

若い世代には、無理に商品の知識だけを与えることに、抵抗感がある人も多いです。「ステマだ」と思われてしまうんですね。

そこで、まずは「太田胃散ってどういう企業なんだろう」と興味を持ってもらうため、会社の「リブランディング」が必要だと思ったんです。

肩書のない若手を集めることで、新しい発想が続々と

太田:リブランディングのプロジェクトは、20代から30代前半までの、肩書きを持たないメンバーで構成しました。多数決でもしっかりと決められるように、人数は5人とし、性別も男性3人、女性2人にわけました。

メンバーには常に、「自分たちが面白いと思える仕事をしよう」と伝えていました。

すると、「せっかく138年の歴史があるのに伝えないのはもったいない。漫画を作ろう!」「胃腸薬の商品が多くて選べないから、自分の症状に合った薬がわかるクイズが欲しい!」といった、若手ならではの新しい発想がどんどん生まれてきたんです。

▼太田胃散の歴史を楽しく知ることができる漫画「雪湖堂物語」(太田胃散公式サイトより)

ゆるキャラ「太田胃にゃん」誕生!公募にこだわった理由とは?

太田:こうして、2014年の4月にWebサイトをリニューアルしました。そして同時に、太田胃散のゆるキャラも作ることにしたんです。

当時、ゆるキャラがブームになっていたというのもありますが、20代よりもっと若い「子ども」との距離を縮めるためには、非常に効果的だと考えたんです。3歳くらいのお子さんにも、どこかしらで弊社の名前を覚えてもらえたらいいなと思っていました。

キャラクターを作るにあたって、まずはデザインと名前を社内公募しました。普通だと、デザイナーにお願いすることも多いんですが、それは避けました。

理由は、今後ずっと付き合っていくキャラクターとして、これから20年30年と社員として頑張ってくれるメンバーに、愛着を持ってもらいたかったからです。

全社員、工場、営業所などみんなに声をかけた結果、全社員140人中30人以上が応募してくださって。最終的に、名古屋の営業所の責任者である女性が生み出した、「太田胃にゃん」というキャラクターに決まりました。

▼太田胃散公式PR大使「太田胃にゃん」


ゆるキャラといえば、着ぐるみが欠かせないですよね。私はそこに凄いこだわって、着ぐるみの工場にも見に行ってしまいました。

「着ぐるみを作るのに工場に行く人なんていないよ」と言われていたのですが、距離感を縮めるためには、ハグをしたときの抱き心地が大事だと思ったので、自分で確かめたかったんです(笑)。最終的に、持ち運びが簡単なエアータイプではなく、ウレタン製のものを選びました。

距離を縮めるための鍵は、詳細なプロフィール

太田:当初、キャラクターのプロフィールは作り込んでいませんでした。ですが、初めてイベントに参加したときに、それが間違っていたことに気づきました。

クローズドな女性向けイベントでのお披露目だったのですが、お客様が写真を撮りながら、いろいろと聞いてくれたんです。その内容は、「この子はどこ生まれですか?」「何歳ですか?」「男の子なんですか?」といった、プロフィールに関する質問がとても多くて。

それからは、「これは距離感を縮めるチャンスだ」と感じて、しっかりとプロフィールを作りました。太田胃にゃんのウェブサイトを作り、誕生日や生まれ、好きな食べ物などを細かく決めていったんです。

▼太田胃にゃんオフィシャルサイトで公開されているプロフィール

地方のテレビ局、サンプリングなど、活躍の場を広げる

佐藤:その後は、地方のテレビ局などの様々なイベントに、太田胃にゃんの着ぐるみで積極的に参加していきました。地方局のイベントは、地元に凄い根付いていて、全国の人たちと距離を縮めるチャンスなんです。


他にも、ドラッグストアショーなどの大きなイベントにも参加しています。このようなイベントだと、一度に何万人から何十万人ものお客さんが来てくれます。そこで、太田胃にゃんがサンプルを配布しながら、多くの人とコミュニケーションをとっています。

太田:このように、リアルの場でみなさんと対面することで、若い子たちにも、サンプリングした商品に対して「これ、飲んでるよ!」と言ってもらえたりもしたんです。

イベントに出ることで、会社に閉じこもっていると見えない、生のお客さんの姿が見えるようになりました。これまでにないチャネルもでき、PRとしてとても良かったと思っています。

アプリ、SNSなどのオンラインコミュニケーションも重要

太田:イベント以外にも、オンラインのコミュニケーションとして、FacebookとInstagramの運用を始めました。Instagramでは、例えば「鉄道の日」などの記念日に、イラストをアップしたり、イベントの写真を載せたりしています。

▼太田胃にゃんのInstagramアカウントで公開されている画像

ただ、イベントでリーチできる人には限界がありますし、SNSではお客様と深い関係になることは難しいんですよね。

そこで、単純に遊べて、誰もがいつでも楽しめるものを作りたいと思い、「ハッスル!頑張る!太田胃にゃん」というスマホゲームを作りました。これは、ゲームを活用したPRを得意とする、株式会社オートクチュールさんと協同で制作しました。

▼スマホゲーム「ハッスル!頑張る!太田胃にゃん」のプレイ画面


Facebookで1度広告を打っただけなのですが、その後もダウンロード数は順調に伸びていきましたね。弊社の社長も、ハマっていました(笑)。

「年賀状を出したい」という要望も。歴史を未来につなげる一歩に

太田:最初はゆるキャラを作っても、どこまで若い人やお子さんから反応があるのか、正直わかりませんでした。

でも、イベントで写真を頼まれたり、色々なチャネルで触れてもらったりするなど、当初の想定よりも反応が多くて。

一番驚いたのは、お客様相談室に「太田胃にゃんに年賀状を出したいんですが、どこに出せばいいでしょうか?お返事はいただけるのでしょうか?」というお問い合わせがあったことです。

たった1件ではありますが、まさかそこまで愛着をもってもらえているんだと思うと、本当に驚きました。


リブランディングを通じて、これまでの太田胃散にはなかった新たなチャネルが生まれ、お客さまとの距離もだんだん縮めていくことができ、本当に良い流れができていると思っています。

このような中長期的な活動を継続していくことで、多くの人に愛着を持ってもらえるようなブランドを築いていき、太田胃散の歴史を未来につないでいきたいですね。(了)

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