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働きやすい環境は、自分で作る。「出社しない」という次世代型の働き方を実現する方法

〜「出社しない」働き方を実践するシックスアパート株式会社。ペーパレス、オフィスレス、キャッシュレス化など、次世代型の働き方を実現するためのノウハウとは〜

近年、働き方が多様化し、リモートワークを推奨する会社も増えてきている。しかし、新しい働き方を実現するためには、その制度をワークさせるための仕組みづくりが非常に大切だ。

シックス・アパート株式会社は、社員1人ひとりのライフスタイルに合わせ、働く場所を選択できる「出社しない」働き方、通称「SAWS(サウス)」を、2016年よりスタートした。

この取り組みを実現するために、同社では「ペーパーレス」「オフィスレス」「キャッシュレス」の3点に着目し、「オフィスに来なくてもいい状況」を用意したという。

結果的に、社員の生産性が上がったほか、家族や趣味に費やす時間が増え、通勤ストレスが減少したなど、社員の心の健康にも効果を実感しているそうだ。

今回は、この次世代型の働き方を実現するためのノウハウについて、SAWSの推進を担当した作村 裕史さんに、詳しいお話を伺った。

1人ひとりが自分にあった環境で働ける仕組み「SAWS」

シックス・アパートは、2003年に創業した、Web制作・Webマーケティング支援のサービスを提供する会社です。私は2011年に入社し、現在は事業開発・経営企画を行いながら、「SAWS(※)」という、弊社独自の働き方を推し進めております。

※SAWS(サウス):Six ApartらしいWorking Styleの略。

SAWSは、2016年8月から開始した、社員1人ひとりが自分に合った生産性の高いワークスタイルを実現するための取り組みです。

具体的には、「毎日オフィスに出社する」というルールをなくして、それぞれのライフスタイルや住まい、業務内容に合わせて、好きな場所で働くことができるようにしました。

例えば、小さな子どもがいる社員は、自宅勤務に切り替えることで、家族のための時間を増やしています。その一方で、顔を合わせる必要がある会議や親睦会などでは、オフィスへ出社するという選択もできるようになっています。SAWSが浸透した今、週5日毎日出社している人は総務スタッフ含め、ひとりもいません。

▼シックス・アパート株式会社の作村 裕史さん


もともと弊社では東日本大震災後の2011年夏から、リモートワークの実験とオフィスの節電を兼ね、「毎年、夏期の水曜日はリモート勤務推奨」という取り組みを実施していました。会議がない集中時間を確保できることで生産性も上がり、プライベートの充実にもつながるなど社員からの反響の良い取り組みでした。

そして、2016年の「EBO(※)」をきっかけに、自分たちの会社をより働きやすい環境にしていこうと、省スペースのオフィスに移転すると共に、毎日ほぼ全社員がリモートワークで働くことができるSAWSをスタートしました。その働き方に合わせて、出社する必要を減らすためにクラウドツールを積極的に導入するなど、業務環境を整えていきました。

※EBO(Employee Buy-Out):従業員がその会社の株式を取得し、経営権を手に入れること。

SAWSを開始して半年ほどですが、社員からは「家庭の事情に合わせて働き方を選べるので、ストレスも少なく非常にありがたい」「働き方としては非常に合理的だと思う」といった声が上がっています。

家族や趣味に費やせる時間が増えたこと、通勤・対人ストレスが減少したことなど、社員の心身の健康にも効果があったと感じています。

オフィスに来る理由をなくす!リモートワークの3大鉄則とは

SAWSを導入するにあたっては、まず「オフィスに来なくてもいい状況」を作り出すことが課題でした。

そこで僕らがポイントだと考えたのが、「ペーパーレス」「オフィスレス」「キャッシュレス」という3点です。これらが実現できれば、オフィスに通勤しなければいけないという状況を減らすことができると考えました。

ペーパーレスとは言葉の通り、紙の書類でのやりとりを減らすことです。たとえばこれまで給与明細は、総務から全員に紙で手渡ししていました。いまでは給与明細の発行と送付をWeb化したので、すべてオンラインで完結します。紙からWebへというとありがちな話に聞こえると思いますが、こういう小さな課題を1つひとつ解消していくことが重要でした。

そのほかの書類が必要な業務も、労務ソフト「SmartHR」や会計ソフト「MFクラウドシリーズ」などを導入することで、多くの総務・経理作業をインターネット上で完結できるようにしていきました。

▼SmartHRで給与明細を確認している様子


2つ目のオフィスレスとは、オフィスのあり方を見直し、執務エリアを必要最小限にしたことです。

2016年8月にオフィスを移転した際に、ほぼ全席をフリーアドレスにしました。いまオフィスには、全社員分のデスクはありません。ですが、会議室やその他のコミュニケーションスペースは確保しています。オフィスの位置づけを「毎日通勤すべき場所」から、「社員同士で気軽にコミュニケーションできる場所」に変えたんです。

▼コミュニケーションスペースを重視し、執務スペースを減らした新オフィス

働きやすい環境を自ら「カスタマイズ」するための手当を支給

3つ目のキャッシュレスとは、経費申請やその経理処理に使う間接コストを縮小するということです。

例えば、コワーキングスペースで仕事をすることになった時、毎回その費用を立て替えて経費申請をするのは、とても面倒ですよね。コワーキングスペースを利用する度、面倒な経理処理の作業が発生するという時間的なコストは、働きやすさを阻害します。

そこで弊社の場合は、「SAWS手当(テレワーク手当)」という、働きやすい環境を整えるための手当を支給することにしました。


特徴としては、全員一律の額を支給しており、その使途は自由であるという点です。通信費やカフェでのコーヒー代、コワーキングスペース利用料など、リモートワークに必要な様々な費用に当てることができます。これにより、頻繁に発生するリモートワークのための、経費申請の作業が不要になるのです。

この制度のポイントは、「予算内で自己管理する」という仕組みだと思います。例えば「自宅の方が働きやすい」という人は、その手当をカフェ代ではなく、デスクやオフィスチェアの購入に使うこともできます。メンバー1人ひとりが、決められた予算の中で、自分にとって働きやすい環境をカスタマイズしています。

Slack botが、コミュニケーションのきっかけに

リモートワークで高い生産性を保つためには、コミュニケーションを円滑にする工夫も重要です。

そこで、弊社ではビジネス向けチャットツール「Slack(スラック)」を活用しています。例えば、SAWS以前より毎朝実施していた、チームの情報共有のためのスタンドアップミーティングは、今はSlack上で毎朝行っています。Slackのbot機能を活用して、毎朝10時に「スタンドアップミーティングの時間です。みなさん、進捗状況を報告してください」と自動メッセージが投稿されます。その投稿に応える形で、各メンバーが報告していきます。

定時にコミュニケーションの場所があるため、「そういえばこの件、ここで詰まっているのですが…」といった問題も、日々溜め込まずに解決することができます。

弊社キャラクターのトフもSlack botとして常駐しており、話しかけると常にとぼけた回答を返してくれて、社内のコミュニケーション活性化に一役買っています。

▼とぼけた回答で、社員のコミュニケーションを活性化してくれるbot


コミュニケーション活性化のみならず、リモートだからこそ必須な業務ツールとしても、Slackを活用しています。たとえば、ワンボードマイコンの「Raspberry Pi」と各種センサーを組み合わせたIoT連携のbotが、いま出社しているメンバーの名前や、現在のオフィスの温度・湿度・CO2濃度、天気予報や電車の運行状況などを教えてくれます。これらの情報は、今日どこで働くべきかを判断する材料にもなります。

▼今出社しているメンバーも、botに聞くことですぐにわかる


例えばオフィスに出社しているメンバーがわかると、「彼が出社しているなら、ちょっと相談しにオフィスに行こうかな」といった行動にもつながります。

この他にも、便利で実現可能なアイデアが出てきたら、すぐに実装してくれるエンジニアがいます。より良い働き方を実現するために、常に改善を行っていける仕組みができていますね。

成功の鍵は、全員がオーナーシップを持った「自律型組織」

SAWSは、自由な場所で働くことができる取り組みなので、オフィスの方が都合が良い場合は出社して働くことも可能です。ほとんどの会議はリモートで実施していますが、必要に応じて対面の会議に切り替えることもあります。

また、月に1回程度、全社員が集まるオフラインのミーティングも実施しています。

このように、その時々の状況に合わせ、1人ひとりが最適な行動を取ることができる「自律した組織」の構築こそ、リモートワークを成功させるための一番のポイントだと思っています。


ただ、SAWS自体はまだまだ改善の余地があるので、社員の声を聞きながら、常にアップデートしています。私たちのSAWSの取り組みの試行錯誤を積極的に発信していくことで、働き方を変えたい企業のロールモデルのひとつになりたいと考えています。(了)

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