• 株式会社Speee
  • デジタルコンサルティング事業本部 ネイティブアド事業 UZOU アカウントプランナー
  • 三木 健史

報告資料を「半分」にしても、受注単価は150%増!顧客の期待に応える、ムダのなくし方

〜「Googleデータスタジオ」の活用などで、顧客へのレポート作成を効率化。ムダな業務の可視化で組織を変革し、顧客満足度も向上させた事例〜

営業マンにとって、顧客に提示する「資料作り」は、大切な仕事だ。

しかしその資料に、多くの時間をかけても仕方ないと思ってしまうことはないだろうか。資料作りに時間をとられるあまり、本来求められているはずのコミュニケーションや、新しい提案がおざなりになってしまうことも多い。

SEOやトレーディングデスクを中心としたデジタルコンサルティング事業などを展開する、株式会社Speee。

同社の新規事業「UZOU」では従来、クライアントへの詳細なレポーティングを強みのひとつとしていた。しかし、その業務工数やツール、さらにサービスの特性を見直すことで、レポート作成の時間を半分にし、その一方で受注単価を1.5倍まで伸ばすことができたという。

▼新規ネイティブアド事業「UZOU」

今回はネイティブアド事業「UZOU」でサービス統括を担う増田 聡さんと、アカウントプランナーの三木 健史さんに、当時の背景から組織を変革させた取り組みについて話を伺った。

メディアと広告主、双方に最適なWeb広告を配信する「UZOU」

三木 私は新卒でSpeeeに入社して、3年目に入ったところです。入社後は広告の運用を担当して、今は新規サービス「UZOU」の販売促進とマーケティング担当をしています。

増田 私はもともと別の会社で、コンサルティングを経験し、よりWebを活用したマーケティング支援をしていきたいという想いからSpeeeへ入社し、6年目になります。

私が立ち上げから関わっているUZOUは、「レコメンドヴィジェット型」のネイティブアド広告と呼ばれるものです。メディアの記事の下に、関連記事と広告を自然と溶け込ませて配信を行います。

▼記事と広告を自然に融合させるネイティブアド広告


UZOU事業は1年半前から発足し、今は全体で30名ほどの組織になっています。エンジニアの他に、ビジネス側のメンバーで言うと、広告を出稿するクライアント企業様と、その広告を掲載するメディア様の担当に分かれています。

創業からの強み「詳細なレポーティング」がUZOUでは課題に…

三木 もともと課題だったのが、クライアント企業様に広告効果をレポートする資料の作成に、非常に時間がかかっていたことです。

私たちのサービスの特性上、広告主は単なるユーザー獲得だけでなく、ブランディング効果や認知度の向上を求めていることが多くなります。

すると報告する数値も多岐に渡ってしまい、毎月の報告資料も多いときは30〜40ページになり、多くの業務時間が割かれている状態でした。


資料は、主に「Google Analytics(グーグルアナリティクス)」から、広告へのアクセス数、閲覧者の性別や属性のようなデータを集めて、それぞれの事象と解釈を書いていました。サービスをリリースしたばかりの頃は資料作成のフォーマットもなかったので、テンプレート作りから試行錯誤して取り組んでいましたね。

増田 もともと弊社は創業後、データをベースにPDCAを速く回すということに強みを持っていました。そのため、お客様に詳細なレポートを提供し、それを基に継続的な改善を行うことが差別化に繋がっていました。

そこに時間が多少かかっていても、お客様へ提示するものを効率化することは、UZOUとしてはなかなか難しい状況でした。他社より後発でスタートした事業でしたので、なおさら、「時間が多少かかっても良い資料を」という方向に考えていて、それが効率化をさらに難しくさせていました。

データドリブンな組織も唸らせる、徹底した業務の「見える化」を

三木 UZOUチームに加入した直後は、私自身は広告の運用を担当していて、資料作成もその業務のひとつでした。でも、そこにかかっている比重を下げ、よりクライアント企業様へ具体的な提案をすることに時間を使いたいという気持ちがあって。

チームにも、「なんとなくの」課題感はあったものの、それを裏付けるデータもなかったので、なかなか業務改善には結びついていなかったんです。

けれど、そんな状況を変えたいと思いました。ただ、Speeeは、データドリブンに意思決定をすることを大切にしているので、まずは数値で現状を把握することが必要でした。

▼データドリブンに意思決定をすることが大切にされている


ですのでまず、担当者がそれぞれの業務に、どのくらい時間がかかっているのかを、全て「見える化」するところから着手しました。

実際にUZOUの広告の運用をしている社員5名に、3ヶ月間協力してもらって、5分単位で全ての業務を「Googleスプレッドシート」に毎日入力してもらったんです。

▼すべての業務を5分単位でGoogleスプレッドシートへ記録

業務中はいつもシートを開いた状態にしてもらい、「資料作成」「広告の運用」「ミーティング」のように大カテゴリ10項目、小カテゴリ70項目に分類し、それぞれのタスクにかかった時間を記入していきました。みんな「もっと仕事の生産性を上げたい」という課題感は感じていましたので、協力は快諾してくれましたね。

結果としてわかったことは、平均して資料作成には、全業務の50%の時間が割かれていることでした。

▼業務に割かれている時間を可視化


そして、広告の運用担当と、理想的な業務の割合について議論を重ねました。すると、UZOUでは業務の3分の1が資料作成であることが望ましいという結論にいたり、その時間をお客様とのディスカッションや、広告の運用改善に使っていこうと考えました。

まずは自分の顧客から!自ら率先して、資料作成の効率化に着手

三木 実際にどのように効率化させたかというと、まず、自分が営業と広告運用を兼任して、レポートの分量を減らすことでお客様にもメリットが生まれるということを証明することにしました。

そもそも営業サイドからすると、これまで提出していたレポートの分量を減らすのは、どうしても抵抗がありますよね。

その一方で、運用担当はその時間を使って、より良い提案をお客様にしていきたい。そのミゾを埋めるために、自分がどちらもやってみることにしたんです。

まず、顧客のニーズに合わせて資料の内容を精査しました。今まで載せていた全ての項目について、改めて営業と運用担当でチェックをして、載せるべき項目を洗い出しました。顧客にとって重要であるポイントはボリュームを増やし、そうでない項目は減らしていきました。

さらに以前は、様々な数字の解釈をすべて文章にしており、冗長になってしまう部分がありました。ですので、そこは資料化せずに、直接お客様とコミュニケーションをするようにしました。

▼ あえて詳細な解釈を文字にしない資料


結果として、以前は30〜40枚、時には70枚を超えていたレポートが10枚以下になりました。それでも逆にディスカッションの時間や、新しい提案を増やすことができたため、お客様からの評価は高かったです。

この結果を踏まえて、UZOUチーム全体で、資料作成の効率化を行うことになりました。もともと完全に分業していた営業と運用担当も、兼任者を増やすようにしました。

「Googleデータスタジオ」で資料をダッシュボードへ置き換え

増田 今回は単にレポートを減らしたというだけではなく、お客様が求めるニーズによって体系化・グループ化を行い、本質的な提供価値を維持した上で、効率化できたのが良かったですね。

例えば、広告の獲得効率を重視するお客様は、詳細な分析よりも成果を重視されます。ですので、報告は必要最小限なプロセスKPIに絞り、空いた時間で実務的な運用時間に工数を割くというような形です。

逆により細かい数値や解釈を重視されるお客様には、「Googleデータスタジオ(グーグルデータスタジオ)」を使ったリアルタイムのレポートをご提供するようになりました。

Googleデータスタジオは、Googleアナリティクスの情報などを、自動でグラフにしてくれるBIツールです。数字はリアルタイムに更新されますので、お客様は常に最新の状態を知ることができます。その解釈を私たちがフォローすることで、より、新しい施策の実行速度が上がりました。

▼Googleデータスタジオを使い、資料をダッシュボード化

今では月次のレポートはなしで、Googleデータスタジオだけの提供になったお客様もいらっしゃいます。資料作成の時間を削減したというより、それをダッシュボードに置き換えていったということですね。

このように顧客に合わせたアウトプットにしていくことで、業務の選択と集中ができて、顧客のユニーク課題の解決へ向けた、思考やアウトプットをする時間が増えましたね。

自ら試し、組織を変え、受注単価も150%に!

三木 結果として組織としても、最初6時間ほどかかっていた時間が半分まで削減できました。一方でお客様からお任せしていただける運用金額、つまり契約の金額も、1.5倍に成長させられたんです。

UZOU全体でこのような取り組みを行っても、お客様からの批判も殆どありませんでした。とくにGoogleデータスタジオの活用は評判で、新たな代理店や企業を紹介してもらえることも増えましたね。

増田 こうした取り組みの結果、クライアント様や代理店様の満足度が高まり、後発ではありながら1年ほどでメディア、広告主共に100社以上と取引ができるようになりました。そして、直近は更に成長のスピード感が増しています。

三木 Speeeには「組織成長への貢献」というカルチャーがあり、その文脈で事業を進めたり、改善したりするための発言や、挑戦は賞賛をされ、組織としてより良い変化を起こしやすい環境となっています。

データをもとに事実があれば、みんな議論にあげて、協力をしてもらえる、そんなデータドリブンな組織は、素晴らしいと思っています。私自身も引き続き、新しいことにどんどん挑戦していきたいです。(了)

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