- 株式会社第一印刷所
- 取締役 東京本部長
- 柳沢 佳嗣
ビジネス版「LINE」で残業を30時間カット!老舗企業における、チャットツールの使い方
〜長時間労働を救え!コミュニケーションを「中抜き」して効率化。ビジネスチャット「LINE WORKS」を活用し、「シャドーIT」を成敗した事例〜
日々の仕事は、コミュニケーションの上で成り立っている。
しかしビジネスのIT化が進んだ今日でも、非効率なコミュニケーションはいまだに多い。セキュリティや規則の関係から、責任者の承認が必要であったり、電話やFAXを使った報告が義務付けられていたり…。
印刷や編集、ホームページ制作を手がける株式会社第一印刷所は、265名の社員を抱える、創業74年の歴史を誇る老舗企業だ。
同社では、そんなコミュニケーションの課題を解決するために、ビジネスチャット「 LINE WORKS(ラインワークス)」を導入。新潟本社と東京等の営業拠点、営業と製造部門とのコミュニケーションの非効率を解消し、残業時間を30〜40時間ほど削減させることに成功したという。
今回は、「ITの活用が印刷業界の長時間労働を救う」と語る、同社取締役の柳沢 佳嗣(やなぎさわ よしつぐ)さんに、当時の課題や、IT化の取り組みについて、詳しいお話を伺った。
創業70年の老舗企業が抱えていた、コミュニケーションの課題とは
私は第一印刷所に入社して、6年になります。これまでは新潟の本社で、印刷物の制作を担当していました。昨年から東京本部(拠点)で、拠点を統括する東京本部長を担当しています。
弊社は社名の通り、印刷事業を展開しています。帳票・ポスターのような昔ながらの印刷物から、ホームページ、動画など、媒体と呼べるものは全て制作しています。
今、全社で250名以上の社員がおりますが、約半数が営業や企画、残りの半数が印刷物の製造・制作を担当しています。私がいる東京本部は、主に営業など、お客様と直接コミュニケーションをとる役割を担っています。
これまで、社内のIT化は進んでいるとは言えませんでした。特に社内のコミュニケーションは、非常に非効率的だったんです。
印刷業界では「営業拠点と工場」を持つことも多く、さらに「顧客→営業→製造→印刷→製本→物流」といったように、印刷物の受注から納品までに、いろいろな部署間でのコミュニケーションが必要です。
例えば顧客から受注したポスターを実際に印刷する段階で、不備に気がつくことがあります。その場合、製造の現場から営業を通じて、顧客に確認する必要が出てきます。
その内容によっては、社内の責任者を通さなければならなかったり、場合によってはFAXを使うようなこともありました。このように、日常のコミュニケーションの中で、非効率な「伝言ゲーム」が発生していました。
しかも、当時の営業の社員はスマートフォンではなく、ガラケーを使っていました。ですので、外出先から戻った後でなければ、メールもチェックできず…。電車での移動時間などを効率的に活用できなかったため、業務が長時間に及んでしまうこともありました。
また、社内のIT化が進んでいなかったことで、社員が個人のスマホ上でチャットアプリなどのITツールを業務に使う「シャドーIT」が横行していました。会社として導入していないサービスを仕事で使うことは、好ましくないですよね。
こうした背景から、コミュニケーションツールなど、ビジネス向けITツールを全社的に導入することになりました。
「日常の延長」で使えるツールを!「LINE WORKS」を導入
過去には無料のチャットツールを一部で導入していたのですが、全社への導入となると、やはりシステムの「定着性」がポイントになりました。
例えば「Office365(オフィス サンロクゴ)」のような有名なシステムも検討しましたが、結局は社員が日常的に使っている「LINE(ライン)」 の延長線で使える、「LINE WORKS(ラインワークス)」というサービスを採用しました。
LINE WORKSはビジネス用のチャットツールで、LINEと同じ感覚でチャットやグループトークが可能です。これがあれば、個人のLINEを社内で使用する「シャドーIT」を一掃できる、と感じたことも導入理由のひとつです。
▼普段、利用しているLINEと同じ感覚でコミュニケーションがとれる
チャット機能だけに絞れば、他のサービスでも良かったのですが、大きな魅力だったのは、どんどん流れていくチャットとは別に、固定で表示される掲示板機能があったことです。
▼固定表示しておきたい情報を掲載する掲示板
というのも、それ以前に使っていたグループウェアには社内用の掲示板があり、その機能を移管したかった背景があります。掲示板には、例えば健康診断の告知など、全社員向けの情報を掲載しています。
他にも、スマホやモバイルPCが壊れてしまったときに、やり取りしたデータも全て消えてしまうと困りますよね。LINE WORKSですとストレージ機能(Drive)もあり、インターネット上にそのデータが保存されるので、それも導入理由のひとつでした。
▼データの保存に利用するストレージ機能
LINE感覚だからこそ、説明ナシでも組織に定着!
導入計画は、最初は営業に、次に製造部門に、という形で、2ヶ月間を予定していました。しかしなんと、営業部門には使い方の説明会を開催する必要もなく、スムーズに定着しました。
導入に伴って、営業担当の社員携帯を、iPhoneに全て切り替えました。これで営業メンバーは、移動中にも仕事を進められるようになりました。営業と製造のグループであったり、1日の仕事の進捗度合いを報告するグループを作り、LINE WORKS上でやり取りしています。
▼実際に利用されているグループ
ただLINEに慣れていない社員もいるので、社内で声がけをして、設定などは統一するように心がけています。例えば全体へのメッセージの受信通知のたびに携帯が鳴らないように、「通知オフ」設定を行う、といったことです。
LINE WORKSは、Googleカレンダーといった外部ツールとの互換性はないのですが、スケジュール機能はまだ活用しきれていませんし、コミュニケーションに特化して活用しているため、弊社ではそれほど問題はありません。
メーラーとしての機能は活用していて、これまで帰社後にパソコンで確認していたドメインメールをスマートフォンで閲覧できるようになりました。
▼LINE WORKS上で、通常メールの送受信も可能
コミュニケーションの「中抜き」で、伝言ゲームを削減
導入の成果として、情報共有のスピードが格段に上がりました。特に効率化されたのは、営業と製造の部門間のコミュニケーションですね。例えば製造の現場から、営業に確認してもらいたい書類を写真に撮って送るだけで、外出先の営業にすぐ相談ができます。
おかげで営業も社内に戻ったあとに、社内メールを処理する時間を減らすことができました。製造からも、営業のレスポンスが非常に速くなったと評判は上々です。
また、今はグループトークに関係者や責任者も入っているので、各部門の担当者と責任者に、一度で情報共有ができます。責任者同士でもやり取りができるので、無駄な伝言ゲームや報連相を減らすことができました。
トラブルなどが起こった際も、責任者からリアルタイムで指導ができます。他にも既読機能もありますので、メールと違ってきちんとメッセージが届いているのかどうかもわかります。
ITの活用が、印刷業界の長時間労働を救う
LINE WORKS以外にも、営業では名刺管理とSFAツールである「HotProfile(ホットプロファイル)」を導入しました。社内全体のIT化と効率化を、少しずつ進めているところです。
こうしたシステム導入以外にも、会議や朝礼を減らしたり、提出物などの事務的な業務を減らしたこともあって、遅い時間まで社内に残っている社員が少なくなりました。残業時間も、30〜40時間ほど削減されたんです。
このような改善を実施するために大切なのは、やはり社内の情報の見える化だと思います。まずそれがなくては、正確な戦略や施策を立てることができません。
ITツールは、そうした「情報の見える化」を行う上での大きな助けになるので、今後も積極的に導入していきたいですね。まだまだ社内にも変えられる部分があると思っているので、今後も取り組みを進めていきたいです。(了)
※ビジネス版Facebookの活用事例については、コチラの記事をご覧ください。