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開発優先順位づけにも使える たった一つの質問で顧客ロイヤルティを数値化するNPS®とは?【連載/第5回】
プロダクトマネージャーとして、お客様から製品に関するフィードバックを得る方法はいくつかあります。たとえば、顧客インタビュー、アンケート、カスタマーサポート、NPS(ネットプロモータースコア)などです。今回はNPSについてお届けします。
NPSとは、顧客ロイヤルティを計測するための指標で、製品に対して顧客が抱いている感情と対応策を定量化します。
NPSは、製品の導入や拡大が口コミマーケティングに大きく依存している場合、特に有益な仕組みです。顧客ロイヤルティを測定可能なスコアにして、短期間で収集できます。
本稿ではNPSで、顧客ロイヤルティを計測する方法、ソフトウェア開発の優先順位付けをする方法、を説明します。
NPSの計測方法
NPSアンケートは、次の1つの単純な質問で構成されています。
「友人や同僚に当社製品をどの程度勧めたいと思いますか?」
Atlassian 製品での表示例を以下に示します。
NPS アンケートで有意な数の回答を収集した後、回答を推奨者 (9–10、Promoters)、中立者 (7–8、Passives)、および批判者 (0–6、Detractors) の3つのグループに分類します。
次に、推奨者の割合から、批判者の割合を引いて NPSを算出します。 たとえば、100 人の回答者のうち、推奨者 40 人、中立者 25 人、批判者 35 人の場合、NPS は (40% – 35%) = +5% となります。
NPS の範囲は -100% から +100% です。
NPSにフィードバックをつけることが重要
NPSは、製品に対するお客様の感情を理解するために利用する最も重要な指標のひとつです。しかし、NPS は数値にすぎないので、お客様が当社の製品に満足または不満足な理由はわかりません。このため、スコア選択後にその理由についてフィードバックをお願いしています。
では、このフィードバックを実施可能な洞察へ変えるにはどうしたら良いでしょうか。
フィードバックを洞察に変えるステップ1:フィードバックの分類
私たちは毎月、数千件のフィードバックを受け取ります。お客様からのフィードバックを最大限に活用するため、フィードバックを具体的なテーマに分類します。
手作業でフィードバックを分類する作業は、あなたとチームに多大な価値をもたらします。というのも、分類する過程で、お客様を満足させることや不愉快にさせることを簡単に把握できます。ある特定の問題や機能に対する考え方が変わることさえあるかもしれません。
以下では、Atlassian のチームコラボレーション製品であるConfluenceに関して得た一部のフィードバックを例に挙げ、私たちがどのようにフィードバックを活用し開発の優先順位をつけているかを説明します。
フィードバック1:
CONFLUENCE に心酔しています。…生産性が天文学的に向上しました。…ありがとうございます。…貴社のプロダクトマネージャーと開発スタッフに感謝します。…素晴らしいアプリケーションを作りましたね。
NPS:10ポイント
経営管理者
フィードバック2:
便利な機能だが使いづらい。(適切な) フォーマット設定を行うことが困難。
NPS:5ポイント
経営管理者
フィードバック1は読んでうれしいですが、すぐに実施可能な新たな情報はまったく得られません。一方、フィードバック2にはお客様の具体的な不満が記されています。これは、スプレッドシート (またはデータベース) で以下のように表すことができます。
別のフィードバックを見てみましょう。
表の機能が不十分。列の切り取りと貼り付けができるようにする必要がある場合もある
NPSスコア:8
ソフトウェアエンジニア
このフィードバックには別のラベルを追加します。
さらにフィードバックを追加していきながら、必要に応じてカテゴリーやラベル付けを追加します。
ルールとして、好意的なフィードバックにはラベルを追加しません。たとえば、「テーブル機能は最高!でも Confluenceがもっと高速だったらいいのに」というフィードバックには「パフォーマンス」のタグ付けをしますが、「表」のタグ付けはしません。
フィードバックを洞察に変えるステップ2:結果の分析
多くのフィードバックを分類した後、取り組む価値があるものをどのように判断するのでしょうか。
Atlassianでは、「数量」と「お客様の感情(NPS)」を検証します。まず、各カテゴリーのフィードバック項目の数を数えます。
たとえば、以下のような結果を得たとします。
この他に情報がない場合は、パフォーマンスを指摘したコメント数が一番多いので、パフォーマンス改善が一番の案件であることがすぐにわかります。
しかし、本当にこれが取り組むべき最重要課題でしょうか。
パフォーマンスに取り組めば最大の価値をお客様にもたらすことができるのでしょうか。各カテゴリーの NPSスコアを計算することで、この疑問に答えることができます。
パフォーマンスへの指摘が多くありますが、そのNPSスコアは比較的高い値です。そのため、すべてのリソースをパフォーマンスに投入した場合、全体的な NPS スコアはあまり変わらない可能性が高いといえます。同様に、新機能の追加もNPSスコアが高いので目立った変化をもたらさないでしょう。
しかし、表の機能不足に不満な人と、ユーザビリティの低さに不満を持っている人は多くいるようです。
(メモ: ちなみに、サンプル数が小さい時は結論を導き出す時に注意が必要です。上記の数値は単なる例であり、大きな誤差があるかもしれません。)
フィードバックを洞察に変えるステップ3:優先順位を明確にする
ここまでのステップでフィードバックを分類し、最も効果の大きい案件を特定しました。お客様から直接得たフィードバックは非常に価値のあるものですが、ひとつの情報に過ぎないので、他の顧客データ (調査、製品フィードバック、サポート問い合わせ、製品を乗り換える人からのフィードバックなど) と徹底的に比べましょう。その上で、解決策を見つけ、それを実装しましょう。計測可能なスコアと顧客フィードバックの組み合わせを使っては、プロダクトマネージャーにとってはまさに宝です。
まとめ
今回はNPSの計測方法についてお伝えしてきました。まずは「友人や同僚に当社製品をどの程度勧めたいと思いますか?」という質問と共に製品にフィードバックをしてもらいましょう。
その上で、下記のステップを経てフィードバックを実施可能な洞察に変えます。
- フィードバックを分類する
- 各分類のフィードバック数とNPSの数値から改善すべき事項を明確にする
- NPS以外の分析結果と比較しながら、開発優先順位をつける