- コラボレーター
- 加藤 章太朗
ユーザーの声、本当に拾えてる?ユーザーテストの重要性と3つの実践方法
「ユーザーの声を拾え」という言葉はよく聞きますが、実際にどのような方法でユーザーの声を拾えばよいでしょうか。データ分析からユーザーの声を推測する方法もあれば、実際にユーザーと話して声を拾う方法もあります。
今回は、ユーザーの声を拾う手法の1つである「ユーザーテスト」の実践方法を整理しました。
- ユーザーテストとは?
- なぜユーザーテストをやるべきか
- ユーザーテストによって仮説を導き出した例①
- ユーザーテストによって仮説を導き出した例②
- ユーザーテストの実践方法その1:コンサルティング会社に発注する
- ユーザーテストの実践方法その2:リモートユーザーテストを活用する
- ユーザーテストの実践方法その3:自分で実施する
ユーザーテストとは?
ユーザーが実際にサービスを使っている姿を観察し、ユーザーの声を拾い課題を抽出する手法です。特徴は、サービスを使う人の反応を実際に見て、解釈をして改善に繋げていくことです。
ユーザーテストでなくても「データ分析」でもユーザーの声を拾うことはできます。例えば「WEBサイトのこのボタンを押したユーザーが◯%だから、このボタンを変えよう。」とか「このページの閲覧数は◯PVであまり見られていないから改善しよう。」といったことです。
一見、ユーザーの声を拾うのに、データ分析の方が手軽にできそうですが、ユーザーテストをやるべき理由があります。
なぜユーザーテストをやるべきか
データ分析の方が手軽にユーザーの声が拾えるように思えますが、実はデータ分析からは「こうしたら改善する」という「仮説」を導き出すことは難しいです。
例えば「50%のユーザーがページAを見た後に離脱している」というデータが分かったとしても、データからは「なぜ離脱しているのか。そしてどうすれば離脱しないか」という「仮説」を導き出すことはできません。
▼参考:株式会社ポップインサイト池田さん
一般的にサイト改善と言えば、アクセス解析を行ってそこから抽出される数値データをベースに行うことも多いかと思います。ただ、データだけを見ても「次に何をすべきか」という明確な答えは分からないことが多いんです。
「このページから離脱している」ということは分かっても、離脱している理由や、それをどうしたら防げるのか、ということまでは判断できません。
一方でユーザーテストを行えば、実際に顧客に質問をすることができるので、顧客の声が耳に入ってきます。すると、改善するための仮説を考えることができます。
実際の例を見てみましょう。
ユーザーテストによって仮説を導き出した例①
あるレーシックのサイトで執刀医の情報を追加しただけで、コンバージョンが数倍になった例があるそうです。レーシックを検討している人は怖いという感情が強く「誰が切るか?」という情報はとても大切
。しかし、レーシックを実施する側は普段から手術をしているので、ユーザーほど怖いという感情を気にしておらず、執刀医の情報を載せていなかったそうです。
ユーザーテストをした結果「なんか怖い」「誰が切るか分からなかった」というインサイトをユーザーから得ることができ、「執刀医の情報を載せればいいんだ」という仮説を持つことができた例となります。
このケースの場合、データ分析をしていても「コンバージョン率が低いな、なぜだろう」となるだけで「執刀医の情報を入れるとコンバージョンが上がる」という仮説は思いつかない可能性が高いです。
▼参考:株式会社ポップインサイト池田さん
例えばあるレーシックのサイトで、それまで載っていなかった執刀医の情報を載せただけでコンバージョンが数倍上がった事例があります。レーシックって目を切られるわけなので、怖いじゃないですか。
だから「誰が切るか」ということはもちろん気になると思うのですが、元のサイトには「権威が指導します」としか書いていなかったんです。
自分がレーシックを検討する立場になって冷静に考えれば、執刀医の情報が欲しいということは当たり前です。でも、WEBサイトを作る立場になるとそういった情報が抜けてしまうことがあるんですね。
ユーザーテストによって仮説を導き出した例②
某大手銀行がWEBサイト上で「低い金利」を全面に押し出し、マイカーローンの申込みを増やそうとしたそうです。しかし、思ったようにコンバージョンが上がらなかった。
そこで、ユーザーテストを実施したところ、収入が少ないボリューム層が「そもそも自分が借りられるのかな」という不安から離脱していたことが分かったそうです。
そして、このユーザーテストから「金利が低いことをアピールするのではなく、借りれられることをアピールすればコンバージョンが上がるのではないか」という仮説を得られたそうです。
このケースもデータ分析のみだと「なぜコンバージョンが低いか」や「どう改善したら良いか」は見当がつかなかった可能性が高いです。
▼参考:株式会社ビービット宮坂さん
「WEB経由でのマイカーローンの申込みを増やす」という某大手銀行のプロジェクトがあります。競合に比べて良い金利を提示できることが強みだったので「金利を前面に出せば勝てるだろう」という仮説を立てました。
ただ、ユーザーが操作する画面の動きを見ていると、収入が多い層は金利を比較してその大手銀行でローンを申し込む。一方で収入が少ない層は、金利を見るんですが、不安そうな動きを見せ多くが離脱しました。
この銀行は地元ではナンバーワンで、学生時代に頭の良かった子が就職するようなイメージの会社なんです。そのため収入が少ない層にとっては敷居が高く「そもそもおれ借りられるのかな?話を聞くだけ無駄なんじゃないか」と思われていることが分かりました。金利が低いことに関心を持つ以前に、そもそもローンを組めるかどうかが心配だったんです。
そのため「まずは5秒診断」というボタンを作り、ボタンを押して年齢、前年度年収、借金、を入力することで、ローンを組めるか組めないか簡易的に診断できるようにしました。その次に「このまま仮審査にお進みになりませんか?」と表示したら、次々に審査ボタンへ進んでいったんです。結果として、マイカーローンのWEB経由の申し込みが6倍ほどになりました。
では、実際にどのようにユーザーテストを進めたら良いでしょうか。
ユーザーテストの実践方法その1:コンサルティング会社に発注する
コンサルティング会社にユーザーテストを発注する方法があります。
1.ターゲット属性の被験者をコンサルティング会社に呼び、アイトラッキングシステムなどを用いて、ユーザー行動を観察する
2.ユーザー行動をもとに仮説を立てる
〈仮説の内容〉
- KPI(成果指標)
- ターゲットユーザー像
- ユーザーをゴールに導くためのシナリオ
- サイト構造
- コンテンツ強化方針
- 機能要件
3.仮説を元にプロトタイプを作る
この1〜3を繰り返し、最終的にはコンバージョン率を改善する成果物を作るコンサルティングです。
特徴としては、プロトタイプの設計・作成、実際のユーザーテスト、までワンストップで提供してもらえる点です。また、被験者も100万人規模のパネルから選択します。ただし、その分価格は数百万円〜と高額で期間も1〜3ヶ月はかかります。
▼コンサルティング会社:株式会社ビービット
ユーザーテストの手法その2:リモートユーザーテストを活用する
海外を中心にリモートユーザーテストという手法が広がっています。リモートユーザーテストとは、自宅でユーザーに自分の行動を録画してもらうタイプのユーザーテストです。
▼リモートユーザーテスト
被験者を会社に呼ぶ必要もないので、手軽に実施することができ、低コストでスピーディーな点が特徴です。コストは数万〜十万円程度で、期間も2〜3週間でできます。
ただし、コンサルティングと比べ、被験者は1万人規模から選ぶので多少精度は落ち、プロトタイプの作成などは手伝ってもらうことはできません。
ユーザーテストの実施と分析を手軽に実施したい人にお勧めです。
▼リモートユーザーテスト提供会社:株式会社ポップインサイト
ユーザーテストの手法その3:自分で実施する
ユーザーテストを自分で実施をしてしまう手もあります。被験者を集めたり観察や分析をお願いすることができないので、全部自分でやらなければなりません。
ただし、当然ながら他の手法より低コストでユーザーテストを実施できます。何かしらの方法を使って被験者を集めるのに多少コストがかかる程度です。
UXコンサルティングを実践する会社にインタビューをした際に、バイトルなどの求人媒体でユーザーテストの被験者を集めてる例を聞いたことがあります。条件を指定すれば案外集まるようです。
まとめ
データ分析もユーザーテストもユーザーを理解する手段として有効です。その中でも改善の仮説を持ちたい場合はユーザーテストがお勧めです。紹介した3つの方法から是非試してみてください。