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日本全体のIT力底上げを目指す新しい共創のカタチ。ゆめみの「内製支援化サービス」とは
本記事は 、2021年12月29日よりTechCrunch Japanに掲載されていた記事を、権利者の許可のもと再編集し、アーカイブ掲載しています。
IT人材の需要が加速し、人材の争奪戦が始まっている。「少ないパイの奪い合いをしていても業界の発展はない。今こそ業界の人間が力を合わせて、日本全体のIT力の底上げをすべき」。そう語るのが、株式会社ゆめみ取締役の工藤 元気(くどう げんき)氏だ。
「アウトソーシングの時代を終わらせる」をミッションに掲げるゆめみでは、スタートアップを対象にした内製化支援を展開する。
今回は工藤氏と、同社でプロジェクトマネージャーを務める西島 康之(にしじま やすゆき)氏に、詳しいお話を伺った。
スタートアップが直面する技術的負債、属人化を解決。すぐれた企業文化をつくる支援を
2000年の創業以来、BtoC、BtoBの事業を幅広く手がけるとともにサービス業、消費財メーカー、不動産、金融、通信など幅広い業界のDX・内製化支援に取り組んできたゆめみ。
2015年からは大企業だけでなく、スタートアップを対象に積極的な内製化支援に取り組んでいる。その理由を工藤氏はこう語る。
現在、日本の大企業でも事業領域に関わるコアシステムは内製化すべきだとの認識が広がり、私どももその支援に注力しています。しかしIT人材が決定的に不足している日本において、それが当たり前になるにはもう少し時間がかかります。
それより喫緊の課題は、汎用性のあるシステムにSaaS(Software as a Service)をもっと活用し、業務を効率化すること。そのためには日本企業が使いやすい、優れたSaaSがもっと増えなくてはなりません。まずはそのようなスタートアップの支援が何より重要だと考えているんです。
とりわけゆめみが支援に力を注ぐのは、シード期やシリーズAを過ぎ、これから社員を増やし、成長を加速させようとしている企業だ。このようなスタートアップが、今抱えている課題は、大きく3つ挙げられるという。
まず1つ目は、技術的負債です。多くのスタートアップでこの時期、機能追加や新しいニーズに応える必要が生じます。そのためのリファクタリングが必要でも社内のマンパワーが足りず、優秀な人材の採用も難しい。そのため、いつまでも技術的負債が解消できない、といった悩みを抱えているところが多いんです。
株式会社ゆめみ 取締役 工藤 元気(くどう げんき)氏
2つ目が、技術的負債が解消できない要因ともなっている属人化。スタートアップが成長し、組織化されていくなか、創業時にプロダクトのコアな部分を担っていたCTOなどはマネジメントに回ることになり、自ら手を動かすことができません。
副業やフリーランスのエンジニア、SESに内部のプログラムを修復してもらうのもためらいがあるでしょう。
その結果、プロダクトの中身を把握している人間が減り、技術的負債がますます解消できなくなる、というわけだ。
そして3つ目の課題は、志を同じくし、信頼できる仲間から始まったベンチャーが組織化していくなか、いかにその会社らしいエンジニアリング文化を構築していくか、です。
スタートアップが直面する課題を乗り越え、大企業のデジタルサービス開発 を豊富にこなしてきた経験が強み
これら3つの課題は、少ないリソースで注力すべきことが山ほどあるスタートアップが、自ら解決するのは難しい。そこでスタートアップの事業や業務内容を客観的に見たうえでの俯瞰的なアドバイスや支援が有効となる。そのうえで、ゆめみにはとくに2つの強みがある。
まずはもともと学生ベンチャーから始まり、スタートアップが直面する課題を自ら乗り越え、現在、社員250人の企業へと成長してきたこと。
また2014年に新たなスタートアップを2社輩出していること。ゆめみは単なるコンサル会社ではなく、事業をゼロから立ち上げ、組織化してきた経験とナレッジをもっている。そのため、まずは事業会社のスタートアップと同じ視点で課題を共有し、解決策を考え、ともに最後まで汗を流す姿勢が身についているのだ。
さらに、これまで大企業のデジタルサービス開発 業務を豊富にこなし、さまざまな業界やタイプのアプリやシステムの開発に携わってきたことも大きな糧となっている。
誰もが知っているグローバル企業とともに、当時の最先端のテクノロジーを使ったO2Oアプリを開発したり、製造系メーカーとスマホを使ったIoTのオープンイノベーションなどに取り組んだりもしてきました。小売、流通、飲食、製造系メーカーなど多彩な分野で積み重ねてきた試行錯誤こそ、ゆめみの大きな武器です。(工藤氏)
現在、社員250人のうちPM(プロジェクトマネージャー)が37人、エンジニアが170人。ゼロイチが得意な人、企画・サービスデザインが得意な人、運用開発や業務改善を得意とする人、社内にさまざまな業界や職種、技術的な強みをもった人材がそろっている。
そんな同社の内製化支援について、大企業向けのコンサルファームから転職し、大企業のO2Oアプリの開発などに携わってきたPMの西島康之氏は次のように語る。
事業会社、それもスタートアップの場合、1度大きなサービスを立ち上げるとその後、ゼロからサービスを立ち上げる機会はそうありません。
でもゆめみ の場合、サービスの立ち上げに何度も関わることができ、圧倒的に早いスピードで経験値を回せるのです。ゆめみにはそのような経験値の高いPMやエンジニアがたくさん在籍しています。それも多様な職種や強みをもったメンバーが揃っているので、お客様の状況や課題にあわせて最適な人材を調整し、提案することができるんです。
より踏み込んだ提案と思いもよらない付加価値で、スタートアップの成長を目指す
ゆめみでは、「人手が欲しい」といった単純な依頼に対しても、常にそれ以上の付加価値をつけて提供することを心がけているという。スタートアップの支援においても、ゆめみの社員は、そのスタートアップの社員になったつもりで、サービスの改善や付加価値向上を徹底的に考え、提案する。
多くのスタートアップは課題が生じた時、単純に人を入れることで解決しようとします。でも、課題の背後に構造的な問題がある場合、そこを抜本的に解決しなければ、いずれまた問題が表面化したり、属人化につながったりします。
そのような場合、私どもはその会社の今後の成長を考えたうえで、より踏み込んだ提案をさせていただきます。場合によってはサービスそのものの練り直し、そのための市場調査やユーザーインタビューから提案させていただくこともあります。(西島氏)
たとえば、最近取り組んでいる「アタラシイものや体験の応援購入サービス『Makuake』」を展開する、マクアケへの支援。もともとはエンジニアリソースの不足を補完するために声をかけられ、開発支援を始めた。
しかしそのプロセスで、ゆめみ側が感じた課題の解決策を提案するうちにマクアケからの信頼が高まった。その結果、今では中長期の事業戦略を共有したうえで、ともにサービスの付加価値を高め、ビジネスとして成長させていくための議論をするまでの関係になっている。
株式会社ゆめみ プロジェクトマネージャー 西島 康之(にしじま やすゆき)氏
人事や採用、組織運営のノウハウやスキル、企業文化の醸成まで徹底的に支援
スタートアップには人材リソースだけでなく、人事や採用、組織運営面、また規模が大きくなるにつれて重要になる企業文化に関するノウハウも不足している。ゆめみは常に組織として、チームで動くことを重視しており、個人のノウハウや技術を会社の共有知にすべく業務を標準化し、若手が即戦力として活躍できる仕組みも確立している。
同じ技術を扱っていても、レビューや報告会のやり方、ミーティングの運営の仕方などのちょっとした工夫が積み重なって、開発力の大きな差になります。そのようなノウハウを伝え、私どもとのやりとりを通じて何か気づきを得ていただくことも、スタートアップに対する大事な支援だと考えています。(工藤氏)
ゆめみは、営業やコミュニケーション、事務作業のスキルなどもすべて技術と位置づけ、常に改善を目指し、そのアウトプットを全社で共有している。そのためほぼ毎日、月に100回以上もの勉強会を開いている。さらにこの勉強会を、外部の企業に開放することも考えているという。
そんなゆめみは2018年にアジャイル宣言をし、世界でも革新的な組織運営を始めた。全員CEO制度のもと、あらゆるメンバーが意思決定をできるようにし、毎日のように会社の制度がアップデートされている。
日本が真にDXを実現するには、単にテクノロジーを導入するだけでなく、DXを経営の根幹にすえ、大企業の組織や文化そのものを変革する必要があります。
でも大企業がそれらを一気に変えるのは難しい。そこでまずはゆめみが先陣を切り、スタートアップのみなさんとDX時代の新しい企業文化、組織を広げていく。そのなかで真のエンジニアリング思想と技術、ノウハウをもった人間が育つことで、日本のIT力が底上げされ、日本全体のDXにつながることを願っています。(工藤氏)
ゆめみをハブに会社の垣根を越え、みんなで成長し、日本を最高に〝テックな国〟に
最後に、内製化支援サービスについての意気込みを聞いた。
私はとにかく日本を最高に〝テックな国〟にしたいんです。そのためにもBtoBの SaaSをつくっているスタートアップのみなさんと一緒に日本の産業界、大企業のDXを進めたい。
BtoCサービスを展開しているスタートアップとともに、生活者が無意識に先進のIT技術を使い、それによって便利で豊かな生活が送れる社会をつくりたい。そのためにお役に立てることは、なんでもやります(工藤氏)
ゆめみという会社は、技術で社会をよりよいものにしたいと考えている人たちの、一種のコミュニティだと思っています。ゆめみを通して、会社の垣根を超えた人たちが技術やノウハウを磨き、みんなで成長しあう。それによってこの国に、ますますいいサービスやプロダクトが増えていく。そんないい循環が生まれることを願っています。(西島氏)
スタートアップ向けの内製化支援のゴールは、その企業が自社ですべてを開発できるようになり、ゆめみの伴走を必要としなくなることだ。もちろんテクノロジーの進化とともに新たな課題が生じ、ゆめみも成長を続けていく。ゆめみを必要とする企業は、今後も新たなフィールドでどんどん現れるだろう。
「アウトソーシングの時代が終わる」その先に、どんな〝テックな国〟が実現しているのか。今から楽しみだ。