【事例4社】新時代のリーダーが知るべき「パフォーマンス・マネジメント・サイクル」とは
一般的に「マネジメント・サイクル」とは、企業の目的を達成するために、経営者やリーダーが実行するべき業務プロセスのことを指します。
その代表例が、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を繰り返すことで、業務を改善する「PDCAサイクル」です。SELECKでは過去に、PDCAを回す際によくある課題、とその解決法の事例を紹介しました。
PDCAサイクルを回す時に「ありがちな」ハードルとその解除法【事例8選】
しかし一方で、ピープルマネジメントを考えた際に、あくまでも「業務」にフォーカスしたPDCAサイクルだけでは足りないのが事実です。
米ギャラップ社の調査結果によると、
・従業員のエンゲージメントを左右する要因の70%はマネージャーにある
・従業員の退職の50%は、マネージャーに原因がある
と言われています。つまり、エンゲージメントが高く、離職者の少ない組織をつくるためには、マネジメントの課題を解決することが不可欠なのです。
そこで今回は、組織に人材を定着させ、パフォーマンスとエンゲージメントを向上させる「パフォーマンス・マネジメント・サイクル」について解説します。
パフォーマンス・マネジメント・サイクルとは
パフォーマンス・マネジメント・サイクルとは、メンバー1人ひとりの目標達成を継続的に支援することで、組織やチーム全体のパフォーマンスを高める一連のプロセスのことを指します。
日本ではまだそこまで馴染みがない言葉ですが、海外では下図のように定義されていることが多いです。
具体的には、下記のようなステージが定義されています。
<プランニング(計画)>
1人ひとりが組織の目標達成のために何をすべきなのか、どう貢献するのか、期待値の擦り合わせを行う。
<モニタリング(観察)>
継続的にパフォーマンスを確認し、適切なフィードバックを行う。状況が変化していれば、目標を修正する。
<レビュー&向上>
目標に対する進捗を確認し、より良い結果を出すための効果的なレビューを行う。
<計測・評価>
目標達成度合いを計測し、良いパフォーマンスを称賛し、評価をする。
このように、パフォーマンス・マネジメント・サイクルにおいては「目標設定→目標達成のための継続的な支援→フィードバック」が繰り返されます。
変化の早い現代においては、このサイクルをいかに短い期間で効率的に回し、組織やチームのパフォーマンスを向上させるか、が重要です。
そこでここからは、各ステージによってどのような方法が効果的なのか、実際の企業の事例を見ていきたいと思います。
「ギリギリ届くか届かないか」の目標を設定し、1on1で伴走
〜半年のサイクルで、新卒の目標を設定。メンターが1on1などを通じて継続支援〜
マッチングアプリ「タップル誕生」を運営する、株式会社マッチングエージェントでは、新卒入社のエンジニアの目標設定に際し、まずはメンターのサポートの元で、「自分が何をすべきか」をツリー化。
▼実際に作成したツリー
次に同社オリジナルの目標設定シートを用いて、事業・技術・組織という3つの貢献軸の中でウェイトを定め、半年の目標を設定しました。
そこから隔週の1on1などを通じてメンターが継続的な支援を行うことで、1年後には周囲の同期に先駆けて少人数チームのリーダーができるレベルまで到達できたそうです。
メンターの島谷さんはこう話します。
メンバーの成長のためには、いかに「ギリギリ届くか届かないか」という目標を設定できるか、ということが大事だと思っています。
いかにコンフォートゾーンから抜け出して、ストレッチゾーンに入るか、ということですね。ただパニックにはならないように、上手くそこを導いてあげるのがメンターの役割です。
このように同社では、半年間の目標を設定し、その達成のためにメンターが1on1を通じた継続的な支援を行うことで、メンバーの成長を実現しました。
詳細はこちら:メンティが「自分で考え、納得する」ことが大切。二人三脚で行う目標達成プロセスとは
「自分がどうなりたいのか」を深掘りする、スターバックスの目標設定
〜4ヶ月ごとの面談で、内発的動機を引き出す目標設定とフィードバックを実施〜
日本全国に1,400以上の店舗を展開する、スターバックスコーヒージャパン。同社の店舗で働く人は、社員・アルバイト問わず「パートナー」と呼ばれています。
そのパートナーに対しては、目標設定とフィードバックを行う人事考課面談が、4ヶ月ごとに実施されています。
その際に記入するシートのコンセプトは「スターバックスで働くことを通じて、あなたの人生の目標にどう近づくか」です。「個人のなりたい姿(成長目標)」と4ヶ月の振り返り、そして次の目標を記入した上で、パートナーは面談に臨みます。
このようなプロセスを通じて、1人ひとりの「内発的動機(※)」を引き出しているのです。
※自身の内側から興味・好奇心が沸きおこり、それにより達成感、満足感、充足感を得たいと思うこと。報酬や評価といった外発的動機の対義語。
同社で4店舗のストアマネージャー(店長)を経験し、現在は人事を務める佐藤さんはこう話します。
面談を繰り返して行うことと、人事考課と人事考課の間の期間にフィードバックを繰り返すことで、徐々に本人も「こういうことが自分のやりがいかも」と気が付いてくるんです。
やはり、できるだけ本人のやりたいこと・チャレンジしたいことを明確にして、その機会を提供する方が、1人ひとりの成長につながると思っています。それによって、「自分で経験から気付きを得ようとする」姿勢が高まるんですよね。
自分が「やりたいです」と言った瞬間、その仕事は「自分事」になります。すると仕事を進めながらも、上手くいったこと・いかなかったことをきちんと内省するようになり、さらに深い気付きを得て、成長につなげることができます。
このようにスターバックスの店舗では、4ヶ月ごとに目標設定とフィードバックのサイクルを回すことで、パートナーのモチベーションを引き出し、あの素晴らしい接客につなげているのです。
詳細はこちら:カギは「内発的動機」にあり!スターバックスの店舗で、主体的な人材が育ち続ける理由
1on1を通じてモチベーションを高め、チームのパフォーマンスを最大化
〜半期ごとに事業目標から落とし込んだ個人目標を設定し、月1の1on1で振り返り〜
株式会社Gunosyが開発・運営する、女性向け情報アプリ「LUCRA(ルクラ)」を開発・運用するチームでは、半期ごとの目標設定を実施しています。
その際には、事業目標からブレイクダウンする形で、定量と定性(50%ずつ)の個人目標を設定。
事業から個人へと目標を落とし込むことで、「個人として頑張った結果が、チームや事業に良い影響を与えている」という繋がりを感じ取れるようにしているそうです。
さらに月に1回のペースで、目標に対する振り返りを1on1にて実施。良かったこと・改善したいこと・新たに取り組んでいきたいこと、の3つを確認しています。
同事業部のマーケティング責任者を務める、真武さんはこう話します。
僕は、マネジメントで一番重要な仕事は、結局のところメンバーのモチベーションコントロールかなと思っていて。
進捗管理はもちろん前提になりますが、個々人がいかにやる気を出して、気持ちよく仕事をできる環境を作れるかが、組織のパフォーマンスに一番影響すると思います。
そこで、チームのパフォーマンスを最大化するために、社員だけでなくアルバイトメンバーとも1on1を行っています。
このように、事業目標と個人目標のつながりを明確化した上で、1on1を通じてその達成を支援することで、チームのパフォーマンスを高めています。
詳細はこちら:事業目標は「ストーリー」で伝える。目的別の1on1を実践する、チームマネジメント術
パフォーマンス・マネジメント・サイクルを効率的に回すには…
上記の事例からもわかる通り、パフォーマンス・マネジメント・サイクルを効率的に回すには
①1人ひとりのモチベーションが引き出されるような目標設定を行う
②1on1による対話と振り返りを通じて、目標達成を継続的にサポートする
③結果や行動に対しての、適切なフィードバックを行う
ことが重要です。
※なお、1on1運用のコツや導入事例に関しては、こちらの解説記事をご覧ください。
ちなみにSELECKの運営会社であるRELATIONS株式会社でも、四半期に一度の目標設定、2週間に一度の1on1、四半期に一度のフィードバック、というマネジメントサイクルを徹底的に回しています。
詳細はこちら:組織はなぜ変われないのか? 経営者こそ「360度フィードバック」を受けるべき理由
マネジメントに課題を感じているマネージャーの皆さん、ぜひ、パフォーマンス・マネジメント・サイクルを取り入れてみてはいかがでしょうか。