- 株式会社高島屋
- クロスメディア事業部 グループマネジャー
- 長峰 崇
メール経由での売上が33%増!高島屋の60以上のシナリオを運用するMA施策とは
〜より顧客ニーズと合ったコミュニケーションを!高島屋オンラインストアにおける、マーケティング・オートメーション施策の事例をご紹介〜
BtoCのマーケティング施策においてポイントとされるのは、1人ひとりの顧客特性に合わせた施策の最適化だ。
1997年にECをスタートし、ギフト商材の販売を中心に成長を続けてきた高島屋オンラインストア。
同ストアにおいても、2015年にBI(ビジネス・インテリジェンス)ツール、2017年にMA(マーケティング・オートメーション)ツールを導入し、施策の最適化による顧客のLTV(ライフ・タイム・バリュー)向上に取り組んでいる。
※BIツールについては、こちらの記事をご覧ください。
ビッグデータの流行で再注目の「BIツール」とは?機能・活用方法を解説!
MAの運用に際しては、取り扱う商品の特性上、顧客属性・商品カテゴリだけでなく、ギフト用途・自分用途という「購入目的」が要素として加わるため、その「シナリオ」数は60を超えるそうだ。
そして、それらのシナリオ運用を行った結果、僅か3ヶ月間で、メール経由での売上を前年比で33%以上アップさせることに成功したという。
今回は同社にて、オンラインストアの運営を率いる長峰 崇さんに、MA施策の詳細とその成果について、お話を伺った。
データの可視化で、LTV上昇のカギは「2回目の購入」だと判明
弊社のECは、楽天市場が開設された1ヶ月後にあたる1997年6月にスタートしました。
当初は百貨店と専門店からなるモール形式でしたが、お中元・お歳暮を中心とするECサイトへ姿を変え、社内的にも「ギフトナンバーワンサイトを目指そう」というスローガンの下、運営を行ってきました。
▼高島屋オンラインストアのTOPページ
ECサイトの売上も二桁成長を続けており、6年前と比較すると2.5倍以上になりました。
その運営における重要指標のひとつには、「1人ひとりのお客様に1年でどれだけご購入いただいたか?」という年間LTVを掲げています。
そして、LTVの改善のために重要だと考えているのが、継続率の向上です。とりわけ「2回目の購入」に注目しています。
というのも、2015年にサイトをリニューアルした際、それまでエクセルを使って手作業で行っていたデータ集計を効率化し、また、分析を深掘りしようと、BIツール「QlikView(クリックビュー)」を導入したんです。
そこで購買データが可視化されたことで、「母の日やバレンタインデーは新規顧客のシェアが高い」「ただどうしても、その1度きりのご購入で途切れてしまうケースが多い」ということがわかってきました。
一方で、「ギフト用途のみ、自宅用途のみの購入顧客に比べ、ギフト・自宅用途を併用して購入する顧客の継続率が高い」ということも見えてきたんですね。
そのため、1度きりではなく、2度目、3度目と購入を継続していただくためのコミュニケーションを行う必要があると考えました。
データ分析は効率化されても、施策の実行は手作業のまま…
分析データを踏まえて、顧客属性や購入実績に応じて、セグメントを分けて送ってみたところ、コンバージョン率は高くなりました。響くお客様に響く内容を響くタイミングで送るわけですから、当然ですよね。
ただ、施策の実行の度に、メール配信名簿をシステム運用会社に抽出依頼して、配信システム上に送信設定したり、コンテンツを配信単位で制作する必要がありました。
そのため、手作業が大変で、だんだんみんな辛くなり、結局、セグメント分けやコンテンツがざっくりとしたものになっていってしまって(笑)。
データが可視化されて課題が浮き彫りになってきたのに、施策の実行が滞ってしまうのはなんとしても避けたい。そこで、シナリオ作成という形で、施策の実行を自動化できるMAツールの導入を検討しようという話が加速しました。
MAツールを導入し、60を超えるシナリオの運用をスタート
そこで、今年の5月末にMAツール「Probance(プロバンス)」を導入しました。
Probanceは、機械学習を搭載しており、顧客ニーズを予測し、パーソナライズされたコミュニケーションを実現するMAツールです。
お客様の行動に応じた「シナリオ」を設定しておくことで、お客様ごとに、最適な情報を、最適なタイミングで、最適なチャネルで、自動的に届けることができます。
導入後は、「配信するメールの目的やタイミング」「顧客属性」「購入情報」「サイト閲覧履歴」「紹介する商品カテゴリ」などの観点から、実際にシナリオを作成していきました。
さらに私たちの特徴は、これらの要素にギフト用途、もしくは自分用途という「購入目的」が加わることです。
例えば、お酒を飲めないお客様に、父の日のギフト用途でお酒を購入されたからといって、お酒をレコメンドするコンテンツを送るのは意味がないですよね。
そのため、この「購入目的」という要素も含めると、シナリオは一段と複雑になり、結果的に60を超えるシナリオを走らせることになりました。
顧客行動があった日からの経過日数を踏まえてメールを送信
例えば、「オンライン会員に登録してメール配信の許諾を行った」という顧客行動があった日から起算し、経過日数に応じて発動するシナリオがあります。
具体的には、まず、購入意欲の高いであろう登録翌日には、幅広い方々に興味を持っていただけそうな、人気ランキングをご紹介しています。
▼オンライン会員に登録した翌日に送られるメール
その後、商品をご購入いただいた方へは、その購入目的や商品カテゴリに応じたレコメンドを購入日の7日後と14日後に送ります。
さらに、顧客行動があってから一定期間を経過しても購入がない場合は、送料無料のクーポンを配信しています。「◯◯日以上、購入がない場合は、その後の継続率がかなり低くなる」ということが分析からわかっていたからです。
そして、クーポン有効期限の7日前と1日前には、有効期限のアラートを自動で通知しています。
▼一定期間を経過しても購入のない顧客に送付されるメール
そして、最も力を入れているのが、お中元・お歳暮、母の日・父の日などギフトイベントでの施策です。
ここでは、「前年に購入実績のある既存顧客」「直近180日以内に購入実績のある新規顧客」「ハウスカードや友の会を通じた決済履歴のある重点顧客」など、購入実績を踏まえて、コンテンツを最適化させています。
まず、購入実績がある場合は、前年と同程度の金額で購入されることが多いんですね。
そのため、前年に5,000円程度でお中元を購入されているお客様には、「5,000円で売れているお中元人気ランキング」のコンテンツをお届けします。
一方で、前年購入されていないお客様には、価格帯フィルタを外した人気ランキングをメールでご紹介しています。
加えて、お中元のマナーを知っていただくようなお役立ちコンテンツや、「1万円以上で購入するとバッグがもらえる」といったインセンティブ情報を提供しています。
▼前年での購入実績のない顧客へ送付されるメール
メール経由での売上を、33%上昇させることに成功
Probance導入後の3ヶ月間で、一通りのシナリオを試しました。
その結果、メール経由での数値としては、前年同時期対比で、サイト訪問数が39%、決済件数が27%、売上が33%向上するという成果があがりました。
また、シナリオの運用によって、メール経由での売上が増えた一方で、一律の情報を一斉に送信している総合メールマガジン経由での売上は減ってきているんですね。
これは逆にいうと、メール配信の最適化が進んできているとも言えるので、そろそろ、一斉送信系のメールは回数を減らすなど、見直しても良いのではないかと考えています。
コンタクト母数の増幅や、サイトの最適化も進めていく
今後は、シナリオの分岐や、メールの配信やタイミングや頻度、コンテンツの改善など、より細部の施策をチューニングしていきたいと考えています。
加えて、ソーシャルログインとLINE@を活用して、チャネルを増やすことでコンタクトできる顧客母数を増幅させることや、サイト訪問時に表示する情報のパーソナライズ化も進めていきたいですね。
また、「検索広告を経由したサイト閲覧者は、実店舗への来店率が高い」というデータもあります。そのため、実店舗へのご来店時に、オンライン上での行動履歴を踏まえたよりパーソナルな接客を行うことができればと考えています。
また、サイト非利用のお客様にはEC利用を促すレシートクーポンを発行するなど、よりオムニチャネル施策を具現化していきたいですね。(了)
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