• 株式会社ピケ
  • 代表取締役
  • 坂本 蓮

4万リツイートの罠!「妄想のカスタマージャーニー」から脱却した、仮説検証の進め方

〜たった一晩でプロトタイプを作成し、Twitterに公開。1万人の事前登録ユーザーへのアンケートと顧客インタビューからインサイトを得る、仮説検証の進め方とは〜

スピーディーなプロダクト開発を進めるためには、どのような仮説検証を進めていくべきだろうか?

2018年5月12日、ニーズ検証のために行ったツイートが約4万リツイートのバズを生み、そのわずか2ヶ月後に正式リリースした、グルメアプリ「Dish(ディッシュ)」。

▼サクッとランチが決まるグルメアプリ「Dish」

現在地からサクッとランチが決まる同アプリは、Twitterでの大バズから2ヶ月で高速リリースを果たした一方で、その過程の仮説検証において、数々の失敗を経験したそうだ。

例えば、Twitterでのプロトタイプ公開で約1万人の事前登録ユーザーを獲得したにも関わらず、そのニーズを検証すると、結局は自分たちが「実在しない顧客」に向けて「妄想のカスタマージャーニー」を引いていたことに気付かされたのだという。

この現象を、代表取締役の坂本 蓮さんは、プロダクトマーケットフィットならぬ「Twitterマーケットフィット」だったと話す。

さらに、プロダクト開発を進める中で、「ユーザーインタビューとユーザービリティテストは同時進行にしない」など、仮説検証を進める上での学びを数多く得たそうだ。

今回は坂本さんに、Dishの仮説検証における失敗とそこから得た学びについて、詳しくお伺いした。

Twitterでプロトタイプを公開し、約4万リツイートの大バズに!

僕は新卒で入社した会社を1年ほどで辞め、友人と3人で起業しました。現在、ピケを設立して2年になりますが、フルコミットするようになってからはまだ1年くらいです。

もともと、14歳からずっとプログラミングをやっていまして。昔からプロダクト作りが好きで、学生時代にも個人で20個以上のサービスを作っていました。

3人の役割としては、僕がCEO兼プロダクトマネージャーとなっていて、CTOがフロントエンドやアプリの開発とデザイン、そしてもう1人がサーバーサイドを担当しています。

全員エンジニアなので、自分たちでいくつかのアイデアを持ち寄り、小さく作っては壊してを繰り返してきた感じで。この2年で、約10個のプロダクトを開発しました。

次はどんなプロダクトを作ろうかと考えていた時に、ちょうど帰省する機会があったんです。その休暇中に感じた課題をみんなで共有したところ、共通の「痛み」が見つかりまして。

それは「誰かとランチに行く時、お店を選ぶのが面倒」というものでした。

美味しいお店に行きたいけれど、食べログやぐるなびなどのグルメサイトで調べるのは時間がかかるし面倒くさい、みたいなシーンって結構あると思うんですよね。

そこで、僕ら3人に共通する痛みであれば、世の中にも同じような痛みを抱えている人がいるかもしれないと思い、そのニーズ検証のためプロトタイプを作成しました。

「サクッとランチが決まるアプリ」をコンセプトに、CTOがSketchPrincipleを使って、一晩でプロトタイプを作り上げました。

▼実際のプロトタイプ画面

人数と予算を選ぶだけで、TinderのようなUIでお店を選べる、という簡単な機能だけでしたが、これをTwitterで公開したところ、約4万リツイートという大きな反響を得られまして。

それから一気に、グルメアプリ「Dish」のリリースに向けて、開発を進めていきました。

事前登録ユーザーにアンケートを実施し、ペルソナを定義

それまで、サービスのニーズ検証では、まずランディングページを作ってからFacebook広告などを打っていたのですが、今回はランディングページを作らず、最初にTwitterでプロトタイプを公開しました。

▼実際のTwitter投稿

というのも、Dishはランチで使われるサービスなので、ユーザーの特別なターゲティングが必要ないんじゃないかと思いまして。

また、当時の僕のTwitterアカウントには、2,000人くらいのフォロワーがいたので、ある程度のニーズ検証であれば、ここだけでできるかもしれないと考えたんです。

その結果、投稿は約4万リツイートされ、事前登録ユーザーを約1万人も獲得することができました。

このバズによって、ニーズがあることへの確信は持てたのですが、ペルソナを固めるのに先行して検証を行ったため、実際にどのような人たちに刺さるサービスなのか? がわかっていなくて。

そこで、事前登録してくれたのはどのような人なのか? 何をもって評価してくれたのか? を調査するために、初期の事前登録ユーザーとなる約6,000人に、Googleフォームを使ったアンケートを送付しました。

すると、2,800件もの回答が返ってきたんです。性別や年齢、職業といったユーザー属性や、ランチに行く時の人数や頻度、店選びの動機といった情報を得ることができました。

このデータから、20〜30代のOLの女性が最も多くいることがわかり、その人たちをペルソナにすることにしました。

「Twitterマーケットフィット」に惑わされてはいけない

ですが、実はこのペルソナの決定が、最初の大きな失敗だったんです。

というのも、Twitter上の事前登録ユーザーの属性からペルソナを決めても、実は「実在しない人」である可能性があるんですよね。

これに気付いたのは、アンケートの後に行った、ユーザーインタビューの時でした。

僕らとしては、週1〜2回程度のランチでの店選びをDishでサポートしたいと考えていたのですが、実際にペルソナに該当するOLの方々にお話をお伺いしてみると、既存のグルメサイトを使ってめちゃくちゃ下調べしているんですよ。

話を聞いているうちに、それってDishの介入するタイミングなくない? といった感じで、どの場面で使われるサービスなのかが自分たちでもよくわからなくなってしまって…。

つまり、ペルソナと思われる人たちが、実際には想定した痛みを持っていなかったんですね。

これに対する仮説としては、プロダクトマーケットフィットではなく、結局のところ「Twitterマーケットフィット」だったのかな、と思っていて。

Twitterの利用シーンって、わりと「娯楽」じゃないですか。仕事の合間でひと休憩した時とか、夜寝る前に見るとか、そういう時に使われることが多いと思うんです。

そこで何かしらの「良さそうなもの」を見た時に、あまり考えずにいいねやリツイートをしたり、「めちゃくちゃほしい」ではなくて「何となくほしい」といった感覚だけで事前登録をしている人がいるのではないかと。

Twitterでの反応と、本当に使いたいかというのは別問題で、ニーズ検証ではそこに気をつけるべきだと学びました。

ユーザーインタビューを実施!そこから得た「インサイト」とは

そうして振り出しに戻ってからは、しばらく迷走していましたね(笑)。

ですが、とにかくリアルな声を聞こうと思い「bosyu」というソーシャル募集サービスを使って、インタビューを受けてくれる人を募ったんです。

▼ユーザーインタビューの協力者を「bosyu」で募集

Twitterのバズのおかげでフォロワーが2,000人ほど増えたこともあり、約20名の方に協力いただけることになりました。

そこで実際に募集してくれた人の属性を見ると、僕らが当初想定していたペルソナとは全く違っていて。20代女性ではなく、むしろ30代男性や大学生の方が、ユーザーインタビューに来てくれたんです。

そして、その人たちの生活動線やアプリの利用シーン、ランチ選びにおける意思決定の要因、などをヒアリングした結果、自分たちが想像していなかった「痛み」がわかってきました。

例えばある30代男性ですと、「出張先で美味しいランチを食べたいけど、時間的な制約があって調べられない」といった痛みを持たれていたんですね。

さらに同じような属性の方々も似たようなことを話していたので、「普段はグルメサイトで検索してじっくりお店を選ぶけれど、出先で刹那的に飲食店を探したいときにはわざわざ検索しない」というインサイトを得ました。

そうして、「30代男性できちんと事前に調べてランチに行く人」をペルソナとして再定義しました。

このインタビューを通じて、それまで自分たちが作っていたものが、ほぼ妄想に過ぎなかったことに気づきまして。結局、「妄想のカスタマージャーニー」を引いていたんですよね。

自分たちから生まれたアイデアであっても、自分たち以外に刺さるセグメントがあるんだということを学びましたし、それを知るには、やはりユーザーの行動を見ることが重要だと考えています。

インタビューとユーザビリティテストは、同時進行してはいけない

はじめの頃はインタビューに苦戦していましたが、10人20人と会っていくうちに、自分なりのフレームワークみたいなものができてきて。

具体的には、ユーザーさんに事前回答していただいたインタビューシートを元に、当日に絶対聞くポイントなどを整理してからインタビューすることで、スムーズになりましたね。

▼インタビュー項目のシート

またインタビューと同時に、プロダクトのユーザビリティテストも行っていたのですが、これがなかなか上手くいかなくて。

最初はAがいいと言っていたのに2回目にはBといったような感じで、ヒアリングを繰り返すうちに、ユーザーさんの言っていることがどんどん変わってきてしまったんです。

結局、ユーザーのインサイトを探るようなインタビューと、機能の操作性を確かめるユーザビリティテストを同時進行してしまうと、本質的な課題解決ではなく、表面的なUIの部分で評価のバイアスがかかってしまう、という学びを得ました。

特に、ペーパープロトやSketchなどで作った「動かないもの」をみせても、実機能の評価をすることがそもそも難しいと思うんです。

こちらの仮説とセットになっている体験が、プロトタイプできちんと表現できていればいいのですが、現実にはなかなかそうもいきません。

そこで最近では、ユーザーインタビューを「インサイトを知るためだけ」の時間に使っています。それを社内に持ち寄り、いくつかの仮説を立てて、実際に動くプロトタイプを作るんですね。

こうして、ユーザーの本質的な課題を解決する機能をもったプロトタイプで、ユーザビリティテストを実施することで、「これが欲しかった」と言ってもらえる状態が理想だと考えています。

ペルソナに「いかに刺さるか」を考え、プロダクトを開発していく

そうした検証を重ね、Twitter上のバズから約2ヶ月の開発期間で、Dishを正式リリースしました。初速は良い感じですが、リリースして3週間くらいなので、まだまだこれからですね。

今は、とにかく「ペルソナの人たちにどれだけ刺さるか」ということだけを考えています。逆にいえば、そこに刺されば、他のセグメントの人たちにも刺さる気がしていて。

僕らはこれまで、いくつものプロダクトを作ってきてどれも失敗に終わっているので、今回のDishは掘れるところまでとにかく掘ろうと思っています。

明確な撤退基準を設けてはいないのですが、「この1ヶ月間で、実際に何回使ってくれたか」というリテンションが、ひとつの指標だと考えていて。

Dishを通じて、週に1〜2回の痛みを解決したいと考えているので、月3回以上使ってもらうことができれば、最初の目標としてはクリアだと考えています。

今後は、ランチ決めるということに痛みを抱えている人に対して、その意思決定をどれだけサポートできるかということを、Dishで追求していきたいと思います。(了)

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